2006年06月11日

ダイサナジャー

ダイサナジャー
だいさなじゃー
dai sanajaa
語句・だいさなじゃー だれたような、ふんどしをした人。 だい<だゆん だれる。さなじゃー<さなじ ふんどし。 +aa 人。aaは、「名詞・形容詞(語幹)・動詞(連用形)に付いて、元の語の意味を特殊化し、(‘はずかしがりや’・‘しまりや’のヤや、英語のsinger[歌手]の-erのように)‘・・・の人’〔行為者・性質所有者〕や‘・・・のやつ’〔卑称〕を表したり、動物の愛称〔俗称〕を派生させたりする特殊化[異化]接尾辞」【琉辞】。


一、(女)東方ウスメ 藁サナジかきて 目くすたいかんて芋煮また前なち
'あがりかた'うしゅめーわらさなじかきてぃ みーくすたいかんてぃ 'んむにまためーなち
'agarikata 'ushuumee warasanaji kakiti miikusu taikaNti 'Nmuni mata meenachi
東の方のおじいさん ワラのふんどしをつけて 目くそ垂れいっぱいつけて芋練りを又前にして
語句・たいかんてぃ たれつけて。<たい 垂れ。+かんてぃ <かんじゅん 被る。接尾語で「いっぱい・・する」 ・んむに 芋練り。


イラーヨーダイサナジャーグワー ヘイヨーシュラーヨ
○(ハヤシ言葉)だれた、ふんどしをした人(ハヤシ言葉)愛する人よ
(以下省略)


二、(女)くゎ缶々持ち何処んかい行めが(男)又ん鯨ぐぬ寄てが又居ゆら
くゎくゎんくゎんむっちまーんかい'いめーが またんぐじらぐぬゆてぃがまた'うゆら
kwakwaNkwaN mucchi maaNkai'meega mataN gujiraguu nu yuthiga mata 'uyura
○(女)すごく缶々(貫禄)を持ってどこにいらっしゃいますか?(男)またも鯨たちが寄ってまた居ないかな
語句・くゎ すごく。「【過】超過していること」【琉辞】。 ・くゎんくゎん 「缶々」と当て字があり、またコメントでご指摘があるように「いっと缶の事」という意味もある。また、「沖縄民謡大全集」では「持ち」のところが「渡久地(とぅぐち)」となっている。 辞書には「上品で堂々としたさま」ともある。併記する。・まーんかいいめーが どこにいかれるのか? <まー どこ + んかい に。 + いめー お行きに。 + が (疑わしい部分につく「が」) ・ぐじらぐー 鯨たち。<ぐじら gujira 鯨。 + ぐー 「仲間、相棒;ぐる」


イラヨー アカサナジャーグワー ヘイヨーシューラーヨ
○赤いふんどしをした人 愛する人よ



三、(女)あんまさみウスメ アチビうさがゆみ (男)あねるアチビ臭さぬ誰が又食ゆが
'あんまさみ'うしゅめー 'あちび'うさがゆみ 'あねる'あちびくさぬたるがまたくゎゆが
'aNmasami 'ushuumee 'achibi 'usagayumi 'aneru 'achibikusanu taruga mata kwayuga
(女)気分が悪い?おじいさん あかゆお召し上がりになりますか? (男)あんなおかゆ臭いので誰が二度と食べるか
語句・あんまさみ 気分が悪い? <あんましゃん(形) 気分が悪い 頭が思い、痛い の疑問文。 ・あちびー 「やわらかいご飯。おかゆとご飯の中間くらいで 子どもや病人に食べさせる」【沖】。・うさがゆみ お召し上がりになりますか? <うしゃがゆん 召し上がる。+み ますか? ・あねる そんな そのような ・くさぬ 臭いので。 形容詞の「ぬ」で終わる形は「・・ので」と理由。


イラヨー ヤリサナジャーグワー ヘイヨーシューラーヨ
○破れたふんどしをした人 愛する人よ

語句・やり <やりゆん 破れる。


四、汝達がや我んね アマン小どやるい ちんけーらしげーらし 尻たっちゅうしみてぃ
'いったーがや わんね 'あまんぐゎーどぅやるい ちんけーらしげーらし ちびたっちゅーしみてぃ
'ittaa ga ya waNne 'amaNgwaa du yarui chiNkeerashi gerashi chibi tacchuu simiti
お前達が私はヤドカリなのか? 着物を変えさせ変えさせて尻をたたせて
語句・いったー おまえたち。 ・がや ・わんねー わたしは。 waN+ja =waNnee ・あまん やどかり。・ちんけーらしげーらし 着物をころころかえさせて。<ちん 着物。 +けーゆん 帰る、返る、変えるなど。 コメントにあるように「例えばヤドカリをひっくり返し返しもてあそぶ事」という意味もある。


