永良部シュンサミ

たる一

2008年12月28日 17:50

永良部シュンサミ
えらぶしゅんさーみー
erabu shuNsaamii
語句・えらぶ 沖永良部島。現在の行政区は鹿児島県だが、廃藩置県(1871年)以前は琉球王朝の下にあった。本島では「'irabu いらぶ」と発音するが、「erabu えらぶ」とも発音する。・しゅんさーみー 囃子言葉からきた歌の題名。語源は不明だが、【今帰仁方言音声データベース】によると、「スンサーミー /suNsaamii/ (名詞)意味:村芝居の最初に出てくる長者の大主(うふしゅ)のお供をする子供の持つ小さい竹のばち。また、その竹のばちを持った子供たちの踊りの名。」とある。又、【沖縄大百科】によると『我如古スンサーミー
読み方:がねこすんさーみー 沖縄本島中部宜野湾市我如古で行われる豊年祭。伝承によると察度王の三男の孫にあたる我如古大主が我如古城を築城した際、その祝宴に披露したのが始まりといわれ、それ以来、毎年豊年や子孫繁栄を願って旧暦8月17日に踊られていた。しかし、いつ頃からか旧暦3月3日に踊られるようになり、「3月踊り」、「スンサーミー」と呼ばれるようになった。平成7年に宜野湾市無形民族文化財に指定。』とある。



一、永良部シュンサミ シュンサミ節入りぬしゅらさ 永良部島ん人ぬ想い 想いやてる (しゅんさーみー しゅんさーみー)
えらぶしゅんさーみー しゅんさーみー ふし'いりぬしゅらさ えらぶしまびとぅぬ'うむい 'うむいやてぃる 
erabu shuNsaamii shuNsaamii hushi'iri nu shurasa erabu shimabitu nu 'umui 'umui yatiru
永良部シュンサミ(歌の名前の)節に入る愛しさよ! 沖永良部島の人の想い 想いだ
語句・ふし'いり 「ふし」は「曲節」。つまり歌に入る部分。 ・しゅらさ <しゅーらーしゃん しおらしい。かわいい。愛らしい。 体言止めで、「なんと愛しいことよ」。 ・やてぃる <やん ある。 やてぃ 連用形 + どー である。 <duu →ruu


二、二、三月頃や麦粟どぅ刈ゆる 下夏や揃てぃ稲どぅ 稲どぅ刈ゆる
にさんんぐゎちぐるや むじ'あわどぅかゆる しむなちやするてぃ 'んに 'んにどぅかゆる
nisaNgwachiguru ya muji 'awa du kayuru shimunachi ya suruti 'Nni 'Nni du kayuru
二、三月頃は麦粟を刈るのだ 夏の終わりは 揃って稲を、稲を刈るのだ
語句・しむなち 「しむなち」という語句は辞書にない。「しむ」が「後ろ」を意味するなら「夏の終わり」と訳せる。


三、今年仕立てたるマサク主が支度 世界に無い支度 今度 今度初み
くとぅししたてぃたる まさくしゅがしたく しけにねんしたく くんどぅはじみ はじみ
kutushi shitatitaru masaku shu ga sitaku seike ni neN sitaku kudu hajimi hajimi
今回仕立てた政孝主の支度 前代未聞の支度 今度が初めて
語句・まさくしゅ 政孝主。沖永良部島の伝統芸能である「大蛇踊り」に伝承された話にでてくる「政孝主」だと想われる。「上平川の幸山政孝が、薩摩藩への貢ぎ物の御用を無事すませて帰島する途中に嵐にあい明国に漂着し、そこで暮らす内にこの踊りを覚え、数年後、沖永良部へ帰る船便の都合で琉球に立ち寄り琉球の歌と踊りを、この踊りに取り入れ大蛇踊りを完成させ、上平川へ伝えたと言い伝えられています。」(知名町役場HPより) ・したく 支度。首里、または伝説にあるように薩摩への献上品を多く準備するということだろうか。


四、かん甘さ御酒 我一人飲まりゆみ 村でぃ打ち揃てぃ飲まい 飲まい遊ば
かん'あまさ'うざき わんちゅいぬまりゆみ むらでぃ'うちするてぃぬまい ぬまい'あしば
kaN 'amasa 'uzaki waN chui numariyumi mura di 'uchi suruti numai numai 'ashiba
このように甘い御酒(お供え) 私一人で飲まれるか 村で さあ勢ぞろいして飲もう 飲んで遊ぼう
語句・かん かように。このように。 ・あまさ <あまさん 甘い。 ・うざき 「酒」なら「さき」であり、「さぎ」と読むなら「うさぎ」=「貢物」であろう。首里か薩摩への献上物。ここでは「うざき」とする。・むらでぃ 村で。


五、明日や首里かい行めしが 何やか欲しゃ物や 匂い鬢附 チョウ箱 かみどぅくとぅん櫛 とぅん櫛
'あちゃやしゅいかい'いめしが ぬやかふしゃむぬや にうぃびんじき ちょーばく かみどぅく とぅんぐし とぅんぐし
'acha ya shui kai 'imeshiga nu ya ka husha munu ya niwi biNjiki choobaku kamiduku tuNgushi tuNgushi
明日は首里に参るが 何が欲しいか? 香りよい髪附(油)化粧箱 髪を梳く唐櫛
語句・びんじき 「頭髪用のねばり強い固形の油。ポマードのようなもの」(沖)。 ・ちょーばく おそらく「京箱」。



コメント

前回、「十九の春」「与論小唄」で歌が旅をすることを
見て来たが、今回は「シュンサミ」。

「シュンサミ」系の歌には
本島で歌われる「スンサーミ」と、この「永良部シュンサミ」
そして沖永良部島の「永良部シュンサミ」がある。

このメロディーは沖縄本島でも好まれていて、エイサーや民謡としてよく歌われる。
それもそのはず、「スンサーミ」は、エイサーの原型ともいわれる「ウスデーク」とも呼ばれていたという。

今回は、本島で歌われる「永良部シュンサミ」を取り上げた。
次回は本島中部の「スンサーミ」、沖永良部島の「永良部シュンサミ」を取り上げてみる。


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