2005年11月19日

てんよう節

てんよう節
teNyoo bushi
てんよーぶし


一、(上句)待ちかねて居たる 七月もけーなて
machikaniti wutaru shichigwachiN kee nati
まちかにてぃ うぅたる しちぐゎちん けーなてぃ
待ちどうしかった七月も わずかになって



囃子(てんよーてんよーしとりとてん はりがよーぬ ゆいやな)
(teNyoo teNyoo situriruteN hariga yoonu yuiyana)
(てんよー てんよー しとぅりとぅてん はりが よーぬ ゆーいやな)



(下句)いちが八月の十五夜なゆら
'ichi ga hachigwachi nu zyuuguya nayura
'いち が はちぐゎち ぬ じゅーぐや なゆら
いつが 八月の十五夜なのか?
  囃子省略(以下同様)



ニ、エイサー小や習て まーにんかて いちゅが
yeisa-gwaa ya narati maa ni Nkati 'ichu ga
エイサーぐゎー や ならてぃ まーに んかてぃ 'いちゅが
エイサーを習って どこに向かっていくのか?


足の向くままに んかて 我ね 行ちゅん
'ashinu muku mamani waNnee 'ichuN 
'あしぬ むく ままに わんねー 'いちゅん
足が向くままに 私は行く

三、この遊び投げて行ちゅるゆむ面や
kunu 'ashibi nagiti 'ichuru yumu zira ya
くぬ 'あしび なぎてぃ 'いちゅる ゆむ じらや
この遊び(を)投げて 行く嫌な面(ツラ)は


いちゅる先なかい ゆしぬ あていちゅら
'icyuru sachi nakai yusi nu 'ati 'ichura
'いちゅる さち なかい ゆし ぬ 'あてぃ 'いちゅら
行く先 に 理由 が あって 行くのだろう

解説
 (語句)
一、・けーなてぃ kee(ちょっと・・する 軽く・・する)
kee+nati ちょっと・・なって
  
いちが 'ichi ga
「ga」の用法 ①主格 「が」②属格 「の」
③~しに 「'いゆ とぅいが 'いちゅん」
            魚を取り に 行く
       ④疑問文で、疑わしさを表す部分に
      いつ?⇒いち が
これは④の用法。文の最後はnayuraと「a」という推量の形で終わる。

ニ、・えいさーeisaa グロッタルストップのない「e」で始まる語は沖縄には
少ない。発音は、「いぇ」の近くなるので「ye」と聞こえる場合もある。
「えりこさん」という名前は「yerikosaN」と聞こえる。

「エイサー、エイサー」という囃子からきているという説がある。

・わんねー waN+ya 私 は
 yaがつくと語尾が変化することも沖縄語の大事な法則。
      cf.染みなし節

三、・なぎゆんnagiyuN 投げる
  ・ゆむ yumu 嫌な
  ・じら zira ずうずうしい顔
   普通の顔は chiraちら 
余談になるが、かの「ウルトラマン」に登場する「ジラース」はゴジラ   に襟巻きをつけた怪獣であったが、この名前をつけたのは脚本家金城哲   夫氏。ウルトラマンの脚本を多く手がけた作家だ。一説には「次郎zira   a」からこの名前がついたという話だが、私はこの「じらー」だと勝手に   信じている。とすると、あの「ゴジラ」も「ゴ」+「ジラー」というふ   うに発想が広がる。(次郎より、嫌な顔のほうが、怪獣にはふさわしい   という独断&偏見である。金城哲夫さんについてはいつか述べたい)
  ・なかい nakai ~に
  ・ゆし yushi 理由


そもそも、題名の「てんよー」という意味が不明。「てんよー」はネットで検索すると「元号」が出てくるが関係はないだろう。
古典には「てんやう節」というのがあり、歌詞は

「庭の糸柳風にさそはれて 露の玉みがく十五夜御月 てんよ てんよ しとぅるとぅてん ささ はりよぬ ゆゐやな」
(安富祖流工工四下巻)

工工四はほとんど同じ。十五夜を歌っている点と囃子がそっくり。
古典は、琉球王朝が各地で作られ歌われていた民謡を採譜し、洗練させ歌詞をつけたりしたものも多い。

さて、エイサーで歌われているこの歌詞、ほかの唐船ドーイなどでも転用される。2番の「足の向くままに」という表現はおそらく新しい。
昔からの歌詞に若者たちが歌詞を乗せエイサーを盛り上げていったと想像してもいいだろう。

てんよう節
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Posted by たる一 at 06:29│Comments(5)た行
この記事へのコメント
「てんよー」の意味を知りたくて検索していたらこのサイトをヒットしました。これまで知りたかったことが満載だし、コメントされている方々の知識の深さに「なるほど」の連発です。今後ともこのサイト重宝させていただきます。
Posted by えぐ at 2006年12月04日 10:49
えぐさん
今後ともよろしくです。
ご活用くださいね。
Posted by せきひろし at 2006年12月05日 23:39
広島に15年住んでいました外国人のスティーブともうします。今はハワイのマウイ島に住んでいます。来週末にマウイにある日本文化会の新年会で司会をつとめることになりました。その新年会でマウイ・リュウキュウ・カルチャー・グループと言う団体が二曲パフォーマンスをしますが、その紹介に困っています。簡単に「てんようぶし」と「なちじんのぐすくぶし」のストーリーを教えて頂ければ光栄です。
Thank you very much
Stephen Outlaw-Spruell
Posted by Steve at 2010年01月22日 16:32
steveさん はじめまして。
広島住みだったのですね~

「てんよう節」「今帰仁の城節」だと思いますが
エイサーなのでしょうか?

パフォーマンスですからエイサーだと思いますが。

民謡や古典によっては歌詞がいろいろあります。

エイサーのてんよう節なら上の歌詞ではないか、と思います。

今帰仁の城節はこのブログに解説があります。
http://taru.ti-da.net/e797875.html

ご参考になさってください。
Posted by たる-たる- at 2010年01月23日 08:15
初めまして、何時も参考させて頂いております。沖縄生まれ、沖縄育ち、現在宮古島在住の者です。
だいぶ前の記事にコメントするのもどうかと思ったのですが、思う処があったのでコメントさせていただきます。
この「テンヨー節」ですが、宮古民謡の「中立ぬミガガマ」が元歌ではないかと思っております。
三線の手や、歌のメロディーは合致すると思います。囃子の部分なんですが、「中立ぬミガガマ」では
Posted by ウタサー at 2013年05月13日 23:33
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