2010年09月12日

浜育ち

浜育ち
はますだち
hama sudachi
浜育ち


一、ヨー我んね 生まりうてぃてぃから ヨー我んね あんまー居らん かなしさよ
よーわんねー んまりうてぃてぃから よーわんねー あんまーうらん かなしさよ
yoo waNnee 'Nmariti kara yoo waNnee 'aNmaa uraN kanashisa yoo
ねえ私は生まれ落ちてから ねえ私はお母さんが居ない 悲しいことよ
語句・わんねー 私は。<わん 私。+ や は。このように私(わん)が助詞と融合して形が変化する例は、[わーが](私が)。[わったー](私たち)。[わんにん](私も)。など。


二、悲しただ一人ぬ我った主 物見んだん 哀りさよ
かなしただちゅいぬわったすむぬんーだん 'あわりさよ
kanashi tada chui nu watta su munu NndaN 'awarisa yoo
悲しくもただ一人の私のお父さんは物が見えない かわいそうに
語句・んーだん 見えない。<んーじゅん。んじゅん。 見る。


三、浜千鳥や 友連りてぃ遊ぶ ヨー千鳥 我んね 親連れて釣りどする
はまちじゅや どぅしちりてぃ 'あしぶ よーちじゅや わんねー 'うやちりてぃ ちりどぅする
hamachijuya ya duchi chiriti 'ashibu yoo chijuya ya waNnee 'uya chiriti chiri du suru
浜千鳥は友達連れて遊ぶ ねえ千鳥よ 私は親連れて釣りをするだけ
語句・ちりどぅする 釣りをするだけ。直訳では「釣りこそする」だが、「どぅ」の用法には行為を限定する(「・・しかしていない」「・・するだけ」)こともある。


四、白波ぬ音ん ヨー我んね あんまー声とぅ思てぃ 我ね聞ちゅん
しらなみぬ'うとぅん よーわんねー あんまーくぃとぅむてぃ わねちちゅん
shiranami nu 'utuN yoo waNnee 'aNmaa kwi tumuti wane chichuN
白波の音も ねえ私は お母さんの声だと思って私聞くの
語句・くぃ 声。実際の発音は「くぃー」(kwii)。歌の中では「くぃ」と短縮されることが許される(詩的許容)。つまり一音節(kwi)となる。ヤマトゥンチュには難しい発音である。「く」と「き」の中間より「き」に近く聞える。


五、朝夕白波ぬ ヨー音とぅ浜千鳥共に我ね暮らす
'あさゆしらなみぬ よー'うとぅとぅ はまちどぅり とぅむにわねくらす
'asayuu shiranami nu yoo 'utu tu hamachiduri tumu ni wane kurasu
一日中白波の ねえ 音と浜千鳥と一緒に私は暮らす  続きを読む

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2010年07月18日

移民口説

移民口説
'いみんくどぅち
'imiN kuduchi

[この歌詞は前編大和口でつくられている。アルファベット表記、発音記号は省略する。作者は普久原朝喜だといわれている。歌詞参照;「沖縄民謡大全集」]


一、ひとつ開くる此の御代は四海同胞睦まじく共に稼ぐも面白や
ひとつひらくるこのみゆにしかいどーもんむつまじくともにかせぐもおもしろや


ニ、二つ二親兄弟と別れてはるばると八重の潮路を押し渡り
ふたつふたおやきょうだいとわかれわかれ はるばると やえのしおじをおしわたり


三、三つみ国と我が家の富を増さんと雄々しくも尋ね尋ねて此の国に
みっつみくにとわがいえのとみをまさんとゆゆしくもたずねたずねてこのくにに


四、四つ夜昼時の間も忘るまじきは父母の国馴れし古里沖縄よ
よっつよるひるときのまもわすれまじきはふぼのくになれしふるさとおきなわよ


五、五つ幾年経るとても親に便りを怠るな親に孝事を忘れるな
いつついくとしへるとてもおやにたよりをおこたるなおやにこーじをわすれるな


六、六つむつびて働けよ金は世界の廻り持ち稼ぐ腕には金がなる
むっつ むつびてはたらけよ かねはせかいのまわりもちかせぐうでにはかねがなる


七、七つ那覇港の桟橋に別れ告げたるあの心いかで忘るる事やある
ななつ なはこーのさんばしでわかれつげたるあのこころいかでわするることやある


八、八つ山より尚高き立てし志望の一筋は岩をも貫く覚悟あれ
やっつ やまよりなおたかきたてししぼーのひとすじはいわをつらぬくかくごあれ


九、九つ心は張弓の緩むことなく他の国の人に勝りていそしめよ
ここのつこころははりゆみのゆるむことなくたのくにのひとにまさりていそしめよ


十、十と所は変われども稼ぐ心は皆一つエイ錦飾らん古里に親の喜び如何ばかり
とーとところはかわれどもかせぐこころはみなひとつ えい にしきかざらんふるさとにおやのよろこびいかばかり
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2010年06月28日

