2008年04月11日

月のまぴろーま節(八重山民謡)

月のまぴろーま節
ぬまぴろーま ぶし
tsiki nu mapiroma bushi
月が(出て明るい)真昼間(のような夜中)
語句・まぴろーま 真昼間。「真昼、正午から三時ごろまで。」(石)。ここでは真夜中に月が照らし、まるで真昼間のように明るい様。


(し、tsi、kiなどは中舌母音を表す。)


月ぬ真昼間や やんさ潮ぬ真干り 夜ぬ真夜中や(ハイヘー)女童ぬ潮時(ハイヘー)  
ぬまぴろーまややんさすぬまふぇり ゆるぬまゆなかや(はいへー)みやらびぬすどぅき(はいへー)
(囃子は以下省略。)
tsiki nu mapiroma ya yaNsasu nu mahweri yuru nu mayunaka ya miyarabi nu suduki
月が(出て明るい)真昼間(のような夜中)はヤンサ潮が1番干がり 夜の真夜中は娘の潮時
語句・やんさす ヤンサ潮<ヤンザ潮yaNza suu 「二月夜間の干潮の甚だしい時の潮。陰暦二、三月ごろの夜間の干潮とも、陰暦十一月ごろの干潮ともいう」(石) ・まふぇり 1番干上がり。「干上がる」は辞書に「ぴすん」。その活用形か。



月に願立てぃてい 星に夜半参り 思いすとぅ我んとぅ 行逢しゆ給り 
にぐわんたてぃてぃ ふすにやはんまいり 'うむいすとぅばんとぅ 'いかしゆたぼり
tsiki ni gwaN tatiti husu ni yahaNmairi 'umuisu tu baN tu 'ikashiyutabori
月に願立てて星に夜半参り 思う人と私と出会わせてください
語句・ふす (石)には星は「ぷす」または「…ぶし」しかない。・やはんまいり 「島うた紀行」(仲宗根幸市編著)によると「女性が男装し、男性が女装して意中の人に会わせてくれることを願い、神仏に祈願をして、その人の通る道端の暗いところに人目を忍び立つこと」・うむいす 思う人。<うむい+す。「す」は「事、物、人。連体形に続く形式名詞」(石)。・いかし 出会わせて。<いかーしん 'ikaashiN 会うようにさせる。出会わせる。沖縄口の「いちゃーしゅん」



思いすとぅ我んとぅ 行逢さんどぅあらば あたら我が命 とぅらばちゃすが 
'うむいすとぅばんとぅ'いかさんどぅ'あらば 'あたらわがぬち とぅらばちゃすが
'umuisu tu baN tu 'ikasaN du 'araba 'atara waga nuchi turaba chasuga
思う人と私と出会わせないのであれば 大事な私の命取ればいかが
語句・あたら 大事な。<あたらさーん「可惜(あたら)し。可愛らしい。」(石)。あたらむん 大事なもの。沖縄口の「あたらしゃん」(大事である)。・ちゃすが いかがするか→いかが?。


東から上りおる大月加那志 沖縄から八重山まで照らしょうり
'あーりから'あーりおーる'うふつがなし 'うきなからやいままでぃてぃらしたぼり
'aari kara 'aariooru 'uhutsikiganashi 'ukina kara yaima madi tirashitabori
東からあがられる満月様 沖縄から八重山まで御照らしください


潮の満干や月からど定まみようる 島の有卦無卦やはらの主から
すぬ'んちぷや つからどぅさだみようる しまぬ'うきむきや はらぬしゅから
su nu 'Nchipishi ya tsiki kara du sadamiyouru shima nu 'ukimuki ya hara nu shu kara
潮の満ち干きは月によって定まっておられる 島[村]の幸不幸は村の主によって決まる
語句・んちぴ 満ち干き。<んちすー 上げ潮。ぴすー 引き潮。「引く」は「ぴすん」。
から「原因・理由をあらわす。」(石)。…によって。・うきむき 有卦無卦。幸不幸。はら村。「古謡に出てくる。村。」(石)。 

八重山民謡の「月のマピローマ」。
月が真昼のように照らす真夜中、娘は会いたい彼氏と会えるよう願をかける。夜間の干潮で月の明かりに照らされて、いままで見えなかった干瀬が海から浮かび上がる。まるで娘のひそやかな願いのように。
ロマンチックな情景も、神仏に「会わせないなら命もかける」女心の高ぶりに変わる。
四番、五番はまた話の向きが変わっている。あとから加えられた歌詞なのかもしれない。

月や潮の情景をからませながら歌詞が情緒的であり、娘のストレートな思いが表現されていて、多くの節歌などとやや一線を画しているように私には思える。


Posted by たる一 at 17:21│Comments(3)
この記事へのコメント
安室流の工工四(大川月ぬまぴろま節)では2番までしかありません。
たしかに4・5番は感じが違うので、あとから加えられたかもしれませんね。
「安里屋節」もそうですが結末が変わっているのもあるでしょうね。
Posted by コロリ at 2008年04月23日 20:48
返事遅くなりました。
コメントありがとうございます。
Posted by たるー(せきひろし)たるー(せきひろし) at 2008年04月28日 16:16
舞踊曲の月ぬ真昼間節は極端な上げ出しですね。
また、石垣と大川では曲の尺の長さや節入り自体が途中から変わりますね。
Posted by くがなー at 2011年03月07日 04:43
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