恨みの嵐

たる一

2012年05月01日 10:06

恨みの嵐
うらみのあらし
(標準語よみなので発音、意味省略)


作詞作曲 当銘由俊


一、かにんちりなさや 嵐世ぬなれや 一人離りとてぃあかしかにてぃ あかしかにてぃ
かにんちりなさや あらしゆぬなれや ふぃちゅいはなりとてぃ あかしかにてぃ (繰り返し。以下省略)
kaniN chirinasa ya 'arashiyu nu nare ya hwichui hanaritoti 'akashikaniti ('akashikaniti)
こんなにも辛いのは嵐の世ではあたりまえなのかね 一人離れていて(夜が)明かせない
語句・かにん かに+ん。かに「かように」【琉辞】。・なれ<なれー 「①習慣、習わし;②習い」【琉辞】。ここでは①。・あかしかにてぃ 眠ることが出来ず夜を明かすことが辛い様子。


二、哀りさみ浮世 巣なし鳥心 あきよ宿る木ん紅葉なたみ
あわりさみうちゆ しなしとぅいぐくる あきよやどぅるきんむみじなたみ
'awari sami 'uchiyu shinashi tuigukuru 'akiyo yaduru kiN mumiji natami
哀れなのだよ浮世 巣のない鳥のようだ あわれ 宿る木も紅葉してしまったか
語句・さみ 「〔強意の文末助詞〕(…なのだ)ぞ[よ]。」【琉辞】。・ぐくる <くくる。連濁により「ぐくる」。意味は「のような」「のように」。・あきよ
「あヽ、あわれ」【琉辞】。文語で使われる。


三、にぶる身ぬちらさ 哀り仮枕 夢路通わする我親ぬうすば
にぶるみぬちらさ あわりかりまくら いみじかゆわするわやぬうすば
niburu mi nu chirasa 'awari karimakura ‘imiji kayuwasuru waya nu 'usuba
寝る身の辛いことよ!哀れな仮の枕 夢で思い出す私の親のお側に居た頃を
語句・にぶる <にーぶい+すん(しゆる)融合したものと思われる。 眠る。眠くなる。


四、昔染みなりし我親ぬ面影や 夢に事語てぃ見してぃたぼり
んかしすみなりしわやぬうむかじや いみにくとぅかたてぃみしてぃたぼり
Nkashi suminarishi waya nu 'umukaji ya 'imi ni kutu katati michititabori
昔馴染んだ親の面影を夢で物語を語ってみせてください
語句・ をば。を。「jaは(格助詞ではなく)取り立てて強調する係助詞なので、文脈によっては『…ヲ(バ)』〔目的〕の意味にもなる。」【琉辞】。


五、散りてぃ根に帰る 花ん節来りば 又ん色増しゅる事んあゆら
ちりてぃににかいる はなんしちくりば またんいるましゅるくとぅんあゆら
chiriti ni ni kairu hanaN shichi kuruba mataN 'iru mashuru kutuN 'ayura
散って土に帰る花も季節が来たら又も色を増して咲くこともあるだろう
語句・ <にー 根。


嘉手苅林昌氏が歌った「恨みの嵐」。

2009年の嘉手苅林昌追善公演「白雲ぬ如に」では知名定男氏が唄った。

その知名定男氏の歌詞は少し異なっている。

      林昌            知名
一番 「あかしかにてぃ」→    「暮らしかにてぃ」
三番 「我親」     →    「我家」(読み方は同じ)  
四番 「染みなりし」  →    「住みなりし」(〃)
五番 「しちんあゆさ」 →    「くとぅんあゆさ」

どちらがオリジナルなのか、今は不明。

「あかしかにてぃ」が使われた琉歌を「琉歌大観」(島袋盛敏)で調べてみた。

一人まるねの旅宿に思ひつくさらぬあかしかねて
一人かりねの旅宿に、かれこれいろいろ思うことが多く、夜を明かしかねることである。旅は憂い辛いものだ(島袋訳)

また「すみなりし」が使われた琉歌も。

いきやす忘れゆが住み馴れしおそば 朝夕面影や袖にすがて
恋人の傍でくらしたことを、どうして忘れることができよう。恋しい面影は朝夕自分の袖にすがって、振り放そうとしても、放されるものではない。(島袋訳)

この「恨みの嵐」の曲調は、その題名から想像できないほど「明るい」。

嘉手苅林次先生もCD「MY SWEET HOME KOZA」でこの「恨みの嵐」を唄われている。


関連記事