2007年05月06日

しゅんだう節

しょんだう節
しゅんどーぶし
shuNdoo bushi
語句・しゅんどー「シュンドウ節」と呼ばれたり「醜童」と当て字をする場合もある。舞踊では「それかん節」「やれこのしい節」とともにこの曲が使われ、「打組踊」(うちくみうどぅい)と呼ばれる他「醜童」とも呼ばれる。


一、(しゅんどー)諸鈍長浜に(よーあしゅんどー)打い引く波の(よーあしゅんどー)諸鈍女童の(よーあしゅんどー)目笑歯ぐち(わたちゃんどー あ うきとぅたさ)
《()は囃子言葉。以下は略す 》
しゅどぅんながはまに うちふぃくなみぬ しゅどぅんみやらびぬ みーわれーはぐち
shuduN nagahama ni 'uchihwiku nami nu shuduN miyarabi nu miiwaree haaguchi
諸鈍 長浜に打ち引く波が 諸鈍娘の微笑む口元(歯並び)
語句・しゅどぅん諸鈍。奄美大島 加計呂間島の地名・ながはま 長浜。奄美大島 加計呂間島の地名・みーわれー微笑。み<目(みー)+笑(われー)・はーぐち 歯口。【沖縄語辞典(国立国語研究所編)】(以下【沖辞】と略す)。



二、諸鈍美童の雪色の歯ぐき 何時が夜の暮れて御口吸わな
しゅどぅんみやらびぬ ゆちぬるぬはぐち 'いちがゆぬくりてぃみくちすわな
shuduN miyarabi nu yuchi nuru nu haguchi 'ichiga yu nu kuriti mikuchi suwana
諸鈍(の)娘の雪色の口元 何時か夜が暮れてお口を吸いたい(接吻したい)
語句・ゆちぬる「雪色」と多く訳されているが、「ぬる」というのは辞書にも不明。詳しくは追記参照。・はぐち口、または歯並び・みくち口 「美口」「御口」という当て字がある。


(コメント)
琉球舞踊の分類には
老人踊り 若衆踊り 女踊り 二歳踊り に加えて 打組踊り('uchikumi udui)というのがあり、この「しゅんだう節」はその一曲にはいる。
後日とりあげる「それかん節」「やれこのしい節」と3曲でひとつの踊りとなっている。

打ち組踊り、というのは、男女(琉球王朝時代はすべて踊り手も男)やグループに分かれて踊る群舞。
「しゅんだう節」は「醜童」という当て字がされて、二人の美女と二人の醜い女が踊るもの。
しゅんだう節
(沖縄県立博物館所蔵)

歌詞に出てくる「諸鈍」は奄美大島、加計呂間島の南東にある湾に面した村名。
「諸鈍節」という別の古典曲があり、それにも同じ歌詞がでてくるので、ややこしいのだが、それはまた後日とりあげる。

奄美大島の地名がテーマになった曲は嘉手久などもあるが、昔は琉球王朝の支配下にあったのだから当然である。

「しゅんどー」という語句は、しゅんだう節の囃子言葉にでてくる。曲調は他の古典曲には類似したものがないほど、単調かつ暗い印象を受ける。また、それ故にややユーモラスである。囃子言葉の部分は「しゅんどー」を「醜童」とするならば、

「醜童 ねえ醜童 ねえ醜童 ねえ醜童 渡してしまったよ あー受け取ったよ」 

大きな問題は、「ゆちぬる」=雪色 の部分である。
「ぬる」という言葉は沖縄語の数種の辞典、奄美方言データベースでも見当たらない。
「色」と「ぬる」というのは別ものではないかと思えるのである。

胤森さんは、この沖縄の訳は島袋盛敏氏に由来すると解説されている。
胤森氏曰く「ヌは『イ』の誤植」と。

しかし残念ながら島袋氏の参考としたと思われる屋嘉比朝喜の「工工四」の表記を琉球大学図書館蔵 伊波普猷文庫から直接調べてみたが「ノロ」と書いてある。
もちろん「色」という当て字もない。
「ゆちぬる」の歯茎とは果たして「雪色」なのだろうか。



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Posted by たる一 at 11:11│Comments(3)さ行沖縄本島
この記事へのコメント
「ゆちぬる」←「雪ぬ(い)る」←「雪ぬ色」だとおもいます。
似たものに「青色(おーるー)」←「(あ)おー(い)るー」
Posted by ふーちゃん at 2007年05月19日 11:04
ふーちゃんさん

確かに 青色は 「'ooruu」おーるーです。

しかしほかの色(昔は青、赤、黒、白しか基本はなかったようですが)
赤色は 'aka'iru あかいる で
 'akaruu あかるーとは言わないようです。
黒も白も同じです。

しかし、この「青色」を おーるー と読むこととなにか共通性が
あるのかもしれませんね。

胤森さんは「いる」の「い」が脱落したものと断定されていました。
わたしには判断するすべがありません。

いいご意見ありがとうございます。
Posted by せきひろし(たるー) at 2007年05月19日 11:45
普通に、雪の様に色の白いノロの女性と解釈しておりました。

ノロは口語ではヌルとかヌールと言いますので、諸鈍村の神女を讃えたのではないでしょうか??
Posted by なんくるなる‘琉’ at 2012年08月28日 03:37
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