下千鳥 3

下千鳥
さぎちじゅやー
sagi chijuyaa
語句・さぎちじゅやー 舞踊曲「浜千鳥」をくずして、恋や人や世の中の無常さ、遂げられない思いを歌詞に載せて歌う。何故「下げ」(さぎ)とつくかには、「弾き始めが低い音からなので」とか「リズムがゆっくりだから」などいくつか説があるが明確ではない。「弾き始め」を高い音からする歌者もいる。

(歌 嘉手苅林昌 CD「沖縄の魂の行方」より)


【連ね】
(「ちらに」と読む。歌の前や間で、琉歌を一定の節をつけて唱えること)

一、忘ららんあてぃどぅ 波荒さあてぃん 漕ぎ渡てぃ行ちゅさ 恋ぬ小舟
(作 惣慶良成)
わしららん'あてぃどぅ なみ'あらさ'あてぃん くじわたてぃ'いちゅさ くいぬくぶに
washiraraN 'atidu nami 'arasa 'atiN kujiwatati 'ichusa kui nu kubuni
忘れられないから波が高くても漕ぎわたっていくよ 恋の小舟
語句・くじ <くじゅん 漕ぐ。


二、拝でぃ嬉しさや 我肝はりばりとぅ 籠ゆ飛び立ちゅる鳥ぬ心
(作 新城安規)
うがでぃ'うりしさや わちむはりばりとぅ かぐゆとぅびたちゅるとぅいぬくくる
ugadi 'urishisa ya wachimu haribari tu kagu yu tubitachuru tui nu kukuru
お会いして嬉しいことよ!私の心は晴れ晴れと カゴを飛び立つ鳥のようだ


【下千鳥】

一、真夜中どぅやしが 夢に起くさりてぃ 今時分ありが我沙汰がしちょら 切りなさや 二人がしぇる仕様
まゆなかどぅやしが 'いみに'うくさりてぃ なまじぶん'ありがわさたがしちょら ちりなさや たいがしぇるしじゃま
mayunaka du yashiga 'imi ni 'ukusariti nama jibuN 'ari ga wasata ga shichora chirinasa ya tai ga sherushijama
真夜中であるが夢に起こされて 今頃あいつが私の噂をしているのか つれないことだ 二人がしたあわれなざまは
語句・さた 「沙汰、伝言、噂」【琉辞】。  ・しじゃま 「さま、ざま〔よくない[哀れな]ありさま〕」【琉辞】。「染みなし節」の一節「思いざましじゃま・・」の「しじゃま」


二、慣りし面影や 旅までぃん続ち 夜夜に二人 我する夢ぬ辛さ 無情ぬくぬ世間や頼みぐりさ
なりし'うむかじや たびまでぃんちじち ややにたい わする'いみぬちらさ むじょぬくぬしけやたぬみぐりさ
narishi 'umukaji ya tabi madiN chijichi yaya ni tai wa suru 'imi nu chirasa mujo nu kunu shike ya tanumigurisa
愛しい人の面影が旅までも続き 毎夜二人を夢でみる辛さ 無情のこの世界は頼ることはできない
語句・やや 「毎夜」の文語的表現。普通「夜」は「ゆー」または「ゆる」。「花口説」にも出てくる。


三、誰ゆ恨みとてぃ 泣ちゅが浜千鳥 浜ん切りなさや我身ん共に
たるゆ'うらみとてぃ なちゅがはまちどぅり はまんちりなさや わみんとぅむに
taru yu 'Uramitoti nachu ga hamachiduri hamaN chirinasa ya wamiN tumu ni
誰を恨んで泣くか浜千鳥 浜もつれないよな 私も同じだ


四、朝間夕間通てぃ なりし面影ぬ立たな日やねさみ 塩屋ぬ煙 淋しさや 干瀬ぬ千鳥鳴ち声
'あさまゆまかゆてぃ なりし'うむかじぬたたなふぃやねさみ すーやぬちむり さびしさや ふぃしぬちどぅりなちぐぃ 
'asamayuma kayuti narishi 'umukaji nu tatana hwi ya nesami suuya nu chimuri sabishisa ya hwishi nu chiduri nachi gwi
朝も夜も毎日通って 愛しい人の面影浮かばない日はあるまい 塩屋の煙のように 淋しいよ 干瀬にとまる千鳥の鳴き声  続きを読む

