2006年11月24日

徳利小節

徳利小節
とぅっくいぐわーぶし
tukkui gwaa bushi


一、(女)我っ達家庭の成り内や夫大工やいびいしが取ゆる手間小や一日に四、五、六十貫取て居しが うの手間小や全部酒代 酒屋の奉公どそういびる かんせー家庭や持たらんむん今日どん酒飲で来いどんせ 我んねただや合点さん
わったーちねーぬなりうちや うとーせーくやいびーしが とぅゆるてぃまぐわや'いちにちにしぐるくじっくわんとぅてぃうしが 'うぬてぃまぐわーやむるさきでーさかやぬふーくーどぅ そーいびーる かんせーちねーやむたらんむん ちゅうどぅんさきぬでぃちーどぅんせー わんねーただやがってぃんさん
wattaa chinee nu nari'uchi ya utoo seeku yaibiishiga tuyuru timagwaa ya 'ichinichi ni shi gu ruku jikkwaN tutiushiga 'unu timagwaa ya murusakidee sakaya nu huukuu du sooibiiru kaNsee chinee ya mutaraN muN chuuduN saki nudi chiiduN see waNnee tada ya gattiN saN
私たち家庭の生業は、夫は大工ですが 取る賃金は一日に四、五、六十貫取っているが その賃金は全部酒代 酒屋の奉公こそしています。このような家庭は(長く)持たないもの。今日ももし酒飲んで来たものならば私はただでは納得しない。


二、ようそき 来ゅうる時でえむん
よーそーき ちゅーる とぅちでーむん
yoosooki chuuru tuchi deemuN
ほっとけ (旦那が)来る時だから


三、(男)主や酒飲で酔いとうしがバーチーや家ねえ居らんがやーいぇーバーチーいぇーくま開きれー主や今ど戻ゆしが
すーやさきぬでぃうぃーとーしが ばーちーややーねーうらんがやー 'えーばーちー'えーくま'あきれー すーやなまどぅむどぅゆしが
suu ya sakinudi wiitooshiga baachi ya yaa nee uraNgayaa 'yee kuma 'akiree suu ya nama du muduyushiga
おとうさんは酒飲んで酔っているが おばさんは家にはいないのかねえ おい!おばさん おい!ここ開けろ!おとうさんは今こそ戻ったのだが


四、(女)云るぐとぅするぐとぅ酔いとさやー
'いるぐとぅうぃとーさやー
'irugutu surugutu wiitoosa yaa
云うことすること酔っているよねー


五、(男)酒飲め酔いしる たみしどぅやる
さきぬめーうぃしる たみしどぅやる
saki numee wiishiru tamishi du yaru
酒飲んだら酔うことを試してみたのである


六、(女)今日や我親の六十一 御祝儀御祝ん当たとうしが 今日の御祝儀代や如何さびいが なー御祝儀代借てもうちい
ちゅうやわ'うやぬるくじゅう'いち ぐすーじ'うゆえーん'あたとーしが ちゅうぬ'うすでーやちゃーさびいが なーや'うすでー かてぃもう-ち
chuu ya wa'uya nu rukujuu 'ichi 'usudee'uyweeN 'atatooshiga chuu nu 'usudee ya chaasabiiga naa 'usudee kathimoochi
今日は私の親の61歳 ご祝儀御祝いもあたっているが 今日のご祝儀代はどうしますの?貴方ご祝儀代借りていらっしゃいますか?


七、(男)前手間百貫借てあたしが 前手間借やい 戻る道 酒飲み連中はい行逢てぃ店屋小にひり籠て うぬ銭さーい 酒打ち飲でぃ土産まで我ねー待ち来ちゃんでー
めーでぃまひゃっかんかてぃ'あたしが めーでぃまかやいむどぅるみち さきぬみ'えーじゅうはい'いちゃてぃ まちやぐわーにふぃりくまてぃ'うぬじんさーい さき'うちぬでぃ ちとぅ までぃわねむちちゃんでー
meedima hyakkaN kati'atashiga meedimakayai mudurumichi sakinumi 'eejuu hai'ichati machiyagwaa ni hwirikumati 'unu jiN saai saki 'uchinudi chitu madi waNnee muchichaN dee
前(の)給料 百貫借りてあったが、前(の)給料借りて戻る道 酒飲み仲間(に)ばったり出会い、店に入り浸り、そのお金で酒をすっかり飲んで、土産まで私は持って来た


八、(女)あんせー御祝儀代や如何さびーが
'あんせー 'うすでーやちゃーさびーが
'aNsee 'usudee ya chaa sabiiga
それではご祝儀代はどうしますの?


