ハイサイおじさん

たる一

2006年03月31日 06:28

ハイサイおじさん
はいさい[おじさん]
haisai[おじさん]
語句・はいさい こんにちは。 <はい やあ。+さい 目上の人に使う男性の丁寧語。女性は「たい」を使う。つまり「はいたい」。


〔[]は明らかなヤマトグチ。発音もヤマトグチで記してある。例 [おじさん][整形][株主]。〕


一、ハイサイおじさん ハイサイおじさん夕べの三合瓶小残とんな 残とら我んにん分きらんな ありあり童えー童三合瓶小あたいし我んにんかい残とんでいゆんなえー童 あんせおじさん三合瓶し不足やみせら一升瓶我んに呉みせみ
はいさいおじさん はいさいおじさん ゆーびぬさんごーびんぐわーぬくとーんなーぬくとーらわんにんわきらんなー'あり'ありわらばー'えーわらばーさんごーびんぬ'あたいしわんにんかい ぬくとーんでぃ'っゆんなー'えーわらばー 'あんせーおじさん さんごーびんしふすくやみせーら'いっすびんわんにくぃみせーみ
haisai[おじさん]haisai[おじさん]yuubinu saNgoobiNgwaa nukutooNnaa nukutoora waNniN wakiraNnaa 'ari'ari warabaa 'ee warabaa saNgoobiN nu 'ataishi waNniNkai nukutooNdi 'yuNnaa 'ee warabaa 'aNsee[おじさん]saNgoobiNshi husuku yamiseera 'issubiN waNni kwimiseemi
○(こども)こんにちはおじさんこんにちはおじさん 昨夜の三合ビンは残っているかい?残っていたら私に分けないかねえ? 
(おじさん)あれあれこども おいこども 三合ビンほどのが私に残っていると言うのかい?おいこども 
(こども)それではおじさん 三合ビンでは足りないのでしたら一升ビンを私にくれませんか?
語句・あたいし  ほどのもの <あたい ほど。 +し のもの。 ・なー ・・かい?軽い質問になる。 ・んでぃ ・・と  ・あんせー  それでは。 あんしぇー ともいう。 ・ふすく 不足 過ち husoku→(三母音化)husuku。


二、ハイサイおじさん ハイサイおじさん 年頃なたくと妻小欲さぬうんじゅが女小や呉みそらに ありあり童えー童 汝や童のくさぶっくぃて妻小とめ言んなえー童 あんせおじさん二十歳や余て三十過ぎて白髪かめてから妻とめゆみ
はいさいおじさん はいさいおじさん とぅしぐるなたくとぅとぅじぐわーふさん 'うんじゅがうぃなぐんぐわーやくぃみそーらに'あり'ありわらばー'えーわらばー'っやーやわらびぬくさぶっくぃてぃとぅじぐわーとめーゆんなー'えーわらばー 'あんせーおじさん はたちや'あまてぃさんじゅーしじてぃしらぎかみてぃからとぅじとぅめゆみ
haisai[おじさん]haisai[おじさん]tushigurunatakutu tujigwaahusaN 'uNjuga winaguNgwaa ya kwimisoorani 'ari'ari warabaa 'ee warabaa 'yaaya warabinu kusabukwiti tujigwaa tumeeyuNnaa 'ee warabaa 'aNsee[おじさん]hatachi ya 'amati saNjuu shijiti shiragi kamitikara tujitume(e)yumi
(こども)こんにちはおじさん こんにちはおじさん 年頃になったので嫁さんをもらいたい あなたの娘をくださいませんか?
(おじさん)あれあれこども おいこども おまえはこどものくせにませていて 嫁がほしいというのか おい こども
(こども)それではおじさん 二十歳を越して三十過ぎて白髪になってから嫁さんはもらうのか?
語句・なたくとぅ なったので。 「くとぅ」は U+2460理由を示す・・ので U+2461時間の経過を示す・うんじゅ あなた。目上の人に使う。・ の。 ・くさぶっくぃてぃ  ませていて <くさぶっくぃゆん(動)  ませる。こましゃくれる。・とぅじ 妻。・とぅめーゆん  めとる。 もとめる。  ・しじてぃ 過ぎて。 <しじゆん (動) 過ぎる 。 ・しらぎかみてぃ 白髪を乗せて→白髪になって  <かみゆん(動)頂く 上に乗せる