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2010年06月26日

ウムカジ(面影)

ウムカジ(面影)
'うむかじ
'umukaji
面影(おもかげ)

作詞・作曲 知名定男 
唄 ネーネーズ

1、梯梧の花咲ちゅるうりずんの頃や 変わてぃあうみ里がなちかさぬならん ちりなさや ちりなさや 里が情き
でぃぐぬはなさちゅる'うりずんぬくるや かわてぃ'うみさとぅが なちかさぬならん ちりなさや ちりなさや さとぅがなさき
digu nu hana sachuru 'urizuN nu kuru ya kawati 'umisatu ga sachikasanu naraN chirinasa ya chirinasa ya satu ga nasaki
デイゴの花咲くうりずん(旧暦2~3月)の頃はとりわけて愛しいあの人が懐かしくてならない つれないことよ つれないことよ あの人の情け
語句・でぃぐ <でぃーぐ 梯梧。沖縄の県花。 ・うりずん 「うりじん」とも発音する。「旧暦2~3月、麦の穂の出るころのこと。waka'urijiNともいう。那覇では'urujiNという。」(沖)。石垣では「うりぃじぃん」('urïjïN)。 ・かわてぃとりわけ。格別。特に。【沖縄語辞典】・ちりなさ <ちりなさん 「つれない。情けない」【沖辞】。


2、月ぬ山ぬ端にあがるゆまんぎや 肝にひしひしとぅさびさうやちらさ うびじゃすさ うびじゃすさ里が姿
ちちぬやまぬふぁに'あがるゆまんぎや ちむにふぃしふぃしとぅ さびさ'うらちらさ 'うびじゃすさ 'うびじゃすさ さとぅがしがた
chichi nu yama nu hwa ni 'agaru yumangi ya chimu ni hwishihwishi tu sabisa 'urachirasa 'ubijasusa 'ubijasusa satu ga shigata
月が山際にあがる夕方は 心がひしひしとさびしいことよ! うら悲しいことよ! 思い出すよ 思い出すよ あの人の姿
語句・ゆまんぎ <ゆまんぐぃ 'yumaNgwi。「夕まぐれ。'yusaNdiなどの語に比べ、一種の寂寥感のある語。」【沖辞】。・ふぃしふぃし 「①ずきずき。脈打つように痛むさま。」「②ひしひし。びしびし(非難などが)胸にこたえるさま。」【沖辞】。・さびさ <さびっさん 「①さびしい」「②口さびしい」【沖辞】。形容詞が文末で「-sa」で終わるときは感嘆的表現となる。「なんと・・なことよ」。・うびじゃすさ <うびんじゃしゅん 'ubiNjashuN 「思い出す」【沖辞】。「ん」が省略されて「うびじゃしゅん」とも言う。+さ よ。
 

3、磯端ぬ千鳥たんでぃ泣ち呉るな ただねちょん寂さしちょーてぃ暮らちょしが 暮らさらん 暮らさらん 里が事思れ
'いすばたぬちどぅり たんでぃなちくぃるな ただねちょんさびさしちょーてぃくらちょしが くらさらん くらさらん さとぅがくとぅ'うむれ
'isubata nu chiduri taNdi nachikwiruna tadanee choN sabisa sichooti kurachoshiga kurasaraN kurasaraN satu ga kutu 'umure
磯端の千鳥よ 頼むから鳴いてくれるな ただでさえ寂しく暮らしていくのだが あの方の事を想うと暮らしていけない 生きていけない
語句・たんでぃ どうかお願いだから。・ただね <ただ 「ただ。」「いたずらに。むなしく。」+ねー ように。ごとく。・ちょん <ちょーん <「すら。さえ」【沖辞】。・くらさらん 暮らすことができない。生きていけない、くらいの意味。・うむれ <うむゆん 思う。+wa  すれば。→融合して「うむれー」。


