2013年07月06日

月夜の恋

月夜の恋
ちちゆぬくい
chichi yuu nu kui
月夜の恋(表題は標準語読みのようであるが、うちなーぐち読みの場合)


作詞・作曲 亀谷朝仁


一、(女)月ぬ夜になりば 肝ぬわさみちゅい 二人が待ち所 急ぢ行ちゅん イェーあひ小 月ん美らさぬや
ちちぬゆになりば ちむぬわさみちゅい たいがまちどぅくる いすじいちゅん えーあひぐゎ ちちんちゅらさぬや
chichi nu yu ni nariba chimu nu wasamichui tai ga machidukuru 'isuji 'ichuN 'ee 'ah(w)igwa chichiN churasanu yaa
月が照る夜になると心が騒ぎ出して 二人が約束した待ち合わせ場所 急いで行くわ ねえ 貴方 月も美しいからね
語句・ちち 月。・ちむ 心。「kimo」(肝)をウチナーグチの三母音化(e→i、o→u)に適用すると「kimu」。さらに「k」が「ch」に変化(破擦音化)することで「chimu」。・わさみちゅい
<わさみちゅん ざわめく。語尾が「い」になっているのは「ざわめくからか」くらいの意味。・えー おい。ねえ。同等か目下の者を呼ぶときにのみ使う。アルファベット表記のところで「ee」の前に「'」をつけているのは「声門破裂音」「グロッタルストップ」といわれる沖縄本島特有の発音様式で「声門を閉じた状態から急に開放するときに生じるかすかな破裂音」参考【琉球語辞典(半田一郎)】・あひぐゎ お兄さん、くらいの意味だが、ここでは「貴方(あなた)」。「あふぃぐゎー」ともいう。・ちゅらさぬ 清らかだから。美しいから。<ちゅらさん 「美しい」「綺麗[清潔]である」【琉辞】。もともとは「きよらさ+あん(ある)」から。見かけの美しさより「清らかさ」に近い。「ちゅらさぬ」で原因をあらわす。形容詞の末尾が「ぬ」→「だから」。


二、(男)今が来らとぅ思てぃ 待ちかにてぃ居たさ 今宵照る月や 無駄にするなイェーかなしい 月ん美らさぬや
なまがちゅらとぅむてぃ まちかにてぃうたさ くゆいてぃるちちや むだにするな えーかなしい ちちんちゅらさぬや
nama ga chura tumuti machikaniti uta sa kuyui tiru chichi ya muda ni suruna 'ee kanashii chichiN churasanu ya
今来るかと思って待ちかねていたよ 今宵照る月は絶好の機会だぞ おい 愛しいお前 月も綺麗だね
語句・なまがちゅら 今にも来るだろう。<なま。今。+が 疑問。+ ちゅら<ちゅーん 来る。→来るだろう。・かなしい 愛しい人(お前)。<かなし 愛しい。「悲しい」ではない。(「悲しい」は「なちかしゃん」)。


三、(女)待ちかにらと思てぃ 肝あまじ居しが 人目忍ぶんでぃ 今でぃなたさ イェーあひ小 月ん美らさぬや
まちかにらとぅむてぃ ちむあまじうしが ひとぅみしぬぶんでぃ なまでぃなたさ えーあひぐゎ ちちんちゅらさぬや
machikanira tumuti chimu 'amaji ushiga h(w)itu mi shinubu Ndi namadi nata sa 'ee 'ah(w)igwa chichiN churasanu yaa
貴方が待ちかねてると思って心が気が気でなかったけど 人目を忍ぶために今の時間になったわ ねえ貴方月も美しいわ
語句・まちかにら 待ちかねているだろう。・あまじ <あまじゅん 「動揺する、揺れる」【琉辞】。・なまでぃ <なまでぃー「いまだに、まだ」【琉辞】。直訳すると「まだになったよ」だが「こんなに遅くなったよ」くらい。


四、(男)月ん照り美らさ 無蔵ん色美らさ 歯口小ん美らさ かなし無蔵よ イェーかなしい 月ん美らさぬや
ちちんてぃりぢゅらさ んぞんいるぢゅらさ はぐちぐゎんちゅらさ かなしんぞよ えーかなしい ちちんちゅらさぬや
chichiN tirijurasa NzoN 'irujurasa haguchigwaN churasa kanashi Nzo yoo 'ee kanashii chichiN churasanu ya
月も照って美しいよ お前も色っぽくて美しい 口元も綺麗だ 愛しいお前よ おい 愛しいお前 月も綺麗だね
語句・んぞ 男性から愛しい女性への呼称。「無造作(むぞうさ)」からきているといわれる。・はぐちぐゎ 口元。


五、(男女)月ん西下がてぃ やがてぃ夜ん明きさ 二人や縁結でぃ 戻る嬉さ 何時までぃん 変わて呉るな
ちちんいりさがてぃ やがてぃゆんあきさ たいやゐんむしでぃ むどぅるうりさ いちまでぃん かわてぃくぃるな
chichiN 'iri sagati yagati yuN 'aki sa tai ya yiN mushidi muduru 'urisa 'ichimadiN kawati kwiruna
月も西に沈んで やがて夜も明けるよ 二人は縁を結んで家に戻る 嬉しいね いつまでも心変わりしないでね


月夜の恋
CD「沖縄コンビ歌 決定版」に収録。

男女の恋の燃え上がる気持ちを三線のリズム弾きで表現。
月の光がさらに二人の逢瀬を盛り上げている。

題名はCDにも「つきよのこい」と振り仮名があるので、標準語読み。






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Posted by たる一 at 12:00│Comments(2)た行
この記事へのコメント
たるーさん、私は沖縄の民謡がすきなのでネットで色々歌を聞きながら、分からないところがあったらいつもたるーさんのブログで調べています。そのたびにたるーさんの詳しい説明に感服しています。
そして最近は聞くことだけじゃなくて一人で歌いながら勉強したくなって練習していますが、声門破裂音のことがとっても難しいです。声門をしめて急に発声するってことですが、声門をしめるってどんな感じなんでしょうか?
Posted by 歌が好き at 2018年07月03日 21:28
「歌が好き」さん、いつもご利用ありがとうございます。
この声門破裂音、難しいように思えますが、意外にも私たち本土でも使っているようです。

小学校で「あいうえお」を習った頃を思い出してください。元気よく「あ、い、う、え、お」と声を合わせていうとき、いっぱい息をためて発声したそれらは声門破裂音に近いと思います。
また、びっくりした時の「え!?」や、人を呼ぶ時の「おい」などは、息をためて急に発声するなら、声門破裂音に近いと思います。
声門を締める、というより息をためて急に発する音、とご理解していただけるといいと思います。
Posted by たる一たる一 at 2018年07月04日 12:46
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