2007年09月30日

千の風になって(ウチナーグチバージョン)

千の風になって
しんぬかじに なてぃ
shiN nu kaji ni nati

作詞 不明 作曲 新井満
ウチナーグチ訳詞 関 洋
 
一、我んの墓の前居て 泣ちみせーびーんな 我んね んまねー 居やびらん 眠んてうやびらん
わんぬ はかぬ めーうてぃ なちみせーびーんな わんね 'んまねー うやびらん にんてーうやびらん
waN nu haka nu mee uti nachimiseebiiNna waNne 'Nmanee uyabiraN niNteeuyabiraN
私の墓の前で 泣かないでください 私はそこには居ません 眠っていません
語句 ・なちみせーびんな <なち <なちゅん 泣く + みせーびん なさいます + な 否定 ・んまねー そこには <'んま そこ + ねー には <ni+ja =nee ・うやびらん 居ません <uy <うん 居る 連用語幹 + やびらん<やいびーん の否定形 ・にんてー 寝ては <にんじゅん 眠る 連用形 にんてぃ+や → にんてー 


千の風に 千の風になて あの大空居とて 吹きわたっとーいびーん
しんぬかじに  しんぬかじになてぃ 'あぬ 'うふすらうとーてぃ ふちわたっとーいびーん
shiN nu kaji ni shiN nu kaji ni nati 'anu 'uhu sura utooti huchiwatattooibiiN
千の風に 千の風になり あの大きい空(に)いて 吹き渡っております
語句・うとーてぃ 居て <うん 居る 継続形 ・わたっとーいびーん <わたゆん 渡る 連用形+ いびーん 居ます


二、秋ねー 光なて やふぁやふぁと照らし 冬やダイヤのぐとん 美らさる雪になて 
'あちねー ふぃかりなてぃ やふぁやふぁとぅてぃらし ふゆやダイヤぬぐとーん ちゅらさるゆちになてぃ
'achinee hwikari nati yahwayahwa tu tirashi huyu ya [ダイヤ] nu gutooN churasaru yuchi ni nati
秋には光(に)なり 柔らかく照らして 冬はダイヤのような 清らかな雪になり

すとめて鳥になて うんじゅ起こち 夜や星になてうんじゅ見守て
すとぅみてぃ とぅいになてぃ 'うんじゅ うくち ゆるやふしになてぃ 'うんじゅみまむてぃ
sutumiti tui ni nati 'uNju ukuchi yuru ya hushi ni nati 'uNju mimamuti
早朝 鳥になって 貴方(を)起こして 夜は星になって貴方(を)見守って
語句・すとぅみてぃ 早朝 「枕草子」にある「冬はつとめて」と同じ。


三、(前後省略) まーさんてーうやびらん
まーさんてーうやびらん
maasaNteeuyabiraN
死んでは居ません
語句・<まーさん <まーしゅん 死ぬ 亡くなる の過去的 まーさん + てー <ti+ya + うやびらん


「千の風になって」は大ヒットした本土の歌。
その唄は、亡くなった人を、家族に、友人に持つひとの心を癒している。

それをウチナーグチに訳してみた。

教室では、工工四を作り、すでにこの唄は定番になっている。

ウチナーグチに直したのは、私の沖縄語の先生である胤森弘さんの逝去に際し
自分なりのお返しをしたいと思ったからだ。

この歌の歌詞が、どうしても頭に残る。
胤森弘さんは、亡くなられたが、彼の「思い」はわたしたちの中に残っている。
まさに「あの広い空を飛び回っている」。

胤森さんとのことは、私の別のブログ「たるーの島唄人生」に少し書かせてもらった。
個人的なことで恐縮だが、彼が亡くなったことを知ってから、どうも心に穴が開いたようになっている。

もちろん、これでお返しになるとは思わない。

彼の偉業は、広島で、いや本土で三線をする人たちにも大きな貢献をされたと思う。
もちろんそれにとどまらないことも多いだろうが、私には知るよしもない。
国語学会では、名が知れたというし、沖縄や国会図書館にも蔵書や論文がある。
たくさんの沖縄民謡、八重山民謡、宮古民謡の訳が残っている。
そして歌に関連して、たくさんの言葉への問題提起も残る。
つまり、お返しなどできないほどの多くのものを遺してくれたのである。