4、千鳥ちゅいちゅいな 我身んただ一人 共に泣ちあかち 里ゆしぬばなや ちゅいちゅいな ちゅいちゅいな 偲でぃちゅいちゅいな  ちゅいちゅいな ちゅいちゅいな 共にちゅいちゅいな
ちどぅりちゅいちゅいな わみんただふぃちゅい とぅむになち'あかち さとぅゆしぬばなや ちゅいちゅいな ちゅいちゅいな しぬでぃちゅいちゅいな ちゅいちゅいなちゅいちゅいな とぅむにちゅいちゅいな
chiduri chuichuina wamiN tada hwichui tumu ni nachi 'akachi satu yu sinubana yaa chuichuina chuichuina shinudi chuichuina chuichuina chuichuina tumuni chuichuina
千鳥がチュイチュイと鳴いている 私はただ一人 一緒に泣き明かしあの人のことを慕いたいよねえ チュイチュイと泣いてあの人を慕い 共にチュイチュイと泣いてはあの人を思い 泣いている
語句・ちゅいちゅいな 舞踊曲「浜千鳥」の中で浜にいる千鳥の鳴き声を模して「チュイチュイナ」という囃子から。「ちゅい」は「ひとり」という意味も掛けている。・ を。・しぬばなや (思い出を)慕びたいよねえ。<しぬぶん 「①忍ぶ。堪える。こらえる」「②ひそむ。かくれる。ひそかに行く。(男女が)かくれて通う。あいびきする。」【沖辞】にはこうある。しかし「慕ぶ」(しのぶ)、追憶するという意味もあるのではないだろうか。ここでは「慕う」を採用したい。「しぬばな」(偲びたいよ)に「やー」(ねえ)がついた形。  続きを読む

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2010年05月30日

花口説

花口説
はなくどぅち
hana kuduchi
語句・はな 「①花。草木の花。②美しいこと。はなやかなこと。」「③遊女 zuriの美称」【沖辞】とある。


一、辻仲島渡地とぅ 三島かさにてぃ花ぬ島 夜々に恋路ぬ花ざかい
ちーじなかしまわたんじとぅ みしまかさにてぃはなぬしま ややにくいじぬはなざかい
chiiji nakashima wataNji tu mishima kasaniti hana nu shima yaya ni kuiji nu hanazakai
辻、仲島、渡地(那覇の三大遊郭の地名)三つの村を重ねて遊郭の村 夜々に恋路が花盛り
語句・やや 夜々。「夜」はウチナーグチでは「ゆー」だから「ゆゆ」になるが、口説は大和口を混ぜることも多い(「上り口説」など)からか。


ニ、昔たといぬ糸柳 風ぬ押すままなりすみる 梅の匂いや辻村
んかしたとぅいぬ'いとぅやなじ かじぬうすままなりすみる 'んみぬにうぃやちーじむら
Nkashi tatuinu 'ituyanaji kaji nu 'usu mama narisumiru 'Nmi nu niwi ya chiiji mura
昔例えた糸柳(のように)風が押すまま親しくなる 梅の匂いは辻村
語句・なりすみ なれそめ。恋のきっかけ。


三、玉ぬ夜露にたゆてぃ咲く 花ぬ色数みじらしや 日々ぬ営みぬいくぃてぃ
たまぬゆちゆにたゆてぃさく はなぬ'いるかじみじらしや ひびぬ'いとぅなみ ぬいくぃてぃ
tama nu yuchiyu ni tayuti saku hana nu 'irukaji mijirashi ya hibi nu 'itunami nuikwiti
玉のように美しい夜露に頼って咲く花の種類の珍しいことよ 日々の営みを乗り越えて
語句・みじらし 珍しい。<みじらしゃん ・いるかじ 「種類。種類雑多」【沖辞】。


四、最早恋路ぬ夢の間に くらす男ぬ遊び場所 酒や男ぬ匂いすいてぃ
むはやくいじぬ'いみぬまに くらすうぃきがぬ'あすびばす さきやうぃきがぬにうぃすいてぃ
muhaya kuiji nu 'imi nu ma ni kurasu wikiga nu wikiga nu 'asubi basu saki ya wikiga nu niwi suiti
もはや恋路は夢の間に(過ぎ去り)暮らす男の遊び場所 酒は男の匂いを添えて
語句・すいてぃ 添えて。<すゆん 添える。活用では「すてぃ」。


五、年に一度ぬ二十日ぬ日 辻に首里那覇御万人ぬ 揃てぃ遊ぶるにぎやかさ
にんに'いちどぅぬはちかぬふぃ ちーじにすいなふぁ'うまんちゅぬ するてぃ'あしぶるにぎやかさ
niN ni 'ichidu nu hachika nu hwi chiiji ni sui nahwa 'umaNchu nu suruti 'ashiburu nigiyakasa
年に一度の二十日の日 辻に首里、那覇多くの人が揃って遊ぶにぎやかなことよ!
語句・はちかぬふぃ 「二十日正月」(はちかしょーぐゎち hachikashoogwashi)「旧暦の正月二十日。この日を正月の最後の祝日として、簡単な御馳走を作り、一日を遊び暮らした。またこの日にzuri'Nma[尾類馬](その項参照)の行事が行われた」【沖辞】。 またこの「尾類馬」とは「hachikasjoogwaci(二十日正月…旧暦正月二十日)に遊郭中総出で行う祭りの名。各楼から選ばれたzuriが'Nmagwaa[馬小](板に馬の形を彫ったもの)を前帯にはさみ行列の先頭となり、続いて、装いをこらしたzuriが長蛇の列を作って踊り歩いた。(省略)」【沖辞】。


