2008年03月05日

糸満姉小

糸満姉小 または 糸満乙女
'いちまん'あんぐゎ
'ichimaN 'aNgwaa
糸満(の)娘さん
語句・あんぐゎ (平民の)姉さん、娘さん。姉妹関係なら前者だがここでは海で働く女性、若い娘。発音は「あんぐゎー」と語尾を伸ばす。ちなみに士族の場合は「んみー 'Nmii」。

作詞 真境名由康


一、我した糸満 海の業 二才達うち揃て サバニくなびて
わした'いちまん'うみぬわざ にせた'うちするてぃ さばにくなびてぃ
washita 'ichimaN 'umi nu waza nisetaa 'uchisuruti sabani kunabiti
我々糸満(の)海の仕事、青年達(は)せい揃いしサバニを並べて
語句・わざ 仕事 ・くなびてぃ 並べて。<くなびゆん 並べる 比べる。


二、漕ぎ出じゃち行けば 沖や波静か 凪の渡中
くじ'んじゃち'いちば'うちやなみしじか [なぎ]ぬとぅなか
kuji'Njachi'ichiba 'uchi ya nami shijika [なぎ] nu tunaka
漕ぎ出て行けば波静か 凪の沖の海上
語句・なぎ 凪は沖縄語で「とぅり」だが標準語の「なぎ」と歌われる。


三、エサ小ぶん投ぎれ 魚の数あまた 寄し来る 寄し来る 舟に取いんち サバニ積ん込で
[エサ]ぐわぶんなぎれ 'いゆぬかじ'あまた ゆしくるゆしくる ふににとぅいんち さばにちんくでぃ
[エサ]gwa buNnagiree 'iyu nu kaji 'amata yushikuruyushikuru huni ni tuiNchi sabani chiNkudi
エサ(を)なげいれるなれば魚の数が無数寄せて来る 寄せて来る(のを)船に取り込みサバニに積み込んで
語句・えさ これも沖縄語は「むんだに」で「えさ」は標準語。 ・とぅいんち 取り込んで。 <とぅい<とぅゆん 取る。+んち<んちゅん 込む。ちんくでぃ 積み込んで。<ちぬん 積む。+んちゅん 込む。


四、大漁満船 海出来らち 戻る嘉利吉の 走るよ舟小 しちゃーら走いど
たいりょーまんしん 'うみできらち むどぅるかりゆしぬ はるよふにぐわ しちゃーらはいどー
tairyo maNshiN 'umi dikirachi muduru kariyushi nu haruyo hunigwa shichaara hai doo
大漁(で)満船、海(の漁は)成功し戻る縁起良き、走るよ船、押し合いへしあい走れよ
語句・でぃきらち 成功させ <でぃきらしゅん うまくいく。成功する。・かりゆし 縁起のよい。航海で使われた言葉で「航海安全」を祈る呪文。・しちゃーら <しちゃーしゅん 押し合いへしあう 「ら」となる活用については不明。・はり 走れ。 <はゆん 走るの命令形。


五、浜に持ち出じて 舟待ちゅるアン小達が 手振い口笛 フィフィそうてサバニ迎ぇてぃサバニ引き揚ぎ
はまにむち'んじてぃふにまちゅる 'あんぐわたーがてぃふいくちふい ふぃーふぃーそーてぃ さばに'んけーてぃ さばにふぃちあぎ
hama ni muchi'Njiti hunimachuru 'aNgwataa ga ti hui kuchi hui hwiihwiisooti sabani 'Nkeeti sabani hwichiagi
浜に持ちでて船待つ娘達が手振り口笛フィーフィー鳴らし サバニ迎えてサバニ引き上げ


