2006年03月06日
稲しり節
稲しり節
んにしりぶし
'Nni shiri bushi
◯稲(の籾)を摺れ
語句・んに 稲。・しり 籾摺れ。「摺る」(する)は、しゆん。なので「しり」とは命令形。「籾を摺れ」(脱穀せよ)という唄である。ちなみに精米は「しらぎゆん」(白くする)という。
一、今年毛作いやあん美らさゆかてぃ (稲摺り 摺り 米 選り 選り ち 選り 選り 選り け 選り選り 選り あひりひりひりひり)
くとぅしむじゅくいやあんちゅらさゆかてぃ(んにしりしーりくみゆりゆーり ちー ゆりゆりゆり けーゆりゆりゆり あ ひりひりひりひり
kutushi mujukui ya 'aNchurasa yukati ('Nni shiri shiiri 'ara yuri yuuri chii yuri yuri yuri kee yuri yuri yuri 'a hiri hiri hiri hiri)
◯今年の稲の出来は あんなにすばらしい実りになって(稲摺れ 摺れよ 米 選れ 選れ ちょと選れ選れ選れ ちょっと選れ選れ選れ)
(囃子は以下略)
語句・むじゅくい 「農作。農業に従事すること」【沖縄語辞典】。・ゆかてぃ よく実って。<ゆかゆん。「(作物が)よくできる。よく実る」【沖辞】。・くみ米。「あら」という歌詞もある。それなら、殻。
・ゆり 選(よ)れ。「選る」にあたる言葉が辞書にない。が、ここでは「選れ」とする。囃子なので正確な訳は無理と割り切ることもできるが、具体的な労働歌でもあるので作業に準じたことばであることは想像に難くない。・ちー 「動詞の前につき、思い切って・・する、軽く・・するなどの意味を表す。keeーと同じ意味」【沖辞】。・けー 「ちー」と同じ。
二、倉に積ん余ち真積みさびら
くらにちん あまち まじんさびら
kurani chiN'amachi majiNsabira
◯倉に積み余って真積みしましょう
語句・まじん 「いなむら。農家の庭先に稲を積み重ねたもの。単にmaziNともいう」【沖辞】。
三、銀臼なかい黄金じく立てて
なんじゃ'うしなかい くがにじくたてぃてぃ
naNjya 'ushi nakai kugani jiku tatiti
◯銀の臼に黄金の軸をたてて
語句・なんじゃ 銀。上質の銀の事を言う。語源は中国の銀山に由来する。江戸時代も中国の純銀に近いものは「南鐐」(なんりょう)と呼ばれた。それが変化したもの。・うし 臼。本によっては「うす=御主」となっていて 下句に「民ましゅる」となっているものもある。臼を使って脱穀する様子を歌っているもの。臼の構造は下にあるように上臼と下臼に分かれ、下臼には中心に突き出た部分があり、上臼の中央に開いた穴と連結する。その間に籾を投入し、凸凹が付いた上下の臼の間で擦られて玄米と籾殻に分けられていく。・なかい に。・くがに 黄金。
四、試し摺り増する雪の真米
たみしすりましゅる ゆちぬまぐみ
tamishi suri mashuru yuchi nu magumi
◯試しにすり増していく雪のような真米
五、はまてぃしりよ姉の達 しちゅまかみさらや
はまてぃしりうないぬちゃー しちゅまかみさらや
hamati siriyo 'unainuchaa sichumakamisaraya
◯がんばって摺れよ姉さんたち とれたての米あげよう
語句・はまてぃ 励んで。一生懸命。<はまゆん。はげむ。・うない 「男の兄弟からみた姉妹。兄に対する妹、弟に対する姉。宗教的には男の兄弟に対する守護神」(琉辞)ここでは姉さん達くらいであろう。・しちゅま 初穂祭のこと、転じてとれたての米(「しまうた紀行」より)。
支給米と当て字をしているのは沖永良部民謡集。「しきゅうまい」が「しちゅま」というのもありえる。
「前田節」「ピーラルラー(二合節)」に続く三曲目。