六、琴や三線音揃てぃ 唄や踊いにまじりやい 飲むる梅酒匂いまさてぃ
くとぅやさんしん'うとぅするてぃ 'うたやうどぅいにまじりやい ぬむる'んみざきにうぃまさてぃ
kutu ya saNshiN 'utu suruti 'uta ya udui ni majiriyai numuru 'Nmizaki niwi masati
琴や三線の音が揃って唄や踊りに混ざって飲む梅酒の匂いが香り高く


七、琉球自慢ぬ髪形 挿ちょる銀ぬみぐとぅさみ 花に例いてぃ梅ぬ花
りゅうちゅーじまんぬかみかたち さちょるなんじゃぬみぐとぅさみ はなにたとぅいてぃ'んみぬはな
ryuuchuu jimaN nu kamikatachi sachoru naNja nu migutusami hana ni tatuiti 'Nmi nu hana
琉球自慢の髪形 挿した銀の(かんざしが)見事であるぞ 花に例えると梅の花
語句・なんじゃ 銀。ここでは「じーふぁー jiihwaa」(かんざし)の素材。


八、花とぅ露とぅぬ物語 知らす浮世ぬ結び口 人ぬ最後や義理情
はなとぅちゆとぅぬむぬがたい しらすうちゆぬむしびぐち ふぃとぅぬさいぐやじりなさき
hana tu chiyu tunu munugatai shirasu 'uchiyu nu mushibiguchi hwitu nu saigu ya jirinasaki
花と露との物語 知らせる浮世の結び口 人の最後は義理と情け
語句・はなとぅちゆ 「男と女」の比喩。  続きを読む

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2010年05月08日

とぅまた節 (八重山民謡)

とぅまた節
とぅまたぶし
tumata bushï
トマタ松の唄
「崎枝村の東方にあるトマタ松林」のこと。(「八重山島民謡誌」喜舎場永珣著より)


1、とぅまた松ぬ下から馬ば乗りおーるすや (シタリヨーヌ ユバナオレ ミルクユーばタボラレ)
とぅまたまちぬしたから'んまばぬりおーるすや (したりよーぬ ゆばなおれ みるくゆーばたぼられ)
tumata machï nu shïta kara 'Nma ba nurioorusu ya (shitariyoo nu yuba naore miruku yuu ba taborare)
とぅまた松の下から馬に乗っておられる方は


2、誰たるぬどぅ乗りおーる 何り何りぬどぅ乗りおーる
たるたるぬどぅぬりおーる じりじりぬどぅぬりおーる
tarutaru nu du nuriooru jirijiri nu du nuriooru
誰々様が乗っておられるか? 何方様が乗っておられるのか?


3、崎枝主ぬどぅ乗りおーる 主ぬ前ぬどぅ乗りおーる
さきだしゅぬどぅぬりおーる しゅぬまいぬどぅぬりおーる
sakidashu nu du nuriooru syu nu mai nu du nuriooru
崎枝主が乗られている お役人様が乗っておられる


4、我女頭御供す くり女童つぃかいす
ばんぶなじ 'うとぅむす くりみやらび つかいす
baN bunajï 'utumu su kuri miyarai tsïkai su
我が女頭がお供し この娘が御仕えしている


5、崎枝主ぬまかないや 島仲屋ぬ まなべんま
さきだしゅぬまかないや しまなかやぬ まなべんま
sakidashu nu makanai ya shïmanakaya nu manabeNma
崎枝主(村長)の賄い女(妾)は島仲野のマナベンマ(名前)
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2010年03月13日

月ぬ美しゃ節 (八重山民謡)

月ぬかいしゃ節
ぬかいしゃーぶし
tsïkï nu kaishaa bushï
月が美しい(のは)歌
語句・ 月。八重山方言での「月」の発音は中舌(なかじた、ちゅうぜつ)母音を用いる。口を丸めないで、同時に舌を前歯より奥に置いて「つく」と発音すると似てくる。 ・ が。「主格を表す『が』にあたる」【石垣方言辞典】 ・かいしゃー 美しいのは。<かいしゃーん 美しい。 「月ぬかいしゃ節」という名称は、一番の最初の歌詞からきている。


