2006年04月06日

今帰仁天底節

今帰仁天底節
なきじんあみすくぶし
nakijiN 'amisuku bushi


我生まり島や枯木山原の今帰仁の天底 仲本の産子
わが'んまりじまやかりきやんばるぬなきじんぬ'あみすくなかむとぅぬなしぐわ
waga'Nmarijima ya karikiyaNbaru nu nachijiN nu 'amisuku nakamutu nu nashigwaa
私の生まれ故郷は枯木(さみしい)山原の今帰仁は天底の仲本家の子供


七ちなる年に二とくるの親や我身一人残ちこの世間に参らん
ななちなるとぅしにたーとぅくる'うややわみふぃちゅいぬくちくぬしきんにもーらん
nanachinaru tushi ni taatukuru 'uyaya wami hwichui nukuchi kunu shikiN ni mooraN
七つになる年にお二人の親は私を一人残してこの世間に居られない

十八なるまでやをばま一人頼て暮らち居る内に行ち欲さや大阪
じゅーはちなるまでぃや うぅばまーちゅいたゆてぃくらち'うる'うちに'いちぶさや[大阪]
juuhachi narumadiya wubamaa chui tayuti kurachi'uru'uchi ni 'ichibusaya [大阪]
十八になるまでは叔母一人を頼って暮らしているうちに行きたくなった大阪に


情あるをばま云言葉んしむち大阪北恩加島(きたおかじま)街頼て来やしがかかるかたねらん しがるかたねらん
なさき'あるうぅばまー'いくとぅばんしむち(すむち)[大阪北恩加島]まちたゆてぃ ちゃーしが かかるかたねーらん しがるかたねーらん
nasaki'aru wubamaa 'ikutubaN shimuchi(sumuchi)[大阪北恩加島]machi tayuti chaashiga kakarukata neeraN shigarukataneeraN
情けある叔母の言葉にも背き大阪北恩加島街を頼ってきたが頼る人はいない すがる人はいない

我部の新垣の嫁に我なやい一年二年や梅と鴬の如に暮らち居る内に産子一人できて
がぶぬ'あらがちぬゆみになやいちゅとぅたーとぅや'んみとぅ'うぐいしぬぐとぅにくらち'うる'うちに なしぐわーちゅいでぃきてぃ
gabunu 'aragachi nu yumi ni wane nayai chutu taatu ya 'Nmi tu 'uguishi nu gutu ni kurachi 'uru'uchi ni nashigwaa chui dikiti
我部の新垣の嫁になり一、二年は梅と鴬のように(仲良く)暮らしているうちに子供が一人できて

産子引ち連れて里が島来やれば里が母親にあくむくゆさりて罪無らん我身に朝夕ぶちかきて
なしぐわふぃちちりてぃ さとぅがしまちゃーやいりば さとぅが'あんまーに'あくむく(い)ゆさりてぃ ちみねーらんわみに'あさゆーぶちかきてぃ
nashigwaa hwichichiriti satuga shima chaayariba satuga 'aNmaa ni 'akumuku(i)yu sariti chimineeraN wami ni 'asayuu buchikakiti
子供引き連れて故郷にきてみたら彼の母親に悪い報いをされて 罪のない私に朝夕鞭を打ち

噂むち明かち我ねすそーんしみて哀り泣く泣くに出さりて
'うわさむち'あかち わねすそーんしみてぃ'あわりなくなくに'んじゃさりてぃ
'uwasa muchi'akachi wane susooNshimiti 'awari nakunakuni 'Njasariti
噂を持ち出して私を粗末にさせて哀れ泣く泣くうちに家を出されて

我身や落て花の島行ちゅる身の苦りさ 胸内ややきて色に表さん 知らぬ客びれや尾類小の勤め
わみや'うてぃはなぬしま'いちゅるみぬぐりさ 'んに'うちややきてぃ'いるに'あらわさん しらんきゃくびれーやじゅりぐわーぬちとぅみ
wami ya 'uti hananushima 'ichuruminu gurisa 'Nni'uchi ya yakiti 'iruni 'arawasaN siiraN kakubiree ya jurigwaa nu chitumi
胸中は焼けて(も)表には出さない 見知らぬ客との付き合いは女郎のつとめ

解説
(語句)
・たーとぅくる お二人の
とぅくる=人数を表す敬語
お一人 ちゅとぅくる
・もーらん おられない
<もーゆん 行く・来る・居るの軽い敬語 の否定形
・うばまー 叔母
・すむち そむいて
<すむちゅん そむく
[しむち]とあるが[すむち]の誤りだろう。
・かかるかた 頼る人 ・ちゅとぅ たーとぅ 一年 二年
・むくゆ( むくいゆ の誤りだろう)報いを・ぶちかきてぃ 鞭を打って
<ぶちかきゆん
・すそーん 粗末にする様
・はなぬしま 花の島 遊郭
・びれー 付き合い

(コメント)
今帰仁の天底を舞台にした薄幸の女性が自分の人生を語る。
事実に基づいた唄。1930年くらいの作品。
しかし、実際は、天底が生地ではないということは「島うた紀行」に詳しい。
この歌詞は「大城美佐子」の「片思い」というCDから採譜したものだが、この本には本歌が載っている。
13の琉歌からなっている。

大阪に行ったあと、このような表現が本歌にある。

春の花とむて行んじゃる我んやしが 秋の紅葉ばに落てぃる身になやい
(春の花と思って行った私だが、秋の紅葉の時に落ちる身になってしまった)


主人公が自分のことを歌ったのではなく、その主人公を知る(実際にはその子どもの世話をしたり、お金を貸してあげたりした)人が作者で実名が明らかにされていない。主人公の夫が同じ村にいて、この歌を歌うこともはばかれたという。その後この歌は一人歩きし、題名も後につけられたという。

作者はここまで歌が広がるとは思わなかったのではないだろうか。

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Posted by たる一 at 06:38│Comments(5)あ行な行沖縄本島
この記事へのコメント
関さ〜ん
きざみ節 訳せましたよ♪
Posted by ふくだ at 2006年04月06日 22:49
関さ〜ん
きざみ節 訳せましたよ♪
Posted by ふくだ at 2006年04月06日 22:50
ふくださん
キザミ節、わたしもやくしましたよ。
でもわからないところも多い。
これからです。

ふくださんの訳したもの見てみたいなあ。
Posted by せきひろし(たるー) at 2006年04月07日 00:10
聴くも涙、語るも涙ですね。
今帰仁の仲本、あるいは新垣という実名がはいっている歌も珍しいと考えていましたが本当に悲しい歌です。
Posted by gabaizu at 2006年04月08日 23:17
gabaizuさん
具体的な地名が入るのは沖縄の唄の特徴のひとつですが、ここまで悲しい話だといろいろ思いますよね。

天底、って題名も「天と地」みたいでドラマチック。
Posted by せきひろし(たるー) at 2006年04月10日 06:18
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