恋の花
恋の花
くいぬはな
kui nu hana
一、庭や雪降ゆい梅や花咲ちゅい 無蔵が懐や真南風ど吹ちゅる
にわやゆちふゆい 'んみやはなさちゅい 'んぞがふちゅくるやまふぇどぅふちゅる
niwa ya yuchi huyui 'Nmi ya hanasachuru Nzo ga huchukuru ya mahwee du huchuru
○
庭は雪が降り梅は花が咲き 貴女のふところには南風が吹く
二、ぬがし我が庭や梅や咲かなそて毎夜鶯の通て泣くちゅが
ぬがしわがにわや'んみやさかなそてぃ めゆる'うぐいしぬかゆてぃなちゅが
nugashi waganiwa ya 'Nmi ya sakanasoti meyuru 'uguishi nu kayuti nachuga
○
どうして私の庭は梅の花がさかないのに毎夜鶯が通って鳴くのか
三、波の上に行ちゅみ薬師堂に行ちゅみ なりし薬師堂の裏やましやあらに
なんみんに'いちゅみ やくしどーに'いちゅみ なりしやくしどーのうらやましやあらに
naNmiN ni 'ichumi yakushidoo ni 'ichumi narish yakushidoo nu 'uraya mashiya'arani
○
波の上に行くか薬師堂に行くか 慣れた薬師堂の裏がましではないか
四、波の上の開鐘や首里の開鐘と思て里うくちやらち我肝やむさ
なんみんぬけーじょーやすいぬけーじょーとぅむてぃさとぅ'うくちやらちわちむやむさ
naNmiN nu keejoo ya sui nu keejoo tumuti satu 'ukuchiyarachi wachimu yanusa
○
波の上の鐘を首里の鐘と思い 貴方を起こして行かせて私は後悔するよ
解説
(語句)
一
・ふゆい 降り
<ふゆん 降る
二
・ぬがし (副)どうして
・が 「ぬがし・・・が」となって「どうして・・となるか」
三
・み 疑問文になる
・あらに ・・ではないか?
四
・けーじょー 寺院で明け方にならす鐘
・うくちゃいやらち 起こして行かせて
歌詞には「うくちゃらち」とあった。短縮するとそうなるが、8文字という字数が合わない。元の語句を置いた。
「うくちゃい」起こして
「やらち」行かせて の合成語
(コメント)
元は八重山民謡の「くいぬぱな節」
その一節は「くいぬぱな登て浜崎ゆ見りばまかが布晒見物でむぬ」
くい=越える ぱな=頂上
「恋の花」とはまったく関係ない歌を、本歌取りして「恋歌」に変えてしまう。
メロディーはほとんど同じ。
今日なら盗作騒ぎになるかもしれないが、そういう歌遊びは世の常であり、本島、宮古、八重山民謡それぞれが、また本土や奄美の歌も相互に影響しあう、そういうものだと理解する。
しかし、まったく別の歌のような顔をしていることに反感を持つ方もいるかもしれない。
いずれにせよ、いいものは流れ、流れて形を変えて定着するのではないだろうか。
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