一、月ぬ美しゃ十日三日 女童美しゃ十七つ (ほーいちょーが)
ぬかいしゃー とぅかみーか みやらびかいしゃー とぅーななち (ほーい ちょーが)
tsïkï nu kaishaa tuka miika miyarabi kaishaa tuunanatsï (hooi chooga)
(括弧は囃子言葉、以下略す。)
月が美しいのは十三夜 娘が美しいのは十七歳
語句・ほーい ちょーが 囃子言葉で明確な意味は不明。ただ八重山民謡に「ちょうが節」があり、この歌と同様の「ほーい ちょーが」が囃子言葉で使われる。喜舎場永珣氏は「八重山島民謡誌」のなかで「 チョウガとは司の中でも階級の上位を指す」と述べている。「司」(ちかさ tsïkasa)とは「神事を司る人。多く農民の女性がなる。」【石辞】。


二、東から上りおる大月ぬ夜 沖縄ん八重山ん照ぃらしょうり
'あーりから'あーりおる 'うふちぬゆー 'うきなんやいまん てぃらしょ^り
'aarï kara 'aari ooru 'uhutsïkï nu yuu 'ukinaN yaimaN tirashoori
東から上がっておいでになる満月の夜 沖縄本島も八重山もお照らしください
語句・あーり 東。(参考)沖縄本島「'あがり 'agari」。「ga」の「g」が脱落したもの。(agari→aari)。・おーる いらっしゃる。おいでになる。補助動詞で尊敬をあらわす。<おーるん。 「いらっしゃる。おいでになる。おられる。ゆかれる。」【石辞】。・うふち 満月。


三、あんだぎなーぬ月ぬ夜 我がげら遊びょうら
'あんだぎなーぬちぬゆー ばがーけーら'あさびょーら
'aNdaginaa nu tsïkï nu yuu bagaakeera 'asabyoora
あれほど(美しい)月の夜 我々皆遊びましょう
語句・あんだぎなー 「あれほどの。あれだけの」【石辞】。 ・ばがーけーら 「我々皆。我々一同」【石辞】。


四、寺ぬ大札んが 絹花黄金花 咲かりょうり
てぃらぬ'うふふだんが 'いちゅぱな くんがにぱな さかりょーり
tira nu 'uhuhuda Nga 'ichupana kuNgani pana sakaryoori
寺の大札に 美しい立派な花、大切な花を咲かせてください
語句・いちゅぱな 美しい立派な花。「いちゅ」に「絹」の意味の他「『美しい立派な』の意の接頭語にもよく使われる」【石辞】。「花」は八重山方言で「ぱな pana」。・んが 「~に。時間、空間ともに使う」【石辞】。 ・くんがにぱな (黄金のように)大切な花。「くんがに」には「黄金。接頭美称辞にも用いる」【石辞】。


五、ぴらまぬ家ぬ東んたんが むりく花ぬ咲かりょうり うり取る彼り取るなつぃきばし びらまぬ  家ぬ花ぶんなー
びらまぬやーぬ 'あーんたんが むりくぱなぬさかりょーり 'うりとぅり かりとぅり なちきばし びらまぬやーぬぱなぶんな
pirama nu yaa nu 'aaNta Nga murikupana nu sakaryoori 'uriturï kariturï natsïki ba shi birama nu yaa nu panabuNna
愛しい貴方の家の東の方にマツリカの花を咲かせてください それを取りあれを取るのを口実にして 愛しい貴方の家の花が狂い咲き
語句・びらま 愛しい貴方。「①妹からいうお兄さん」「②特に末の兄をいう。」「平民の言葉としては女性から愛しい男性を意味する」。いずれも【石辞】。ここでは③だろう。喜舎場永珣氏は「平民階級の女性から士族の青年に対する尊敬語」だという。 ・あーんた 東の方。 ・むりくぱな むりく花。「ジャスミンの一種で、白い小さな花は香りがよいのでお茶に香料として入れる。」【石辞】。 「ムラクバナ」ともいう。 ・なち 口実。本島では「なじき」。・ばし ~にして。 ・ぱなぶんな 「ぶんな」だけでは辞書に見当たらないが、「ぶんなさき buNnasakï」に「狂い咲き。『分無(ぶんなし)咲き』の意か。『分』は『区別』の意。」【石辞】とある。また「ぶんななり」には「季節外れの結実」とあり、「ぶんな」が「狂い咲き」「季節外れ」の意としてある。  
 

