2008年01月20日

うふんしゃり節 (高平良万才 3)

うふんしゃり節
'うふんしゃりぶし
'uhuNshari bushi
◯不明


隣の耳切れ鼻切れ 跛引き猫が 目はげ首白鼠に 荒首喰われて
とぅないぬみみちりはなちりぐにふぃちみゃが みーはぎくびしる'うぇんちゅに 'あらかじくわりてぃ
tunai nu mimi chiri hana chiri gunihwichi mya ga mii hagi kubishiru 'weNchu ni 'arakaji kuwariti
隣の耳(が)切れた、鼻(が)切れた 足の不自由な猫が ただれ目首白いネズミに首(を)喰われて
語句・ぐに 足が不自由なこと 差別用語の「びっこ」の意味。 ・あらかじ 「あら」は「荒」と当て字があるが不明。「かじ」は襟元の意味がある。


あべらじおらばじ飛のがじ思入や 里一人だう(えー)里が物云いぐらしゃ 
'あびらじ 'おらばじ とぅぬがじ 'うみ'いりや さとぅちゅいどー (えー) さとぅがむぬ’いーぐらしゃ
'abiraji 'orabaji tunugaji 'umi'iri ya satu chui du (ee) satu ga mu 'ii gurasha
叫ばせ 叫ばせ 飛び上がらせ 思い入る(の)は貴方一人だよ 貴方の物言い(の)暗いことよ
語句・あびらじ <あびゆん 叫ぶ あびら + じ この活用については不明。・おらばじ 一説には九州語「おらぶ」(さけぶ)。・ぐらしゃ 暗いことよ 「ちゅらさ」と歌い「美しいことよ」という意味に解釈する場合もある。


何にたてるが(え) 譜代のぢゃげな
ぬーにたてぃるが (えー) ふだぬじゃぎな
nuu ni tatiru ga (ee) huda nu jagina
何にたとえるか すんでのところで(不明)
語句・ふだ すんでのところで あやうく(琉) とある。「譜代」と当て字があるがそれなら「ふでー」で(元からの士族)の意味。・ぢゃぎな 不明 伊波普猷は「ふだのぢゃぎな」を「危うくだまされるところだった」と解釈している。


(概要と解説)

「高平良万歳」の3曲目。
組踊りや舞踊では兄弟の二人が「万歳かうす」の踊りのあと、獅子頭と馬頭を置き、猫とネズミの真似をしながら、空手風に踊る。
ゆったりしたムードの曲調で後半は歌声が高くなり、さらに緊張感を盛り上げる。

しかし、歌詞の意味は不明な部分が多い。

まず、題名。「うふんしゃり」の意味がわからない。
「大阿母志礼節」と当て字がある。
これは屋嘉比朝寄の工工四にもそういう当て字はなく
「おほんしゃれ節」と書いてある。
沖縄語辞典には「amushirare」の項に「[あもしられ]aNshitari(首里三平等にいる女の神官)と同じ」とあり、さらに、aNsitariの項には「首里三平等(sjuimihwira)に一人ずつ、計三人いる、神に仕える女。cihwiziN(きこえ大君)に属し、この三人が実際は全国のnuuru(のろ)を支配した。」
「大阿母志礼節」の当て字から「阿母志礼」は「あもしれ」と読めて、「あむしられ」を類推することは可能。しかし確証はない。


「里が物云いぐらしゃ」の「ぐらしゃ」は
「暗しゃ」と「美しゃ」の2種類の解釈がある。

また「ふだのぢゃげな」には
「ふだ」を「すんでのところで」と「譜代」とする解釈がある。
どちらなのか判断する術がない。
ただ「譜代」ならば発音は「ふでー」であるから不可解だ。
伊波普猷の研究では「危うくだまされるところだった」と解釈しているらしいが
その本が手元になく不明としたい。



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Posted by たる一 at 21:49│Comments(4)あ行沖縄本島
この記事へのコメント
奄美で昔話に土地の「大ノロ」の事を「うふあむしゃり」と呼ぶものがありますが?俗称の役職名ではありませんか?
Posted by ふりむん at 2009年08月19日 04:59
ふりむんさん
コメントありがとうございます。

上にも書きましたが、当時の琉球王朝の支配下では「大ノロ」=きこえ大君のことをこう呼んだのではないでしょうか。
しかし、私には断定する根拠がありませんので上にそう書いてあります。
Posted by たるー(せきひろし)たるー(せきひろし) at 2009年08月22日 11:46
大阿母志良禮ですかね?
おぎやか以降のノロ統治に於ける役職名と敬称の両側面のある呼称です。
地方部の総司や現地採用で首里に登って印判を授けた者や、沖縄本島ではかなり位の高いノロに対して敬称として呼ばれた時期もあるようです。
Posted by くがなー at 2012年01月28日 22:20
くがなーさん

上述したように、私にはこの題名と「大ノロ」の敬称とを結びつける確証がないのでなんとも申し上げようがありません。
Posted by たる一たる一 at 2012年02月04日 09:38
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