2021年08月18日
前田節~サウエン節~稲しり節
前田節
めーんたーぶし
meeNtaabushi
語句・めー 前の。近所の。・ん の。・たー田んぼ。 <前ぬ田。 めーぬたー 。(例)前ぬ浜。前の浜。
一、今年前田ぬ稲みんそり 今年飲まん酒ないち飲むが (やてぃからちゅぬちゃーぬまんかなぬでぃあしばな)
くとぅしめーんたーぬ んにみんそーり くとぅしぬまんさき なー いちぬむが (やてぃから っちゅぬちゃ ぬまんかな ぬでぃあしばな)
kutushi meeNtaa nu 'Nni miNsoori kutushi numaN saki naa 'ichi numuga (yatikara cchu nuchaa numaN kana nudi 'ashibana)
○今年前の田の稲をごらんください 今年飲まない酒はもういつ飲むのか (そうだから 皆の衆 呑もうではないか 呑んで遊ぼう)
《囃子は以下省略》
語句・'んに 稲。 ・みんそーり 見てください。・な 「あんた、お前さん」「親しい年長者にたいして sai[tai]のように使う言葉」「もう、今や」【琉球語辞典】。 <なー ここでは「もう」と訳す。・やてぃから そうであるから。<やてぃ<やん。そうで。+から であるから。・ちゅぬちゃー みなさん。皆の衆。<っちゅ 人。「っ」が頭に付くのは「声門破裂音」だから。+ちゃー。 たち。・あしばな あそぼうよ。あそびたい。動詞の未然形に「な」が付くと、希望や呼びかけの意味になる。(例)ちかな。→聞こう。聞きたい。
二、今年毛作やあん美らさる 白種子やなびちあぶし枕
くとぅしむじゅくいやあんちゅらさる しらちゃにやなびちあぶしまくら
kutushi mujukui ya 'aNchurasaru shirachani ya nabichi 'abushi makura
○今年農作はあのように美しい 稲はなびき田の畔を枕にするほど実り豊かだ
語句・むじゅくい 農業 農作。<毛作りmoo jukuri→mujukui ・あんちゅらさる あのように美しい(よくできた) 連体形。 ・しらちゃに 白種子(sira sani)つまり稲。・あぶしまくら 田の畦は「あぶし」 畦を枕にしてるように稲が穂を垂れる様子 つまり豊作を意味。
三、見事出来らちゃる毛作や蔵に積みくまいう祝さびら
みぐとぅでぃきらちゃるむじゅくいやくらにちみくまいうゆえーさびら
migutu dikiracaru mujukuiya kurani chimikumai 'uyueesabira
○見事にうまくしあがっている農作物は蔵に積め入れてお祝いしましょう
語句・でぃきらちゃる できあがってる =豊作。 <でぃきゆん ・ちみくまい 積め入れて <ちみゆん(積める)+ くみゆん(入れる)の複合だろう。
サウエン節
さうえんぶし
saueN bushi
◯(歌の囃子から付いた名前)
又は
ピーラルラー
ぴーらるらー
piiraruraa
◯(宮廷音楽の路次楽でつかわれるガクブラ《中国の楽器、いわゆるチャルメラ》の擬音から)
一、くまぬ殿内ぬハンシーメーや御肝美らさぬかながなとぅ
くまぬとぅんちぬはんしーめーや'うぢむじゅらさぬ かながなとぅ
kuma nu tuNchi nu haNshiimee ya 'ujimu jurasanu kanaganaa tu
○このお屋敷のおばあさまは御心が美しいので愛想良く
語句・くま ここ。・とぅんち お屋敷。・はんしーめー おばあさま。士族のおばあさんを特にこう呼ぶ。(参考)琉球王朝時代の士族(大名・でーみょーと言われた按司、侍・さむれーと言われた家臣)と平民(百姓・ひゃくしょー)とでは親族の呼び名が違っている。以下括弧内は士族・平民の順、おじいさん(士族たんめー・平民うしゅめー)おばあさん(※んめー・はーめー)※那覇では「はんしー」。おとうさん(たーりー・しゅー)おかあさん(あやー・あんまー)にいさん(やっちー・あふぃー)ねえさん(んみー・あんぐゎー)。・うぢむ お心。う。御。+ちむ。心。連濁で「ぢ」。・かながなとぅ 「愛想良く。仲よく。また、かわいがって。」【沖縄語辞典】。