六、女童家ぬ門なんが 花染手布ば取り落し うり取る彼り取る なつきばし 女童家ゆ見舞いす
みやらびやーぬぞーなんが はなずみてぃさじばとぅり'うとぅし 'うりとぅりかりとぅりなちきばし みやらびやーゆみまいす
miyarabi yaa nu zoo naNga hanazumi tisaji ba turi 'utushi 'uriturï kariturï natsïki ba shi miyarabi yaa yu mimai su
娘の家の門に花染め手ぬぐいを取り落として それを取りあれを取るのを口実にして娘の家を見に行く
語句・ぞー 門。・なんが 「~に。~において。場所、時刻を示す助詞。略してンガとも言う」【石辞】。


七、釜戸ぬふつぬあっぴゃーま のーどぅのーどぅ んまさーる 煙草ぬ下葉ど んまさーる茶飲み  ばーやんがさぬ
かまどぅぬふちぬ'あっぴゃーま のーどぅのーどぅ 'んまさーる たばくぬしたばどぅ 'んまさーる ちゃーぬみばーや'んがさぬ
kamadu nu hutsï nu 'appyaama noodu noodu 'Nmasaaru tabaku nu shïtaba du 'Nmasaaru chaa numi baa ya 'Ngasanu
釜戸の(入り)口のお母さん何が何が美味しいの?煙草の下葉こそ美味しいよ。お茶の葉っぱは苦いので
語句・ふち 口。 ここでは「入り口」か?・あっぴゃーま 「あっぱーま」で【石辞】に「①母親②伯母。親族名称、呼称③よその母親でもアッパと言う」とある。・のーどぅ 何が。 のー 何。+ どぅ 強調。 ・んまさーる 美味しいか。 んまさ<んまさーん 'mmaasaN 美味しい。 + ある<「あん」の連体形。・んがさぬ 苦いので。<んがさーん 苦い。

八重山民謡を代表する美しいメロディーと、その歌詞の面白さで有名な曲。
「月ぬかいしゃー」という歌の題名は、一番の唄いだしの歌詞に依拠している。
歌全体のテーマは、月ばかりではなく、「月」を歌っているのは3番までで、ここまでは同じメロディーで唄われるが、四番から曲調が少し変化する。
1,2,3番と4番と5、6、7番の3つのパターンに分けられる。
古謡として3番までがあり、後世に4番以降が付加されたのかどうか不明だが可能性がある。

5番と6番は、女性からの視点と男性からの視点とで、それぞれ愛しい相手の家に「花摘み」(女性)、「手ぬぐいを取りに」という口実でいく光景を唄っている。
6番の「見舞いす」は「見に行く」くらいの意味だろうが、似た言葉に「みーまりす」(「関心を持つ。「見回り」の意」【石辞】。)があり、「り rï」の「r」が脱落したものと考えることもできなくもない。

また5番「ぱなぶんな」について。「八重山古典民謡歌詞集」(新城寛三著)では「花折りを口実にして恋男を見てこよう」と、この語句の訳が避けられている。多くの訳本で、「ぶんな」を無視しているか、避けている場合がみられるが、上述したように、

「ぶんなさき buNnasakï」に「狂い咲き。『分無(ぶんなし)咲き』の意か。『分』は『区別』の意。」【石辞】とある。また「ぶんななり」には「季節外れの結実」とあり、「ぶんな」が「狂い咲き」「季節外れ」の意としてある。
あの人の家の東の方に「むりく花」が「狂い咲き」してくれたら、それを口実にあの人に会いにいけるのに、という願いが込められているとも見ることができる。

7番には「下葉」に「下級役人」を隠語として込め、「んまさーる」(美味しい)とは「汚職の楽しみ」であり、「茶ぬみばー」は「上級役人」で、汚職ができないから「んがさぬ」(苦いので)という、世情への皮肉を盛り込んだものだとする受け止め方もある。(参考文献「八重山古典民謡歌詞集」新城寛三著)




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Posted by たる一 at 15:50Comments(25)た行八重山民謡

2010年01月06日

赤馬節  2(八重山民謡)

赤馬節
'あか'んまぶし
'aka 'Nma bushï
赤馬の歌

(発音中の「き」「ï」は中舌母音を表す)

[ 歌詞は「八重山島民謡誌」喜舎場永珣著及び「八重山古典民謡工工四上巻」大濱安伴編著から。歌詞の表記は後者を参考にした。 ]


