マーラン船

たる一

2014年07月22日 14:10

マーラン船
まーらんしん
maaraN shiN
マーラン船
語句・まーらんしん 「馬艦船」と書き「まーらんしん」と読み、または「山原船」(やんばらーぶに)とも呼ばれた物資運搬を主とする帆船。琉球国内、日本との交易、運送などのために近世まで使われた。中国のジャンク船(四角い帆を持つ帆船)の建造技術で18世紀頃琉球で作られたといわれている。


作詞・作曲 久米仁
唄三線 仲宗根 創

一、昔マーラン船や与那原出てぃ (※ヨンサー ヨンサー)瓦積どーてぃ (※繰り返す) 汀間んかい (やさ 汀間んかい ※)
んかしまーらんしんや ゆなばるんじてぃ (よんさー よんさー)かーらちどーてぃ (よんさー よんさー)てぃーまんかい (やさ てぃーまんかい よんさー よんさー)
Nkashi maaraNshiN ya yunabaru 'Njiti (yoNsaa yoNsaa )kaara chidooti (yoNsaa yoNsaa )tiima Nkai (yasa tiima Nkai yoNsaa yoNsaa )
昔マーラン船は与那原を出発し(※は囃子言葉なので省略)琉球瓦を積んで 汀間へ(そうだ 汀間へ ※省略)
語句・んかし 昔。・ゆなばる かつては島尻ー大里間切。現在は与那原町。中城湾に面して天然の良港があった。特産は赤瓦。・かーら 瓦。与那原の特産品。・ちどーてぃ 積んで(いて)。<ちぬん 積む。・てぃーま 国頭ー久志間切。現在は名護市字汀間。



二、夏や南風 千鳥ん嬉さ (※)冬や北風 (※) 波荒さ (やさ波荒さ ※)
なちやふぇーかじ ちどぅりんうりさ ふゆやにしかじ なみあらさ
nachi ya hweekaji chiduriN 'urisa huyu ya nishi kaji nami 'arasa
夏は南風吹き 千鳥も嬉しいことよ 冬は北風 波は荒いことだ
語句・ふぇーかじ 「南」を「ふぇー」と言う。・ も。強調する時なども使う。・うりさ 嬉しいことだ! <うりさん。うりしゃん。琉歌で形容詞の体言止めは感嘆する気持ちを表現することが多い。「うりさ」は「うれしさ」と訳すと気持ちが弱い。・にしかじ 「北」は「にし」と呼ぶ。「北」を「にし」と呼ぶ理由については諸説ある。「北風」を「にし」と呼ぶことからという説。「去〔イニ〕」説。「子(にー)」説(二ヌファブシ=北極星)など。【琉球語辞典】では「私見」と断った上で[本来ニシは西であったが(幅のある)北西方面からの風の総称に転じた後」ゆるやかな捉え方から「北」を「にし」と呼ぶようになった]とある。



三、ありや阿麻和利 勝連城 (※) くりや平安座ぬ (※) 八太郎 (やさ 八太郎 ※)
ありやあまわりかちりんぐしく くりやふぇんざぬ はったらー
'ari ya 'amawari kachiriN gushiku kuri ya hweNza nu hattaraa
あれは阿麻和利の勝連城 これは平安座のハッタラー
語句・あり あれ。・あまわり 阿麻和利。15世紀に悪政を敷いた前按司(領主)を倒し勝連城の按司となり、民衆を助けたという人物。・くり これ。・ふぇんざ 中頭ー与那城間切。現在はうるま市に属し、海中道路で勝連半島と結ばれている。昔の発音は「ひゃんざ」hyaNza である。・はったらー 昔、平安座島にいたとされる大男で力持ちの人物名。



四、船や汀間ぬ港に繋ぢ(※)姉小志情き (※)瓶ぬ酒 (やさ瓶ぬ酒 ※ )
ふにやてぃーまぬ んなとぅにちなじ あんぐゎーしなさき びんぬさき
huni ya tiima nu Nnatu ni chinaji 'angwaa shinasaki biN nu saki
船は汀間の港に繋ぎ 娘さんの情けがつまった瓶の酒
語句・あんぐゎー 「①姉。ねえさん。平民についていう。②ねえさん。娘さん。娘。平民の若い娘をいう」【沖縄語辞典】。時と場合によるが、ここでは汀間の若い娘をさすだろう。



五、薪 砂糖 積み荷ん済まち (※) 戻るマーラン船や (※)真帆上ぎてぃ (やさ真帆上ぎてぃ ※ )
たむん さーたー ちみにんしまち むどぅるまーらんしんや まふあぎてぃ
tamuN saataa chimini ni shimachi muduru maaraNshiN ya mahu 'agiti
薪(たきぎ)と黒砂糖を積み荷にして 戻るマーラン船は追い風をうけて一杯に張った帆をあげて
語句・たむん 「たきもの。たきぎ。まき。」【沖縄語辞典】。汀間は汀間川が深くマーラン船も奥まで入ったという。ヤンバルからの薪や竹を船に積んだ。・ちみに 積み荷。・しまち 済ませ。<しますん。しましゅん。済ます。終わらせる。・まふ 風をうけていっぱいに張った帆。または、二つある帆を両方あげている状態という意味もある。




沖縄の若手で新進気鋭の唄者、仲宗根創さんが唄っている「マーラン船」。
歌をつくられたのは「島々美しゃ」や「娘ジントーヨー」の作詞をした久米仁さん。

仲宗根創さんのアルバム「歌ぬ糸」に収録されている。



「ヨンサー」という囃子言葉がくりかえし出て来て、ゆったりと風に乗って進むマーラン船に乗っているかのような気持ちになる名曲。昔の情景が織り込まれている。

YouTubeに仲宗根創さんが歌う「マーラン船」がある。





(たるーが描いたマーラン船)

関連記事