2007年01月03日

南洋小唄のツラネ

ツラネ
ちらに(つぃらに)
chirani(tsirani)


一、里やサイパンの夏の島いもち御体ゆ守て日々暮らちいめら
さとぅや[さいぱん]ぬなちぬしま'いもち'うからだゆまむてぃふぃびくらち'いめら
satu ya [saipaN] nu nachi nu shima 'imochi 'ukarada yu mamuti hwibi kurachi 'imera
貴方はサイパンの夏の島に行かれてお体を守って日々暮らしていらっしゃるかしら


二、我身や面影と語て露涙 文ぬ通いわしど情ていと思て
わみや 'うむかじとぅかたてぃ ちゆなみだ ふみぬかゆわしどぅなさきていとぅ'うむてぃ
wami ya 'umukaji tu katati chiyu namida humi nu kayuwashidu nasaki tei tu 'umuti
私は(貴方の)面影と語り露涙 手紙を通わせることこそ情けだと思って


三、送て返事待ちゅる胸や波打ちゅい 戻て参る姿待ちゅる華々や
うくてぃふぃじまちゅるんにやなみ'うちゅい むどぅてぃめるしがたまちゅるはなばなや
ukuti hwiji machuru Nni ya nami 'uchui mudutimeeru shigata machuru hanabana ya
送って返事を待っている胸は波打って 戻って参られる姿を待つ端々は


四、水吸わん土の片日々の心気 里が乗る船路渡風もとまて
みじすわん んちゃぬかたふぃびぬしんち さとぅがぬるふなじ わたかじんとぅまてぃ
miji suwaN Ncha nu katahwibi nu shiNchi satu ga nuru hunaji watakajiN tumati
水を吸わない土の片日々(不明)の気持ち 貴方が乗る船路の渡る風も止まって


五無事に生れ島桟橋に着かわ人の黒山の招にく綾手布
ぶじにんまりじまさんばしにちかわふぃとぅぬくるやまぬかにく'あやてぃさじ
buji ni Nmarijima saNbashini chikawa hwitu nu kuruyama nu maniku 'ayatisaji
無事に生まれ故郷の桟橋についたら人の黒山が招く美しい手拭い


六、我が情こめて持たすこの扇子 匂ひさまぬ内に戻てたぼれ
わがなさきくみてぃ わたす くぬ 'おおじ にぅいさまぬ'うちに むどぅてぃたぼり
waga nasaki kumiti watasu kunu 'ooji niui amanu'uchini muduttabori
私が情けを込めて持たすこの扇子の(私の)匂いがさめぬ内に戻って来て下さい

解説
(語句)
・ツラニ ツィラニ  ①長歌 琉歌の長歌 ②連歌 琉歌で二人以上で読みつらねること 読み連ねる歌
この南洋小唄では、多くが男性が歌三線を。女性がこのツラネ(ちらに)を歌う。その場合、三線は「南洋小唄」の歌持ち(うたむち)を弾き、女性はツラネ特有のメロディーで歌う。

・いもち 行かれて
<行く 'imeeN いめーん の敬語の連用形
いめーん は おいでになる 行く 来る いらっしゃる。
めんしぇーん めんせーん よりも下。
・いめら いらっしゃるかしら
<いめーん

・てい ~だと
<てー ~と + い 強調

・はなばなや 端々は
当て字で「華々」とあるが、「はなばな」は「端々」。
しかし文意が不明。

・みじすわんんちゃぬかたふぃびぬしんち 不明
想像では「華々」を「花々」とすれば、「水を吸わない土に生えた花の気持ち」という苦しい気持ちなのではないか、とも思えるが、よくわからない。
・しんち 気持ち

・おおじ 扇子
扇子と当て字があるが「せんす」または「しんす」とは言わない。
扇子は おおじ'ooji

(コメント)
南洋小唄とともに歌われる琉歌。
(語句)のところで書いたように、三線のメロディーとは別で、「ツラネ」(チラニ、またはツィラニと読む)独特のメロディーがある。意味は連歌のように繋がっている。
歌三線の部分が男性の思いならば、このツラネはふるさとで帰りを待つ女性の思いである。
私の持たせた扇子に残る私の香りが消えないうちに帰ってきて欲しいと切実な思いが歌われる。

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Posted by たる一 at 11:49│Comments(4)な行
この記事へのコメント
 いつも拝見させて頂いています.ウチナーグチのわからないシマナイチャーとしては島唄を理解する上で大変参考になり有り難く読ませて頂いております.

 南洋小唄は神谷幸一さんの店で実際に聴かせて頂きましたが、後半の歌詞とともに玉城一美さんのチラネの部分も変更されておりました.

 手紙を開封したときに匂うはずの無い残り香を抱きしめてウンゾを想う男と、身につけていたものを里に預けて私の匂いが無くなる前に帰っていらっしゃいという女の気持ちが伝わって何ともいえないですね.

 その内で結構ですから、「平和の願い」や「昔の若さ」、「命身節」などの解説もお願い致します.
Posted by Ai_Nyai at 2008年07月07日 10:49
Ai Nyaiさん
シマナイチャーごくろうさまです。
言葉では大変ご苦労されているとお察しします。
しかし、うらやましい限りです。
毎日聞こうとおもえば聞ける環境が。

神谷幸一さんの南洋小唄はCDでも、それからテレビでも拝見しました。
たしかにそういうチラネを、確か南洋小唄の三線を鳴らしながらだってように記憶していますが。
おもしろいと思いました。

「平和の願い」「昔の若さ」など歌詞が手元にあればできるのですが。

私もCDから聞いて起こせるものは自前でやっています。
が、音源も歌詞もないものはどうにもなりません(泣)

いつか手に入れば、ということでごかんべんください。
Posted by たるー at 2008年07月12日 15:46
歌詞なら手元にありますよ!
 聴こうと思えばいつでも聴けるというのは確かですが、いつでも聴ける、いつでも弾けるからやらないんですよ.内地の方の方が熱心じゃないかと思っています.
 小生は昨年の秋から習っています.小生は耳も目も遠く、稽古場に人がいっぱいになってくると、自分の三線の音が聞こえなくなり、おまけにクリアファイルに入った工工四も光って見えないし、もうめちゃくちゃです.八じゃなくて十くらいの所押さえていたよ、というような指摘を受けて背中に汗をかいています.兄弟小節などのテンポがあって、早くて休みの無い曲が苦手です.いつもパニックです.
 民謡の内容を知るには貴ブログが大変に参考になります.これからも宜しくお願いします.
Posted by Ai_Nyai at 2008年07月14日 10:07
こちらこそよろしくおねがいします。

三線教室での大変なご様子よくわかります。
先輩(おそらく)の方のご苦労はいずれ私たちも味わうものですから。

ご希望の歌詞、なにかの方法で送っていただけたら
私の力が及ぶ範囲内でやってみようと思いますが
いかがですか。
(ただし、いつまでにというお約束はしかねますが)
Posted by たるー(せきひろし)たるー(せきひろし) at 2008年07月17日 16:13
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