2007年06月07日

トゥバラーマ

トゥバラーマ
とぅばらーま
tubaraama
語句・とぅばらーま①女性から男性の恋人②歌の名(「石垣方言辞典」以下「石」と略す。)+ま 接尾語で「親愛の情を表す」(石) 「とぅばるん」には、訪れる 会いに行く、という意味もある。石垣島では死語だが与那国島では生きている(石)


仲道路から七けーら通け(ツィンダサーヨ ツィンダーサー)仲筋かなしゃーま相談ぬならぬ(イラ)(マクトゥニツィンダサー)んぞしーかぬしゃーまよ
なかどーみつから ななけーらかよけ(つんだーさーよ つんだー)なかすじかなしゃーま そーだんぬならぬ('いら)(まくとぅにつんださー)んぞしーかぬしゃーまよ
nakadoomiti kara nana keera kayoke (tsiNdasaa yo tsiNdasaa )nakasuji kanashaama soodaN nu naranu ('ira)(makutu nu tsiNdasaa) Nzo shi kanashaama yo
仲道路を七回(何回も)通って(も)仲筋(の)彼女(と)相談(恋の話)ができない
語句・けーら 回。


かなしゃままことのむぬゆやらば 唄ば聞き走りきんだらよ
かなしゃーま まくとぅぬむぬ やらば 'うたばしき ぱりきんだらよ
kanashaama makutu nu munu yaraba 'uta ba shiparikiNdara yo
貴女(よ)誠(真)のものであるなら唄を聞き走りくるだろうよ(きてくれよ)
語句・かなしゃーま男性から女性の恋人への「貴女」(石)には「かしゃーま」 ・こそ 強調の「どぅ」と同じ・やらば・・であるなら 未然形+ば 仮定条件・しき聞き <しくん 聞く ・ぱり 走り ・ 来る・だらよだろうよ


思て通らば千里も一里 又も戻らばもとの千里
'うむてぃかゆらば しんりん'いちり またんむどぅらばむとぅぬしんり
'umuti kayuraba shiNriN 'ichiri mataN muduraba mutu nu shiNri
思って通えば千里も一里(だ) またも戻るともとの千里


紺染みや藍しどぅ染める かなしゃとぅばんとぅや肝しどぅ染める
くんずみや 'あいしどぅすみる かなしゃーとぅばんとぅやきむしどぅすみる
kuNzumi ya 'aishi du sumiru kanashaa tu baN tu ya kimu shi du sumiru
紺染めは藍でこそ染める 貴女と私とは心で染める(染めあう)
語句・あい染料としての植物


染みて染みらば花の紺染め 浅染みや許したぼり
すみてぃすみらばぱなぬくんずみ 'あさずみやゆるしたぼり
sumiti sumiraba pana nu kuNzumi 'asazumi ya yurushitabori
染めて染めるなら花の紺染め 浅地(染め)は許してください


川ぬ水や海にどぅたまる 我んが思いやうらにどぅ染まる
かーらぬみじや'うみにどぅたまる ばんが'うむいや'うらにどぅすまる
kaara nu mizi ya 'umi ni du tamaru baN ga 'umui ya 'ura ni du sumaru
川の水は海に溜まる 私の思いはあなたにこそ染まる
語句・かーら川 「かー」は井戸 ・うら(男女区別なく)あなた



月と太陽とやゆぬ道通りょる トバラーマ心んぴとぅ道ありたぼり
とぅてぃだとぅやゆぬみつとぅーりょる とぅばらーまくくるんぴとぅみつ'ありたぼり
tiki tu tida tu ya yunu mitsi tuuryooru tubaraama kukuruN pitu mitsi 'aritabori
月と太陽とは同じ道お通りになる あなたの心も同じ道(で)あってください
語句・ 月 発音に注意したい。・ゆぬ同じ・とぅーりょーるお通りになる<とぅーるん 通る + おるん 尊敬体。



おおらかに愛や自然を歌い、伸びやかな声、そして情熱的な返し。
ある唄者がマイクをはずして大きな会場で聞いたこの歌は忘れられない。

本来は、農作業の帰り道や夜に歌われていたという。
どこからともなく、聞いた人が返しを入れる。

したがって歌詞も密かな恋の思いというより
伝われ!この思い!という歌の持つ力があふれている。

工工四は意外に単純であるが、しかし、人それぞれに装飾が許され
また長さも、返しもいろいろである。

喜舎場永珣著「八重山島民謡誌」によれば「昔とばらま節」という歌詞と歌い方があったという。

八重山民謡では与那国ションカネとともに代表的な唄であり、また本島民謡のナークニー、宮古民謡のトーガニアヤグなどと並ぶ曲である。


そして今もなお「トゥバラーマ大会」が開かれたり各地で歌い継がれ、また新しい歌詞が生まれてトゥバラーマは今にも生き続けている。

トゥバラーマの歌碑。
国道390号線を空港から走って市街地に入り、石垣平真郵便局をすぎた交差点にある。
(撮影 2014年2月9日 筆者撮影)






▲近くの大きなアコウの木が目印。



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Posted by たる一 at 06:09│Comments(1)た行八重山民謡
この記事へのコメント
「とばらーま」と単一化されたのは近年の話です、少なくとも80年位前は「とばらー」と言う曲で用途別に野唄用の「野とばらー」、祭などの道行き野唄用の「道とばらー」、屋敷内での儀礼唄用の「家とばらー」、掛け合い即興遊び用の「ばっかいとばらー」と八重山士族が節唄に直した「仲道節」がありました、与那国にも「とばるま」はありますし、西表島には正月世迎え用の「とぅばいらーま」が存在します。更に類型を辿ると宮古の「金島」や「唐金」と言った現在「伊良部トーガニ」にまとめられてしまった曲も類曲と言われています。ちなみに故古堅宗雄先生は生前伊良部トーガニばかり流れ出したのを憂慮してラジオ沖縄の放送でいきなり「伊良部トーガニ」の曲で地元城辺の伝統的歌詞で唄い「金島です」と紹介した事まであったそうです。ちなみに与那国のとばるまの「サーヨー」で打ち出す唄い方は伊良部トーガニに類似していると私は常々思っています。
まだまだ研究しなければなりませんね。
Posted by くがなー at 2011年03月07日 06:15
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