沖縄本島では少ない労働歌のひとつ。
奄美民謡、沖永良部島民謡としての「稲摺り節」「稲すり節」については別にとりあげる。
銀臼なかい黄金じく立てて
ここでは籾を籾殻と玄米に分ける木臼(または土臼)の事を指す。
(稲摺りの様子と木臼の形状)
▲左の下臼には中心に突き出た部分があり、それを上臼の穴に通して上下の臼がセットされ、それを二人がかりで上臼に結んだ紐を右、左、右、左と引くことで上臼が行き戻りして上から投入した籾が分離されていくという仕掛け。分離された籾殻と玄米は周囲に。
二人が息を合わせるために本土でも沖縄でも作業のためのウタが作られていた。このウタもその一つであろう。
ちなみに収穫した稲を米にするまでの工程には、まず「脱穀」がある。そして籾の選別、籾摺りをして玄米を取り出して精米する。
沖縄では籾の選別にはミージョーキという竹を編んで作った大きな円形のザルを使った。
ウチナーグチでは籾摺りの「摺る」(籾殻と玄米に分離する)は「しゆん」「しいん」。
命令形は「しり」。
そして精米は「しらぎゆん」「しらぎいん」。
稲作は琉球に古くから伝わっていたが戦後の米軍基地の建設や、キューバ危機で高騰した砂糖の価格のために稲作よりサトウキビ栽培が奨励された結果、一部にしか稲作が残っていない。
現在でも基幹作物はサトウキビで全耕地面積の66%、米はわずか2%にすぎない。したがって米は本土からのものが多い。
前田節としてこのCDに収められている。
んにしりぶし
'Nni shiri bushi
◯稲(の籾)を摺れ
語句・んに 稲。・しり 籾摺れ。「摺る」(する)は、しゆん。なので「しり」とは命令形。「籾を摺れ」(脱穀せよ)という唄である。ちなみに精米は「しらぎゆん」(白くする)という。
一、今年毛作いやあん美らさゆかてぃ (稲摺り 摺り 米 選り 選り ち 選り 選り 選り け 選り選り 選り あひりひりひりひり)
くとぅしむじゅくいやあんちゅらさゆかてぃ(んにしりしーりくみゆりゆーり ちー ゆりゆりゆり けーゆりゆりゆり あ ひりひりひりひり
kutushi mujukui ya 'aNchurasa yukati ('Nni shiri shiiri 'ara yuri yuuri chii yuri yuri yuri kee yuri yuri yuri 'a hiri hiri hiri hiri)
◯今年の稲の出来は あんなにすばらしい実りになって(稲摺れ 摺れよ 米 選れ 選れ ちょと選れ選れ選れ ちょっと選れ選れ選れ)
(囃子は以下略)
語句・むじゅくい 「農作。農業に従事すること」【沖縄語辞典】。・ゆかてぃ よく実って。<ゆかゆん。「(作物が)よくできる。よく実る」【沖辞】。・くみ米。「あら」という歌詞もある。それなら、殻。
・ゆり 選(よ)れ。「選る」にあたる言葉が辞書にない。が、ここでは「選れ」とする。囃子なので正確な訳は無理と割り切ることもできるが、具体的な労働歌でもあるので作業に準じたことばであることは想像に難くない。・ちー 「動詞の前につき、思い切って・・する、軽く・・するなどの意味を表す。keeーと同じ意味」【沖辞】。・けー 「ちー」と同じ。
二、倉に積ん余ち真積みさびら
くらにちん あまち まじんさびら
kurani chiN'amachi majiNsabira
◯倉に積み余って真積みしましょう
語句・まじん 「いなむら。農家の庭先に稲を積み重ねたもの。単にmaziNともいう」【沖辞】。
三、銀臼なかい黄金じく立てて
なんじゃ'うしなかい くがにじくたてぃてぃ
naNjya 'ushi nakai kugani jiku tatiti
◯銀の臼に黄金の軸をたてて
