2006年12月19日

ハンタ原 (喜納昌永)

ハンタ原
はんたばる
haNta baru
崖の(端っこの)畑
語句・ はんた 「①端。はしっこ。②崖のふち。また崖。」【沖縄語辞典】(以下【沖辞】と略す。)・ ばる <はる。連濁で「ばる」。「畑。主として畑をさすが、畑よりも広義。耕地。田畑。」【沖辞】。具体的な地名かどうかは不明。糸満に縄文時代の人骨が出土した「摩文仁ハンタ原遺跡」と名付けられた場所はある。関係は不明。各地にあるのかもしれない。

唄三線 喜納昌永


一、 (サー)ハンタ原居とて吹き下す(スーリ)風に(ヒャー)いやい持た(アリヒャ小アリヒャ小)ちゃしが 届ちぇーうたみ(チーユイユイ ケーユイユイ)
(さー)はんたばるうぅとーてぃふち'うるす(すーり)かじに(ひゃー)'いやいむた('ありひゃぐわー 'ありひゃぐわー)ちゃしが とぅどぅちぇーうぅたみ
(saa)haNtabaru utooti huchi 'urusu (suuri) kaji ni (hyaa) 'iyai muta ('arihyaagwaa 'arihyaagwaa) chashiga tuduchee utami
(囃子は省略)
ハンタ原で吹き下す風に伝言を持たせたが届いたか?
語句・ いやい  伝言。<いやり iyari(これからRが脱落したもの)。


二、 ハンタ原胡弓小音高さ胡弓小 夜中から後どふきる胡弓小
はんたばるくーちょーぐわ 'うとぅだかさ くーちょーぐわ ゆなかから'あとぅどぅふきるくーちょーぐわ
haNtabaru kuuchoogwaa 'utudakasa kuuchoogwaa yunaka kara 'atu du hukiru kuuchoogwaa
ハンタ原(で)胡弓(を弾けば)音がよく響くことよ!胡弓 夜中から後によい音でさえずるのだ胡弓(は)
語句・ くーちょー  胡弓。ちなみに沖縄の胡弓は弦が4本。3本は三線と同じ調弦で、一本は男弦より低く調弦。中国の二胡と違うのは、弓が弦の間ではなくバイオリンのように独立している。・ たかさ  響きがよい。音の高低もあるが、音がよく響く意味もある。・ ふきる  さえずる。<ふちゅん さえずる (鳥などが)鳴く。 良い声をだす。 の連体形(どぅ との係り結び)。


三、 天井小どやくと毎夜来よカマド 我んね通たしが汝がる居らんで
てぃんじょーぐゎーどぅやくとぅ めゆるくーよーかまどぅ わんねかゆたしが やーがる うぅらんでー
tiNjoogwaa du yakutu meyuru kuu yoo kamadu waNnee kayutashiga yaa ga ru uraN dee
天井(忍ぶ場所か?)だから毎夜来いよ カマド(よ) 私は通ったがお前は居ないぞ
語句・ てぃんじょー  天井。・ くーよー  来いよ。
がる  がこそ。る=どぅ。


四、 十七八うとて持ちゅる夫やしがタンメたるがきて今ど持ちゅんで
じゅうしちはちうぅとーてぃむちゅるうぅとぅやしが たんめーたるがきてぃなまどぅむちゅんでー
juushichihachi utooti muchuru utu yashiga taNmee tarugakiti nama du muchuN dee
十七、八で持つ夫だが じい様頼って今やっと持つことに
語句・ うとーてぃ  で。…に居て、という意味もあるが、で という時間や場所をしめす場合もある。動詞「うん」 の接続態接続形【琉球語辞典】。
たるがきてぃ  頼って。<たるがきゆん 頼みにする あてにする。


五、 三味線小ぬ女絃 ぐまテンテン小しみて 側に居るアバ小歌や知らに
さんしんぐゎぬみーじるぐまてんてんぐゎしみてぃ すばにうぅる'あばぐわや'うたやしらに
saNshiNgwaa nu miijiru guma teNteNgwaa shimiti subani uru 'abagwaa 'uta ya shitani
三線の女絃小さくテンテン弾いて 側に居るお姉さん歌は知らないかね?
語句・ みーじる 女絃。「男絃」は「うーじる」。「中絃」は「なかじる」・ ぐま  小さい。・ てんてん  三線の擬音。「ぐまてんてんぐゎー」で、小さく弾くこと。


六、 三味線小や三丁アバ小が五人 遊ぶたる毛小に思い残ち
さんしんぐゎやさんちょー 'あばーぐゎーがぐにん 'あしぶたるもーぐゎに'うむいぬくち
saNshiNgwaa ya saNchoo 'abagwaa ga guniN 'ashibutaru moogwaa ni 'umui nukuchi
三線は三丁 姉さんは五人 遊んでいた野原に思いを残して
語句・ あばー 「姉。ねえさん。農村で用いる語。」【沖辞】。



(コメント)
普久原朝喜が、その独特の奏法を編み出したと言われる、三下げの早弾き。
息子の普久原恒男氏によると、もとは「東方(あがりかた)」という早弾きの曲で、つくりかえたのは普久原朝喜だという。

嘉手苅林昌と登川誠仁の掛け合いも音源に残っているが、工工四の流れは違っていても節はあっている。

宮古根(なーくにー)とのチラシ(続けて弾くこと)で用いたり、単独もある。

喜納昌永氏のハンタ原は、普久原朝喜氏のそれに手が良くにている。

普久原朝喜氏、そしてこの喜納昌永氏のは「タタタタ」と等間隔のリズムなの対し、
時代とともに「タッタタッタ」というリズム弾きも多い。
いろいろなアレンジと、歌詞もある。



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Posted by たる一 at 23:58│Comments(0)は行沖縄本島
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