2007年01月06日

シューラー節2

シューラー節
しゅーらーぶし
shuuraa bushi

(知名定男CD「うたまーい」より採譜)

一、闇の山原や(ヨー)道知らんあむぬ(ヨー)月照らしたぼり(ヨー)仰ぎ拝ま(ヨー ヘイヨーシューラーヨー)
やみ ぬ やんばる や(よー) みち しらん 'あむぬ(よー) ちち てぃらし たぼり(よー)'おおじ 'うがま(よー へいよーしゅーらーよー)
yami nu yaNbaru ya (yoo) michi shiraN 'amunu (yoo) chichi tirashitabori (yoo) 'ooji 'ugama (yoo hei yoo shuuraa yoo)
闇の山原は道を知らないのだから月が照らしてください。仰いで祈りたい。


二、情け身に染めて別れゆる際や 後ろ髪引くさ 島の名残り
なさき み に すみてぃ わかりゆる ちわ や 'うしるがみ ふぃちゅさ しま ぬ なぐり
nasaki mi ni sumiti wakariyuru chiwa ya 'ushirugami hwichusa shima nu naguri
情けが身に染めて別れる時は後ろ髪を引くよ 故郷の名残り(が)


三、かせ掛けて渡る深山蜘蛛心 一期身の心配の果て無らん
かしかきてぃ わたる みやま くぐ ぐくる 'いちぐ み ぬ しわ ぬ はてぃ ねらん
kasikakiti miyama kugu gukuru 'ichigu mii nu shiwa nu hati neeraN
カセに糸を張って渡る深山の蜘蛛のように 一生の身の心配の果ては無い

解説
(語句)

・あむぬ のだから
・おおじ 仰ぎ
CDで知名定男は「あうじ」と歌っている。これで調べたが辞書にない。
全く推測なのだが「おおじ」(仰ぎ)ではないか。

・しま 故郷

・かし 機織に使う糸掛け
布を織る工程で、紡いだ糸を掛ける工具、またはその糸のかたまりを言うようだ。
参考1(ここには、糸のかたまりを「かせ」と呼んでいる)
参考2(ここでは、古代の機織の解説がある。糸を巻く工具と巻いた糸のかたまりを共に「かせ」と呼ぶようだ)

かせkase→かしkasi 三母音化で「e」が「i」に変化。
・くぐ 蜘蛛 クモ
南九州宮崎では「こぶ」と言う。「きんこぶ」(女郎蜘蛛)
・ぐくる ように
<くくる 連濁で「ぐくる」に。

「・・心」というのはよく琉歌に使われる。
参考
夫婦舟】 世間やはてなしの船路旅心 夫婦やかふかや頼りならぬ
(世界は果てのない船旅のようなもの 夫婦よりほかは頼りにならない)

辞書には「くくる」には「心」としかない。
このような、何かのたとえに言い換える場合に「・・心」という用法は歌の世界に独特なのだろうか。
もちろん、ここでは「クモの心=気持ち」と訳すこともできる。
しかし夫婦舟の場合「船旅の心=気持ち」と訳すと、難解になる。
そこで、今後このような場合「・・のようだ」と私は訳すことにする。

・いちぐ 一期 一生
・ねらん 無い
<ねーらん 詩的許容

三番には以下の琉歌を参考にあげておく。

深山蜘蛛でんす かせかけておちやい わみ女なとて 油断しやべめ
みやま くぐ でんし かしかきてぃ 'うちゃい わみ うぃなぐなとぅてぃ ゆだん しゃびみ
mijama kubu deNshi kashikakiti 'uchai waN winagu natuti judaN shabimi
深山の蜘蛛ですら かせに糸を掛けている 私は女なのだから油断できようか

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Posted by たる一 at 09:49│Comments(0)さ行
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