語句・なんじゃ 銀。上質の銀の事を言う。語源は中国の銀山に由来する。江戸時代も中国の純銀に近いものは「南鐐」(なんりょう)と呼ばれた。それが変化したもの。・うし 臼。本によっては「うす=御主」となっていて 下句に「民ましゅる」となっているものもある。臼を使って脱穀する様子を歌っているもの。臼の構造は下にあるように上臼と下臼に分かれ、下臼には中心に突き出た部分があり、上臼の中央に開いた穴と連結する。その間に籾を投入し、凸凹が付いた上下の臼の間で擦られて玄米と籾殻に分けられていく。・なかい に。・くがに 黄金。
四、試し摺り増する雪の真米
たみしすりましゅる ゆちぬまぐみ
tamishi suri mashuru yuchi nu magumi
◯試しにすり増していく雪のような真米
五、はまてぃしりよ姉の達 しちゅまかみさらや
はまてぃしりうないぬちゃー しちゅまかみさらや
hamati siriyo 'unainuchaa sichumakamisaraya
◯がんばって摺れよ姉さんたち とれたての米あげよう
語句・はまてぃ 励んで。一生懸命。<はまゆん。はげむ。・うない 「男の兄弟からみた姉妹。兄に対する妹、弟に対する姉。宗教的には男の兄弟に対する守護神」(琉辞)ここでは姉さん達くらいであろう。・しちゅま 初穂祭のこと、転じてとれたての米(「しまうた紀行」より)。
支給米と当て字をしているのは沖永良部民謡集。「しきゅうまい」が「しちゅま」というのもありえる。
「前田節」「ピーラルラー(二合節)」に続く三曲目。
沖縄本島では少ない労働歌のひとつ。
奄美民謡、沖永良部島民謡としての「稲摺り節」「稲すり節」については別にとりあげる。
銀臼なかい黄金じく立てて
ここでは籾を籾殻と玄米に分ける木臼(または土臼)の事を指す。
(稲摺りの様子と木臼の形状)
▲左の下臼には中心に突き出た部分があり、それを上臼の穴に通して上下の臼がセットされ、それを二人がかりで上臼に結んだ紐を右、左、右、左と引くことで上臼が行き戻りして上から投入した籾が分離されていくという仕掛け。分離された籾殻と玄米は周囲に。
二人が息を合わせるために本土でも沖縄でも作業のためのウタが作られていた。このウタもその一つであろう。
ちなみに収穫した稲を米にするまでの工程には、まず「脱穀」がある。そして籾の選別、籾摺りをして玄米を取り出して精米する。
沖縄では籾の選別にはミージョーキという竹を編んで作った大きな円形のザルを使った。
ウチナーグチでは籾摺りの「摺る」(籾殻と玄米に分離する)は「しゆん」「しいん」。
命令形は「しり」。
そして精米は「しらぎゆん」「しらぎいん」。
稲作は琉球に古くから伝わっていたが戦後の米軍基地の建設や、キューバ危機で高騰した砂糖の価格のために稲作よりサトウキビ栽培が奨励された結果、一部にしか稲作が残っていない。
現在でも基幹作物はサトウキビで全耕地面積の66%、米はわずか2%にすぎない。したがって米は本土からのものが多い。
前田節としてこのCDに収められている。
この記事へのコメント
しりしりはスリスリですね。猫のスリスリより少し強めかな?
Posted by ふーちゃん at 2006年03月07日 21:22
ふーちゃんさん
コメつくりに関わる言葉も調べてみようとは思いますが、なかなか資料がないですね。首里の人々が農業はしていなかったわけだから言葉が少ないようです。こういうものは地方の方言を調べるしかないのでしょうね。
コメつくりに関わる言葉も調べてみようとは思いますが、なかなか資料がないですね。首里の人々が農業はしていなかったわけだから言葉が少ないようです。こういうものは地方の方言を調べるしかないのでしょうね。
Posted by せきひろし(たるー) at 2006年03月08日 06:25
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