2015年05月17日

なさけの島

なさけの島
(発音等省略)

作詞 田場典明 作曲 我如古盛栄


CD「唄遊び」(我如古より子/吉川忠英)より


一、津堅イサヘイヨ 取納奉行ぬ島や かわてぃ美童ぬ イサヘイヨ なさき所
つぃきんいさへいよーしゅぬぶじょーぬしまや かわてぃ みやらびぬ (いさへいよー )なさきどぅくる
tsikiN 'isa heiyoo shunubujoo nu shima ya kawati miyarabinu ('isa heiyoo)nasaki dukuru
()は囃子言葉、以下繰り返し省略。
津堅島は伊佐ヘイヨーや取納奉行節の島である 特に娘たちの情け深いところ
語句・つぃきん 沖縄本島の津堅島を指す。ウチナーグチの発音は「ちきん」より「つぃきん」に近い。現在は「つけん」と読ませる。・いさへいよー「伊佐へいよー」という歌から来ているもので、我如古弥栄が作った歌劇「泊阿嘉」(とぅまいあーかー)の劇中歌として歌われる。掛け声でとくに意味はない。・しゅぬぶじょー
「 取納奉行節」で「津堅島」が舞台となっていることから。・かわてぃ 「とりわけ。格別。特に。ことに」【沖縄語辞典(国立国語研究所編)】(以下【沖辞】と略す)。



二、島浦ぬ美らさ 白浜ゆ前なち はるか眺みりば イサヘイヨ 知念久高
しまうらぬちゅらさ しらはまゆめーなち はるかながみりば ちにんくだか
shima'ura nu churasa shirahama yu mee nachi haruka nagamiriba chiniN kudaka
島の浦の美しさよ!白浜を前にしてはるか眺めると知念、久高島が見える
語句・しまうら 「浦」とは「陸地が湾曲して湖海が陸地の中に入り込んでいる地形」(Wikipedia)を言い、「浜」と区別する。津堅島は東西に長い湾曲した浜を持ち、そのことを言っているようだ。・ 文語で用いられる「を」。・めーなち 前にして。



三、押す風ん静か 浜うちゅる波や 無蔵が手招ちぬ イサヘイヨ なさき心
うすかじんしじか はまうちゅるなみや んぞがてぃまにちぬ なさきぐくる
'usukajiN shijika hama 'uchuru nami ya Nzo ga tiimanichi nu nasakigukuru
そよ風も静か 浜を打つ波は貴女が手招きに込めた愛情のようだ
語句・うすかじ「そよ風。和風」【沖辞】。「和風」(穏やかな風)とは気象庁用語で、風速5.5〜7.9m/sの風を指す。・なさきぐくる 直訳では「情け心」となるが、琉歌では前後との関係で「〜くくる」は「〜のようだ」という意味になる。(例えば「枯木心」を「枯木の心」と訳しても意味がわからなくなる)



四、かりゆしぬ船に 思事や乗してぃ 二人しくじ渡ら イサヘイヨ 恋ぬ小舟
かりゆしぬふにに うむくとぅやぬしてぃ たいしくーじわたら くいぬくぶに
kariyushi nu huni ni 'umukutu ya nushiti taishi kuujiwatara kui nu kubuni
縁起の良い船に愛する想いを乗せて二人で漕ぎ渡ろう 恋の小舟で
かりゆし 「めでたいこと。縁起のよいこと」【沖辞】。・くーじ 漕いで。<くーじゅん。漕ぐ。



五、無蔵が志情や 津堅渡ぬ渡中 深さゆかまさてぃ イサヘイヨ 情き深さ
んぞがしなさきや ちきんどぅーぬとぅなか ふかさゆまさてぃ なさきふかさ
Nzo ga shinasaki ya tsikiNduu nu tunaka hukasa yuka masati nasaki hukasa
貴女の愛情は津堅島への渡る沖の海の深さよりも勝っていて、なんと情けが深いことよ!
語句・どぅー 沖。<とぅー。沖。連濁で「どぅー」に。・とぅなか「沖の海。沖合い。沖の海上」【沖辞】。・ゆか より。よりも。



六、ホートゥ河ぬ水や世守りぬ由緒 人美らさ情 イサヘイヨ 代々の栄
ほーとぅがーぬみじや ゆーまむいぬゆいしゅ ひとぅじゅらさなさき ゆゆぬさかい
hootugaa nu mizi ya yuumamui nu yuishu hitoxujurasa nasaki yuyu nu sakai
ホートゥガーの水は人々の暮らしを守るという由緒ある場所 人が清らかで情け深いことが代々の栄え
語句・ほーとぅがー 津堅島の南西にある井戸の名称。「鳩」(ほーとぅ)が見つけた井戸(カー)という伝承がある。



七、島美らさ一惚り 人美らさ二惚り 無蔵が志情にイサヘイヨちんとぅ三惚り
しまじゅらさ ちゅふり ひとぅじゅらさたふり んぞがしなさきにちんとぅみふり
simajurasa chuhuri hitujurasa tahuri Nzo ga shinasaki ni chiNtu mihuri
島の美しさに一つ惚れ 人の清らかさに二つ惚れ 貴女の愛情に惚れてちょうど三つめ


この唄はCD「唄遊び」(我如古より子/吉川忠英)に収録されている。



作曲の我如古盛栄氏は我如古より子さんのお父様である。


いわゆる「島褒め」、故郷を讃える唄。


「なさけの島」として歌われているのは沖縄県うるま市の津堅島である。

筆者は2015年4月13日に津堅島にお邪魔させて頂いた。



3時間ほどの滞在だったし雨にもたたられたが
レンタサイクルを借りて島一周をした。

津堅島から見える知念、久高島は


現在では「キャロットアイランド」ー人参の島と言われるように島のほとんどは人参の畑や農地で、この時期は観光地としては訪れる人も少ない様子だったが、この「なさけの島」という唄に表されるように、美しい海と島の景色を眺めるだけでも素晴らしい島だと思った。


唄三線をされている方には是非一度立ち寄っていただきたい島の一つである。

そして津堅島に行った後に筆者はこの唄「なさけの島」と出会ったのだが、

是非この曲も聴いてもらえたら嬉しいと思う。




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Posted by たる一 at 05:21│Comments(0)な行沖縄本島
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