2005年12月03日

加那よー

加那よ
かなよー
kana yoo
語句・かな 「愛する人」の意味。


一、(カナヨー)面影の立てば(ヨーカナヨー)宿に居らりらぬ(ハルヨンゾーヨカナーヨシーシ)
(囃子は以下省略)
'うむかじぬたてぃばやどぅに'うらりらん
'umukaji nu tatiba yadu ni 'urariraN
(恋人よ)面影が立つので家におられない
語句・うむかじ 面影。よく民謡ではでてくるキーワード。そして、この面影は「立つ」(たちゅんtacuN)という動詞をよく伴う。・やどぅ 家。 「①宿 ②家」【沖辞】。


でぃちゃようし連りて遊で忘ら
でぃちゃよ 'うしちりてぃ 'あしでぃ わしら
dichayo 'ushichiriti 'ashidi washira
さあ 連れ立って 遊んで忘れようよ
語句・でぃちゃよ いざ。さあ。<でぃか。他に「でぃかでぃか」「でぃーでぃー」「でぃかよ」などの言い方がある。「か」が拗音化して「ちゃ」。・うしちりてぃ 連れ立って。<うしちりゆん。 連れ立つ。


二、貫木屋のあさぎ 手巾布立てて
ぬちじやーぬ 'あしゃぎ てぃーさーじぬぬ たてぃてぃ
nuchijiyaa nu 'ashagi tiisaaji nunu tatiti
貫木屋の離れ屋(で)手ぬぐい布を織って
語句・ぬちじやー「貫き木のある家。本建築の家。農村で、茅ぶきであっても単なる掘立小屋(anayaaという)でなく、礎石を置き、柱に貫き木を通して作った家。農村の家では上等の部に入る。」【沖辞】。・あしゃぎ 「農村の比較的裕福な家の前庭にある離れ屋」【沖辞】。・てぃーさーじ 手ぬぐい。・たてぃてぃ 織って。①立てる。②起こす、生じさせる。③嫁がせる。などの意味がある。ここでは「布を織る」と解釈する。


我が思る里に情け呉らな
わーが'うむるさとぅに なさき くぃらな
waa ga 'umuru satu ni nasaki kwirana
私が慕う貴方に 情け(愛のしるし)をあげたいな
語句・くぃらな あげたいな。あげようね。<くぃゆん kwiyuN ①くれる。②あげる。③してやる。④してくれる。ここでは「あげる」。くぃら(未然形)なので、希望を表す。「くぃ kwi」は発音に注意。一音節なので「く・い」となるのは避けたい。「く」と「き」の中間のような発音になる。


三、情呉るびけい 手巾呉て何すが
なさき くぃるびけい てぃーさーじくぃてぃぬーすが
nasaki kwiru bikei tiisaaji kwiti nuu suga
情け(愛のしるし)をあげるだけ? 手ぬぐいあげてどうするか?
語句・びけい ばかり。

がまくくん締みるミンサ呉らな
がまく くんしみる みんさー くぃらな
gamaku kuN simiru miNsaa kwirana
腰のくびれを強く締めるミンサー織(の帯を)あげたい
語句・がまく 腰。・くん 硬く。強く。・みんさ ミンサー織り。ここでは「帯」。ミンサー織は八重山地方独特の織り方。女性から男性への愛の告白に使われる。


四、遊で忘ららぬ 踊て忘ららぬ
'あしでぃ わしららん 'うどぅてぃわしららん
'ashidi washiraraN 'uduthi washiraraN
遊んでも忘れられない 踊っても忘れられない


思い勝ていちゅさ ありが情
'うみ まさてぃ 'いちゅさ 'ありがなさき
'umi masati 'ichusa 'ari ga nasaki
思いが強くなっていくよ あの人の情

舞踊曲に使われるが、昔は「かなよー」といえば毛遊びのカチャーシー曲。
いつごろの曲なのか不明。

舞踊では、よく見かけるのは男女二人で踊る雑踊り(ぞーうどぅいzoo wudui)。
「天川」を「ちらし」にする舞踊「加那よー天川」もある。

訳したものをしらべるとさまざまな違いがある。

「くぃら」をどう解釈するか。
男女はどうわかれるのか。
などによってわかれるようだ。

歌詞は各番は上句と下句にわかれる。これを交互に男女が歌う場合も民謡ではある。
また、「里」を「無蔵」におきかえてて逆のもある。



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加那よー

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Posted by たる一 at 10:26│Comments(2)か行沖縄本島
この記事へのコメント
いつも勉強させていただいてます。
ありがとうございます。
今は加那よー節を練習中です。

2番の「貫木屋のあさぎ」を「貫き木のある離れ」とされていますが
貫木屋は沖縄の建築方法で、釘などを使わずに建てたものという意味では?

なんとなく、解説の印象だと「貫き木」という種類の植物の木が植わっている
というような印象だったので。
Posted by さなびぃ at 2018年11月17日 09:37
さなびぃさん、コメントありがとうございます。
なるほど、そう言われるとそう理解される方もいるかもしれませんね。
沖縄語辞典(国立国語研究所編)の解説の一部を書いたせいでした。
きちんと全文を載せておきます。
「加那よー」の練習も頑張ってくださいね!
Posted by たる一たる一 at 2018年11月19日 10:03
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