(サウエン サウエン サーサウエン ササ ピーラルラー ラーラルラーラ 二合ドゥヒャー二合 一升二合酒二合)
さうえん さうえん さーさうえん ささ ぴーらるーらー らーらるらーらー にごーどぅひゃー にんごー いっすにんごーさきにんごー
saueN saueN saa saueN sasa piiraruuraa raa raaraaruraaraa nigoo du hyaa niNgoo issu niNgoo saki niNgoo
○サウエン サウエンサーサウエン(不明)ピーラルラー(管楽器の音)二合こそおい!二合一升二合酒二合
(囃子は以下省略)
二、一合がうたびみせら 二合がうたびみせらさだみぐりしゃ
いちごーが うたびみせーら にんごーが うたびみせーら さだみぐりしゃ
'ichigoo ga 'utabimiseera niNgoo ga 'utabimiseera sadamigurisha
○一合を下さいますかしら 二合を下さいますかしら 定めにくいことよ
語句・が 「文の疑わしい部分に付く。あとを推量の形(aで終わる)で結ぶ」【沖辞】。ここでは「一合を?くださいますか。二合を?」と「一合」か「二合」かがわからないから。・うたびみせーら くださいますか? <うたびみせーん 「呉れる」の敬語。頂く。その疑問文。・さだみぐりしゃ 定めにくい。予想がつかない。<ぐりさん。し難い。
三、一合や片荷重さぬ 二合やうたびみせーら かみてぃみぐやびら
いちごーや かたにー んぶさぬ にんごーや うたびみせーら かみてぃみぐやびら
'ichigoo ya katanii 'Nbusanu niNgoo ya 'utabimisooree kamiti miguyabira
○一合は片荷に重いので二合を下さいますか?頂いて巡りましょう
語句・んぶさぬ 重いので<んぶさん(形) 。形容詞の末尾が「ぬ」になると「・・なので」・かみてぃ頭の上に乗せて。 担いで。頂いて。ここでは「頂いて」。・・みぐやびら 巡りましょう。<みぐゆん。 巡る に丁寧語「あびーん」。
四、くま居て飲まんでさびれ 暑さぬ 飲まりやびらん かみてぃみぐやびら
くま うてぃぬまんでぃさびれ あちさぬ ぬまりやびらんかみてぃみぐやびら
○ここで呑もうと言ってください 暑くて飲まれません 頂いて巡りましょう
語句・ぬまんでぃ 呑もうと。<ぬま。呑もう。+んでぃ。と。
稲しり節
んにしりぶし
'Nni shiri bushi
◯稲(の籾)を摺れ
語句・んに 稲。・しり 籾摺れ。「摺る」(する)は、しゆん。なので「しり」とは命令形。「籾を摺れ」(脱穀せよ)という唄である。ちなみに精米は「しらぎゆん」(白くする)という。
一、今年毛作いやあん美らさゆかてぃ (稲摺り 摺り 米 選り 選り ち 選り 選り 選り け 選り選り 選り あひりひりひりひり)
くとぅしむじゅくいやあんちゅらさゆかてぃ(んにしりしーりくみゆりゆーり ちー ゆりゆりゆり けーゆりゆりゆり あ ひりひりひりひり
kutushi mujukui ya 'aNchurasa yukati ('Nni shiri shiiri 'ara yuri yuuri chii yuri yuri yuri kee yuri yuri yuri 'a hiri hiri hiri hiri)
◯今年の稲の出来は あんなにすばらしい実りになって(稲摺れ 摺れよ 米 選れ 選れ ちょと選れ選れ選れ ちょっと選れ選れ選れ)
(囃子は以下略)
語句・むじゅくい 「農作。農業に従事すること」【沖縄語辞典】。・ゆかてぃ よく実って。<ゆかゆん。「(作物が)よくできる。よく実る」【沖辞】。・くみ米。「あら」という歌詞もある。それなら、殻。
・ゆり 選(よ)れ。「選る」にあたる言葉が辞書にない。が、ここでは「選れ」とする。囃子なので正確な訳は無理と割り切ることもできるが、具体的な労働歌でもあるので作業に準じたことばであることは想像に難くない。・ちー 「動詞の前につき、思い切って・・する、軽く・・するなどの意味を表す。keeーと同じ意味」【沖辞】。・けー 「ちー」と同じ。
二、倉に積ん余ち真積みさびら
くらにちん あまち まじんさびら