五、(女)尻肉やぬぎて何処かいめーがウスメ (男)家賃小や取たい あぬひゃー又前かい
ちびじしやぬぎてぃまーかいめーが'うしゅめー やちんぐゎーやとぅたい 'あぬひゃーまためーかい
chibi jishi ya nugiti maakaimee ga 'ushumee yachiNgwaa ya tutai 'anuhyaa mata meekai
尻の肉は脱げて何処にいかれるのか おじいさん 家賃を取ったり あいつの又前に
語句・じし 肉 しし。 「ちび」との連濁。 ・めーかい 前に。 「めー」には「行くこと」という意味もある。 ところに、くらいか。


六、(男)ありが前に一夜くりが前に一夜 島戻る間や白髪我ねかみてぃ
'ありがめーにちゅゆる くりがめーにちゅゆる しまむどぅるいぇだやしらぎわねかみてぃ
'ariga mee ni chuyuru kuri ga mee nichuyuru sima muduru yeda ya siragi wane kamiti
あれのところに一晩 これのところに一晩 村に戻る間に私は白髪になって


七、(男)汝達トートーメー小と我ったートートーメー小と一門がやゆらあんすかまで似ちょる
'いったーとーとーめーぐゎーとぅわったーとーとーめーぐゎーとぅ'いちむんがやゆら 'あんすかまでぃにちょる
'ittaa tootoomee tu wattaa tootoomee tu 'ichimuN ga yayura 'aNsuka madi nichooru
お前達の位牌とうちの位牌と一族だからなのかそれほどまで似ている 
語句・とーとーめー 先祖の位牌。  ・いちむん 一族。・がやゆら  であるからか。 「が」の用法 ・あんすか それほど。本来は否定的な表現に続く。さほど・・でない さして・・でない。


八、(男)汝達がや我んね 餓鬼んでぃる云ゅしが カラス小とぅかてぃてぃ 芋どぅ我んね喰らどぅ
'いったーがやわんね がちんでぃる'いゆしが カラスぐゎーとぅかかてぃ'んむどぅわんねからどー
'ittaa ga ya waNnee gachi Ndi ru 'iyushiga karasugwaa tu kakati 'Nmu du waNnee kara doo
お前達が私は食いしん坊だといっているが 塩辛をおかずにして芋をこそ私は食べるぞ
がち 食いしん坊。 ・んでぃ  と。 ・ どぅ。強調。 ・からすぐわー 塩辛。 ・かてぃてぃ おかずにして。 <かてぃゆん おかずにする。


九、(女)貴方ん頭ん禿ぎてぃ あん光い美らさ 闇ぬ夜になりば心配や又ねさみ
'うんじゅんちぶるはぎてぃ'あんふぃかいじゅらさ やみぬゆーになりばしわやまたねーさみ
'uNjuN chiburu hagiti 'aNhwikai jurasa yami nu yuu ni nariba siwaya mata neesami
貴方も頭がはげて あんな光って美しいことよ 闇の夜になれば心配はまたないだろう

エイサーの地謡に使われるので有名だが、どうも芝居に使われた地謡曲のようである。
とぼけた爺さんと女のやりとり。
ダイとは「だるい様子」サナジャーとはふんどしをした人。
意味を知らない頃は「大きなふんどし」と思っていた(笑)

一度訳したが、いまいちピンときていなかったが、コメントでご教授もされながら、もう一度訳しなおしてみた。
細かい間違いも修正し、て読み直すとなんとなくイメージがわいてくる。
沖縄では大切にされる年寄りだが、ユーモラスに歌われてさらに愛されているいるような気がする。

二番にすこし問題があって、「缶々」(正調 琉球民謡工工四)、「クヮン クヮン」(「沖縄民謡大全集」)と表記が違っている。
ご指摘あるように「缶々」、一斗缶なのか、kwankwan 堂々としたさま なのか。
「持ち」、「渡久地」の違い。
「鯨ぐ」とはなにか。

上の歌詞は
くゎ/くゎ/ん/くゎ/ん/む/ち 七文字 で一文字足りない。
くゎ/くゎ/ん/くゎ/ん/とぅ/ぐ/ち 八文字。

渡久地とは、名護の地名である。

ちなみに、嘉手苅林昌氏が知名定男氏と歌っている音源では
一番(知名)
八番(林昌)
四番(知名)
七番(林昌)
   (知名)  → 片足や裏座片足や中前 手取ってくんぱたるくんだまたむどぅし(知名)
            katahwisa ya 'uraza katahwisa ya nakame ti tuti kuNpataru kuNda mata mudushi
片足は裏座(部屋)に片足は玄関に 手を取ってふんばっているふくらはぎま            た戻して
一番(林昌)
二番(知名)
くゎ缶々持ち何処んかい行めが・・
(どうも林昌さん、酔っていらっしゃるのではないかと思う。それにしても三線の手はすばらしい)