私が胤森さんから学んだことを、私なりに実行したのが、このブログである。
胤森さんには直接このサイトを見てもらうことはなかった。
いくつかはプリントして差し上げたが、全部見てもらえなかったことは残念だ。

この訳をみて彼はどう思うだろうか。


沖縄の方にはぜひ、ご意見を戴きたいものです。
また、今歌われている歌詞とは少し変わっています。


同じカテゴリー(さ行)の記事
さらうてぃ口説
さらうてぃ口説(2018-04-19 17:44)

安里屋ゆんた
安里屋ゆんた(2018-04-12 07:07)

門たんかー
門たんかー(2018-02-02 23:56)

じんだま
じんだま(2016-09-22 14:42)

下千鳥  6
下千鳥 6(2015-09-12 14:36)

スーキカンナー 2
スーキカンナー 2(2014-12-05 14:09)


Posted by たる一 at 20:55│Comments(5)さ行
この記事へのコメント
私の友人(宜野湾在住)が次のようなウチナーグチを作ってくれました。参考までに。


 しんぬかじになてぃ 古波蔵邦子訳

1  
我身(わみ)ぬ 御墓(うふぁか)ぬ 前(めー)うてぃ
泣かんてぃ 取らせ
うまんかい 我んねー 居(う)らんて
寝(に)んてぃん 居(う)らんど

千(しん)ぬ風(かじ)に 千(しん)ぬ風(かじ)になてぃ
あまぬ 広(ひる)さる 空(すら)に
打ち渡(わた)とーん


秋(あち)にや光(ふぃかり)になてぃ 
畑(はる)に降り注(すす)じ
冬や黄金(くがに)ぬよーん 
煌(ちらみ)く雪(ゆち)になてぃ

千(しん)ぬ風(かじ)に 千(しん)ぬ風(かじ)になてぃ
あまぬ 広(ひる)さる 空(すら)に
打ち渡(わた)とーん


朝や鳥(とぅい)になてぃ
御蔵(んぞ)ゆ目覚みさし
夜(ゆる)や星(ふうし)になてぃ
うんじゅゆ見守(みまむ)いさ

千(しん)ぬ風(かじ)に 千(しん)ぬ風(かじ)になてぃ
あまぬ 広(ひる)さる 空(すら)に
打ち渡(わた)とーん



我身(わみ)ぬ 御墓(うふぁか)ぬ 前(めー)うてぃ
泣かんてぃ 取らせ
うまんかい 我んねー 居(う)らんて
まーちぇー居らんど

千(しん)ぬ風(かじ)に 千(しん)ぬ風(かじ)になてぃ
あまぬ 広(ひる)さる 空(すら)に
打ち渡(わた)とーん
Posted by まも at 2007年10月07日 15:46
まもさん
同じ歌でも人により違うものですね。

最初の「お墓」は、自分の墓なので敬語の「御」をつけるのはためらいがありました。
それから、朝起こす相手は、「んぞ」となると「女性」に特定されますが、この唄では不特定の相手なので「うんじゅ」としました。

でも、とても参考になりました。
HPのほうで工工四も読みました。
がんばってください。

ありがとうございました。
Posted by せきひろし at 2007年10月08日 09:41
初めておじゃまいたします。
4笛です。

動画投稿サイト"YOU TUBE"で、千の風になってをウチナーグチで唄っていらっしゃる"千の風になって OKINAWA 沖縄バージョン"という投稿を見つけましたのでお知らせいたします。

http://jp.youtube.com/watch?v=oLK7jFd034Y
で、そのページに行けると思います。

失礼いたしました。
だめなら、YouTube(http://jp.youtube.com/)で、"千の風になって","沖縄"で検索してみてください。
Posted by 4笛 at 2007年10月18日 20:44
きれいなうちなーぐちで素晴らしいです。
この歌はたくさんの方がうちなーぐちに直して歌っていると思います。
元の歌がきれいな言葉なのでうちなーぐちでもきれいな言葉で歌って欲しいです。
Posted by 福原 敬 at 2010年08月30日 12:39
福原敬さん

恐縮です。
いろいろな方がウチナーグチで歌っているようですね。

それらも大変勉強になります。

いい唄は、旅をする。形を変えて旅をする。
そう思います。
Posted by たる一たる一 at 2010年09月05日 10:17
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。