2008年02月10日

トゥータンカニ節 2

トゥータンカニ節
とぅーたんかーにー
tuutaN kaanii


歌三線 嘉手苅林昌 

、(えー)トゥータンカニえー 兼久のナビ小にうち惚れて(すら)うち惚れて
とぅーたんかーにーえー かにくぬなびぐわに'うちふりてぃ(すら)'うちふりてぃ
tuutaNkaanii 'ee kaniku nu nabigwa ni 'uchihuriti (sura) 'uchihuriti
トゥータンカニ(不明) おい 兼久(地名)のナビちゃんに惚れちゃって 
語句・かにく 中頭の嘉手納と西原、それから南城市に「兼久」がある。


、(えー)船のみゆんど 観音堂の先から船のみゆんど(すら)船のみゆんど
ふにぬみゆんど かんぬんどーぬさちから ふにぬみゆんど (以下繰り返し 略)
huni nu miyuN doo kaNnuNdoo nu sachi kara huni nu miyuN doo
船が見えるぞ 観音堂の先から船が見えるぞ
語句・かんぬんどー 「観音」は仏教の仏の一種だが、一般に海の航海の安全を守ると信じられている。主な観音堂は首里や金武などが知られているが各地にある。


三、(えー)アンマと主 ちゅら夫持てぃばど うなあがる(すら)うなあがる
'あんまーとぅすー ちゅらうとぅむてぃばどぅ 'うな'あがる
'aNmaa tu suu chura utu muti ba du 'una 'agaru
お母さんとお父さん 立派な夫を持てばこそ 名声があがる
語句・すー 平民のお父さん 「しゅー」という発音もある。・ちゅら 立派な 直訳では「美しい」だが、立派、盛大などの意味もある。「ちゅらすがい」=盛装。  「ちゅらうだび」=盛大なお葬式。・うな 名声 <うなー 'unaa


四、(えー)またんみゆんで ケラマの先からまたんみゆんで (すら)またんみゆんで
またんみゆんでー きらまぬさちから またんみゆんでー 
mataN miyuN dee kirama nu sachi kara mataN miyuN dee
又も見えるとは 慶良間(島)の先から 又も見えるとは
語句・みゆんでー 見えるとは <みゆん 見える + でぃ di  と。 + やya は。 di+ya= dee


五、(えー)トゥータンカニや すばやにいちゅみ 門にいちゅみ (すら)門にいちゅみ
とぅーたんかーにーや すばやに'いちゅみ じょーに'いちゅみ
tuutaNkaanii ya subayaa ni 'ichumi joo ni 'ichumi
トゥータンカニ(不明)は ソバ屋に行くか? 門に行くか?
語句・すばや ソバ屋 <すばやー subayaa  ・いちゅみ 行くか? <いちゅん 行く 語幹いちゅ + み 「一般疑問文の文末の動詞・形容詞の語末に見られる形[終止形の語末のーnを ーmに変え、これに疑問詞(ー)iを添えて作られる]。」(琉)


六、(えー)アンマと主 ちゅら夫持ちゃあい うなあぎらな (すら)うなあぎらな
'あんまーとぅすー ちゅらうとぅむちゃい 'うな'あぎらな
'aNmaa tu suu chura utu muchai 'unaa 'agira na
お母さんとお父さん 立派な夫を持って 名声上げよう
語句・むちゃい 持って <むちゅん 持つ連用語幹 much + yai ・・して 融合してmuchaai →muchai
あぎらな あげよう <あぎゆん あげる 未然形 あぎら + な 「《接尾》[未然形について](・・し)たい[希望の意思]。」(琉) 


前回のトゥータンカニ節に続く。
園田青年会のエイサー地謡で使われる林昌の歌によるトゥータンカニ節。
CDから聞き取り。
歌詞カードには一部不正確な部分がある。

全体の意味としては、一貫性はあまりないように感じる。
船が見える、と言ったり、両親に「立派な夫を持ちたい」といったり。
このほかには

えーあんまーとすー他島の二才達や我ねー好かんどー (すーらー我ねー好かんどー)

という歌詞もある。(京都琉球遊ゆう会のHPより)

エイサーの歌というのはこういう場合が多い。
前回のトゥータンカニ節に比べて節は短い。

琉歌のサンパチロク形式ではない。
文字数も歌詞によりばらばらである。
そういう意味では洗練された琉歌以前の、庶民に伝承された唄という印象がある。
したがって唄自体に、面白さ、パワー、素朴さを感じる。



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Posted by たる一 at 10:35│Comments(2)た行
この記事へのコメント
はじめまして。
早速ですが、”トゥータンカニ”の意味ですが、
奄美のシマ唄の”行くんにゃ加那”という唄で、元は遊び唄だったらしく、その歌詞に”トタンカネクヮ 店の番頭して トタンカネクヮ 名瀬の屋仁川(ヤンゴ)に 打ち捨てて”というのがあります。
この時の”トタンカネ”というのは”取った金”のようで、店の番頭していながら取った(くすねた)お金を飲み屋に使ってしまったという意味だそうです。
”一、(えー)トゥータンカニえー 兼久のナビ小にうち惚れて(すら)うち惚れて”というのも、これと同じ意味じゃないでしょうか。
元々、船乗りたちの遊び唄だったらしいので、どちらが先かはわかりませんが、伝わったんだと思います。
Posted by mizuma at 2008年02月10日 12:25
mizumaさん
さきほど奄美民謡に詳しい友人から
「行きゅんな加那」と同じ系列の歌だと教えられ
本でしらべて発見したところでした。

「トタンカネクヮ」が「取ったお金」という証拠に近いわけですね。
ありがとうございます。

「島うた紀行」には
「日本本土の数え歌系とみられているが、近年チベットの鳥葬の歌が奄美の『行きゅんな加那節』とメロディーが極似しているのも話題になっている」
とあり、ルーツ論争があるようです。

奄美の「行きゅんな加那節」と沖縄の「トゥータンカーニー」も一聞すると違うけれど、そういわれると確かに似ていますね。
Posted by たるー at 2008年02月10日 18:09
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