2008年08月14日

砂持節

砂持節
しなむちぶし
shina muchi bushi


一、阿良の浜砂やヨ 持てば禁じられて(ゼイサー ゼイサー ゼイサー)たんで西泊(ハイヨ)持たちたぼり(ゼイサー ゼイサー ゼイサー)'あらぬしなはまやよ むてぃばちじらりてぃ(ぜいさー ぜいさー ぜいさー)たんでぃ 'いりどぅまい(はいよ)むたちたぼり(ぜいさー ぜいさー ぜいさー)
'ara nu shinahama ya yo mutiba chijirariti (zeisaa zeisaa zeisaa)taNdi 'iridumai(haiyo) muchitabori (zeisaa zeisaa zeisaa)
阿良の砂浜は持つと禁じられて お願いです西泊 持たせてください
語句・あら 伊江島の地名。「旧伊江港あたり」(「島うた紀行」)らしい。・ちじらりてぃ 禁じられて。<ちじゆん 禁じる。・たんでぃ どうかお願いです。 <たぬでぃ 頼んで。「どーでぃん」とも言う。


二、畑やハンタ原 道やクビリ道 思ゆらば里前 探めていもり
はるやはんたばる みちやくびりみち 'うむゆらばさとぅめ とぅめてぃ'いもり
haru ya haNtabaru michi ya kubiri michi 'umuyuraba satume tumethi 'imori
畑は険しい高地の畑 道は小さい坂 思うなら貴方 探していらしてください
語句・はんたばる 「険しい高地の畑」(琉)。 <はんた 端。崖(のふち)(琉) ・くびり
 小さな坂 <小+坂(ふぃら)→く+ふぃら→くびり ・参考 「じっそう節


三、畑出じて見れば うく豆の香ばさ 夕呼だる女郎の香ばさ
はる'んじてぃみりば 'うくまみぬかばさ ゆゆだるじゅりぬかばさ
haru 'Njiti miriba 'ukumami nu kabasa yu yudaru juri nu kabasa
畑出てみると インゲン豆のとてもいい香り 夜に呼んだ女郎のいい香り
語句・うくまみ インゲン豆。<'うくまーみ 


四、真謝原の芋や一根から三笊 赤嶺の小堀 洗い所
まじゃばるぬ'んむや ちゅむとぅからみばき 'あかんにぬくむい 'あらいどぅくる
majabaru nu 'Nmu ya chumutu kara mibaki 'akaNni nu kumui 'araidukuru
真謝原の芋は一つの根からザル三つ(もできる) 赤嶺の池は(それを)洗うところ
語句・ばき ざる。「底が四角で、底を中心に丸く竹で編み上げたざるをいう」(沖)。 ・あかんに 地名「赤嶺」の古い呼称。<あかんみ 「akaNmi」の「m」と「n」とが入れ替わったもの。・くむい 「池。沼。自然のもの・人工の溜池のどちらもいう。庭園の池はichiという」(沖)。


(「島うた紀行」より)
二、ぱるやぱんたばる 道やクビリ道 思ゆらば里前 探めていもり 
ぱるやぱんたばる みちやくびりみち 'うむゆらばさとぅめ とぅめてぃ'いもり
paru ya paNtabaru michi ya kubiri michi 'umuyuraba satume tumethi 'imori
畑は険しい高地の畑 道は小さい坂 思うなら貴方 探していらしてください
語句・ぱる 畑。山原、伊江島方言では「h」が「p」と発音される場合がある。(例)花→(本島)はな。 (山原)ぱな。など。


三、ぱる出じて見れば うく豆の香ばさ 島の美童の匂い香ばさ
ぱる'んじてぃみりば 'うくまみぬかばさ しまぬみやらびぬにうぃかばさ
paru 'Njiti miriba 'ukumami nu kabasa shima nu miyarabi nu niwi kabasa
畑出てみると インゲン豆のとてもいい香り 村の娘の匂いはいい香りだ


唄の背景は「島うた紀行」に詳しい。
十年に一度行われる地割(地分け)という制度により、時として荒地が割り当てられると砂地の砂を運んで土地を改良したという。阿良の浜の「砂をとると台風時に波が岩盤に叩きつけられ、潮が畑や民家まで飛び散り大変なのである。また、そこは昔の船着場(港)であり、船の出入りにも影響する。当初、阿良の浜の砂採集認められていたが、浜の環境変化によって禁止になったという。そこで西泊という浜の番人は農民の砂採取を禁止し、もっと西の方へ行きなさい、と追い返したのである」(「島うた紀行」)
こうした事情を背景にしてつくられた歌詞は一番のみであろう。
あとは、後に加えられたりしたものだろう。

囃子言葉の「ゼイサー ゼイサー ゼイサー」も珍しいし、この唄特有のものだ。
この「囃しことばはヤグイ(志気を鼓舞する掛け声)である」(同上)らしい。

「ぱる」「ぱんたばる」などの発音は、古語の発音が残ったもの。
たとえば、「母」は現代標準語で「はは」と発音するが
8世紀 奈良時代は「ぱぱ」 papa
16世紀 江戸時代は「ふぁふぁ」fafa
17世紀 同上 「はは」haha という変化を経ている。

これらが中央から離れる地方には残されている。
奄美、宮古、そして山原、伊江島地方には「p」「f」音が残る。
奄美地方はこれらが混在していて
「花」は
たとえば
喜界島 ぱーなー paanaa
      ぱな    pana
     ふぁな   fana
などの呼び方が混在している。

伊江島方言は、琉球方言のなかでも「北琉球方言」のうち「沖永良部与論北部諸方言」に分類される。
(「琉球方言概説」)
伊江島で、どう発音するのかいまのところ直接的な資料はないが、
今帰仁方言データベースによると
畑 paruu ぱるー 
となる。




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Posted by たる一 at 19:27│Comments(2)さ行
この記事へのコメント
今日初めて読ませて頂きました。率直な意見ですが、歌詞の意味、訳の仕方がイマイチ曖昧で間違っているところが多く見受けられました。とても内容は良いので、もう少し調べてから載せた方が良いのでは?いきなり不躾にスミマセンm(__)m 本土の方ですか?
Posted by ボニボニ at 2008年08月15日 07:15
ボニボニさん
コメントありがとうございます。
率直なご意見、参考になります。

「イマイチ曖昧」の点ですが、「これまでの曲の一覧」に書いておりますように
私の訳は「直訳」で止めております。曲の雰囲気にあわせた意訳は各自ご自由にお願いしています。それの理由については、そちらをお読みください。
「間違っているところ」、これは人間ですしヤマトンチュですから、仕方ないと思います。それを具体的にお示しくださいましたら今後の参考にもなりますので訂正したり、検討したりさせていただくのですが。できましたら具体的なご指摘をいただけますか?

今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by たるー at 2008年08月15日 08:43
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