糸縁節

たる一

2013年05月12日 12:29

糸縁節
いとぅゐんぶし
'itu yiN bushi
絃(いと)の縁の歌
語句・ゐん 縁(えん)。発音に注意したい。「ゐ」の発音は50音の中になく、「わ行」の「wi」がこれに相当する。

作詞 与儀 清賢    作曲 大城 志津子


一、(男)三味線ぬ音色 絃合わち鳴ゆさ ヨー 我んや肝合わち 無蔵とぅ鳴らな 染みなさや 思無蔵ヨ
さんしんぬにいる ちるあわちなゆさ よー わんやちむあわち んぞとぅならな すみなさや うみんぞよ
saNshiN nu ni'iru chiru 'awachi nayu sa yoo waN ya chimu 'awachi Nzo yu narana suminasa ya 'umiNzo yoo
三線の音色は絃を合わせて(ちんだみして)鳴るもの 私は心を貴方に合わせて鳴らしたい 愛を染めたい 愛しい貴女
語句・さんしん 三線。沖縄では「しゃみしん」「しゃみせん」ということが多い。「さんしん」の語源については「三絃[弦]〔中国音sanxian〕または三線〔中国音sanxian〕【琉球語辞典】。から。・ちる 絃。糸。ちなみに、一弦は男絃(うーじる)、二弦は中絃(なかじる)、三絃は女絃(みーじる)と呼ぶ。・ちるあわち 三線の絃を調弦することを「ちんだみ」というが、これは「絃(ちる)試し(たみし)」から来ているという説もあるが、一方、【琉球語辞典】によると、「ちる」+「たみゆん」(たわめる。矯(たわ)める)かわきているとある。「たわめる」とは「曲げたり、矯正すること」「狙いを定めること」「じっと見る」などの意味がある。・ならな 鳴りたい。なりたい。 「音が鳴る」の「なゆん」と「関係が成立する」という意味の「なる」(なゆん)をかけている。うみんぞ 愛しい貴女。うみ;愛しい。+んぞ;(男性から女性への呼称)貴女、あなた。 Cf,うみさとぅ(愛しい貴方)。


二、(女)三味ぬ音ぬ如に 色深く里前ヨー 何時迄んとぅ思てぃ 染みてぃたぼり 知らすなよやー 二人が仲
しゃみぬうとぅぬぐとぅに いるふかくさとぅめよー いちまでぃんとぅむてぃ すみてぃたぼり しらすなよーやー たいがなか
shami nu 'utu nu gutu ni 'iru hukaku satume yoo 'ichimadhiN tumuti sumithi tabori shirasuna yoo yaa tai ga naka
三線の音のように色を深く いつまでもと思って 愛を染めてください 知らさないでよね他人に 二人の仲を
語句・よーやー よー(命令形を柔らかくする「ねえ」)+やー(ねえ)。非常に優しい命令形。「よね」くらい。語句・たい 二人。hutari(ふたり)の「hu」と「R」が抜けたもの。「futa(r)iの頭音節消失」【琉辞】。


三、(男)歌とぅ三味線や 絃頼てぃ結ぶヨー 我んや無蔵頼てぃ 千代に結ば 染みなさやー 思無蔵ヨ
うたとぅさんしんや ちるたゆてぃむしぶ よー わんやんぞたゆてぃ ちゆにむすば すみなさやー うみんぞよ
'uta tu saNshiN ya chiru yu tayuti mushibu yoo waN ya Nzo tayuti chiyu ni musuba suminasa ya 'umiNzo yoo
歌と三線は絃をあてにして結ぶ 私は貴方をあてにして いつまでも結びたい 愛を染めたい 愛する貴女
語句・たゆてぃ 頼って。<たゆゆん。 良く唄でつかわれる。


四、(女)絃合わち弾ちゅる三味ぬ音ぬ如にヨー 互に肝合わち 浮世渡ら 知らすなよーやー 二人が仲
ちるあわちひちゅるしゃみぬにぬぐとぅに よー たげにちむあわち うちゆわたら しらすなよーやー たいがなか
chiru 'awachi h(w)ichuru syami nu gutu ni yoo tage ni chimu 'awachi 'uchiyu watara shirasuna yoo yaa tai ga naka
調弦(ちんだみ)して弾く三線の音のように 互いに心をあわせ 浮世を渡りたいね 知らさないでね 二人の仲を


五、(男女)三味ぬ糸頼てぃ 結ぶ糸縁ぬヨー 変わる事ねさみ 幾世迄ん 変わんなよーやー 二人が仲
しゃみぬいとぅたゆてぃ むしぶいとぅゐんぬ よー かわるくとぅねさみ いくゆまでぃん かわんなよーやー たいがなか
shami nu 'itu tayuti mushibu 'itu yiN nu yoo kawaru kutu nesami 'ikuyuu madiN kawaNna yoo yaa tai ga naka
三線の糸に頼って結び糸の縁が 変わることはないのだ 幾世までも 変わるなよ 二人の仲
語句・ねさみ ないのだ。 ね;「あん」(ある)の対、「ねーん」の語幹。+さみ;であるぞ。「saramiの短縮形」【琉辞】。



沖縄コンビ唄というCDに収録されている唄。

先日、三線、三味線を使った琉歌をしらべたが、歌の中で三線をテーマにした曲もしらべてみたら、これがあった。

歌三線 喜久山 節子 新城 慎一

とても軽妙な早弾きのコンビ唄で、三線の糸、絃を「縦糸」にして、男女の恋愛を「横糸」に唄が作られている。

他にも三線を唄に取り入れた曲をすこし探してみたい。


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