2008年08月22日

ハワイ節

ハワイ節

作詞作曲 普久原朝喜

(女)情あてぃ里前 旅いもち後や 人勝い儲きてぃ戻てぃいもり (サヨサー) 御願さびら
なさき'あてぃさとぅめ たび'いもち'あとぅや ふぃとぅまさい もきてぃむどぅてぃ'いもり (さよさー)'うにげさびら
nasaki 'ati satume tabi 'imochi 'atu ya hwitu masai mokiti muduti'imori (sayosaa)'unigesabira
情けをもって貴方 旅に行かれた後は人より儲けてお戻りください お願いします
語句・あてぃ …をもって。(参考)「情けあてかくせ 野辺の花薄 二人が玉の緒の惜しさあらば」(情けをもって隠してくれ、野辺のすすきよ 二人の命を惜しいと思うなら。)(沖)。・いもち 行かれた。<いもーち<いめーん 「おいでになる。いらっしゃる。いる・行く・来るの敬語」(沖)。・いもり …していらっしゃい。<いめーん。(同上)・もきてぃ 儲けて。稼いで。<もーきてぃ<もーきゆん 普通「もーきてぃ」と発音するが琉歌の八八八六(サンパチロク)という字数制約のため長母音が短母音化している。(詩的許容、ポエティックライセンスという。)


(男)四、五年ぬ内に人勝い儲きてぃ戻てぃ来ゅる御願げしちょてぃ呉りよ (サヨサー)願てぃ呉りよ
しぐにんぬ'うちにふぃとぅまさいもきてぃむどぅてぃちゅる'うにげしちょてぃくぃりよ にがてぃくぃりよ
shiguniN nu 'uchi ni hwitumasai mokiti mudutichuru 'unige shichotikwiriyo nigatikwiri yo
四、五年のうちに人より儲けて戻ってくるようお願いをしておいてくれよ 願ってくれよ


(女)志情ぬ言葉朝夕忘りらん 肝に思染みてぃ御待ちさびら(サヨサー)気張てぃいもり
しなさきぬくとぅば 'あさゆわしりらん ちむに'うみすみてぃ'うまちさびら ちばてぃ'いもりあ
shinasaki nu kutuba 'asayu washiriraN chimu ni 'umisumiti 'umachisabira chibati'imori
真心の言葉、朝晩忘れられない 心に思い染めてお待ちしましょう 頑張ってきてください


(男)気にかかる事や親の事びけい 情あてぃ無蔵よ 親ゆ頼む(サヨサー)孝事方頼む
ちにかかるくとぅや 'うやぬくとぅびけい なさき'あてぃんぞよ 'うやゆたぬむ こーじがたたぬむ
chi ni kakarukutu ya 'uya nu kutubikei nasaki 'ati Nzo yo 'uya yu tanumu koojigata tanumu
気にかかることは親の事ばかり 情けをもってお前親を頼む 孝行を頼む
語句・びけい ばかり。・こーじがた 親孝行。


(女)親がなし事や 今やかん勝る 孝事方すむぬ 心配やみそな (サヨサー)心配やみそな
'うやがなしくとぅや なまやかんまさる こーじがたすむぬ しわやみそな しわやみそな
'uyaganashi kutu ya nama ya kaN masaru koojigata sumunu shiwa ya misona shiwa ya misona
親御様の事は今よりも勝る孝行をするからご心配なさらないで
語句・うやがなし 親御様。<うやがなしー<うや 親。+かなしー 様。「尊敬の意を表す接尾辞。」 ・やかん よりも。<やか …より。+ も ん。強調。・すむぬ するから。<す すん、しゅん の語幹。+むぬ …ので。「活用する語の『短縮形』につく」(沖)。「…から」以外に「…ものを」「…のに」の意味もある。


(男)出船や目ぬ前 胸や張り詰てぃ 先立ちゅるむぬや 涙びけい (サヨナー)涙びけい
'んじふにやみぬめ んにやはりちみてぃ さちだちゅるむぬや なみだびけい
'Njihuni ya mi nu me Nni ya harichimiti sachidachuru munu ya namidabikei
出船は目前 胸は張り詰まり先立つものは涙ばかり
語句・みねめ 目前。<みーぬめー 先述の「詩的許容」で短縮されている。


(女)別り路ぬ那覇港 悲しさや里前 袖濡らす涙忘てたぼな (サヨナー)忘てたぼな
わかりじぬなふぁこー かなしさやさとぅめ すでぃぬらすなみだ わしてたぼな
wakariji nu nahwakoo kanashisa ya satume sudi nurasu namida washiti tabona
別れ路の那覇港 悲しいことよ あなた 袖濡らす涙忘れてくださらないで
語句・かなしさや 悲しいことよ。 この場合「や」は格助詞ではなく詠嘆を表す終助詞だろう。「悲しいわね」と意訳できる。


普久原朝喜作品。

沖縄からのハワイへの出稼ぎ、移民は1899年から始まる。
背景に「琉球処分」により沖縄県となったが、日清戦争などの影響で大正期にきびしい不況が続いた。
いわゆるソテツ地獄である。

また土地改革により私有地を得た農民が土地を売却したりして渡航費用を得た。
始めは男性による出稼ぎが多く、ハワイでは過酷なサトウキビ作業だった。

普久原朝喜自身、困窮する沖縄から出稼ぎで大阪に行った。
ハワイ節に歌われている歌詞には朝喜の思いも深くこめられているのかもしれない。

わたしは亀屋朝仁のCDで、この唄を聴いた。
三番の女性の歌詞で、最後は「気張ていもり」ではなく「御待ちさびら」としてある点。
そして、最後の「別り路・・」の唄はなく、その前の「出船・・」を男女で歌っている点。
が、上の歌詞とは違っている。

曲調は「汗水節」にも似ているが、「宮古根」にもよく似ている。





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Posted by たる一 at 18:56│Comments(0)は行
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