石くびり
いしくびり
'ishi kubiri
〇
石の小坂
語句・
くびり <小坂(ひら)
作詞 大浜方叶 作曲 石原節子
一、
恋路連りなさやままならん世間に 無蔵が云言葉の肝にかかてぃ 肝にかかてぃ
くいじちりなさや ままならんしけに んぞがいくとぅばぬちむにかかてぃ(ちむにかかてぃ)
kuiji chirinasa ya mamanaraN shike ni Nzo ga 'ikutuba nu chimu ni kakati chimu ni kakati(繰り返し以下省略)
〇
恋の道はつれない 思うようにならないこの世 貴女の言葉が心に残って
二、
忘らていやしが 肝に思染みてぃ 思切りんならん 我肝病むさ
わしらていやしが ちむにうみすみてぃ うみちりんならん わちむやむさ
washiratei yashi ga chimu ni 'umi sumiti 'umichiriN naraN wa chimu yamu sa
〇
忘れようとか思うが心に思い染めてしまってあきらめることができない 私の心病むようだよ
語句・
てい 「てぃやい」ともいう。文語では「てぃやり」。「・・といって」「とか」「・・と」・
うみちり あきらめる。<思い+切る。
三、
無蔵が顔見りば 恋しさや勝てぃ 焦がりゆる肝や 誰に呉ゆが
んぞがかうみりば くいしさやまさてぃ くがりゆるちむや たるにくぃゆが
Nzo ga kau miriba kuishisa ya masati kugariyuru chimu ya taru ni kwiyuga
〇
貴女の顔見ると恋しさが強くなって焦がれる心は誰にうちあけたらいいのか
語句・
かう 顔。ちなみに「口語はcira;敬語はmjunciなど」【琉辞】。・
くぃゆが 直訳では「あげるか」「やるか」。ちなみにウチナーグチでは「やる」「もらう」の区別なく「くぃゆん」を使うので、どちらかは文脈から判断する。ここでは「焦がれる心誰にうちあけるか」とした。
四、
村ぬ石小坂 我一人どぅ行じゃる 互にかながなとぅ登てぃみぶしゃ
むらぬいしくびり わんちゅいどぅんじゃる たげにかながなとぅ ぬぶてぃみぶしゃ
mura nu 'ishikubiri waN chui du 'Njaru tsgee nikanaganatu nubuti mibusha
〇
村の石の小坂 私一人だけで行く お互い仲良く登ってみたいものだ
語句・
んじゃる <いちゅん 'ichuN 行く の 連体形。「どぅ」の係り結びで連体形になっている。「どぅ」は「だけ」と訳すとフィットする場合が多い。・
かながなとぅ 「仲良く、睦まじく」【琉辞】。<かながなーとぅ と会話では使う。
この歌を作曲し自ら歌われた石原節子さんは「夫婦船」「ちぶみ」などを唄って沖縄では人気歌者の一人だったが2008年に亡くなられた。
この「石くびり」は上のCDに音源がある。これも大ヒットし人気はいまだに強い。
「石くびり」は「石の小坂」の意味。
「坂」は「ひら」「ふぃら」。日本の古語でもある。
連濁で「こ+ひら」は「こびら」となり、さらにウチナーグチの三母音化の法則で「くびら」。
kobira→kubira→kubiri
末尾の「ら」が「り」になったのは「訛り」だろう。
「伊野波ぬ石くびり無蔵連りてぃ登る なふぃん石くびり 遠さはあらな」
という古い歌もあるが、これをモチーフにしているのかどうかは不明。
いずれにしてもいまだに唄われる人気の高い歌の一つ。