2006年02月18日

うんじゅが情きどぅ頼まりる

うんじゅが情きどぅ頼まりる
うんじゅがなさきどぅたぬまりる
'uNju ga nasaki du tanumariru
あなたの情けだけが頼れる
語句・うんじゅ あなた。目上の人へのみ使う。「御〔お〕+み〔敬称〕+胴〔duu〕」【琉球語辞典】。「胴」は「身体」を意味する。つまり「御身」。・どぅ こそ。だけ。「ぞ、こそ」【琉辞】。「どぅ」のあとに強調したい語がくるが、普通「活用語の連体形で結ぶのが原則」【琉辞】。つまり、「どぅ」・・・「連体形」。古語の「ゾ+連体形」という係り結びの法則が沖縄語に残っている。日常会話から琉歌まで使われる。強調として「こそ」と訳すより「だけ」と訳すほうがわかりやすいときもある。この訳もそうした。・たぬまりる 頼られる <たぬぬん 頼る。 の未然形「たぬま」+りゆん(可能や尊敬)の連体形「りる」(「どぅ」との係り結び)



一、うんじゅが姿ぬ忘ららん思い焦りてやしはてぃてぃ ただくうてん小し ゆたさいびさ我思いん さっしてぃ呉みそうれー
うんじゅがしがたぬわしららん うむいくがりてぃやしはてぃてぃ ただくーてーんぐゎーしゆたさいびさ わーうむいさっしてぃくぃみそーれー
(うんじゅがなさきどぅたぬまりる)
'uNju ga shigata nu washiraraN 'umuikugariti yashihatiti tada kuuteeNgwaashi yutasaibisa waa 'umui sasshitikwimisooree ('uNju ga nasaki du tanumariru
) 括弧は繰り返し 以下省略する
あなたの姿が忘れられない思い焦がれて痩せ果てて ただほんのすこしでいいですから私の思いを察してください(あなたの情けだけが頼られる)
語句・わしららん わすれられない。<わしゆん 忘れる。+りゆん できる。 の否定形。・やしはてぃてぃ 痩せ果てて。発音に注意したい。・くーてーんぐゎー ほんの少し <くーてーん 少し。 +ぐゎー ほんの少しという時に使う。 ・ゆたさいびさ よろしいですよ<ゆたさいびーん 結構です。+ さ よ。


二、我身ぬ思いゆ此ぬ文に我身ぬ志情書ちあしが思里が袖にすらとぅむてぃ心配し送ららん
わみぬ うむいゆくぬふみにわみぬしなさきかちあしが うみさとぅがすでぃにすらとぅむてぃしわっし うくららん
waminu 'umuiyu kunuhumini waminu shinasaki kachi'ashiga 'umisatu ga sudi ni suratumuti shiwasshi 'ukuraraN
私の思いをこの手紙に 私の志情を書いたのだが 思う貴方におそろそかにされると思い 心配して送られない
語句・ を。口語では用いない。文語のみ。 ・かちあしが 書いたが。・すでぃにすら おろそかにするだろう 。 袖に+する「すん」の未然形 するだろう。 「袖にする」(相手にしない、無視する)という大和口があるが、それに対応。


三、昨日ん今日んめんそうらん酒ん飲みわどぅ暮さりる 煙草ん吹きわどぅ忘らりる 明日なぎやめんせるはじやしが 察してぃ呉みそりくぬ思い
ちぬん ちゅーんめんそーらん さきんぬみわどぅくらさりる たばくんふかわどぅ わしらりる あちゃーなぎーや めんせーるはじやしが さっしてぃくぃみそーりくぬうむい
chinuN chuuN meNsooraN sakiN numiwadu kurasariru tabakuN hukiwadu washirariru 'achaanagii ya meNsheeru hajiyashi ga sasshitikwimisoori kunu 'umui
昨日も今日もいらっしゃらない 酒も呑んでこそ暮らせる 煙草も吸ってこそ忘れられる 明日あたりはいらっしゃるはずなのだが 察して下さいな この思い
語句・めんそーらん いらっしゃらない。「来る」の敬語 めんせーん(めんしぇーん)の否定形。ちなみに命令形が 「めんそーり」 (おいでなさい)。 それを柔らかくしたのが 「めんそーれー」。 (語尾を延ばすのが正しく、那覇空港や、お店の名前やパンフレットなどで「めんそーれ」と語尾が切れているのは正しくはない。また「めんそーりー」と伸ばすの逆におかしい) ・めんせーる いらっしゃる。・はじやしが はずだけど。  はじ(はず)+やしが(けれども) ・くぃみそーり してください。 くぃゆん(くれる)+みせーん(なさる)の命令形みそーり。


知名定男さん作詞作曲。
1968年の作品。

優しく染み入るようなメロディーとウチナーグチで、彼が来てくれることだけを想い続けている女性の一途な思いが表現されている。

新唄(みーうた)の「情け唄」の代表作といえる。

CDではこちらに。
うんじゅが情きどぅ頼まりる

「うちなーのうた」(音楽之友社)で青木誠さんがこの歌が沖縄ポップスの先駆けだと書かれている。

意訳すれば、

貴方の面影が忘れられない、思い焦がれてやせるほど。
手紙も書いたが、返事もこないのではと思うと出せない。
しばらくおいでにならないので、お酒や煙草で忘れようとするのだけど忘れられない。
明日あたり来てくれるはず。
私の思いを察してください。あなたのお情けこそが私の頼りです。


このような感じになるだろうか。











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Posted by たる一 at 09:07│Comments(0)わ行
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