kurani chiN'amachi majiNsabira
◯倉に積み余って真積みしましょう
語句・まじん 「いなむら。農家の庭先に稲を積み重ねたもの。単にmaziNともいう」【沖辞】。
三、銀臼なかい黄金じく立てて
なんじゃ'うしなかい くがにじくたてぃてぃ
naNjya 'ushi nakai kugani jiku tatiti
◯銀の臼に黄金の軸をたてて
語句・なんじゃ 銀。上質の銀の事を言う。語源は中国の銀山に由来する。江戸時代も中国の純銀に近いものは「南鐐」(なんりょう)と呼ばれた。それが変化したもの。・うし 臼。本によっては「うす=御主」となっていて 下句に「民ましゅる」となっているものもある。臼を使って脱穀する様子を歌っているもの。臼の構造は下にあるように上臼と下臼に分かれ、下臼には中心に突き出た部分があり、上臼の中央に開いた穴と連結する。その間に籾を投入し、凸凹が付いた上下の臼の間で擦られて玄米と籾殻に分けられていく。・なかい に。・くがに 黄金。
四、試し摺り増する雪の真米
たみしすりましゅる ゆちぬまぐみ
tamishi suri mashuru yuchi nu magumi
◯試しにすり増していく雪のような真米
五、はまてぃしりよ姉の達 しちゅまかみさらや
はまてぃしりうないぬちゃー しちゅまかみさらや
hamati siriyo 'unainuchaa sichumakamisaraya
◯がんばって摺れよ姉さんたち とれたての米あげよう
語句・はまてぃ 励んで。一生懸命。<はまゆん。はげむ。・うない 「男の兄弟からみた姉妹。兄に対する妹、弟に対する姉。宗教的には男の兄弟に対する守護神」(琉辞)ここでは姉さん達くらいであろう。・しちゅま 初穂祭のこと、転じてとれたての米(「しまうた紀行」より)。
支給米と当て字をしているのは沖永良部民謡集。「しきゅうまい」が「しちゅま」というのもありえる。
解説のついては各曲の項目を参照のこと。
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めーんたーぶし
meeNtaabushi
語句・めー 前の。近所の。・ん の。・たー田んぼ。 <前ぬ田。 めーぬたー 。(例)前ぬ浜。前の浜。
一、今年前田ぬ稲みんそり 今年飲まん酒ないち飲むが (やてぃからちゅぬちゃーぬまんかなぬでぃあしばな)
くとぅしめーんたーぬ んにみんそーり くとぅしぬまんさき なー いちぬむが (やてぃから っちゅぬちゃ ぬまんかな ぬでぃあしばな)
kutushi meeNtaa nu 'Nni miNsoori kutushi numaN saki naa 'ichi numuga (yatikara cchu nuchaa numaN kana nudi 'ashibana)
○今年前の田の稲をごらんください 今年飲まない酒はもういつ飲むのか (そうだから 皆の衆 呑もうではないか 呑んで遊ぼう)
《囃子は以下省略》
語句・'んに 稲。 ・みんそーり 見てください。・な 「あんた、お前さん」「親しい年長者にたいして sai[tai]のように使う言葉」「もう、今や」【琉球語辞典】。 <なー ここでは「もう」と訳す。・やてぃから そうであるから。<やてぃ<やん。そうで。+から であるから。・ちゅぬちゃー みなさん。皆の衆。<っちゅ 人。「っ」が頭に付くのは「声門破裂音」だから。+ちゃー。 たち。・あしばな あそぼうよ。あそびたい。動詞の未然形に「な」が付くと、希望や呼びかけの意味になる。(例)ちかな。→聞こう。聞きたい。
二、今年毛作やあん美らさる 白種子やなびちあぶし枕
くとぅしむじゅくいやあんちゅらさる しらちゃにやなびちあぶしまくら
kutushi mujukui ya 'aNchurasaru shirachani ya nabichi 'abushi makura
○今年農作はあのように美しい 稲はなびき田の畔を枕にするほど実り豊かだ
語句・むじゅくい 農業 農作。<毛作りmoo jukuri→mujukui ・あんちゅらさる あのように美しい(よくできた) 連体形。 ・しらちゃに 白種子(sira sani)つまり稲。・あぶしまくら 田の畦は「あぶし」 畦を枕にしてるように稲が穂を垂れる様子 つまり豊作を意味。
