2006年04月14日

かなさんど

かなさんど
かなさんどー
kanasaN doo
いとしいぞ
語句・かなさんどー いとしいぞ。 <かなさん いとしい+ どー 文末に付いて だぞ と強意。

作詞 作曲 前川守賢


一、他所見恥じかさ云語れ小久場の下や待ち所 汝が云たる云言葉や今も残とさ温々と
ゆすみはじかさ'いかたれぐゎーくばぬしちゃやまちどぅくる 'っやーが'いちゃる'いくとぅばや なまんぬくとーさぬくぬくとぅ
yurumihajikasa 'ikatareegwaa kubanu shica ya machidukuru 'yaaga 'icharu 'ikutuba ya namaN nukutoosa nukunuku tu
他人に見られることはなんと恥ずかしいことか!恋の語らい(を) クバの下は(逢引)待つ所 お前が言った言葉は今でも残っているよ温々と
語句・ゆすみ 他人に見られること。 ・はじかさ なんと恥ずかしいことか!<はじかさん 恥ずかしい。・いかたれー 恋の語らい。 ・いくとぅば 言葉。 ・ぐゎー 「ぐゎー」は以下のようなときに使われる。①小さいもの。②かわいいもの 「ちゃん」。③意味を強める。 ④卑下化。たとえば「妻小、(とぅじぐゎー)」(かかぁ)
などの場合につく。ここでは③くらい。



(忘んなよーやー忘んなよー 我ね思とんどかなさんどー)
わしんなよーやーわしんなよーわね'うむとーんどー かなさんどー
washiNna yoo ya washiNna yoo wane'umutooN doo kanasaN doo
忘れるなよーや 忘れるなよー 私は思っているぞ いとしいぞ
(括弧以下省略)


二、親兄弟にも打ち明けて夫婦になゆる約束小 汝と我んとの語れ小変わんなよーやいつまでも
'うやちょーでーにん'うちあきてぃみーとぅになゆるやくすくぐわー 'っやーとわんとぅぬかたれーぐわーかわんなよーやー'いちまでぃん
'uyachoodeeN 'uchiakiti miituni nayuru yakusukugwaa 'yaatu wantunu katareegwaa kawaNnayooyaa 'ichimadiN
親兄弟にも打ち明けて夫婦になる約束だ お前と私との契りは変わるなよーやいつまでも


三、男ー女にかかゆんど 女ー男ゆいどやる他所の知ゆみ二人が仲手取て渡らなこの浮世
うぃきがーうぃなぐにかかゆんどー うぃなごーうぃきがぬゆいどぅやる ゆすぬしゆみたいがなか てぃーとぅてぃわたらなくぬ'うちゆ
wikigaa winagu ni kakayuN doo winagoo wikiga nu yui du yaru yusu nu shiyumi tai ga naka tii tuti watarana kunu 'uchiyu
男は女に頼るのだ 女は男の故に在る 他人が知るまい二人の仲手を取って渡りたいな この世の中
語句・うぃきがー 男は。<wikiga 男 + ya は =wikigaa [yaが名詞と融合して名詞の末尾の母音を長くしている] 名詞の末尾がa の場合、末尾は aa。 i → ee。 u → oo。だから女性(winagu +ya)は winagoo となる。・うぃなごー 女は。「うぃなごー」になる理由は前の通り。・かかゆん 頼る。・ゆい 故。せい。・ゆすぬしゆみ 他人に分かるか?→分かるまい cf.汗水節。


四、おーやーてぃーやーする時ねー にーたさ小んすなよーや おーゆる仲どかなさんでの昔言葉んあんどーや
'おーやーてぃーやーするとぅちねー にーたさぐわーんすなよーやー 'おーゆるなかどぅかなさんでぃぬ んかしくとぅばん'あんどーやー
'ooyaa tiiyaa surutuchinee niitasagwaaN sunayoo ya 'ooyuru naka du kanasaNdinu NkashikutubaN 'aNdooyaa
派手な喧嘩をする時には妬みはするなよな 喧嘩する仲こそ愛しているという昔言葉があるんだぞ
語句・おーやーてぃーやー 派手な喧嘩。 おおやー おおえー =喧嘩 てぃーやー=似た様な文字を繰り返して前の語句を強調する畳語。・にーたさ ねたみ。


