二見情話

たる一

2005年12月06日 11:47

二見情話
ふたみじょうわ
hutami joowa
語句・ふたみ 沖縄県名護市の東海岸にある地名。

作 照屋朝敏

(男)二見美童やだんじゅ肝美らさ海山の眺め他所に勝てよ
ふたみみやらびや だんじゅちむじゅらさ 'うみやまぬながみ ゆすにまさてぃよ
hutami miyarabi ya daNju chimujurasa 'umiyama nu nagami yusu ni masati yoo
二見の美しい娘は なるほど心清らかなことよ! 海山の眺めは他所に勝っていて
語句・だんじゅ 「げにこそ、いかにも、なるほど」【琉辞】。・ この「よ」は、囃子言葉として末尾にある。琉歌としては、この「よ」を入れると字余りになる。


(女)二見村嫁や ないぶしゃやあしが辺野古崎坂の上い下いよ
ふたみむらゆみや ないぶしゃや 'あしが ふぃぬくざち ふぃらぬ ぬぶいくだいよ
hutamimurayumi ya naibusha ya 'ashiga hwinukuzachi hwira nu nubui kudai yoo
二見村の嫁にはなりたいが辺野古崎の坂の上がり下り(は大変だ)
語句・ないぶしゃやあしが なりたいが。<なゆん なる。→ない。+ぶしゃん したい。+や は。+あ あん。ある。+しが けれども。・ぬぶいくだい 上り下り。辺野古岳に這うようにある道の勾配がきつい様子をいっている。


(男)行逢たしや久志小
'いちゃたしやくしぐゎ
'ichatashi ya kushigwaa
出会ったのは久志
語句 ・いちゃたしや 出会ったのは。<いちゃゆん 出会う。過去形→いちゃた。+し 前の動詞を名詞化。この後の「かたたし」「かゆたし」も同じ用法。


(女)語たしや辺野古
かたたしやふぃぬく
katatashi ya hwinuku
語ったのは辺野古


(男)思て通たしや 花の二見よ
'うむてぃかゆたしや はなぬふたみよ
'umuti kayutashi ya hana nu hutami yoo
恋して通ったのは美しい二見
語句・うむてぃ 恋して。・はなぬ 「はな」には植物の「花」以外に「華やかな」の意味を含ませて、よく琉歌でつかわれる。いわゆる「遊郭」や「遊女」という意味から「美しい」「毛遊びが盛んな土地」など。


(男)待ちかにて居たる首里上いやしが
まちかにてぃうたるしゅいぬぶいやしが
machikaniti wutaru shui nubui yashiga
待ち兼ねていた首里への帰還だが
語句・まちかにてぃ 待ちかねて。口語では「まちかんてぃ」。<まちゅん 待つ。+かにゆん かねる。


(女)出ぢ立ちゅる際や別れぐりしゃよ
'んじたちゅるち わや わかりぐりしゃよー
'Njitachuru chiwa ya wakari gurisha yoo
旅立つ時は別れにくいねえ
語句・んじたちゅる 旅立つ。<んじゆん 出る。 +たちゅる。発つ。・ぐりしゃ ・・しにくい。<ぐりしゃん ・・しにくい。「くりしゃん 苦しい」からきている。


(男)行かい
'いかい
'ikai
行くよ(行ってくるよ)
語句・ <いー 「〔同輩・目下への親しみを込めた文末助動詞〕よ、ねえ。〔未然形につく〕」たとえば「kooran 'uka ii」(買わないでおこうよねぇ)。【琉辞】。


(女)行ぢ来よと 交わす云言葉や
'んじくーよーとぅ かわす'いくとぅばや
'Njikuuyoo tu kawasu 'ikutuba ya
いってきなさい と交わす言葉は
語句・んじくーよー 行ってきなさい。<んじゆん 出る。 +ちゅーん 行く。の命令形。くー +よー 呼びかけ。・いくとぅば 言葉。「云」と書かれている「い」については、「'i-(

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