2005年11月20日

かたみ節 (本島民謡)

かたみ節
かたみぶし
katami bushi
男女の契りの唄
語句・かたみ 「男女の契り。また、契りとして取りかわすもの」(【沖縄語辞典(国立国語研究所編)】以下【沖辞】と略す。)



一、さてぃむ目出度や此ぬ御代に(さー)祝いぬ限りねらん
さてぃむ めでたや(みでぃた)や くぬ みゆに (さー)ゆわいぬ かじりねらん
satimu medeta(midita) ya kunu miyu ni (saa) yuwai nu kaziri neeraN
さても めでたいこの御世に祝いの限りはないほどめでたい
語句・さてぃむ <さってぃむ。「さても。おやまあ。いやはや。珍しい場合・あきれた場合・深く感じた場合などにいう。」【沖辞】。さてぃ(さて)+む(強調)。・めでたや めでたいことよ! 「めでたい」は当然、沖縄語辞典にはない。「めでたい」と本島では歌うが、この読みは本土方言の影響。八重山の歌い方せは「みでぃたや」。・ゆわい これも本土方言の影響。沖縄語では、「お祝い」は「いうぇー」、「ゆーうぇー」、「ういうぇー」、「うゆうぇー」【沖辞】。・かじり 限り。・ねらん<neeraN ない。歌の中では短く「ねらん」という発音になる。


(囃子)あしびたぬしむに すり わんやかたみくぃら ちとぅしまでぃん
あしびたぬしむに すり わんや かたみくぃら ちとぅしまでぃん
'ashibi tanushimu ni suri waN ya katami kwira chitushi madiN
遊ぶ楽しみに 私は形見をあげよう 千年までも(以下 囃子は略)
語句・かたみ ①男女の契り契りとして交わす物②死者、長い別れの人の形見。【沖辞】。ここではめでたい歌なので①。・くぃら あげよう。<くぃゆん。kwiyuN。の未然形。自分の意思「〜したい」や、呼びかけ「〜しよう」を表す。大和人は発音に注意。本島の沖縄語では「くい」(ku i)と二音節ではなく「くぃ」(kwi)と一音。「き」に近い発音に聞こえる時もある。「くぃゆん」の意味は「くれる、与える。やる。」【沖辞】とあるように「もらう」「あたえる」両方の意味がある。
 


ニ、一番願わば福禄寿 すぬふか無蔵とぅ連りてぃ
いちばん にがわば ふくるくじゅ すぬふか んぞとぅ ちりてぃ
'ichibaN nigawaba hukurukuju sunuhuka Nzo tu chiriti
一番願うならば 福禄寿 その他には貴女を連れ添って
語句・ふくるくじゅ 「福禄寿」の「福」は「幸福」、「禄」は「財産」、「寿」は「長寿」を意味する。Wikipediaには「福禄寿(ふくろくじゅ)は、七福神の一つ。道教で強く希求される3種の願い、すなわち幸福(現代日本語でいう漠然とした幸福全般のことではなく血のつながった実の子に恵まれること)、封禄(財産のこと)、長寿(単なる長生きではなく健康を伴う長寿)の三徳を具現化したものである。宋の道士・天南星の化身や、南極星の化身(南極老人)とされ、七福神の寿老人と同体、異名の神とされることもある。 福禄人(ふくろくじん)とも言われる」



三、無蔵とぅ我んとぅやむとぅゆりぬ 契りぬ深さあたん
んぞとぅ わんとぅや むとぅゆりぬ ちじりぬふかさあたん
Nzo tu waN tu ya mutu yuri nu chiziri nu hukasa 'ataN
貴女と私は昔からの契りの深いものがあったのだ
語句・むとぅ 「元。元来」「muutuと同じ」【沖辞】。「muutu」とは「元。本。みなもと。また、先祖」【沖辞】とあるように、ここでは「先祖」つまり「前世からの縁があった」と解釈するほうが自然だろう。・あたん あった。'ataN('aNの過去形)。



四、百歳なるまでぃ肝一つ 変わるな 元ぬ心
ひゃくせ なるまでぃちむふぃとぅち かわるなむとぅぬくくる
hyakusee narumadi chimu hwituchi kawaruna mutu nu kukuru
百歳になるまで二人の心は一つだ 変わるな昔からの心
語句・せー 歳。大和口のsaiは変化してseeとなる。「さー」「さい」と歌っているものも多い。



八重山民謡にある「かたみ節」が元歌である。ここでとりあげたのは、沖縄本島で歌われる時の歌詞である。

お祝いの席、座開きなどで斉唱されることが多い。
またエイサー曲にもなる。
従って歌詞もいろいろである。

八重山民謡の「かたみ節」はこちら


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Posted by たる一 at 16:56│Comments(0)か行沖縄本島
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