2006年01月08日

伊計離節

伊計離節
'いちはなりぶし
'ichihanari bushi

1、行きば伊計(よ)はなれ(よ)(はり)戻て浜平安座(へいよー平安座よ)
'いきば(よ)はなり(よ)(はり)むどぅてぃばまへんざ(へいよーへんざよ)
'ikiba 'ichi(yoo)hanari(yoo)(hari)muduti bama heNza(heiyoo heNza yoo) (括弧は以下省略)
行けば伊計 離れ島 戻って浜 平安座島

2、平安座前の浜にやんばらーが来ちょん
へんざめーぬはまにやんばらーがちちょーん
heNza meenuhama ni yaNbaraa ga chichooN
平安座の前の浜に 山原船が来ている


3、やんばらーやあらん 大和通い
やんばらーや'あらん やまとぅがゆい
yaNbaraa ya 'araN yamatu gayui
山原船ではない 大和通い(の船だ)


4、平安座美童の欲しゃむぬや何がやが
へんざみやらびぬふしゃむぬや ぬーがやが
heNza miyarabi nu husha munu ya nuu ga yaga
平安座の美しい娘の欲しいものは何だろうか


5、押し竹とひや竹 敷き板と巻板 めぐさ
'うしだき とぅ ひゃだき しち'ちゃ まちちゃ めぐさ
'ushidaki tu hyadaki shicha machicha megusa
押し竹とひゃ竹 敷き板と巻板 機ぐさ


6、めぐさ取てぬしゅが 布ど巻ちゅる
めぐさとぅてぃぬしゅが ぬぬどぅまちゅる
megusa tuti nuu shuga nunu du machuru
機ぐさを取って何をするのか 布を巻くのだ


※おまけ

7、あしやぎ行じ童 さばち箱取て来う あれにある手布 汝にど呉ゆる
'あしゃぎ'んじわらび さばちばくとぅてぃくー 'ありに'あるてぃさじ やーにどぅくぃゆる
'ashagi 'Nji warabi sabachibaku tutikuu 'arini 'aru tiisaji yaa nidu kwiyuru
離れに行く子どもよ 髪結い道具箱を取ってこい それに入っている手ぬぐいをおまえにあげるぞ



8、手布呉いる里や島々にめしが お肝呉いる里や一人居らぬ
てぃさじくぃるさとぅやしまじまにめーしが 'うちむくぃゆさとぅやふぃちゅい'うらん
tiisaji kwiru satu ya shimajimani meeshiga 'uchimu kwieu satu ya hwichui 'uraN
手ぬぐいを呉れる彼氏は村々に居られるけれど 御心をくれる彼氏は一人もいない


9、行きば伊計離り 戻て浜平安座 遊び浮上がゆる 津堅久高
'いきば'いちはなり むどぅてぃばまへんざ 'あしび'うち'あがゆる ちきんくだか
'ikiba 'ichihanari muduti bama heNza 'ashibi 'uchi'agayuru thikiNkudaka
行けば伊計離れ島 戻って浜平安座(で)遊び 浮き上がっている(ように見える)津堅島、久高島 





解説
(語句)
1、
・はなり 離れ島
・へんざ 平安島 勝連にある離れ島。今は海中道路と橋で本島とつながっている 今は発音は「へんざheNza」だが首里語では「ひゃんざhyaNza」
こういう地名も昔の呼び名が失われているのは悲しい。


・やんばらー 山原船 yaNbaru の語尾をのばして擬人化している。
(cf.やまとぅーyamatuu 大和人 'あめりかーamerikaa アメリカ人
 少し見下す言い方でもあることに注意)


・'うしだき 押し竹 機織の器具で、経糸を押さえるためのもの
・ひゃだき 「ひゃーhyaa」とは「機織の器具で緯糸をいれるために経糸を上下させるための器具」
・しち'いちゃ 敷き板 尻の下に敷く板
・まちちゃ 巻き板 かせ糸を巻きつけるもの


・めぐさ meegusa 「経糸を巻き板に巻くときにはさむ細い棒 両端が布幅より2〜3センチぐらいずつ長く両端の経糸がずり落ちるのを防ぐ はたくさ」と辞書にある。


・さばちばく さばち箱 髪結い道具を入れる箱

(コメント)
以前、沖縄旅行で友人に平安座島まで連れて行ってもらった。
勝連の島々はよく琉歌にも詠まれるほど風光明媚であり、かつまた昔は毛遊びの盛んなところだったのだろう。
どことなく島々が穏やかな海に浮いている様は、私の住む瀬戸内海を彷彿させる。

この伊計離り節は、以前に紹介した谷茶前のちらし(つぃらし 続けて弾かれる曲)の早弾きのものとメロディーラインはほぼ同じであるが歌詞が少し違う。
1から3までと4から6までとは話題が別なので、あとから合体されたものなのかもしれない。

機織というのは昔若い娘たちの仕事の重要な部分をしめていたのだろう。
器具についてはネットで機織を検索すれば大和の機織器具についての解説もある。おそらく器具については大和も沖縄もほぼ同じだったのではないだろうか。私は詳しくは知らない。

さらに「おまけ」に加えた7から9は由絃會の工工四集に載っているもので、これもまた別の歌詞である。
7から9のうち8は歌詞が面白い。

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Posted by たる一 at 10:02│Comments(0)あ行
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