2006年09月08日

平和の琉歌

平和の琉歌
へいわのりゅうか
(大和口なので発音省略。以下同じ)
語句・りゅうか 八・八・八・六文字(30文字)で構成される琉球文化圏特有の唄の形式。首里語では「るーか」。

一、この国が平和だとだれが決めたの 人の涙も渇かぬうちに
アメリカの傘の下夢も見ました民を見捨てた戦争の果てに
蒼いお月様が泣いております 忘れられないこともあります 愛を植えましょう この島へ 傷の癒えない人々へ 語り継がれていくために



二、この国が平和だと誰が決めたの 汚れ我が身の罪ほろぼしに
人として生きるのを何故にこばむの 隣り合わせの軍人さんよ
蒼いお月様が泣いております 未だ終わらぬ過去があります
愛を植えましょう この島へ 歌を忘れぬ人々へ いつか花咲くその日まで


(以上発音、訳共に省略)

御月前たり泣ちや呉みそな やがて笑ゆる節んあいびさ 情け知らさな この島の 歌やこの島の暮らしさみ いつか咲かする愛の花
'うちちょーめーたりなちやくぃみそな やがてぃわらゆるしちん'あいびさ なさきしらさなくぬしまぬ 'うたやくぬしまぬくらしさみ 'いちかさかする[あい]ぬはな
'uchichoomee tari nachi ya kwimisona yagati warayuru shichiN 'aibisa nasaki shirasana kunu shima nu 'uta ya kunu shima nu kurashisami 'ichika sakasuru [ai]nu hana
お月様よ もし!泣きはしないでください やがて笑える時期もありますよ 情けをしらせたい この島の 歌はこの島の生活なのだよ いつか咲かせる愛の花(を)
語句・うちちょーめー お月様 「めー」は尊敬を表す。・・・様。【沖縄語辞典(国立国語研究所編)】には「うちちゅーめー」とある。・たり もし。 女性が目上に使う「もし!」 「たい」より上位に。(「はいたい」)・しらさな 知らせたい。 動詞の未然形+な =希望。・さみ ・・・である。


作詞作曲・桑田佳祐

沖縄口の歌詞だけは知名定男作。

ネーネーズが歌っている。

「琉歌」は八・八・八・六(サンパチロク)が原則だが、
この歌は「琉歌」と銘打っていても琉歌ではない。

最後の知名定男作詞の部分でさえサンパチロクではない。

にもかかわらず、この歌、沖縄の現実に大和から迫り、
みごとに沖縄音階を盛り込んだ曲で聞くものを圧倒する。桑田佳祐の力である。

歌というものは作者の意図や背景から離れ、聞く人の心を捉えるとき、まったく違う解釈がされることもある。

ネーネーズが歌うとき沖縄人が主体のように聞こえるのだが私たちが歌うと大和人や普遍的な人間をテーマにしたものにも見える。

しかし、戦後、傷ついた沖縄がアメリカに支配され基地の島にされてしまった現実を歌の背景にしていることは間違いない。

そして「愛を植えましょう この島へ」と桑田佳祐が歌えば知名定男は「情けしらさな くの島の」と返す。

愛が必要なのは、沖縄人ではなく、あなたたち大和人ではないのかと。

そこだけがウチナーグチなので重みがある。

戦争の亡霊を引きずりながら靖国参拝を続けるこの国の首相。

愛を植えましょう、この国に。本当にそうしたいものである。



【このブログが本になりました!】
平和の琉歌

書籍【たるーの島唄まじめな研究】のご購入はこちら


同じカテゴリー(は行)の記事
平和の願い
平和の願い(2021-05-15 07:52)

廃藩ぬ武士  2
廃藩ぬ武士 2(2015-02-11 10:17)

二見情話 2
二見情話 2(2013-12-30 10:50)

浜のアーマン小
浜のアーマン小(2013-04-13 12:50)

華ぐるま
華ぐるま(2013-02-17 09:10)

はじうすい坂
はじうすい坂(2012-05-27 17:42)


Posted by たる一 at 06:47│Comments(5)は行ポップス
この記事へのコメント
こんにちは。
私は沖縄も桑田さんも大好きです。

この唄は目を潤ませながら唄います。
今回解説を見て,もっと好きになりました。

ありがとうございます。
Posted by ふなきち at 2008年10月17日 10:37
ふなきちさん
はじめまして。
コメントありがとうございます。

歌人 桑田圭祐を見るようですよね。
Posted by たるー(せきひろし)たるー(せきひろし) at 2008年10月18日 07:59
こんにちは。書き込みは初めてですがいつも参考にさせていただおております。ありがとうございます。
慰霊の日を前に、もういちどちゃんと聞こうと想って、島言葉のところを聞き返しているのですが、「御月前たり」のところは、ウチチョーメータリと聞こえるのですが、
Posted by Qoo● at 2009年06月23日 00:21
Qooさん
ありがとうございます。

慰霊の日に、広島でもこの唄、よく歌われています。

さて「御月前たり」ですが
おっしゃる通り
「うちちょーめーたり」とネーネーズは唄っております。

それで、その読み方で歌詞をいろいろ調べましたが
その限りでは見つかりませんでした。

上にも書きましたが
「うちちめー」→「御月様」という語句は
首里語を中心にした「沖縄語辞典」「琉球語辞典」に
ありますが、
「うちちょー」という語句がありません。

琉歌大成という琉歌を5千首以上あつめた本においては
「御月」(utsichi)が付いた歌が52首ありましたが、その中にも「うちちょーめー」はもとより「うちちめー」が付く歌はありませんでした。

「御月前」を「うちちょーめー」と読む理由がわかないのでしばらく調べてみたいと思います。
実は簡単なことかもしれませんが。

ネーネーズの歌っているように
「うちちょーめーたり」と歌われることをお勧めします。

上の記事はしばらくそのままにしておきます。

ご指摘ありがとうございました!
Posted by たるー(せきひろし)たるー(せきひろし) at 2009年06月27日 14:28
浦添の師匠にうかがったところ
「うちちゅーめー」と言っている、とのこと。

また「地方によって言い方が違うと思う」とおっしゃられました。

上原直彦さんもブログで
「旧8月15日の御月前<うちちゅうめぇ>も美しいが、後ぬ十五夜<あとぅぬ じゅうぐやぁ>と言って、ひと月後、旧9月15日の御月前は、さらに美しい。」

と師匠と同様。

「うちちょー」でも「うちちゅー」でもよいのでしょう。

上の記事を改訂しておきます。
Posted by たるー(せきひろし)たるー(せきひろし) at 2009年06月28日 13:49
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。