2007年11月25日
ケーヒットリ節
ケーヒットリ節
けーひっとぅり ぶし
kee hitturi bushi
語句・けーひっとぅり 囃子言葉からついた曲名。「ちょっと ひっ取れ」「さあ取っちゃえ」くらいに訳すことができる。<けー 「ちょっと〔軽く〕(・・する)、思い切って(・・してしまう)。」(琉) + ひっ(<ふぃっ fiq ) 接頭語で直訳は「引っ」だが強意の役割。 + とぅゆん 取る の命令形
一 さやか照る月に (ジントーヨー) 誘われて互に (ヨ ケーヒットリ ヒットリ) 眺みらんと思て (ジントーヨー) 出じて行ちゅさ
さやかてぃるちちに(じんとーよー)さすわりてぃたげに(よー けーひっとぅり ひっとぅり)ながみらんとぅむてぃ(じんとーよー)'んじてぃ'いちゅさ
sayaka tiru chichi ni (jiNtooyoo)sasuwariti tage ni (yoo kee hitturi hitturi)nagamiraN tumuti (jiNtooyoo)'Njiti 'ichusa
○さやか照る月に(本当だね)誘われて互いに(よ ちょっと取っちゃえ 取っちゃえ)眺めたいと思い(本当だね)出て行くよ
(以下 囃子言葉省略)
語句・さやか さやか 国語辞典には「はっきりして明るいさま」とある。・ちち 月 (月の音変化については追記を参照)
二 月も照り美らさ 糸かめり童 露の玉拾て 貫ちゃい遊ば
ちちんてぃりじゅらさ 'いとぅかめりわらび ちゆぬたまふぃるてぃ ぬちゃい'あしば
chichiN tirijurasa 'itu kameeri warabi chiyu nu tama hwiruti nuchai 'ashiba
○月も照り美しいことよ! 糸(を)求めよ〔持っておいで〕子ども 露の玉(を)拾って貫いたりして(穴に通したりして)遊ぼう
語句・かめり 求めよ → 探しておいで 持っておいで <かめーゆん 拾う 求めて(得)る (琉) ・ぬちゃい 貫いたりして <ぬちゅん 貫く 穴に通す(琉)
三 月の夜やさやか 無蔵や隠さらん 無蔵隠すまでや 曇てたぼり
ちちぬゆやさやか んぞやかくさらん んぞかくすまでぃや くむてぃたぼり
chichi nu yu ya sayaka Nzo ya kakusaraN Nzo kakusu madi ya kumutitabori
○月の夜はさやか(なので)貴女を隠せない 貴女隠すまで(ほど)は曇ってください
けーひっとぅり ぶし
kee hitturi bushi
語句・けーひっとぅり 囃子言葉からついた曲名。「ちょっと ひっ取れ」「さあ取っちゃえ」くらいに訳すことができる。<けー 「ちょっと〔軽く〕(・・する)、思い切って(・・してしまう)。」(琉) + ひっ(<ふぃっ fiq ) 接頭語で直訳は「引っ」だが強意の役割。 + とぅゆん 取る の命令形
一 さやか照る月に (ジントーヨー) 誘われて互に (ヨ ケーヒットリ ヒットリ) 眺みらんと思て (ジントーヨー) 出じて行ちゅさ
さやかてぃるちちに(じんとーよー)さすわりてぃたげに(よー けーひっとぅり ひっとぅり)ながみらんとぅむてぃ(じんとーよー)'んじてぃ'いちゅさ
sayaka tiru chichi ni (jiNtooyoo)sasuwariti tage ni (yoo kee hitturi hitturi)nagamiraN tumuti (jiNtooyoo)'Njiti 'ichusa
○さやか照る月に(本当だね)誘われて互いに(よ ちょっと取っちゃえ 取っちゃえ)眺めたいと思い(本当だね)出て行くよ
(以下 囃子言葉省略)
語句・さやか さやか 国語辞典には「はっきりして明るいさま」とある。・ちち 月 (月の音変化については追記を参照)
二 月も照り美らさ 糸かめり童 露の玉拾て 貫ちゃい遊ば
ちちんてぃりじゅらさ 'いとぅかめりわらび ちゆぬたまふぃるてぃ ぬちゃい'あしば
chichiN tirijurasa 'itu kameeri warabi chiyu nu tama hwiruti nuchai 'ashiba