ということで、ジュリ通いをしているダイサナジャーじいさんのユーモラスな話ということにしておきたい。


 



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Posted by たる一 at 12:45│Comments(6)た行
この記事へのコメント
初めまして。今は横浜に住んでいますが、沖縄コザ出身です。ダイサナジャーに意味が気になったところがあり、調べようと思ったら、ここにたどり着きました。
沖縄のことをこんなに勉強したり、親身に考えている事に感謝してます。
それで・・・・余計なことでコメントと思い悩んだんですが、解説は本当に受け取る人によって違ってくるもので、どれが正しいとかいえない面もありますが、さらっと聞き流していただけると嬉しいです。

一、(女)また前なち = 又、前にして めーなち、めーにちは毎日とも言いますが 

二、くゎ缶々 =くゎくゎん = いっと缶の事です。昔?水道が無かった頃は、くゎくゎんを担いで川原に水汲みに行きました、


三、 アチビ  = おかゆとご飯の間、水加減を間違えたご飯?   

四、 アマン小 = ◎ やどかり  
  ちんけーらしげーらし =着物を変えさせ変えさせてもありかも。
でも例えばヤドカリをひっくり返し返しもてあそぶ事もあり



五家賃小や取たい あぬひゃー又前かい = 家賃も取ったし(家賃も入ったので)、又彼女の所に・・・



七、(男)汝達トートーメー小と我ったートートーメー小と門中がやゆらあんすかまで似ちょる
'いったーとーとーめーぐゎーとぅわったーとーとーめーぐゎーとぅ'いちむんがやゆら 'あんすかまでぃにちょる
'ittaa tootoomee tu wattaa tootoomee tu 'ichimuN ga yayura 'aNsuka madi nichooru
○お前達の仏壇とうちの仏壇と一族だからなのかそれほどまで似ている 
(沖縄の仏壇はどこの家もほぼ同じで似ているのが当たり前ですが・・・)



八、(男)汝達がや我んね 餓鬼んでぃる云ゅしが カラス小とぅかてぃてぃ 芋どぅ我んね喰らどぅ
'いったーがやわんね がちんでぃる'いゆしが カラスぐゎーとぅかかてぃ
'んむどぅわんねくらどー
'ittaa ga ya waNnee gachi Ndi ru 'iyushiga karasugwaa tu kakati 'Nmu du waNnee kara doo
○お前達がか?私は食いしん坊だといっているが 塩辛をおかずにして芋を私は食べただけ
Posted by 木村 えい子 at 2009年05月19日 23:27
木村えい子さん

コメント大変ありがとうございます。
昔、一度訳してみたものの手に負えずほったらかしておりました。

いろいろご指摘の点を考慮してもう一度訳してみました。

しかし、「缶々」のところ、迷います。
「貫禄のある様」のほうが合っているような気がしております。
トートーメー小は位牌がよろしいでしょうね。

面白い歌です。
ユーモラスで、すこしえらそうなおじーをいじっていて。

またお気づきやご指摘ありましたら、お教えください。
ありがとうございました。
Posted by たるー(せきひろし)たるー(せきひろし) at 2009年05月22日 10:28
たるーさん、一生懸命勉強して訳したのを(頭が下がりますウートートー)、全然勉強もしたことがないリキランヌーの私が、言うのも心苦しいですが、
私のこの唄に対するイメージも余計かもしれませんが書かせてください。

この唄は滑稽な明るい唄ですよね。
昔はこんなおじーが村に一人ぐらいは居たかもしれない。居たはず と思うとおもしろいですね


ダイサナジャー

※だれたふんどし。ピシッとしてないでもう少しで頭が?見えるかもよ~見たいな感じ

二、(女)くゎ缶々持ち何処んかい行めが(男)又ん鯨ぐぬ寄てが又居ゆら

※一斗缶引っさげてどこに行かれるんですか~ またも鯨たちが寄って居ないかな(もし寄っていたら、缶に入れて持って来よーかな 下心?)

