2007年07月13日

月ぬかいしゃー節

月ぬかいしゃー節
ぬかいしゃぶす
tsiki nu kaisha bushi
月が美しい
語句・ 日本の古語の発音を残しているといわれている。月(つき)の発音に注意したい。「」は「い」の口をして「う」というのに似ている。(「沖縄語入門ーたのしいウチナーグチ」西岡敏 他)「つ」は、やや強引に言えば、口を横に開いて「つく」と発音しても似たようには聞こえる。
☆この中舌母音の「ひらがな表記」を今後、ウ段に「」(たとえば「ち」ではなく「つ」)というふうに統一する。(これまでは辞書にあわせて私の表記が、イ段であったり、そうでなかったりまちまちだった。)


一、月ぬかいしゃ十日、三日 女童かいしゃ十七つぃ
ぬかいしゃーとぅかみーか みやらびかいしゃーとぅななつ
tsiki nu kaishaa tukamiika miyarabi kaishaa tunanatsi
月が美しい十日三日(十三夜) 娘が美しい十七歳
語句・かいしゃー 美しい<かいしゃーん(美しい)・とぅか 十日は「とぅっか」と発音するが十三日は「とぅかみーか」(石)・とぅーななつ 十七(歳)

(ホーイーチョーガ)
不明


二、東からあーりおる大月ぬ夜 沖縄ん八重山ん照らしょうり
'あーるから'あーりおる 'うふつぬゆ 'うくなん やいまん てぃらしょーり
'aari kara 'aarioru 'uhutsiki nu yu 'ukinaN yaimaN tirashoori
東から上がられる満月の夜 沖縄(本島)も八重山も照らしてください


三、あんだぎなーぬ月いぬ夜 ばがけら遊びょうら
'あんだぎなーぬ ついぬゆ ばがけら 'あさびょーら
'aNdaginaa nu tsiki i nu yu bagakera 'asabyoora
あれだけの月の夜 われわれ一同遊びましょう
語句・あんだぎなーあれだけ あれほどの・ 月「い」の「い」の意味が不明。誤字か?・ばがけらわれわれ一同


四、寺の大札んが絹花黄金花 咲かりょうり
てぃらぬ'うふふだんが 'いちゅぱに くんがにぱな さかりょーり
tira nu 'uhuhuda Nga 'ichupani kuNgani pana sakaryoori
寺の大札に絹(のように美しい)花 黄金(のように大切な)花 (を)さかせてください


五、びらまぬ家ぬ東方んがムリク花ぬ咲かりょうり うり取るぃかり取るぃなつきばし びらーまぬ家ぬ花ぶんな
びらまぬやーぬ'あーんたんが むりくぱなぬさかりょーり 'うりとぅるかりとぅるなつきばし びらまぬやーぬはなぶんな
birama nu yaa nu 'aaNta Nga murikupana nu sakaryori 'urituri karituri natsikibashi birama nu yaa nu hanabuNna
愛しい貴方の家の東の方に ムリク花をさかせて それを取る あれを取る名目でもって 貴方の家の花(季節はずれ?)
語句・びらま 愛しい貴方 ・むりくぱな マツリカ ジャスミンの一種 花の香りをお茶にいれて楽しむ ・はなぶんな意味不明だが 「ぶんななる」季節はずれの結実 というのがあり、それから類推できないか?



七、女童家ぬ門なんが 花染手布ば取り落し うり取るぃかり取るぃなつぃきばし 女童家ゆ見舞いす
みやらびやーぬぞーなんが はなずみてぃさじばとぅる'うとぅし 'うりとぅるかりとぅる なつきばし みやらびやーゆみまいす
mirabiyaa nu zoo naNga hanazumitisaji ba turi'utushi 'urituri karituri natsikibashi miyarabiyaa yu mimaisu
娘の家の門に 花染め(の)手ぬぐい(を)取り落として それを取る あれを取る口実にして 娘の家に会いにいく
語句・なんが ・・に 「んが」と同じ。・かり あれ ・なつ口実 ・みまいす 会いに行く


八、釜土ぬふつぃぬあっぴゃーま のーどぅのーどぅ んまさーるぃ 煙草ぬ下葉どぅんまさあるぃ 茶飲みばーやんがざぬ
かまどぅぬふつぬ 'あっぴゃーま のーどぅ のーどぅ んまさーる たばくぬしちゃばどぅんまさーる ちゃーぬみばーやんがざぬ
kamadu nu hutsi nu 'appyaama noodu noodu Nmasaari tabaku nu shichaba du Nmasaari chaa numibaayaNgazanu
カマドの口のびっくりさん 何が何がおいしいか? 煙草の下葉こそおいしいか?茶飲むなら病気しない(?)
語句・ふつ 口 ・あっぴゃーま 「あっぴゃ」は「意外な驚きのときに発する言葉」(石) それに「ま」(・・の人 ・・さん) それで「びっくりさん」と訳したがまったく解らない。・のーどぅ 何が ・んまさーる おししいか?<んまさーん おしいし +あん ある の疑問(?)・ちゃーぬみばーやんがざぬ 意味不明。 だがあえて訳すと<ちゃー(茶)+ぬみばー 飲めば +やん 病気+が(を) +さぬ しない 

(コメント)
月が美しいのは十三夜、娘美しいのは17歳。
と、それぞれ「完熟」?するまえのものが美しいという美意識ではじまる八重山を代表する童歌。
子供を寝かしつけるときに歌われたと聞く。

囃子言葉も後半の歌詞もよく意味がわからない部分が少なくない。
4番以降は「月」とは直接関係ない歌詞である。
5番6番は子供を寝かしつけるときに歌うにしては大人の歌ではある。

「月」などの発音に気をつけて歌いたい歌である。
メロディーも、他の曲にない美しさがある。

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Posted by たる一 at 23:07│Comments(5)た行
この記事へのコメント
はじめまして。いつも見させていただいています。
実はたるーさんもコンクールでお見かけしました。

あっぴゃーま=トービラーと聞きました。
煙草の下葉はおいしいけど、茶殻はおいしくないって、Gが言ってたよ。
だそうです。

南国のGはこころなしか大きくていやです…。
Posted by 通りすがり at 2012年01月30日 07:52
通りすがりさん

そうですか、それはどうもです。


あっぴゃーま=とーびーらーですか。

少し調べてみたいと思います。

ヒントをありがとうございました。

もしお会いしたらお声かけてくださいね。
Posted by たる一たる一 at 2012年02月04日 09:57
初めまして。
いつも拝見させて頂いています。

私し、三線初心者なのですが、自分の演奏をブログにアップして
練習の糧としているのですが、今回、「遊び庭」をアップするにあたり
たるー様の歌詞解説のページを私のブログにリンクを貼らせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?

よろしくお願い致します。
Posted by forspin1993 at 2012年02月05日 08:22
forspin1993さん

ありがとうございます。

ご活用いただき、沖縄文化を広めていただけたら幸いです。

また、なにかありましたらコメントください。
Posted by たるー at 2012年02月09日 23:42
解説まで丁寧にありがとうございます

とても役に立ちました(=^0^=)
Posted by ゆうゆ at 2012年03月19日 21:26
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