○月も照り美しいことよ! 糸(を)求めよ〔持っておいで〕子ども 露の玉(を)拾って貫いたりして(穴に通したりして)遊ぼう
語句・かめり 求めよ → 探しておいで 持っておいで <かめーゆん 拾う 求めて(得)る (琉) ・ぬちゃい 貫いたりして <ぬちゅん 貫く 穴に通す(琉)
三 月の夜やさやか 無蔵や隠さらん 無蔵隠すまでや 曇てたぼり
ちちぬゆやさやか んぞやかくさらん んぞかくすまでぃや くむてぃたぼり
chichi nu yu ya sayaka Nzo ya kakusaraN Nzo kakusu madi ya kumutitabori
○月の夜はさやか(なので)貴女を隠せない 貴女隠すまで(ほど)は曇ってください
「ケーヒットゥリ、ケーヒットゥリ」の囃子言葉が印象的な民謡。
二番は貫花(武冨節)にもよく似ている。
それにしても、意味深な囃子言葉と歌詞である。
最近では大城美佐子さんのCD「唄ウムイ」で歌われている。
「六角堂」がチラシになっている。
前から載せたかったのだが、月の発音について。
現在は、月を本土では「つき」。
沖縄本島では「ちち」と発音する。
八重山では「つぃくぃ」である。
どうしてこうなるのか?
「月」の読み方の変化 (胤森弘 「ウチナーグチ講座」を参考に筆者加筆)
(iは中舌母音)
8世紀 15世紀 16世紀 18世紀 19世紀 (八重山語)
tuki tsuki tsiki tsitsi t∫i t∫i cici
とぅくぃ つくぃ つぃき つぃつぃ ちち つぃくぃ
どうして昔の発音がわかるのかというと、それぞれの時代に沖縄は中国、朝鮮と積極的外交をしており、それぞれの国に翻訳本のようなものが残っていて、当時の中国語、朝鮮語(ハングル文字はほとんど変化していない)と比較することで研究されている。(胤森弘さんの研究は、その比較に非常に詳しい。)
本島が3母音であるのは、「e」が「i」に変化したものだが、その途中に中舌母音の「ぃ」「i」を経由した。
その途中の中舌母音が、現在でも宮古、八重山地方に残っているというわけだ。奄美地方にもある。
「月」の読み方ひとつにも、沖縄には日本語の歴史が今も投影している。
今も中舌母音を残している宮古島の言葉の解説には、こちらのmotocaさんの「あっがいたんでぃ!」「あっがいたんでぃ!解説編」が詳しい。ご参考までに。
二番は貫花(武冨節)にもよく似ている。
それにしても、意味深な囃子言葉と歌詞である。
最近では大城美佐子さんのCD「唄ウムイ」で歌われている。
「六角堂」がチラシになっている。
前から載せたかったのだが、月の発音について。
現在は、月を本土では「つき」。
沖縄本島では「ちち」と発音する。
八重山では「つぃくぃ」である。
どうしてこうなるのか?
「月」の読み方の変化 (胤森弘 「ウチナーグチ講座」を参考に筆者加筆)
(iは中舌母音)
8世紀 15世紀 16世紀 18世紀 19世紀 (八重山語)
tuki tsuki tsiki tsitsi t∫i t∫i cici
とぅくぃ つくぃ つぃき つぃつぃ ちち つぃくぃ
どうして昔の発音がわかるのかというと、それぞれの時代に沖縄は中国、朝鮮と積極的外交をしており、それぞれの国に翻訳本のようなものが残っていて、当時の中国語、朝鮮語(ハングル文字はほとんど変化していない)と比較することで研究されている。(胤森弘さんの研究は、その比較に非常に詳しい。)
本島が3母音であるのは、「e」が「i」に変化したものだが、その途中に中舌母音の「ぃ」「i」を経由した。
その途中の中舌母音が、現在でも宮古、八重山地方に残っているというわけだ。奄美地方にもある。
「月」の読み方ひとつにも、沖縄には日本語の歴史が今も投影している。
今も中舌母音を残している宮古島の言葉の解説には、こちらのmotocaさんの「あっがいたんでぃ!」「あっがいたんでぃ!解説編」が詳しい。ご参考までに。
Posted by たる一 at 12:25│Comments(0)
│か行
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