三、ハイサイおじさん ハイサイおじさん おじさんかんぱちまぎさよい みみずかんぱち台湾ハゲ ありあり童えー童頭のハゲとしできやーど我達元祖もろできやー あんせおじさん我んにん整形しみやいあまくまかんぱち植ゆがや
はいさいおじさん はいさいおじさん おじさんかんぱちまぎさよーい みみじかんぱちたいわんはぎ 'あり'ありわらばー'えーわらばーちぶるぬはぎとーしでぃきやーどーわったーぐわんすんむるでぃきやー 'あんせーおじさん わんにんせいけいしみやい 'あまくまかんぱち'っうぃーゆがや
haisai[おじさん]haisai[おじさん][おじさん]kaNpachi magisayooi mimijikaNpchi taiwaNhagi 'ari'ari warabaa 'ee warabaa chiburu nu hagitooshi dikiyaadoo wattaa gwaNsuN murudikiyaa 'aNsee[おじさん]waNniN [seikei]shimiyai 'amakuma kaNpachi 'wiiyugaya
○(こども)こんにちはおじさんこんにちはおじさん おじさんのハゲは大きいよー、ミミズハゲ、台湾ハゲ 
(おじさん)あれあれこども おいこども 頭が禿げている者は優秀だぞ 私の祖先もみな優秀な者
(こども)それではおじさん私も整形させて あちこちハゲを植えようかねえ
語句 ・かんぱち 禿げ。 ・まぎさ 大きい。 <まぎさん(形)大きな。 ・みみじ ミミズ。  みみじゃー とも。 ・ぐわんす ご先祖 ・ も。強調。 ・ういーゆがやー 植えようかね? 「がやー」疑問詞がなくとも疑問の終助詞


四、ハイサイおじさん ハイサイおじさん おじさん髭小のおかさよい 天井の鼠の髭どやる ありあり童えー童汝や髭髭笑ゆしが髭のあしがるむてゆんど あんせおじさん 我んにん負きらん明日から鼠の髭小立てゆがや
はいさいおじさん はいさいおじさん おじさんふぃじぐわーぬ'うかさよーい てぃんじょーぬ'うぇんちゅふぃじどぅやる 'あり'ありわらばー'えーわらばー 'っやーやふぃじふぃじ わらゆしが ふぃじぐわー'あしがるむてーゆんどー 'あんせーおじさん わんにんまきらん'あちゃーから 'うぇんちゅぬふぃじぐわーたてぃゆがやー
haisai[おじさん]haisai[おじさん][おじさん]hwijigwaa nu 'ukasayooi teNjoo nu 'weNcu nu hwiji du yaru 'ari'ari warabaa 'ee warabaa 'yaaya hwijihwiji warayushiga hwijigwaa nu 'ashigaru(du) muteeyuN doo 'aNsee[おじさん]waNniN makiraN 'achaakara 'weNcu nu hwijigwaa tatiyuN gayaa
○(こども)こんにちはおじさんこんにちはおじさん ?おじさんの髭はこっけいだよー まさに天井のネズミのヒゲである 
(おじさん)あれあれこども おいこども おまえは髭ヒゲと笑うけれど髭があることこそが栄えるのだぞ 
(こども)それではおじさん わたしも負けない明日から ネズミのヒゲを生やそうか?
語句 ・うかさよーい こっけいだよー <うかさん(形) こっけいな。+よーい だよ。 ・あしがどぅ あることこそが。 <あ(<あん ある) + し(こと) + が + どぅ(強調) ・むてーゆん 太る。茂る。栄える。 これは、ネットでみるかぎり、いろいろな方の訳に誤解がある。「もてる」と訳しているのが大多数。しかし、「むてーゆん」は「枝が茂る」からきているのであり、「もてる」の意味はない。意訳して「栄える」→「もてる」という類推はできなくはないが語句の誤解は否めない。


