2008年01月10日

かぎやで風節(正月バージョン)

かぎやで風節
かじゃでぃふうぶし
kajadihuu bushi


石なごの石の大瀬なるまでも おかけぼさへ めしゃうれ 我御主がなし
'いしなぐぬ'いしぬ'うふしなるまでぃん 'うかきぶせみしょり わ'うしゅがなし
'ishinagu nu 'ishi nu 'uhushi narumadiN 'ukakibusemishori wa'ushuganashi
小石が大岩になるまでもお治めください我が国王様
語句・いしなぐ 「女の子の遊戯の名。いしなご。小石を投げ上げ、手の表裏で受け止めたりするもの」(沖) また(沖縄古語辞典)に「小石。石。礫。オモロ語の『いしらご』(石)に通ずる。」ともある。・うふし 「[大瀬]大岩。大きい岩(sii)」(沖) うかきぶせみしょり お治めください <うかきぶせ<'うかきぶせー 「御統治。お治めになること。しろしめすこと。-busee(<-husee)は栄えさせる意か。」(沖) +みしょり<みしょーり<みせーん「お…になる。…なさる。…される。『連用形』(または『連用形』から末尾のiを除いた形)に付き、尊敬の敬語を作る」(沖)の命令形 うしゅがなし 国王様 <うしゅ<'うしゅー 「[お主]王様。琉球王の敬称」(沖)+がなし<がなしー 「(接尾語)[加那志]様。尊敬の意を表す接尾語。」王だけでなく、「わうやが
なし」(わが親御様)のように親の呼称にも使う。


あらたまの年に 炭と昆布かざて こころからすがた若くなゆさ
'あらたまぬとぅしに たんとぅくぶかじゃてぃ くくるからしがた わかくなゆさ
'aratama nu tushi ni taN tu kubu kajati kukurukara shigata wakakunayusa
新しい年に炭と昆布を飾り 心から姿が若くなるよ
語句・あらたま 辞書に「新玉」はなく大和の影響とも思われるが「あらたまゆん」(改める)と重なる意味もあるかもしれない。 実際「あらたまる」と歌う人もいる。くぶ 昆布 <くーぶ 沖縄語で昆布は「くーぶ」であり琉歌のなかでのみ短縮して「くぶ」となっているが本来「くぶ」は「蜘蛛」の意味であるから発音に注意したい。

まだお正月気分も抜けない間に、この曲のお正月バージョンをやっておこう。

沖縄の祝宴、あらたまった座の最初に歌われる「かぎやで風」の解説は、このblogですでにやらせてもらった。

お正月によく歌われる歌詞がこれである。

「いしなぐ…」のほうは大和の「君が代」を彷彿とさせる歌詞であり、沖縄語辞典でも「明治以後も保守派(kuruu)は宴会の初めに歌った」。

しかし「君が代」とこの歌詞とを関連付ける証拠はなにもない。

故胤森弘さんの本からの孫引きであるが、伊波普猷の研究によれば「南島には石の成長するという俗信がある」「石の成長するという南島人の考えには子供ばかりでなく年取った人までがそう信じている。祖先たちが弄んでいた石名子の石の一つが生長して、村のウフシ[大瀬(大岩)]になった。」(伊波普猷『をなり神の島I』「生長する石」)
古くからの庶民の信仰が歌となり、琉球王朝が取り上げて「古典」音楽化したものではないだろうか。


「あらたま…」のほうもいくつか問題がある。
「炭と昆布」(たんとぅくーぶ)が飾られるのは何故か。

沖縄のしめ縄には炭を昆布で巻いたものが使われる。
また、沖縄県の昆布消費量はかつては全国一だった(今は違うが)。
古くから昆布が沖縄でも「縁起物」だったことは容易に想像できる。
また本土でも昆布は神事仏事で用いられたり、武家の縁起ものだったようだ。

琉球語辞典にはtan の項目でこの歌詞を解説し
「新年を迎え(「タン」と「よろコブ」という縁起で)木炭と昆布を飾り、心も姿も若返った気持ちだ。」
と語呂合わせ、今で言う「おやじギャグ」ばりの理由となっている。
ただ、これには否定も肯定もする材料がないために紹介にとどめておこう。
ちなみに、この歌詞は古典の「かぎやで風」の歌詞にはない。




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Posted by たる一 at 06:00│Comments(2)か行
この記事へのコメント
きゆのふくらしゃやなんじゃにたてぃての歌詞の解説もお願いします。
Posted by てるりん at 2008年12月05日 10:30
てるりんさん
歌詞の後半もお知らせください。
Posted by たるー at 2008年12月13日 10:20
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