2013年08月24日

夏至南風

夏至南風
かーちぱい
Kaachipai
夏至の頃に吹く南風
語句・かーち <かーちー。「夏至」【琉球語辞典(半田一郎)】(以下【琉辞】と略す。)石垣方言も同じ。【石垣方言辞典(宮城信勇)】(以下【石辞】と略す)・ぱい 「南」【石辞】。「はい」ともいう。本島では「ふぇー」「へー」(南)なので、夏至南風は「かーちーべー」という。新良幸人さんが石垣島出身のため「かーちぱい」。ちなみに九州・島根では南(はえ)。


作詞 新良幸人 作曲 下地勇


一、エイヤエイヤとぅりゅうの歌音 風やまとも夏至南風 ぐるりぬ海や 見事な眺み 夏太陽の照太陽 夏至南風
えいやえいやとぅ りゅうぬうたうとぅ かじやまとぅむ かーじぱい ぐるりぬ とぅけや みぐとぅなながみ なつてぃだ てぃるてぃだ かーちぱい
eiya eiya tu ryuu nu 'uta 'utu kaji ya matumu kaajipai gururi nu tuke ya migutu na nagami natsu tida tiru tida kaachipai
エイヤ エイヤとりゅう(竜。もしくは櫓[ろ]。)の歌音 風は順風 夏至南風 周囲の海は見事な眺めである 夏の太陽 照る太陽 夏至南風
語句・りゅう 「竜」も「櫓」(ろ)も「りゅう」と発音する上に、歌手カードにも漢字ではなく「りゅう」と表記されているので、どちらなのか判別できない。・まとぅむ 「【真艫】船尾(の方向):(船尾のほうから吹く)順風」【琉辞】。昔の航海は、帆に風を受けて推進力にする帆船(ふーしん)だったので、目的地の方に進むためには艫(とぅむ:船尾)から吹く風を順風と呼び歓迎した。・ぐるり 【琉辞】にも沖縄語辞典にもない。標準語の「ぐるり」か。ちなみにウチナーグチでは「まーい」「みぐい」「まーる」【琉辞】。

さっさ さっさ 舞い遊ばな さっさ さっさ 世ばなうれ
さっさ さっさ まいあしばな さっさ さっさ ゆばなうれ
sassa sassa maiashibana sassa sassa yubanaure
舞い遊ぼう 世は直れ(良くなれ)
語句・あしばな 遊びたい。または、遊ぼう。「な」は動詞の未然形について「希望」(‥したい)、「呼びかけ」(‥しよう)になる。その区別は文脈から。・ゆばなうれ 「安里屋節」や「船越節」など八重山民謡や、「豊年のうた」など宮古民謡の古謡の囃子言葉に使われることが多い。「世は直れ」「五穀豊穣になれ」と訳されることが多い。確かに、そう願わざるを得ない時代背景(琉球王朝による重税「人頭税」、そのための「島分け」による別離の苦しみやマラリア地獄など)に作られた歌に多く使われているが「なうれ」という語句は命令形だと思われるが、【石辞】にも【琉辞】にもない。【石辞】には「のーるん」が「なおる」と「稔(みの)る」の二つの意味ででてくるだけである。古謡の囃子言葉の意味を理解することは非常に難しい。ここでは通説である「世は直れ(良くなれ)」としておく。


ニ、夏太陽に 照太陽に 風やまとぅむ夏至南風 青々とぅ空 青々とぅ海 くぬ世ぬ栄いゆ願立てぃら
なつてぃーだに てぃるてぃーだに かじや まとぅむ かーちぱい あうあうとぅすら あうあうとぅうみ くぬゆぬさかいゆがんたてぃら
natsu tiida ni tiru tiida ni kaji ya matumu kaachipai 'auau tu sura 'auau tu 'umi kunu yu nu sakai yu gaN tatira
夏の太陽に 照る太陽に 風は順風 夏至南風 青々と空 青々と海 この世が栄えるよう願いを立てよう
語句・ 文語で使われる「を」。口語では用いない。・がんたてぃら 願いを立てよう、願いをこめよう、くらいの意味か。


三、昼間ぬ月ん 天に明がり 風やまとぅむ夏至南風 夜空群星 糸音ぬ清らさ あまたぬ キラリや 天ん川
ふぃるまぬちちん てぃんにあかがり かじやまとぅむ かーちぱい ゆずら むりぶし いちゅにぬ ちゅらさ あまたぬ きらりや てぃんがーら
hwiruma nu chichiN tiN ni 'akagari kaji ya matumu kaachipai yuzura muribushi 'ichuni nu churasa 'amata nu kirari ya tiNgaara
昼間の月も天に明るく 風は順風 夏至南風 夜空のスバル 糸音(三線の音色)の美しいことよ!数多くのキラリ(光?)は天の川
語句・むりぶし 八重山方言で「すばる(プレアデス)」【琉辞】本島では「むるぶし」。・いちゅにてぃんがーら 「【天+川原:=天の川】銀河」【琉辞】。川のことを「かーら」という。


CD「SAKISHIMA meeting」から、「夏至南風」を。

新良幸人さんと下地勇さんのお二人のライブを広島で見て、この曲に出会い頭の中をぐるぐると回っていた素晴らしい曲。

エイサー曲のように歯切れがよく、古典曲のような歌詞の雰囲気、囃子のどれも魅力してやまない。
三線とギターと笛と太鼓という構成も、フォルクローレのようでもあり、古さと新しさをかね揃えた名曲を生み出したと思う。

YouTubeを貼り付けておきたい。



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Posted by たる一 at 17:34│Comments(3)か行
この記事へのコメント
先日、海外公演に先駆けて行われた、music from JAPAN福島公演「沖縄の唄 今・昔」に行って参りました。
そこで、SAKISHIMAmeetingの「夏至南風」の演奏がありまして、配布された解説の中に、一番の歌詞の"りゅう"とは船子(漕ぎ手)とありました。
ちなみに三番の歌詞の"あまたぬ キラリや 天ん川"は"数多く輝くは天の川"とのこと。

コンサートの後、下地勇さんとお話しするチャンスがあり、夏至南風の後奏で言っている内容を尋ねたところ、獅子を起こす内容と雨乞いの内容だそうです。(調べたところ、雨乞いの部分は実世ぬクイチャーの歌詞のようです。獅子おこしの部分は調べがつきませんでした。勉強不足ですみません。)五穀豊穣や豊年の願いをうたった唄だそうです、つまり世果報の唄ですね。
Posted by 琉香 at 2014年02月10日 12:22
琉香さん、コメントありがとうございます。

りゅう、はウチナーグチで「櫓」、「ろ」の事ですから、漕ぎ手の歌う声なんでしょうね。

キラリ、現代語でしょうね。

なるほど、あのみゃーくふつぃ(宮古方言)は聞き取りできても意味がわからず。

参考になりました。
Posted by たる一たる一 at 2014年02月12日 14:29
歌詞の訳しありがとうございます!

海外で琉球國祭り太鼓やっているのですが、うちなーぐちですと意味が分からないのでこのように細かく分解していただくことによって歌詞を理解することができ、踊る時の感情の入れ方も変わってきます。

ありがとうございました!
Posted by あやっぺ at 2014年03月26日 04:54
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