2008年03月02日

干瀬節 (舞踊「綛掛之踊」) 

干瀬節
ふぃしぶし
hwishi bushi
語句・ふぃし 「満潮の時は隠れ、干潮になるとあらわれる岩や洲。」(沖)。


(舞踊「綛掛之踊」)
[()は囃子言葉。発音、意味は省略]

七読と二十ん(よ)綛掛けておきゆて里があけず羽(よ)御衣よすらね
ななゆみとぅはてん かしかきてぃうちゅてぃ さとぅが'あけずば んすゆしらに
namayumi tu hateN kashikakiti uchuti satuga 'akezuba Nsu yu shirani
上等の(布を織るために)糸を綛に掛けておいて 貴方のトンボ羽(のように美しい)御着物を作りたいな
語句・ななゆみとぅはてん 七読と二十読。「読」(ゆみ)とは「織り幅に入る縦糸の本数を段階的に表示した(布目の密度の)単位で、一[ひと]ヨミは(計算上)糸80本;目の粗い七[なな]ヨミ〔560本〕から、(上布など)目の細かい廿[はた]ヨミ〔1600本〕まである」(琉) 「読」とは「数え」と同義。 普段着用の七読み、と上布用の二十読→「七読」は付け足しで、ここでは上布を意味するという説もある。(島袋盛敏氏) 琉球語辞典では「(ふだんぎ用に)七読み[ななよみ]や(上布用に)廿読[はたよみ]で、織る糸を」というように両方、あるいはいろいろ用意して、という意味に解釈しているものもある。  ・かしかきて (糸を)かせに掛けておいて → 機織のための糸を準備しておいて 「綛掛 かせかけ」(かしかき)は、機織のための製経の工程をあらわす言葉。昔は女性の仕事であった。糸(絹や木綿)を一定の力で張り、まず小さな?(かせ kashi)から枠(わく)に巻き取っていくときに、縦糸の本数を決めていく。その密度の違いが「読」であらわされる。 ・あけずば トンボの羽(のように薄く美しい) 安冨祖流は「あけず」。野村流は「あけじ」と歌う。 ・んす 着物(ちん)の敬語  ・ 文語で「を」  ・すらに したいな→作りたいな <しゅん 文語の未然形は「しら」 + に ・・・したい 希望。 

舞踊の「綛掛之踊」から、2曲を解説する。
「干瀬節」と「七尺節」。今回は「干瀬節」。

題名の「干瀬」は
千瀬に居る鳥や満潮うらみゆり わみや暁の鳥どうらむ
ふぃしにうるとぅいや みちしゅ'うらみゆい わみや'あかちちぬとぅいどぅ'うらむ
hwishi ni uru tui ya michishu 'ura 'uramiyui wami ya 'akachichi nu tui du 'uramu
干瀬に居る鳥は満潮(を)恨み、私は暁の鳥(が鳴いて 貴方が帰る)を恨む
という原歌からきている。

昔は女性一般の仕事であった機織りの仕事を主題にした踊り。
綛掛は、その糸を「綛」(かせ。 発音は「かし」)に巻いたものを、一定の力を加えて枠(わく)に巻き取っていく。
この巻取りの回数で出来上がる着物の糸の密度が決まる。
その密度の単位が「読」(ゆみ)であり、普段着用の荒い七読から上布用の二十読(はてーん<はたゆみ)まである。
沖縄の織機について沖縄語辞典に詳しいので引用しておく。

「ゆみ」について
「織機の筬(おさ、huduci)の粗密をあらわし、同時に経糸の密度(布の地合い)を示す語。織りの細かさ。おさ羽40枚をcujumi(一読み)とする。1枚の間に経糸2本を通すのでcujumiは経糸80本である。nanajumi(七読み)からhateeN(二十読み)まである。」

「ふどぅち」について
「おさ(筬)。織機の付属具の名。経糸の位置をととのえ、経糸を織り込むのに用いる。薄い竹片をつらねて櫛形にし、上下にわくをつけたもの。普通の布を織るときは経糸を二本ずつ通すが、'usjamiiという冬物を織る時は四本ずつ通す。筬の種類はnanajumi(七読み)からhatajumi(二十読み)まであり、一よみ(cujumi)に経糸80本を通す。そこで筬の種類と経糸の数とは次の通りとなる。nanajumiすなわちnaneeN(七よみ、560本)、eeN(八よみ、640本)、kukuniiN(九よみ、720本)、tiiN(十よみ、80本)、ciiN(十一よみ、880本)、teeN(十二よみ、960本)、nuuN(十三よみ、1040本)、iiN(十四よみ、1120本) iciiiN(十五よみ、1200本)、miiN(十六よみ、1280本)、tuunanajumi(十七よみ、1360本)、tuujajumi(十八よみ、1440本)、tuukukunujumi(十九よみ、1520本)、hatajumiすなわちhateeN(二十よみ、1600本)。nanajumiが最も粗く、粗末な芭蕉布などで、hatajumiはきわめて細かい上等の織物となる。」

舞踊では紅型をつけて右肩を袖抜きにし、綛と枠を持って踊る。
(参考、沖縄県の「琉球舞踊」)





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Posted by たる一 at 09:44│Comments(2)は行
この記事へのコメント
3月15日に「かしかき」の地謡をするんですけど、この曲はメロディーに歌詞が載らなくて難儀しました。
特に「かきてぃ」のところはマイッタ!
はじめ「七読・二十読」の意味が分からなくて、「彼氏からの手紙を読み返すのだろうか?」と思ってましたよ。
Posted by コロリ at 2008年03月05日 08:46
コロリさん
かしかき地謡がんばってください。
「かきてぃ」タイミングが難しいですね。
Posted by たるー at 2008年03月08日 08:43
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