2010年10月16日

真心ぬ花

真心ぬ花
まぐくるぬはな
magukuru nu hana
真心の花


作詞・作曲 当銘由俊
唄三線 嘉手苅林昌 (CD「Japan - Folk Songs Of Okinawa 沖縄しまうたの真髄」より)


一、及ばらんたきに天に橋かきてぃ 落てぃてぃ 損なてぃる身ぬ上知ゆる 二人が云語れや 夢どぅやたん
うゆばらんたきに てぃんにはしかきてぃ うてぃてぃすくなてぃる みぬうぃしゆる たいがいかたれや いみどぅやたん
'ujubaraN taki ni tiN ni hashikakiti 'utiti sukunati ru mi nu wi shiyuru tai ga 'imi du yataN
叶えられない恋なのに 天に橋をかけて落ちて(しまったように)失ってはじめて自分の身の程を知った 二人の仲は夢だったのだ
語句・うゆばらん <うゆぶん 及ぶ。琉歌では「思いが届かない」「叶えられない」「添い遂げることができない」など意味多様に使われる。・たき 「たけ、身長」【琉辞】。「身分」という意味もある。・すくなてぃ <すくなゆん 「損なう、壊す」【琉辞】。・ =どぅ 強調の係り助詞。「ぞ、こそ」【琉辞】。「r」と「d」が入れ替わったもの。・うぃ<うぃー。('wii) ①上。②以上。③老い。 ・いかたれ <いかたれー。「(恋)のかたらい、(男女の)契り」【琉辞】。このように男女が語り合うさま、という意味合いから「男女の仲」「契り」という意味まで幅がある。それは「かたれー」に「語る」という意味と「味方、仲間になる」という意味も含むから。


二、夢やたんとぅむてぃ忘らていすしが まさてぃ思くとぅや 我肝染みてぃ 二人がいかたれや 夢どぅやたん
いみやたんとぅむてぃ わしらていすしが まさてぃうむくとぅや わちむしみてぃ たいがいかたれや いみどぅやたん
'imi yataN tumuti washiratei sushiga masati 'umukutu ya wachimu shimiti tai ga 'ikatare ya 'imi du yataN
夢だったと思って忘れようとするが(かえって)思いが強くなり私の心を染めて 二人の仲は夢だったのだ
語句・とぅむてぃ <とぅ+うむてぃ と思って。・てい =てぃやい。・・と言って。・・と。・まさてぃ <まさゆん 強くなる。


三、梅桜でんし 節くりば咲ちゅい 節よ待ちみそり 咲ちどぅさびる 二人が真心ん咲ちどぅさびる
んみさくらでんし しちくりばさちゅい しちよまちみそり さちどぅさびる たいがまぐくるん さちどぅさびる
'Nmi sakura deNshi shichi kuriba sachui shichi yo machimisori sachi du sabiru tai ga magukuruN sachi du sabiru
梅桜でさえ季節がくれば咲くもの 季節よお待ちください (かならず)咲きます 二人の真心も(かならず)咲きます
語句・でんし でさえ。・さちどぅさびる かならず咲きます。「どぅ」の強調を「かならず」で表現。


四、節待ちゅる間や 歳や寄いちみてぃ 寄いちみる歳や 戻しぇならん 真心ぬ花ん咲ちがすゆら
しちまちゅるいぇだや とぅしやゆいちみてぃ ゆいちみるとぅしや むどぅしぇならん まぐくるぬはなんさちがすゆら
shichi machuru yeda ya tushi ya yui chimiti yuchimiru tuchi ya mudushe naraN magukuru nu hanaN sachi ga suyura
季節を待つ間に歳も寄ってしまい 寄ってしまった歳は戻せはしない 真心の花も咲くだろうか
語句・ゆいちみてぃ<ゆゆん ゆい 寄り。+ ちみゆん 詰まる。「歳が寄り詰まる」→ 歳が寄る。年寄る。・むどぅしぇ<むどぅしぇー<むどぅし 戻すこと。+や は。→戻すことは。
 


五、くぬ世うてぃ二人や結ばらんありば あぬ世んじ 二人や結びたぼり 真心ぬ花ん 自由に咲かさ
くぬゆうてぃたいや むしばらんありば あぬゆんじ たいやむすびたぼり まぐくるんはなん じゆにさかさ
kunu yu uti tai ya mushibaraN 'ari ba 'anu yu 'Nji tai ya musubitabori magukuruN hanaN jiyu ni sakasa
この世にいて二人は結ばれないのであれば あの世に行って二人を結んでください 真心の花も自由にさかせたい
語句・んじ <んじゆん 出る。「あの世に出る」→「あの世に行く」。・さかさ<さちゅん 咲く。→ さかさ 未然形。さかせたい。さかせよう。

CD「Japan - Folk Songs Of Okinawa 沖縄しまうたの真髄」で嘉手苅林昌さんがしみじみと歌い上げている。

原作は当銘由俊氏だが、CDの録音時に林昌さんが即興で歌詞をかえた部分があるという。

その部分がどこかは、また調べたい。

いつごろ、どういう背景でつくられた歌かわからない。

「真心」というキーワードは、「琉歌大成」や「琉歌大観」にもない。
一方「心」は「琉歌大成」に210首ほどある。

「真心」というのは比較的新しい言葉のようである。

成就しなかった恋愛を「夢だった」とわりきりつつも、忘れようとしても逆に心染まっていく恋。
時期がくれば花が咲くように。いつか成就すると待てば、気がつけば歳も寄ってしまった。
この世で成就しない恋ならばあの世できっと自由に花をさかせるはずだ。

このような歌だろう。

印象だが、林昌さんが書き加えたのは四番ではないか、と個人的に推測している。

文語的な言葉が多いなか、「戻しぇ」が、口語的であるし、このような皮肉が林昌さんが好むところだったからだ。

歌詞は、サンパチロク(八、八、八、六文字)に、八、六文字を加えた長歌形式。







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Posted by たる一 at 11:50│Comments(2)ま行
この記事へのコメント
たるーさん

島唄まじめな研究ブログも5周年を迎え
おめでとうございます。

多くの方々がこのブログを通して、うちな~民謡の
研究をしていることでしょう

林昌先生の「真心の花」は、あまり知られてない歌だと
思いますが・・・これが録音時に即興で唄った歌詞だとしたら
林昌先生はすごいです。
いつか、この歌を舞台で歌いたいと思います。

ホント、生きていらっしゃるうちにお会いしたかったです。
民謡の先生方から聞く、林昌先生のエピソードは、思わず
クックックと笑ってしまうことばかりですよ!
Posted by MAGI at 2010年11月03日 09:09
MAGIさん
ありがとうございます。

やっと五周年、まだ五周年という感じです。

いろいろ困ったときは助けてもらってます。
感謝です。

この唄、工工四に起こしてみて弾いてますが味わい深いですね〜

即興ならすごい。

一部を変えただけ?と思ってましたが上の元唄とは全く違いますね。

昨日は林次さんが唄うDVDを見て、引き込まれていましたよ。

いつか、そのエピソード伺いたいものです。
Posted by たるー at 2010年11月04日 10:19
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