三、見事出来らちゃる毛作や蔵に積みくまいう祝さびら
みぐとぅでぃきらちゃるむじゅくいやくらにちみくまいうゆえーさびら
migutu dikiracaru mujukuiya kurani chimikumai 'uyueesabira
○見事にうまくしあがっている農作物は蔵に積め入れてお祝いしましょう
語句・でぃきらちゃる できあがってる =豊作。 <でぃきゆん ・ちみくまい 積め入れて <ちみゆん(積める)+ くみゆん(入れる)の複合だろう。
サウエン節
さうえんぶし
saueN bushi
◯(歌の囃子から付いた名前)
又は
ピーラルラー
ぴーらるらー
piiraruraa
◯(宮廷音楽の路次楽でつかわれるガクブラ《中国の楽器、いわゆるチャルメラ》の擬音から)
一、くまぬ殿内ぬハンシーメーや御肝美らさぬかながなとぅ
くまぬとぅんちぬはんしーめーや'うぢむじゅらさぬ かながなとぅ
kuma nu tuNchi nu haNshiimee ya 'ujimu jurasanu kanaganaa tu
○このお屋敷のおばあさまは御心が美しいので愛想良く
語句・くま ここ。・とぅんち お屋敷。・はんしーめー おばあさま。士族のおばあさんを特にこう呼ぶ。(参考)琉球王朝時代の士族(大名・でーみょーと言われた按司、侍・さむれーと言われた家臣)と平民(百姓・ひゃくしょー)とでは親族の呼び名が違っている。以下括弧内は士族・平民の順、おじいさん(士族たんめー・平民うしゅめー)おばあさん(※んめー・はーめー)※那覇では「はんしー」。おとうさん(たーりー・しゅー)おかあさん(あやー・あんまー)にいさん(やっちー・あふぃー)ねえさん(んみー・あんぐゎー)。・うぢむ お心。う。御。+ちむ。心。連濁で「ぢ」。・かながなとぅ 「愛想良く。仲よく。また、かわいがって。」【沖縄語辞典】。
(サウエン サウエン サーサウエン ササ ピーラルラー ラーラルラーラ 二合ドゥヒャー二合 一升二合酒二合)
さうえん さうえん さーさうえん ささ ぴーらるーらー らーらるらーらー にごーどぅひゃー にんごー いっすにんごーさきにんごー
saueN saueN saa saueN sasa piiraruuraa raa raaraaruraaraa nigoo du hyaa niNgoo issu niNgoo saki niNgoo
○サウエン サウエンサーサウエン(不明)ピーラルラー(管楽器の音)二合こそおい!二合一升二合酒二合
(囃子は以下省略)
二、一合がうたびみせら 二合がうたびみせらさだみぐりしゃ
いちごーが うたびみせーら にんごーが うたびみせーら さだみぐりしゃ
'ichigoo ga 'utabimiseera niNgoo ga 'utabimiseera sadamigurisha
○一合を下さいますかしら 二合を下さいますかしら 定めにくいことよ
語句・が 「文の疑わしい部分に付く。あとを推量の形(aで終わる)で結ぶ」【沖辞】。ここでは「一合を?くださいますか。二合を?」と「一合」か「二合」かがわからないから。・うたびみせーら くださいますか? <うたびみせーん 「呉れる」の敬語。頂く。その疑問文。・さだみぐりしゃ 定めにくい。予想がつかない。<ぐりさん。し難い。
三、一合や片荷重さぬ 二合やうたびみせーら かみてぃみぐやびら
いちごーや かたにー んぶさぬ にんごーや うたびみせーら かみてぃみぐやびら
'ichigoo ya katanii 'Nbusanu niNgoo ya 'utabimisooree kamiti miguyabira
○一合は片荷に重いので二合を下さいますか?頂いて巡りましょう
語句・んぶさぬ 重いので<んぶさん(形) 。形容詞の末尾が「ぬ」になると「・・なので」・かみてぃ頭の上に乗せて。 担いで。頂いて。ここでは「頂いて」。・・みぐやびら 巡りましょう。<みぐゆん。 巡る に丁寧語「あびーん」。
四、くま居て飲まんでさびれ 暑さぬ 飲まりやびらん かみてぃみぐやびら