六、分きぶん分きとてアン小達や ちじにひっかみて 那覇の町かい いっさん走え いっさん走え 嘉利吉糸満 那覇の町かい
わきぶんわきとてぃ'あんぐわや ちじにふっかみてぃ なふぁぬまちかい 'いっさんはーえー 'いっさんはーえー かりゆし'いちまん なふぁぬまちかい
wakibuN wakitoti 'aNgwa ya chiji ni hwikkamiti nahwa nu machi kai 'issaNhaaee 'issaNhaaee kariyushi 'ichimaN nahwa nu machi kai
分け前わけて娘は頭上に乗せて那覇の市に一目散に一目散に縁起良い糸満(から)那覇の市に
語句・わきぶん 分け前 ・ちじ 頭上 ・ふっかみてぃ のせて。<「ふぃっ」(「ふぃっちゃてぃゆん」ひっさげる。などの接頭語)+「かみゆん」(女性が荷物を頭にのせる)。・まち 市場、市。「町」ではない。・かい へ。に。


七、トブー グルクン町一番 みー口幸(せーうぇー)はいかかて バーキうつぃちょて売りたらじやさ
とぅぶーぐるくんまち'いちばん みーぐちせーうぇーはいかかてぃ ばーき'うちちょてぃ'うりたらじやさ
tubuu gurukuN machi'ichibaN miiguchi seewee haikkati baaki 'uchichoti 'uritaraji yasa
トビウオ、グルクン市場1番最初の客(に)幸運(にも)出合って ザル空になって 売り切れだよ
語句・とぅぶー トビウオ ・ぐるくん たかさご ・みーぐち 最初の客。・せーうぇー 幸い 幸運。・はいかかてぃ 出合って =はいいちゃてぃ<はいいちゃゆん。 ・うちちょてぃ 空になって <うちゅん ・うりたらじ 「売りきれ」 辞書にも見当たらず師匠に尋ねてこう教えられた。文法的には不明。

  
八、商ね出来らち肝いそーさ 戻る足軽さ 地にもちかんさ 飛ぶる心地飛ぶる心地
'あちねーでぃきらち ちむ'いそーさ むどぅる'あしかるさ じーにんちかんさ とぅぶるくくち とぅぶるくくち
'achinee dikirachi chimu 'isoosa muduru 'ashikarusa jii niN chikaNsa tuburu kukuchi tuburu kukuchi
商いうまくいき気持ち嬉しいことよ!戻る足(が)軽いことよ!飛ぶ心地 飛ぶ心地
語句・あちねー 商い ・でぃきらち 成功し 


九、那覇の土産や貫花染 二才達 遊びの前うき小 情呉ゆん 情呉ゆん
なふぁぬみゃーぎやぬちばなずみ にせた 'あしびぬ めー'うきぐゎ なさきくいゆん なさきくいゆん
nahwa nu myaagi ya nuchibanazumi niseta 'ashibi nu mee'ukigwa nasaki kwiyuN nasaki kwiyuN
那覇の土産は貫花染め 男たち(がつける)遊びの「めーうきぐゎ」 情け(を)あげる 情けあげる
語句・ぬちばなずみ 「ぬちばな」は赤や白の花を糸を通してレイのようにしたもの。その模様を染めたものか? ・めーうきぐゎ 男性が腰の前結びをして相手(女性)を惹きつけるものらしい。



海の幸を売って生業とした糸満のたくましい娘たちの様子を描いた生き生きとした創作舞踊。
歌詞も固い首里語ではなく庶民の言葉が多い。
歌詞の文字数も状況に応じて自由自在。
それが踊りの躍動感をかもしだす。

歌と振り付けは役者であり舞踊家であった真境名由康。

ネーネーズは「糸満姉小」という題名で収録している。




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Posted by たる一 at 23:46│Comments(3)あ行
この記事へのコメント
初めてお邪魔します。。

凄い研究だと思います!感激しました。

また来たいと思っています。
Posted by ShigeP at 2008年03月08日 18:02
shiqePさん
はじめまして。
ありがとうございます。
こんごもよろしく。
Posted by たるー(せきひろし)たるー(せきひろし) at 2008年03月08日 20:39
貫花染は花染の手巾〔はなずみてぃーさーじ〕紅く染められた手ぬぐいだと思います
Posted by 糸満乙女 at 2016年05月04日 13:11
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