2006年11月28日

涙そうそう

涙そうそう
なだそうそう
nada soosoo
涙ポロポロ

ウチナーグチ訳 マリリン 唄 與那覇徹


一、昔ぐとぅ思出ち面影勝て肝がかい 何時ぐ何時ん胸ぬ内 うむいやゆくん立ち勝て
んかしぐとぅ'うび'んじゃち'うむかじまさてぃちむがかい 'いちぐ'いちん んにぬ'うち 'うむいやゆくんたちまさてぃ
Nkashigutu 'ubi'Njyachi 'umukaji masati chimugakai 'ichigu'ichiN Nni nu 'uchi 'umui ya yukuN tachimasati
昔の事を思い出し面影が強くなり気になって一生いつまでも胸のうち思いはさらに強くなって
語句・そうそう  水なら「ざーざー」。行動なら「さっさと」。 涙なら「ポロポロ」。 ・いちぐ 一期。 一生。「何時ぐ」というのは間違った当て字。 ・ゆくん さらに。



晴りわたる日ん雨ぬ日んうかぶあぬ姿 何時迄ん肝にかかて面影手探い あぬ日あぬ時涙そうそう
はりわたるふぃん'あみぬふぃん'うかぶ'あぬしがた 'いちまでぃんちむにかかてぃ 'うむかじ てぃーさぐい 'あぬふぃ'あぬとぅち なだそーそー
hariwataru hwiiN 'ami nu hwiiN 'ukabu 'anu shigata 'ichimadiN chimu ni kakati 'umukaji tiisagui 'anu hwii 'anu tuchi nada soo soo
晴れわたる日も雨の日も思い浮かぶあの姿いつまでも気になって面影を手で探り、あの日あの時涙ぽろぽろ
語句・かかてぃ 掛かって。 (気に)なって。


二、にぬふぁ星に向かて毎日毎夜願とうてぃ 思い届きらやしが自由ならん旅ぬ空
にぬふぁぶしにんかてぃめーにちめゆるにがとーてぃ 'うむいとどきらやしがじゆならんたびぬすら
niinuhwa bushi ni Nkati meenichi meeyuru nigatooti 'umui todokira yashiga jiyu naraN tabi nu sura
北極星に向かって毎日毎夜願っていて 思い届けたいのだが自由にならない旅の身空
語句・にぬふぁぶし 北極星。=子の方向の星(にー ぬ ふぁ ぶし) しかし、北極星は、いつも一番星になるだろうか?ならない。一番星=北極星というのは訳にすこし無理があるが「てぃんさぐの花」を意識しての歌詞だろう。 ・届きらやしが 届けたいのだが。・すら 上空の「空」ではなく、今の立場や状況をあらわす「身空」。



なちかさや里が姿 笑ゆるあぬ姿 行ちぶさや里が御側 逢ちゃいぶさ 逢ちゃいぶさ何時か逢ちゃいる節待ちゅる
なちかさやさとぅがしがた わらゆる'あぬしがた 'いちぶさやさとぅが'うすば 'いちゃいぶさ 'いちゃいぶさ 'いちか'いちゃいるしちまちゅる
nachikasa ya satu ga shigata warayuru 'anu shigata 'ichibusa ya satu ga 'usuba 'ichaibusa 'ichaibusa 'ichika 'ichairu shichi machuru
懐かしいのは彼の姿 笑っているあの姿 行きたい彼のお側に 会いたい 会いたい いつか会う時期を待つ
語句・なちかさや 懐かしいのは。「なちかさん」には、まず「悲しい」があたり、「懐かしい」というのは和語的文法に限られる。ここでは「懐かしい」が妥当だろう。



晴りわたる日ん雨ぬ日んうかぶあぬ姿 何時迄ん肝にかかてぃ 思出ち 思出ち あぬ日あぬ時涙そうそう
はりわたるふぃん'あみぬふぃん'うかぶ'あぬしがた 'いちまでぃんちむにかかてぃ 'うびんじゃち'うびんじゃち 'あぬふぃ'あぬとぅち なだそーそー
hariwataru hwiiN 'ami nu hwiiN 'ukabu 'anu shigata 'ichimadiN chimu ni kakati 'ubiNjyachi 'ubiNjachi 'anu hwii 'anu tuchi nada soosoo
晴れわたる日も雨の日も思い浮かぶあの姿いつまでも気にかかって思い出し思い出しあの日あの時涙ぽろぽろ


淋しさぬ 恋しさぬ 寝枕ぬらち涙そうそう
逢ちゃいぶさや逢ちゃいぶさや 思い焦がりてぃ涙そうそう
さびしさぬ くいしさぬ にまくらぬらち なだそーそー
'いちゃいぶさ 'いちゃいぶさ 'うむいくがりてぃなだそーそー
sabisisanu kuisisanu nimakura nurachi nada soosoo
'ichaibusa 'ichaibusa 'umuikugariti nada soosoo
寂しい 恋しい 寝枕を濡らして涙ポロポロ 会いたい 会いたい 思い焦がれて涙ポロポロ

このブログで「涙そうそう」をとりあげるかどうか少し迷いもあったが、ウチナーグチと民謡と現代音楽がクロスしている代表曲である。とりあげないわけにいかない。
いまや、テレビドラマから映画にもなり、この歌をしらない日本人は少ないといえるくらいの曲になっている。
たしかに名曲であると私も思う。

しかし、ヤマトグチの原曲では面白くない、と思っているときに胤森さんから彼の著作本を頂いた。
その中にこの歌詞があったのだ。それを引用させてもらって自分で訳をつけた。
ヤマトグチの歌をウチナーグチに訳した歌はめずらしい。
そして、単なる「訳」ではなく
「にぬふぁぶし」(北極星)や「たびぬすら」(旅の身空)など、ウチナーの歌に独特の歌詞を織り込んである。

