2024年06月28日

でぃらぶでぃ節

でぃらぶでぃ節
でぃらぶでぃ ぶし
dirabudi bushi
語句・でぃらぶでぃ 人名。与那国民謡工工四には「デラ(人名)ブデ(叔父さん)」との注釈がある。「どぅなんむぬい辞典」には「はぶでぃ」は「先祖」の意味で、「ぶてぃ」は「父母の年上の従兄弟」とある。



一、いすんき んでぃらば でぃらぶでぃ あぶひてぃ はまてぃんき とぅんでぃみりば たいやばーたい いぐんや うでぃやまいぐん
(「ひらがな」の発音は歌詞と同じなので省略。また声門破裂音の有無についても省略した。)
isuNki Ndiraba dirabudi abuhiti hamatiNki tuNdimiriba tai ya baatai udyamaiguN
磯に出たらディラブディ アブヒティ浜に出てみたら 松明(たいまつ)は私の松明で 銛(もり)はウデャマ(人名)の銛だ
語句・いす 磯。・んき〜へ。〜に。方向を表す。・んでぃらば出てみたら。<んでぃるん。出てくる。・たい松明。たいまつ。・ばー私。私たち。・いぐん銛。もり。


二、いらぶた いゆぬ とぅんでぃらば みりばん んにに うてぃはらい みさだ いゆぬ みらるるば まんなが ひってぃとぅばい
irabuta iyu nu tuNdiraba miribaN Nni
イラブタという魚が出て来たら 見たら胸に突きはらえ ミサダという魚が現れたら真ん中を突き飛ばせ
語句・イラブタ魚の名前。「イラブチャー」か。・いゆ魚。・んに胸。


三、いらぶたいゆん んなりるんどー みさだ にーばい かたかしん ないぬばどぅ うとぅだんた あばてぃんなよ ぶーるひてぃとぅばい
イラブタという魚も見えるぞ ミサダ、ミーバイ、カタカシも今こそ兄弟たちよ 慌てるなよ 全て突き飛ばせ
語句・んなりるんどー見えるぞ。<んぬん。見る。の可能形。・みさだ にーばい かたかしそれぞれ魚の名前。「ミサダ」は「ギンユゴイ」。「にーばい」はミーバイ。「かたかし」はオジサン。・ない今。<ないぬてぃん。すぐに。・ばーこそ。・どぅこそ。・うとぅだ兄弟姉妹。・んた〜など。・あばてぃんな慌てるな。<あばてぃるん。慌てる。・ぶーる全部。「むる」に対応。


四、いゆぬかでぃかでぃ でぃがしゃんどー うぶたぬ はまてぃんき あんがいくーよー でぃーばんた ばぎり いぐがらや さんびゃくどぅくどぅ
魚の数々 漁はうまくいったぞ ウブタヌ浜に上がって来いよ さあ私たちは分けて何尾(ずつ)かというと360尾
語句・かでぃかでぃ数々。・でぃがしゃんどー上手くいったぞー。・でぃーさあ。・ばんた私たち。・いぐがらやいくつくらいか。


五、さんびゃぐ どぅくどぅぬ いゆばゆ んたいんとぅぬ うとっだんき ばぎるんでぃや するばんたまに ぬしみりば ひゃぐぬにんどぅ
360尾の魚を三人の兄弟で分けるならば算盤玉で計算すると(一人)120尾(ずつ)。

語句・んたいんとぅ三人。「みたいんとぅ」ともいう。・するばんたまにぬしみりばら算盤玉にのせてみると。つまり、計算したら、の意。


六、ひゃぐぬにんどぅぬ いゆばゆ 
かたみてぃむどぅれゃ だーぬとぅでぃや かたはんてぃ たーてぃたーてぃ ちらやばらい でぃぎらし

120尾の魚を担いで家に戻ると家の妻は
語句・かたみてぃ担いで。・だーぬ家の。与那国語では「y」が「d」になる。・とぅでぃ妻。「とぅじ」(本島)に対応。・はん足。「かたはんてぃ」は「片足を」。・ちら顔。・ばらい笑い。・でぃぎらし うまくいって。<でぃぎるん。上手くいく。成績や作柄が良いこと。


与那国民謡の「でぃらぶでぃ節」は、沖縄民謡の中でもそれほどメジャーというわけではないが、与那国出身の唄者のみならず、与那国民謡のファンにも愛されている民謡の一つである。

与那国島は、言うまでもなく日本の最西端の島で、台湾との距離は100キロ程しか離れていない。八重山諸島の一つではあるが、その島の言葉は八重山語とは区別される。(図 参照)

音源を聴けばお分かりだと思うが、リズムは早調子で、前奏からは八重山民謡「くいぬぱな節」との類似を感じさせ、歌に入れば本島の「収納奉行節」や「三村踊り節」を想起させる。つまり音階は琉球音階で構成されている。

いつ頃作られたウタなのか、現在わかることは少ない。しかしメロディーの類似性から、新城島で「くいぬぱな節」が作られて後に屋嘉比朝寄によって「高袮久節」に反映されたのが18世紀とすれば、その頃あたりのものと推測できないこともない。少し乱暴な推測ではあるが。

与那国島の庶民達の海での労働を素朴な不定形詩で描かれている。また力強く、かつリズミカルな与那国語の表現に引き込まれていく。



この訳には「どぅなんむぬい辞典」(与那国町教育委員会)を活用させていただいた。
でぃらぶでぃ節

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Posted by たる一 at 11:24│Comments(0)た行八重山民謡
 
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