2006年03月13日

永良部百合の花

永良部百合の花
erabu yuri nu hana
えらぶゆりぬはな
語句・えらぶ 沖永良部島。現在は鹿児島県だがかつては琉球王朝の支配下にあった。ウチナーグチでは「'いらぶ 'irabu」と発音する(沖縄語で短母音の「e」で始まる単語は存在しない)が、この歌は「えらぶ」と歌われているようだ。


一、永良部百合の花アメリカに咲かち(ヤリクヌ)うりが黄金花島に(ヨウ)咲かさ (アングヮーヨー サトゥ ナイッチャ シュンガ シュンガ)
(括弧以下省略)
[えらぶ]ゆりぬはなあめりかにさかち 'うりがくがにばなしまにさかさ
erabuyuri nu hana 'amerika ni sakachi 'uriga kuganibana shima ni sakasa
‘aNgwaa yoo satu naa ‘iccha shuN ga shuN ga
永良部百合の花をアメリカに咲かせて それの黄金花を島に咲かせよう
語句・ ゆり百合。 沖縄語では「ゆい」元々は「ゆり」yuriだったが沖縄語の歴史の中で「r」が脱落してyuiゆいとなった。・さかち 咲かせて。<さかしゅん(動詞)咲かせる。 ・さかさ  咲かせよう。 未然形にnaがついて「したい」「しよう」という志向形になる。・アングワヨーサトゥナイチャシュンガシュンガ 姉さん、よー貴方 ねえどうするのよ どうするのよ。囃子は「スンガー節」からきている。「あんぐゎー」姉さん。「さとぅ」あなた(女性から愛する男性を呼ぶときの呼称、貴方)。+なー。ねえ。+いっちゃ<いきゃ。どう。+しゅんが。するか。参照「スンガー節」。


二、いかに横浜の波荒さあても百合や捨てるなよ島の宝
「'いかに」「よこはま」ぬなみ'あらさ'あてぃんゆりやしてぃるなよーしまぬたから
「'ikani」「yokohama」nu nami 'arasa 'atiN yuri ya shitiruna yoo shima nu takara
どんなに横浜の波が荒くても百合は捨てるなよ 島の宝だ
語句・いかに 「いかな」なら沖縄語にある。どんなに。


三、暗井戸水くみや美童の仕事 百合や枯れるなよ育ちたぼれ
くらごー みじくみやみやらびぬしぐとぅ ゆりやかれるなよーすだちたぼれ
kuragoo mijikumi ya miyarabi nu shigutu yuri ya kareruna yoo sudachi tabore(e)
クラゴーでの水汲みは娘の仕事 百合は枯れるなよ 育ってください
語句・くらごー 地下の鍾乳洞に水が湧く場所。「住吉暗川」(知名町住吉)が有名。


四、百合球の美らさ心抱きしめて永良部美童の身持ちよ清らしゃ
ゆりだまぬちゅらさくくるだきしみてぃ[えらぶ]みやらびぬみむちよー[きゅらしゃ]
yuridama nu churasa kukuru dakishimiti erabu miyarabi nu mimuchi yoo kyurasha
百合の球根の美しいことよ!心から抱きしめて 沖永部娘の身持ちの清らかなことよ!
語句・ちゅらさ なんと美しいことよ!形容詞の体言形で、詠たん的に用いるため歌には非常に多い。


五、百合作て遊ば砂糖作て暮らさ 互に働ちゅて浮世渡ら
ゆりちゅくてぃ'あしば さたちゅくてぃくらさ たげにはたらちゅてぃ'うちゆよわたら
yuri chukuti 'ashiba sa(a)ta chukuti kurasa tageni hatarachuti 'uchiyu yo watara
百合を作って遊ぼう 砂糖作って暮らそう 互いに働いて世の中渡ろう


六、永良部海の青さ珊瑚花咲かち 島や百合の花咲かちよ美らしゃ
[えらぶ]'うみぬ'おおさ さんぐばなさかち しまやゆりぬはなさかちよちゅらしゃ
erabu'umi mu 'oosa saNgubana sakachi shimaya yuri nu hana sakachi yoo churasha
沖永良部の海の青いことよ!珊瑚花を咲かせ 島は百合の花を咲かせてよ なんと美しいことよ!


