2008年01月19日

万歳かふす (高平良万才 2)

万歳かふす
まんざい こーし
maNzai kooshi
万歳行者
語句・こーし 一応「行者」と訳してあるが、伊波普猷により「疥癬」(かいせん)説が唱えられて実は不明。(沖)にはkooshiは「疥癬(かいせん)。ひぜん」のみ。


万歳かふすややんざいかふすや二月御穂立て穂祭や
まんざいこーしや やんざいこーしやにぐわち'うふだてぃふまちりや
maNzaikooshi ya yaNzaikooshi ya nigwachi 'uhudati humachiri ya
万歳行者は、ヤンザイ(万歳と同じ)行者は二月御穂立て穂祭は
語句・やんざい 京太郎。万歳行者。・ 穂 <ふー 二月の穂だから麦かもしれない。


天より下りの 何の日取りや よい日取り
てぃんゆいくだりぬ なんぬひどぅりや ゆいひどぅり
tiN yui kudari nu naN nu hiduri ya yuihiduri
天から下りた何の日取りか?良い日取り


米や重さひ石や軽さい 天より下りの布織り上手の綾織り男の錦の金襴唐うの金襴
めーや'んぶさい 'いしやがっさい てぃんゆりくだりぬ ぬぬ'ういじょーじぬ'あや'ういうとぅくぬちんらん からうーぬちんらん
mee ja 'Nbusai 'ishi yagassai tiN yuri kudari nu nunu'ui jyooji nu 'aya'ui utuku nu nishichi nu chiNraN karauu nu chiNraN
米は重く石は軽く 天から下りてきた布織り上手の (着物の)縞織り男の錦の金襴 芭蕉の金襴(を着て)
語句・んぶさい 重く <'んぶさん 重い ・がっさい 軽く <がっさん 「軽い。目方が、軽い。また、軽薄である。」(沖)  cf.かっさん 「(お産・病気などが)軽い。目方が軽い意ではgaqsaNをという」(沖)


男の長者の荷馬の長者の荷負いよはれて やんざよはれてやんざやんざと馬乗て通れば一段とほめられた 今日も明日も御祝事よ
うとぅくぬちょーじゃぬ にんまぬちょーじゃぬ に'ういゆわりてぃやんざゆわりてぃ やんざやんざとぅ 'んまぬてぃとぅーりば 'いちだんとぅふみらりた きゆん'あちゃん'うゆうぇぐとぅゆ
utuku nu chooja nu niNma nu chooja nu ni'uiyuwariti yaNza yuwariti yaNza yaNza tu 'Nma nuti turiba 'ichidaNtu humirarita kiyuN 'achaN 'uyuwegutu yu
男の長者が 荷馬の長者が荷負い祝って 「やんざ」(不明)祝って 「やんざやんざと」(不明) 馬乗って通れば一段と褒められた 今日も明日もお祝い事よ
語句・やんざ おそらく万歳と同義の「やんざい」から来ているのではないかと思われる。「やんざ やんざ」は掛け声なのかもしれない。いくつかの本に解説があるがどれも確定的ではないので不明とする。


(概要と解説)

組踊りから生まれた舞踊「高平良万歳」の二曲目。
「万才口説」に続く。

舞踊としては遊芸人の京太郎になりすました兄弟がとうとう敵の前で踊るシーン。
曲調は単調で、音域も狭いが、それだけに緊張感が増す。

歌詞の意味については不明が多い。
いつものように意訳を避けて意味を書き並べてある。

兄弟が扮した「京太郎」=「万歳行者」=「やんざい」についてすこし触れておきたい。

「万歳」は本土において中世に被差別民によって行われた門付け芸であるといわれている。
門付けとは門に神が降りてくるという考えから、よく知られているのは旧正月などに
芸人や獅子舞が門の前で芸を披露し、豊年や幸福を予祝した。

その万歳が琉球にも流入して「京から来た」ということで「京太郎」(チョンダラー)といわれるという説がある。万歳は現在でも各地にその面影が残っているが現在の「漫才」のルーツであるという説も有力。

この高平良万歳の「万歳かふす」で踊られるように二人(舞踊では一人もある)が一人は獅子頭を持ち、もう一人は馬の頭の人形を腰につける。

京太郎は「人形使い」とも言われるが本土の門付けでも各地に人形を使った芸が残っているし、現在の人形浄瑠璃のルーツだとも言われる。
万歳や京太郎が作り出した芸能が中世から現代への大衆文化の多くの基礎を作ったとまでいわれる。

「かふす」(こーし)の意味については【沖縄語辞典(国立国語研究所編)】にも「疥癬」という病名しか出てこない。
万歳行者は被差別民であったし、収入も門付けなどに限られていたようなので非衛生的な環境にあったことは想像に難くない。
このあたりは伊波普猷が詳しく研究していると聞くが手元にないので今後の課題とする。

 


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Posted by たる一 at 11:16│Comments(1)ま行
この記事へのコメント
この曲自体の原曲は口説の荻堂口説ですが、敵討物に組み込まれた時に歌詞の差し替えと若干改作があり、万歳かふす節になったようです。
Posted by くがなー at 2011年03月07日 05:25
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