五、美らさる花や散りるとも二人し咲かす花でもの例え嵐の吹ちやてもかなさし行かや我た二人
ちゅらさるはなやちりるとぅん たいしさかすはなでむぬ たとぅい'あらしぬふちやてぃん かなさし'いかやーわったーたい
churasaru hana ya chiriqutuN taishi sakasu hana demunu tatui'arashi nu huchiyatiN kanasashi 'ikayaa wattaa tai
美しい花は散るとも二人で咲かせる花である 例え嵐が吹いても愛して行こうよ我々二人
語句・んでぃ ~という。・ して。・でむぬ なのである。・かなさしいかやー <かなさ(愛を)+し(して)+いか(いこう)+やー(よ)

歌も作詞、作曲も前川守賢。

幼いころから芸人の父と舞台に立ち、歌や芝居、司会も見事にこなす超マルチ芸能人。
正月に生まれたから「げんちゃん」と呼ばれるらしい。

余談で私事ながら「げんちゃん」の誕生祝いをコザの民謡酒場「なんた浜」で目撃した。たくさんのおばさま方を前にステージに立ったげんちゃんは当時まだ生きていた嘉手苅林昌さんや登川誠仁さんの物まねで盛り上げ、最後はカチャーシーならぬ客全員で店内を駆け回るという様子に、まだ民謡酒場というものを数えるほどしか体験したことがない私はいささかビビった。

話が歌からかなりそれた。
ウチナーグチの歌を歌うには、節回しをしっかり覚えることと、歌詞の発音に自信をもつことが車の両輪のように大事。いかに歌がうまくても、三線がうまくてもウチナーグチの発音ができないと聞く側も感動しない。

この歌は発音の勉強になる。
たとえば
・「いかたれー」の「れーree」
ウチナーグチは三母音だと頭に入れるのはよいが、長母音「えー」「おー」もしっかり存在する。
昔「あい ai」と発音していた部分が何世紀もかかって「えーee」と変化したもの。

つまり「かたらい」→「かたれー」。またよく知られている「てーげーteegee」は「たいがい大概taigai」が変化。

これはヤマトグチでも同じ例がある。「旨いumai」を「うめーumee」と言う人もいる。

さらに、主格を示す助詞「や」が付く場合も長母音になる。
四番の「時ねーtuchinee」(時には)は「時に」と「や」が融合してなったもの。別の例で「三線や」(三線は)が「三線のー saNshinoo」になる。
長母音要注意だ!!

また
・「わねうむとんどー」の「どーdoo」と「まちどぅくる」の「どぅdu」。
・「みーとぅ」の「とぅtu」と「ぬくとーさ」の「とーtoo」などは区別が必要だ。意味が通じないからだ。
ほかにも
とぅんtuN(~とも)
ぬ nu(の)
ぐゎーgwaa(小)
おーやー'ooyaa(けんか)
など気をつけたい。



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Posted by たる一 at 18:40│Comments(13)か行沖縄本島
この記事へのコメント
ブログ見ました。ありがとうございます。そう、この曲です(〃^ー^〃)
Posted by キリキ at 2006年04月15日 11:12
たるーさん、やはり、沖縄民謡は発音ですよね、「と」「とぅ」、「て」「てぃ」、「ど」「どぅ」、「せ」「しぇ」等、私も歌詞カードや沖縄民謡工工四の本に書いてある歌詞を、鵜呑みにせず、必ず実際の歌をCD等で聞き、耳で聞いたとうり、書き加えて、意識して歌っています。そして、はっきりと発音して歌うことですね。「島ぞーり」は「島じょーり」と言うように、でも、自分は日常会話は関西弁です。
Posted by ウチナー at 2006年04月15日 19:31
ポスト名間違いました。失礼しました。
Posted by ウチナー ムーク at 2006年04月16日 15:09
きりきさん
まえから、かなさどーは訳したいと思っていました。
きっかけをくれてありがとう!