ところで胤森さんの今の関心は「涙」の「なだ」と「なみだ」はどちらが言語学的に古いか、というものだった。
今の私にはその関心は薄いが、興味はある。

しかし与那覇徹氏が歌う、この歌詞が、原曲をどのようにカバーし、また独自の世界を持っているか、そちらに関心が向いた。
いずれまた胤森さんの「涙」論には触れるつもり。

涙そうそう、は「ちんぬくじゅーしー」に出てくる。

同じカテゴリー(な行)の記事
仲島節
仲島節(2018-09-26 15:49)

今帰仁玉城小唄
今帰仁玉城小唄(2018-09-20 13:52)

今帰仁ミャークニー
今帰仁ミャークニー(2018-05-30 07:27)

上り口説
上り口説(2017-06-27 16:52)


Posted by たる一 at 22:45│Comments(8)な行
この記事へのコメント
こんばんは。お久しぶりです。遅レスですいません。

マリリンさんて誰?と思いましたが、あのとぅる・るん・てんさんのマリリンさんだったんですね。知りませんでした。
RIK とぅる・るん・てん
http://okinawa.rik.ne.jp/contents/music/report/001/index.html

satoshi@宜野湾さんの「沖縄三味線天国」で分かりました。
http://uchina.ti-da.net/e973432.html

私事で恐縮ですが、8年ぶりに沖縄本島に行き、幾つかのライブを聞いたり、生演奏で歌ったりしてきました。自分の三線でとなれたらウレシイんですが・・・ (=^_^=)
Posted by 金魚小 at 2006年12月05日 21:31
金魚小さん
マリリンさんのお顔わかりました。
どういう方かは、実際にお付き合いしてみないと
わかりませんが(笑)

生演奏、それはよかったですね。
どういう曲をされているのでしょうか。
Posted by せきひろし at 2006年12月05日 23:41
>せきひろし
ありがとうございます。

今回は勤務先の者のマラソン参加者(NAHAマラソン)の応援と地元の仲間と会うことを目的で訪沖したのですが、その両者合同で大城美佐子先生の「島思い」さんでライブを聞きに行きました。

私の訪沖は8年ぶり2度目なんですが、8年前には当時美佐子先生出ておられた「花笠」さんにお邪魔したものの、当日はご不在でした。
今回、念願叶い先生の歌声を聞かせていただいたうえ、ご無理をお願いして2箇所にサインを頂戴しました(今売られている「BRUTUS」誌の特集 「本当の沖縄を知っていますか?」に美佐子先生の記事があり、そこに掲載された写真とCD「片思い」の冊子の写真に)。
同店営業日誌にお礼の文章を書き込みました。ご笑覧頂けると幸甚です。
BRUTUS特集 本当の沖縄を知っていますか?
http://www.brutusonline.com/brutus/issue/

島思い・営業日誌12月4日「にぎやかな1日でした」
http://shimaumui.ti-da.net/e1186116.html#comments

私は写っていませんが、誕生ケーキを運ぶミーカーさんの後ろにいるのが、我々です。

みんなと別れた後、私一人近くの 民謡酒場「西武門」さんに寄りました。
歌を歌ったのはこちらのお店で、①ましゅんく節、②県道節、③収納奉行節だったと思います(最後は少し眠たくなってきました(^-^*) )
ましゅんく節を覚える際は、こちらをかなり参考にさせていただきました。ありがとうございます。

大阪でも一緒に歌いに行ける仲間を見つけたいです。長々と失礼しました。
Posted by 金魚小 at 2006年12月06日 05:55
金魚小さん
いろいろ楽しい訪沖だったのですね。
収納奉行、最後が「眠くなる」
確かに、そういうときがありますね。

大城美佐子さんの「島思い」(しまうむい)には林昌さんが亡くなられてしばらくして行きました。
悲しみでご病気になられた美佐子さんが、なんとか復帰できるかどうかの時で、歌うお声は痛ましかったのですが、さすが唄者、聞かせてくれました。
白雲節を歌わせていただいたのですが、私の手は林昌さんのものをコピーしたものでしたので、美佐子さん
「あ、林昌さんのね~!?」
と未熟な唄三線にも、喜んでくださいました。
またいろいろ情報を教えてくださいね。
よろしくお願いします。
Posted by せきひろし at 2006年12月06日 06:26
>せきひろしさん

>収納奉行、最後が「眠くなる」
確かに、そういうときがありますね。

単に昼間の疲れが出ただけだと思います (*^^*)


>「あ、林昌さんのね~!?」
と未熟な唄三線にも、喜んでくださいました。

それはスゴイですね。

林昌さんと言えば5年ほど前(資料が手許になくていい加減ですいません)の大阪の琉球フェスティバルでの誠小さんとのセッションが感動的でした。

8年前の訪沖時には、林次さんのお店にお邪魔して、「海のちんぼらー」と「ひんすーじゅり小」を歌って頂きました。歌声はもちろんのこと、お人柄に大変惹かれました。

追伸 朝、呼び捨てで書き込んでしまいました。申し訳ありません。
Posted by 金魚小 at 2006年12月06日 12:12
林昌さん 人柄もよかったのですか~
お会いしたかった。。。。

呼び捨て~ 全然かまいませんよ。
Posted by せきひろし at 2006年12月08日 00:33
>林昌さん 人柄もよかったのですか~
お会いしたかった。。。。

紛らわしい表現ですいません。お会いしたのは林次さんだけです。
 (n^。^)/
Posted by 金魚小 at 2006年12月08日 08:51
ああ、そうだったんですねえ
残念。
私、まだ林次さんにもお会いした事がないのですよ。
Posted by せきひろし at 2006年12月10日 11:18
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。