永良部百合の花
「永良部」は沖縄語で「'いらぶ'irabu」と発音する。
沖縄語は単母音の「え e」という発音を「い i」に置き換えて三母音化した。(「お o」は「う u」に)
沖永良部島はかつて琉球王朝の支配下にあり沖縄語や琉球音楽や芸能の影響が残っていたが、薩摩の影響もあり「琉球方言」の分類からすると「奄美」方言になる。しかし「えらぶ」という発音のほうが古いのかもしれない。そしてまた、その島で発音されているように歌うことが民謡の原則であろう。したがって今実際に歌われているように「えらぶ」と発音することとし、以下同様に沖縄語の法則から外れるものはローマ字表記やひらがな表記の中で[ ]で囲み変更しない。

沖永良部島の民謡。
仲宗根幸市氏の解説を借りるなら(要旨)明治末に鹿児島商人が野生のテッポー百合栽培を島民にすすめ百合の球根をアメリカを対象に外貨を稼いだ。その後横浜の商社が沖永良部島の百合を安価で買占め暴利をむさぼった。
そんな横浜からの荒波に負けずに一生懸命働いて島の財産を守ろうという歌。

メロディーは徳之島の「手々の枕節」や本島の「スンガー節」。

ちなみに、私も6年ほどまえに沖永良部島にいった。

この歌が出来たという和泊小学校にも行き、知り合いのおうちに泊めていただいた。
そのときの暖かい歓迎は今でも忘れられない。しかも島の歌や踊りをいくつも見聞させていただいた。
永良部百合の花
永良部百合の花
▲その家はやはり百合の農家であった。正月もこのように出荷作業に追われていた。
永良部百合の花
▲百合の畑。島はどこまでいっても畑・畑・畑。
永良部百合の花
▲海はどこまでも美しく、のんびり泳ぐウミガメすら見えた。



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永良部百合の花

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この記事へのコメント
 たるーさん、こんにちは。
 「永良部百合の花」は、名瀬のセントラル楽器のアルバムに入っていますが、沖永良部民謡でのバックの三味は武下和平さんが弾かれています。
 ですから、バックの音がいいという魅力もあるんですよ。
 それから、曲の方の元歌といえそうな徳之島の枕節ですが、こちらは徳之島民謡のアルバムに入っています。
 セントラル楽器のページものぞいてみて下さい。
Posted by 伊 謄 at 2008年05月10日 20:05
伊 謄 さん
コメントありがとう。
ほんと詳しいですね。
いろいろな音源とても興味あります。
また教えてくださいね。
Posted by たるー at 2008年05月12日 23:21
因果なものですね、私は沖永良部出身の母親のもと育ったのですが、生まれは横浜です。

途中、違うところに過ごしていますが、約2年前横浜に舞い戻ってきました。

かなり「遠回り」をしている人生を歩んでいますが、今も思い悩みながら人生を歩んでいます。
Posted by たかとし at 2011年01月22日 00:15
たかとしさん

人生遠回り、、そうですか。

私も同じだと思いますよ。

でも、それでもいいかも。

じっくり、歩みながら人生楽しみましょうよ。
Posted by たる一たる一 at 2011年02月09日 22:25
学生時代に(50年も前ですが)、調査で毎年のように訪れてました。
連絡船が島に近づくと、船内にこの歌が流れてました。 
大変、懐かしいです。

“くらごう”ですが、当時地元では生活水を鍾乳洞から流れ出る水を使っていて、この水を汲む鍾乳洞を“くらごう”(暗河)と呼んでた記憶があります。
Posted by ☆ほし at 2017年11月18日 15:05
☆ほしさん、

大変遅いレスですみません。

そういえば、私自身沖永良部島を訪れた十数年前にこの「くらごー」の中に案内されたことを思い出しました。

住吉暗川という場所でした。
たった一人で入ったので、少々恐ろしさが伴ったのを思い出します。

加筆しておきます。

ありがとうございます。
Posted by たる一たる一 at 2018年01月26日 10:46
三線初心者ですが、楽しく優しいな仲間とわいわいおけいこしています
。今度、発表会でこの歌をやります。
質問です。
アングワヨーサトゥナイチャシュンガシュンガ の
意味を教えてください


(・∀・)
Posted by ymi at 2018年02月19日 12:18
ymiさん
コメントありがとうございます。
本文の方に加筆しましたので読んでみてください。

発表会頑張ってくださいね
Posted by たる一たる一 at 2018年02月19日 14:58
ありがとうございます。
意味がわかると、入ってきやすいです。楽しみも増します。

発表会 楽しみます!
Posted by ymi at 2018年02月23日 17:47
 '18/12/20 ボランティアでリハビリ病院で、クリスマス演奏会を企画し、
この曲と《南国の歌》を歌います。沖縄の三線(沖縄出身71才女性奏者)が
メインプロです。両陛下が島へ訪問され、地元の小学校で生徒/先生により披露されたTV放映に感動し、プリント楽譜で曲も簡単に入手。作詞も複数
ある事も知りました。せごドンのロケと共に、島ではまたとない年となったと。 現在、69才 男 合唱団指導者
Posted by 北陸/石川県/鈴木 at 2018年12月14日 14:39
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