ウチナームークさん
発音は、節、三線と同じほど大切ですねえ。
本土の影響など、なかなかウチナーグチをとりまく環境は厳しいでしょうねえ。
民謡の言葉も、ウチナーヤマトグチに影響されているし。
Posted by せきひろし(たるー) at 2006年04月17日 06:04
はじめまして、つき子と申します。


『かなさんどー』の歌詞を探していたら、こちらのブログに辿りつきました。
トラックバックさせて頂こうと思いますが,宜しいでしょうか?
※ダメでしたらスグに削除致します。

宜しくお願い致します。
m(_ _)m

※私のブログです。
 
 http://blogs.yahoo.co.jp/kormii4

ブログの宣伝じゃないので、許可して頂けたら,このコメを削除して、
構いませんデス。
Posted by つき子 at 2007年03月21日 13:01
こんばんは。
何故かトラックバックできなかったので,コピペさせて頂きたいと思います。
宜しくお願い致します。

m(_ _)m
Posted by つき子 at 2007年03月22日 00:57
つき子さん
トラックバック、いろいろあるので
今はできないようにしています。

ごめんなさいね。
Posted by せきひろし at 2007年03月28日 06:23
Do you speak english? Do you know where I can find an English translation for this song??

あなたは英語を話しますか?? あなたは、私がどこでこの歌の英語の翻訳を見つけることができるか知っていますか??? ありがとう!!
Posted by Jen at 2008年06月11日 03:32
jenさん
残念ながら簡単な英語くらいしかしゃべりません。
歌の英語訳。それもどこにあるかわかりません。
暇があれば訳してもいいのですが・・。
期待をなさらないで待ってくだされば。
Posted by たるー(せきひろし)たるー(せきひろし) at 2008年06月14日 09:22
はじめまして。 昔げんちゃんが大好きで、この唄に引かれてしまい、今では息子(1歳2ヶ月になります)に子守唄として唄っていますが、2番までしか覚えてなくて、今回探し、ここへ来ました。

昔聞いた沖縄の音楽は結婚して島を離れてもけっして忘れられないものです。

子供達にも是非島の唄を覚えて欲しいと思っています。


ちなみに「島の人」も唄ってます。^^

でも今どーしても「娘ジントヨー」も唄ってあげたいと思っています。
時間があるときにでも娘ジントヨーの歌詞ものせてくださいませんか???

又遊びにきます。
Posted by sas at 2008年08月14日 21:54
sasさん
コメントありがとうございます。
「かなさんどー」を息子さんに子守歌代わりに!
いいですね。
ほんとうに「わねうむとんどー」の気持ちですね。

娘ジントーヨー、ほとんどヤマト口だったので
載せてませんが。

また機会があればみてみます。
今後ともよろしく。
Posted by たるー at 2008年08月15日 08:38
つい最近、ベトナムのハノイへ旅行に行ってきたのですが、あるレストランでかなさんどーの曲が流れていました。
リズムがちょっと違っていたので、もしかしてベトナム語で歌われているのかなと思って注意して聞いていると、なんと沖縄方言そのまま。
J-POPやK-POPなどは街中でよく聞かれましたが、演歌でもなく、沖縄民謡がレストランで流れているなんて、驚きと新鮮さを感じました。
でも、なんだかベトナムのそのレストランの雰囲気になじんでいてとてもよかったです。
私はウチナンチュー(大学まで沖縄)でありながら、恥ずかしながら方言をほとんど知りません。
このサイトは細かな説明があってとてもいいですね。
世界に広がれウチナ~波及。
Posted by cyura at 2010年11月21日 12:42
cyuraさん
コメントありがとうございます。

ついさっき、ハノイから来た青年が三線を見て、ベトナムにも同じものがある、と言ってました。

私も来年は友人がいるハノイに行く予定なので楽しみです。そのレストランの名前が知りたいものです。

かなさんどー、この広島弁バージョンを昨日ある会合で聞きました。

まさに沖縄文化が広がっている瞬間かもしれませんね。
Posted by たる一 at 2010年11月22日 17:48
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