二見情話
二見情話
ふたみじょうわ
hutami joowa
語句・
ふたみ 沖縄県名護市の東海岸にある地名。
作 照屋朝敏
(男)二見美童やだんじゅ肝美らさ海山の眺め他所に勝てよ
ふたみみやらびや だんじゅちむじゅらさ 'うみやまぬながみ ゆすにまさてぃよ
hutami miyarabi ya daNju chimujurasa 'umiyama nu nagami yusu ni masati yoo
◯
二見の美しい娘は なるほど心清らかなことよ! 海山の眺めは他所に勝っていて
語句・
だんじゅ 「げにこそ、いかにも、なるほど」【琉辞】。・
よ この「よ」は、囃子言葉として末尾にある。琉歌としては、この「よ」を入れると字余りになる。
(女)二見村嫁や ないぶしゃやあしが辺野古崎坂の上い下いよ
ふたみむらゆみや ないぶしゃや 'あしが ふぃぬくざち ふぃらぬ ぬぶいくだいよ
hutamimurayumi ya naibusha ya 'ashiga hwinukuzachi hwira nu nubui kudai yoo
◯
二見村の嫁にはなりたいが辺野古崎の坂の上がり下り(は大変だ)
語句・
ないぶしゃやあしが なりたいが。<なゆん なる。→ない。+ぶしゃん したい。+や は。+あ あん。ある。+しが けれども。・
ぬぶいくだい 上り下り。辺野古岳に這うようにある道の勾配がきつい様子をいっている。
(男)行逢たしや久志小
'いちゃたしやくしぐゎ
'ichatashi ya kushigwaa
◯
出会ったのは久志
語句 ・
いちゃたしや 出会ったのは。<いちゃゆん 出会う。過去形→いちゃた。+し 前の動詞を名詞化。この後の「かたたし」「かゆたし」も同じ用法。
(女)語たしや辺野古
かたたしやふぃぬく
katatashi ya hwinuku
○
語ったのは辺野古
(男)思て通たしや 花の二見よ
'うむてぃかゆたしや はなぬふたみよ
'umuti kayutashi ya hana nu hutami yoo
◯
恋して通ったのは美しい二見
語句・
うむてぃ 恋して。・
はなぬ 「はな」には植物の「花」以外に「華やかな」の意味を含ませて、よく琉歌でつかわれる。いわゆる「遊郭」や「遊女」という意味から「美しい」「毛遊びが盛んな土地」など。
(男)待ちかにて居たる首里上いやしが
まちかにてぃうたるしゅいぬぶいやしが
machikaniti wutaru shui nubui yashiga
◯
待ち兼ねていた首里への帰還だが
語句・
まちかにてぃ 待ちかねて。口語では「まちかんてぃ」。<まちゅん 待つ。+かにゆん かねる。
(女)出ぢ立ちゅる際や別れぐりしゃよ
'んじたちゅるち わや わかりぐりしゃよー
'Njitachuru chiwa ya wakari gurisha yoo
◯
旅立つ時は別れにくいねえ
語句・
んじたちゅる 旅立つ。<んじゆん 出る。 +たちゅる。発つ。・
ぐりしゃ ・・しにくい。<ぐりしゃん ・・しにくい。「くりしゃん 苦しい」からきている。
(男)行かい
'いかい
'ikai
◯
行くよ(行ってくるよ)
語句・
い <いー 「〔同輩・目下への親しみを込めた文末助動詞〕よ、ねえ。〔未然形につく〕」たとえば「kooran 'uka ii」(買わないでおこうよねぇ)。【琉辞】。
(女)行ぢ来よと 交わす云言葉や
'んじくーよーとぅ かわす'いくとぅばや
'Njikuuyoo tu kawasu 'ikutuba ya
◯
いってきなさい と交わす言葉は
語句・
んじくーよー 行ってきなさい。<んじゆん 出る。 +ちゅーん 行く。の命令形。くー +よー 呼びかけ。・
いくとぅば 言葉。「云」と書かれている「い」については、「'i-(
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