くま うてぃぬまんでぃさびれ あちさぬ ぬまりやびらんかみてぃみぐやびら
○ここで呑もうと言ってください 暑くて飲まれません 頂いて巡りましょう
語句・ぬまんでぃ 呑もうと。<ぬま。呑もう。+んでぃ。と。
稲しり節
んにしりぶし
'Nni shiri bushi
◯稲(の籾)を摺れ
語句・んに 稲。・しり 籾摺れ。「摺る」(する)は、しゆん。なので「しり」とは命令形。「籾を摺れ」(脱穀せよ)という唄である。ちなみに精米は「しらぎゆん」(白くする)という。
一、今年毛作いやあん美らさゆかてぃ (稲摺り 摺り 米 選り 選り ち 選り 選り 選り け 選り選り 選り あひりひりひりひり)
くとぅしむじゅくいやあんちゅらさゆかてぃ(んにしりしーりくみゆりゆーり ちー ゆりゆりゆり けーゆりゆりゆり あ ひりひりひりひり
kutushi mujukui ya 'aNchurasa yukati ('Nni shiri shiiri 'ara yuri yuuri chii yuri yuri yuri kee yuri yuri yuri 'a hiri hiri hiri hiri)
◯今年の稲の出来は あんなにすばらしい実りになって(稲摺れ 摺れよ 米 選れ 選れ ちょと選れ選れ選れ ちょっと選れ選れ選れ)
(囃子は以下略)
語句・むじゅくい 「農作。農業に従事すること」【沖縄語辞典】。・ゆかてぃ よく実って。<ゆかゆん。「(作物が)よくできる。よく実る」【沖辞】。・くみ米。「あら」という歌詞もある。それなら、殻。
・ゆり 選(よ)れ。「選る」にあたる言葉が辞書にない。が、ここでは「選れ」とする。囃子なので正確な訳は無理と割り切ることもできるが、具体的な労働歌でもあるので作業に準じたことばであることは想像に難くない。・ちー 「動詞の前につき、思い切って・・する、軽く・・するなどの意味を表す。keeーと同じ意味」【沖辞】。・けー 「ちー」と同じ。
二、倉に積ん余ち真積みさびら
くらにちん あまち まじんさびら
kurani chiN'amachi majiNsabira
◯倉に積み余って真積みしましょう
語句・まじん 「いなむら。農家の庭先に稲を積み重ねたもの。単にmaziNともいう」【沖辞】。
三、銀臼なかい黄金じく立てて
なんじゃ'うしなかい くがにじくたてぃてぃ
naNjya 'ushi nakai kugani jiku tatiti
◯銀の臼に黄金の軸をたてて
語句・なんじゃ 銀。上質の銀の事を言う。語源は中国の銀山に由来する。江戸時代も中国の純銀に近いものは「南鐐」(なんりょう)と呼ばれた。それが変化したもの。・うし 臼。本によっては「うす=御主」となっていて 下句に「民ましゅる」となっているものもある。臼を使って脱穀する様子を歌っているもの。臼の構造は下にあるように上臼と下臼に分かれ、下臼には中心に突き出た部分があり、上臼の中央に開いた穴と連結する。その間に籾を投入し、凸凹が付いた上下の臼の間で擦られて玄米と籾殻に分けられていく。・なかい に。・くがに 黄金。
四、試し摺り増する雪の真米
たみしすりましゅる ゆちぬまぐみ
tamishi suri mashuru yuchi nu magumi
◯試しにすり増していく雪のような真米
五、はまてぃしりよ姉の達 しちゅまかみさらや
はまてぃしりうないぬちゃー しちゅまかみさらや
hamati siriyo 'unainuchaa sichumakamisaraya
◯がんばって摺れよ姉さんたち とれたての米あげよう
語句・はまてぃ 励んで。一生懸命。<はまゆん。はげむ。・うない 「男の兄弟からみた姉妹。兄に対する妹、弟に対する姉。宗教的には男の兄弟に対する守護神」(琉辞)ここでは姉さん達くらいであろう。・しちゅま 初穂祭のこと、転じてとれたての米(「しまうた紀行」より)。
支給米と当て字をしているのは沖永良部民謡集。「しきゅうまい」が「しちゅま」というのもありえる。
解説のついては各曲の項目を参照のこと。
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