五、ハイサイおじさん ハイサイおじさん 昨日の女郎小の香さよいうんじゅん一度めんそーれー ありあり童えー童辻、中島、渡地とおじさんやあまぬ株主ど あんせおじさん毎日あまにくまとーて我んねー貧乏やたきちきゆみ
はいさいおじさん はいさいおじさん ゆーびぬじゅりぐわーぬかばさよーい'うんじゅん'いちどーめんそーれー'あり'ありわらばー'えーわらばー ちーじ なかしま わたんじとぅおじさんや'あまぬかぶぬしどー'あんせーおじさんめーにち'あまにくまとーてぃわんねーふぃんすーやたきちきゆみ 
haisai[おじさん]haisai[おじさん] yuubinu jurigwaa nu kabasayooi 'uNjuN 'ichdoo meNsooree 'ari'ari warabaa 'ee warabaa chiiji nakashima wataNji tu 'amanu [かぶぬし]doo 'aNsee[おじさん]meenichi 'amani kumatooti waNnee hwiNsuu ya takichi yumi
○(こども)こんにちはおじさんこんにちはおじさん 夕べの女郎は色っぽいよー あなたも一度はいらっしゃい
(おじさん)あれあれこども おいこども 辻 中島 渡地とおじさんはあそこの株主だぞ 
(こども)それではおじさん毎日あそこに篭っていたから私は最悪の貧乏になったのかね?
語句・かばさ よい 香り 色っぽい。 ・くまとーてぃ こもっていて。  <くまゆん こもる。
たきちきゆみ 最悪になるかしら? <たきちきゆん(動詞) 病状や苦痛が最悪になる。 +  み (か?)

(コメント)
喜納昌吉作詞作曲。滝原康正補作。

喜納昌吉がまだ高校生の時につくられ、全国でヒット、戦後の「沖縄ブーム」のきっかけにもなった。
メロディーはほぼ沖縄音階だけで作られているし歌詞も一部を除いてウチナーグチ。私事ながら中学生になりたてのころ深夜放送に熱中していてラジオではじめて聞いたときの不思議な感覚を覚えている。

三線ではなくエレキギターと激しいドラム、意味がわからない言葉が聞き慣れないが新鮮なメロディーに乗っていた。
今の若者には志村けん がふざけて歌う「変なおじさん」のもと唄がこれだといえばわかるかもしれない。
いずれにしても この歌が大きなインパクトを与えたことは確かだ。

「おじさん」には実在のモデルがいて、沖縄戦の悲惨な体験が精神の病となった。

(共同通信社の編集委員室が作る企画ページ「アジアに広がる「花」の歌 ミュージシャン喜納昌吉(きな・しょうきち)」より)

「喜納昌吉(51)は中学生の時、忘れられない事件に遭遇する。
 精神に異常を来した近所の母親が、七つの娘の頭をまな板に乗せ、おので首を切り落としてしまった。
 「女の子が毛布に包まれて横たわっている。その子の父親が『なぜこの子の足は冷たいの。おかしいよ』と毛布を取ったら首が無い。父親は魂を落としたような顔で、しばらく言葉を失った」
 最初の作品「ハイサイおじさん」は、これを契機に生まれた。まだ高校生だった。」

おじさんは、この事件を契機に酒におぼれる。

その「おじさん」をこどもがからかう歌なのだから笑えない歌である。
しかし、明るい曲にアップテンポでやられると ついつい踊りたくなる。
内容と形式のミスマッチは喜納昌吉が計算したものだろうか。
悲しみを笑いとばすという強さが、この曲をはじめ、多くの沖縄の曲のなかにはある。

痛烈な社会風刺の歌と云っても過言ではない。

この歌を酔って歌って「ああ、気持ちよかった」と思ったことのある観光客が、
沖縄戦の事実や、本土と沖縄の歴史を知るきっかけになることを望みたい。




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