九、(男)今日の御祝儀代やぬびゆんてー
ちゅうぬ'うすでーやぬびゆんてー
chuu nu 'usudee ya nubiyuNtee
今日のご祝儀代は延期だよ


十(女)御祝儀代 ぬびゆる人ぬ居み
'うすでー ぬびゆるふぃとぅぬうみ
'usudee nubiyuru hwitu nu umi
ご祝儀(を)延期する人がいるか?

十一、(男)我から初みてぬびゆんて
わんからはじみてぃぬびゆんてー
waN kara hajimiti nubiyuNtee
私から初めて延期するよ


十二、(女)酒にふちりて酔いふりて義理恥ねらんゆむ男と一期何時まで儘ならりみ 我んねー今日居て出ぢゆさと
さきにふちりてぃゆいふりてぃじりはじねーらんゆむうぃなぐとぅ 'いちぐ'いちまでぃままならりみ わんねーちゅううてぃ'んじゆさ とー
saki ni huchiriti yuihuriti jiri haji neeraN yumu wikiga tu 'ichigu 'ichimadi mama nararimi waNnee chuu uti 'Njiyusa too
酒に溺れて(?)酔って気がふれて 義理恥ない嫌な男と一生いつまで一緒になれるか?私は今日から出ていくわ さあ!


十三、(男)夫ぬ酒小飲だんでぃち ごう口ひゃー口する女 妻ねーさんぐと出ぢて行き
うとぅぬさきぐわーぬだんでぃち ごーぐちひゃーぐちするうぃなぐ とぅじねーさんぐとぅ'んじてぃ'いき
utu nu sakigwaa nudaN dichi googuchihyaaguchi suru winagu tujinee saNgutu 'Njiti 'iki
夫が酒を飲んだと言ってぶつぶつ文句を言う女は妻にはしないから出ていけ!

十四、(女)出ぢて行くさ かふうしどー
'んじてぃ'いちゅさ かふーしどー
'Njiti 'ichu sa kahuushi doo
出ていくわ ありがとうよ


十五、(男)例い妻や居らんてん 妻やか愛さる徳利小 汝と我んと よう徳利 一期何時まで儘ならやー
たとぅいとぅじやうらんてぃん とぅじやかかなさるとぅっくいぐわー 'やーとぅわんとぅー よーとっくい 'いちぐ'いちまでぃままならやー
tatui tuji ya uraNtiN tuji yaka kanasaru tukkuigwaa 'yaa tu waN tu yoo tukkui 'ichigu'ichimadi mamanara ya
たとえ妻が居なくても妻より愛してる徳利 おまえと私と なあ徳利 一生いつまで一緒になろう

解説
(語句)
一、
・なりうち 生業(なりわい)
<なりゆち なりゆき てんまつ
・うとー 夫は
utu(夫)+ja(は)=utoo 
・せーく 大工
・ちゅーどぅん 今日も
どぅん 強意の助詞 ・・でも
・ちーどぅんせー もし来たものならば
ちー<ちゅん(来る)+どぅん(強意の助詞 ・・でも)+せー(ば)

・よーそーき ほっとけ
・でーむん だから

・うい 酔い 
<ういーゆんwiijuN (酔う)
・バーチー おばさん

・さきぬめー 酒飲んだら
さき(酒)+ぬみ<ぬみゆん(飲む)の已然形 + わ(ば)=ぬめー
・うぃしる 酔うことこそ
<うぃゆん + し(動詞について名詞化 「こと」)+る(=どぅ 強調)
・たみし 試し

・なー あなた
  相手の呼び方
  相手が最上の立場 むんじゅ 、ぬんじゅ 貴方様
      上の立場 'うんじゅ       貴方
  中(対等)の立場 なー         あんた お前さん
      下の立場 やー         おまえ
・かてぃもーちい 借りていらします?
かてぃ(借り)+もーち(いらし)+い(疑問の助詞)

・ひゃっかん 百貫
 当時の労賃は 一日一貫(2銭)
 一円は100銭=1000厘=50貫
 百貫は2円。 
 百日分の庶民の給料は、今なら仮に一日一万円として100万円?少し多すぎるような気がする。大げさに言っているのか?

・あんせー それでは
あんし(それで)+や(は)

・てー 

・うみ 居るか?
十二
・ふちりてぃ 不明
ふちゅん(吹く、沸く)という動詞がある、がふちりてぃ、となると、受動態、吹かれて、沸かれて、となる。
3つの辞書を引くが見当たらない。
意訳として「沸く」の受動態を「魅せられて」「熱中して」と訳せないこともない。ので、とりあえず、そうした。
・ままならりみ 一緒になれるか?
<ままなゆん  一緒になる。 ままなりゆん=一緒になれる
「み」は動詞の疑問文の最後。
十三
・でぃ'いち と言って
・ごーぐちひゃーぐち ぶつぶつ文句をいう
十四
・かふうしどー ありがとう
十五
・やか よりも 