※ くゎ缶 =一斗缶 くゎくゎん くゎんくゎん(丁寧語?) とも言う

※ 鯨ぐ =鯨の仲間 鯨の部類  鯨類  例 ヒートゥー とか 
     この唄ではいっと缶に入るくらいの大きさの魚でしょう

※ まーんかい行めが = どこに行かれるんですか~ どこかお出かけです   か
(貫禄)を持った格好だとマーンカイメンセーガ (メンセーイビーガ) 又は マーニ メンセービーガ  イメンセーガ とかいうはずです。これでも唄えますよね




四、汝達がや我んね アマン小どやるい ちんけーらしげーらし 尻たっちゅうしみてぃ
'
※ お前達は私の事をはヤドカリと思っているのか? 転がし転がし 尻たたせをさせて (私をヤドカリの如く乱暴に扱って)
今風に言うと、休日の何もしない旦那で明るく?粗大ごみ扱いされている感じかな?


着物を変えさせ変えさせて尻をたたせて

着物位は自分で着替えますよ。多分
そんなオジーを相手に、そんな事をしてもおもしろくないし(つい本音が・・・)


あっちゃめー小にも同じ感じの唄がありますね。
他にも同じ感じの唄がありますが、早弾きとかでは。  
 例えば ここは私の出番よーと思ったら、相手をちんけーらしげーらししてでも、目立つ良い場所で踊りましょう。
でも本当にチンケーラシたらいけませんよ。あくまでその気持ちでという事で
皆仲良く楽しく踊りましょうね
 


五、(女)尻肉やぬぎて何処かいめーがウスメ (男)家賃小や取たい あぬひゃー又前かい


※ 尻の肉は脱げて何処にいかれるのか おじいさん 家賃が入ったので(小遣い) あいつの又前に

※ 尻肉やぬぎて =尻の肉は脱げて   
 お尻の肉も若いとプリンプリンしていいですが、年取るとたるんでしまうんですね。それでもあいつ(彼女)がいるから可愛いというか、羨ましい限り



七、(男)汝達トートーメー小と我ったートートーメー小と一門がやゆらあんすかまで似ちょる

※ 位牌 =イヘー
仏壇 位牌 すべてをひっくるめてトートーメーと言いますが私の中ではトートーメーはトートーメーだな。

例えば縁もゆかりもない人のところに行って 「お前達の位牌とうちの位牌と一族だからなのかそれほどまで似ている」 としみじみ言われたら・・・笑ってしまいますね

'


八、(男)汝達がや我んね 餓鬼んでぃる云ゅしが カラス小とぅかてぃてぃ 芋どぅ我んね喰らどぅ


※お前たちはが私を食いしん坊(おいしいものばかり食している  つまり贅沢)といっているが 塩辛をおかずにして芋を食べたんだ


と言う感じで私は、捉えてますしそんなイメージを描きながら唄ってます。
随分長くなりすみませんでした
Posted by 木村 えいこ at 2009年05月22日 22:27
木村さん

>あっちゃめー小にも同じ感じの唄がありますね。

「チンケリリ ケリリ 後原にケリリ 港小にケリリ あさぎナビ小」ですね。

この場合の「チン」とは「着物」だと思いますが。

「ちんけーらしげーらし」は「転がす」「もてあそぶ」くらいの意味なのでしょうか。

いろいろご指摘ありがとうございます!

また調べてみますね。
Posted by たるー at 2009年05月24日 08:20
大阪で沖縄民謡を勉強しております。
いつも,参考にさせていただいています。本当にとても勉強になります。
ありがとうございます。これからも楽しみにしております。

さて,ダイサナジャーの「くじらぐ」についてです。

うちの師匠は「鯨の糞」だと言ってました。
「よくわからないけど,価値があったらしいよ」。と言っていたので,調べてみました。

そしたら,マッコウクジラの糞は「竜涎香(りゅうぜんこう)」と呼ばれる超高級な香料の材料になるそうです。
金と同じような価値があり,17世紀の書物では琉球が大きな輸出国だったと記されているそうです。

おじいさんは,缶々持って,鯨の糞を取りに行ったのではないでしょうか?
Posted by yuuna*nao at 2009年10月02日 16:53
yuuna*naoさん

いつもご利用ありがとうございます。
そして貴重な情報ありがとうございます。

すこしネットでしらべてみましたらとても貴重で高価な香料ですね。

琉球王朝は、たしかにそれを集めていたようです。

ですから、おっしゃるように、このダイサナジャーさん
海岸にカンカンをもって竜涎香をさがしにいった話だとしても
史実には矛盾しないようです。

とても勉強になりました。

そして、あとは「ぐじらぐ」の「ぐ」が
「・・・たち」ではなく「糞」を意味するという根拠があると
すっきりとするのですが。

沖縄の海に出かけるときの楽しみが増えました!(笑)

ありがとうございます。
Posted by たるー at 2009年10月04日 09:24
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