(コメント)
芝居歌。「てんよー節」の曲に乗せて歌われる。

おやじが大工で、酒飲み。酒屋の奉公をしていると妻が嘆いているところに帰ってきた、酔っ払ってすっからかんになったおやじ。話は離婚話にまで発展し、最後は徳利に向かって「一生お前と一緒だ」と。
酒をめぐる話は沖縄にはつきものだが、離婚と結びついた悲しい話でも笑い話になっている。
泡盛はたしかに魅力ある酒である。
しかし度を越すと大変なことになる。身をもってそれを知る私ではある。
まだ笑い話ですむうちが花かもしれない。

同じカテゴリー(た行)の記事
ちばり節
ちばり節(2020-12-15 07:13)

辻千鳥
辻千鳥(2018-07-18 13:16)

谷茶前  3
谷茶前 3(2018-02-17 10:13)

谷茶前 2
谷茶前 2(2018-02-15 14:51)

谷茶前
谷茶前(2018-02-11 07:38)

とーがにあやぐ
とーがにあやぐ(2015-03-17 11:14)


Posted by たる一 at 19:15│Comments(8)た行
この記事へのコメント
どうも初めまして。トゥックイ小で検索してこちらに辿り着きました。
ものすごい情報のサイトで感激しております。
これからゆっくりと見させて頂きます。

一つお聞きしたいのですが、
私は今「トゥックイ小」の唄の歌詞を探しておりまして、
見つかるのはこちらのと同じテンヨー節の夫婦で唄うバージョンなんですが、
わらべ歌の方のトゥックイ小の歌詞を探しております。
CDに入ってたんですが、歌詞が載ってませんでした。
分かってるぶんは

「 トゥックイ小よ トゥックイ小 ??から出じたるトゥックイ小
 ?????から出じたる かりゆしトゥックイ小
 ????小よ ????小  ???から出じたる????小
 やんばる山から出じたる かりゆし????小」

と、聞き取れる部分はこの分なんですが、
もしこの歌詞をご存知でしたら教えていただきたく書き込みさせて頂きました。
Posted by 李 at 2006年11月29日 19:32
李さん ありがとうございます。
とぅっくい小の童唄ですが、私も聞いた事があるような気がします。
ライブラリーをさがしてみます。

今後もよろしく。
Posted by せきひろし(たるー) at 2006年12月02日 10:14
コメントありがとうございます。
私は八重山の音楽を中心にやってるので本当の音楽はあまり詳しくないので
こちらのブログでは大変勉強させてもらっています。
トゥックイ小はお暇な時で良いのでまた気が向いたときにでも宜しくお願いいたします。
Posted by 李 at 2006年12月02日 22:08
明日は「おさらい会」で
それが終わったら時間が作れるかもです。
しらべてみます。
Posted by たるー at 2006年12月03日 00:14
どうもこんばんわ。
例の歌詞、偶然中古CD屋さんで見つけたCDに入ってました。


トゥックイ小よ トゥックイ小
まーから出じたる トゥックイ小
ちぶやぬカマから 出じたる
かりゆしトゥックイ小

あーじん小よ あーじん小
まーから出じたる あーじん小
やんばる山から 出じたる
かりゆしあーじん小

ちんなんみーよ ちんなんみー
まーから出じたる ちんなんみー
はんらぬみーから 出じたる 
かりゆしちんなんみー


と、全然意味は分かりませんが、
ちんなんみーはカタツムリだと言うことはこちらで分かりました。


いきなり質問して自己解決してしまって
大変お騒がせ致しました。

また色々勉強させていただきに来ます。
Posted by 李 at 2006年12月12日 17:28
李さん
すみません まだ探しきれてません

とりあえず、
あじん小 'aziNgwaa 杵(きね)
はんら 甘藷(イモ)
みー 穴

訳すと

徳利ちゃんよ 徳利ちゃん
どこから出てきた徳利ちゃん
壺屋の釜から出てきた
おめでたい徳利ちゃん

杵ちゃんよ 杵ちゃん
どこから出てきた杵ちゃん
ヤンバルの山から出てきた
おめでたい杵ちゃん

カタツムリちゃんよ カタツムリちゃん
どこから出てきたカタツムリちゃん
甘藷の穴から出てきた
おめでたいカタツムリちゃん

こんな感じでしょうか。
Posted by せきひろし at 2006年12月12日 18:28
わざわざありがとうございます!
さすがですね。
こう言う意味だったんですか。
大変勉強になりました♪

やっぱり意味が分かると唄うのも何倍も楽しくなります♪
ありがとうございました!
Posted by 李 at 2006年12月14日 22:00
意味は、わかっても、わからなくても
歌は面白いものです。

がんばってください。
Posted by せきひろし at 2006年12月17日 22:59
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。