一、赤馬ぬ(ヨ)いらすぃざ(ヒヤルガヒ)足四ちゃぬ(ヨ)どぅくぃにゃふ(ヨ)(ハリヌヒヤルガヒ)
'あか'んまぬ(よ)'いらしざ (ひやるがひ) 'あしゆちゃぬ(よ) どぅきにゃふ(よ)(はりぬひやるがひ)
'aka 'Nma nu (yo) 'irashïza (hiyaruga hi) 'ashï yucha nu (yo) dukï nyahu (yo) (hari nu hiyaruga hi)
赤馬がとても羨ましいことよ!馬があまりにも幸運だ!
語句・いら 「赤馬節 1」を参照。・すざ しざ <すっつぁ。「羨ましいなあ。良いなあ」【石辞】。から来ていると思われる。 ・あしゆちゃ 「馬」の別称。 ・どぅき どき。「あまりに。甚だ。ひどく」【石辞】「赤馬節」を参照。・にゃふ あまりにも幸運。<にゃ<なー さらに。より。+ ふ<ふー 「めぐりあわせ。運、幸運」【石辞】。 ちなみに「八重山島民謡誌」喜舎場永珣著には「にゃく」とあるが、「く」は後に「ふ」に転訛した。「K」が「F」に転訛した例は「子」(八重山 hwaa ← 首里 kwaa)の例がある。


二、生りる甲斐赤馬 産でぃる甲斐足四ちゃ
'んまりるかい'あか'んま すでぃるかい'あしゆちゃ
'Nmariru kai 'aka'Nma sudiru kai 'ashïyucha
生まれた甲斐(がある)赤馬 産まれた甲斐(がある)馬
語句・あしゆちゃ 「馬」の別称。ここでは「赤馬」と対句。


三、沖縄主ん 望まれ 主ぬ前ん 見のうされ
'うきなしゅんぬずまれ しゅぬまいん みのーされ
'ukïna shuN nuzumare shu nu maiN ninoosare
琉球国王が所望され 国王がお気に召され
語句・うきなしゅ 琉球国王。・しゅぬまい 「琉球国王」の別称。対句。
  
四、いらさにしゃ 今日の日 どぅくぃさにしゃ黄金日
五、我ん産でぃる今日だら 羽むいるたきだら
(この四、五については「赤馬節 1」を参照)


六、御主加那志御果報や 御万人ぬすぃでぃがふ
'うしゅがなし みがふや 'うまんちゅぬ しでぃがふ
'ushuganashi migahu ya 'umaNchu nu shïdigahu
琉球国王様の御果報は世間の万人の光栄だ
語句・みがふ ご果報。<み 御。+がふ<かふー 「果報。幸福」【石辞】。・でぃがふ 「栄誉。栄光」【石辞】。<しでぃ は「シゥディルン」(生まれる)の連用形【石辞】。


七、御万人ぬ栄いや 御主加那志御果報
'うまんちゅぬさかいや 'うしゅがなしみがふ
'umaNchu nu sakai ya 'ushuganashi migahu
世間万人の栄えは琉球国王様のご果報だ  続きを読む

Posted by たる一 at 09:21Comments(11)あ行

2009年12月12日

赤馬節  1(八重山民謡)

赤馬節
'あか'んまぶし
'aka 'Nma bushï
赤馬の歌
語句・あかんま 「赤毛の馬、即ち竹島氏二世の祖師時といふ人の馬」(「八重山民謡誌」喜舎場永珣著) 

(発音中の「き」「ï」は中舌母音を表す)

一、いらさにしゃ(ヨ)今日ぬ日(ヒヤルガヒ)どぅきぃさにしゃ(ヨ)黄金日(ヨ)(ハリヌヒヤルガヒ)
'いらさにしゃ(よ)きゆぬふぃ(ひやるがひ)どぅきさにしゃ(よ)くがにふぃ(よ)(はりぬひやるがひ)
'irasanisha (yo) kiyu nu hwi (hiyarugahi) dukïsanisha (yo) kuganihwi (yo)(hari nu hiyarugahi)
ああ嬉しいことよ!今日の日 非常に嬉しい大切な日
語句・いら 「ああ。民謡に使われているが今は死語。」【石垣方言辞典】(以下【石辞】と略す)・さにしゃ なんと嬉しいことよ!。<さにしゃーん。「嬉しい。楽しい」【石辞】・どぅきぃ <どぅぐ 「あまりに。甚だ。ひどく」【石辞】「どぅきぃ」と「どぅぐ」は発音が違うが、現在の石垣方言「どぅぐ」に対応すると言われている。 


二、ばんしぃでぃる(ヨ)今日だら(ヒヤルガヒ)羽生いる(ヨ)たきだら(ヨ)(ハリヌヒヤルガヒ)
ばんしでぃる(よ)きゆだら(ひやるがひ)はにむいる(よ)たきだら(よ)(はりぬひやるがひ) 
baN shïdiru (yo) kiyu dara (hiyarugahi) hanimuiru (yo) takidara (yo)(harinuhiyarugahi)
私が生まれた(のは)今日なのだなあ 羽が生えて嬉しいような(気持ちな)のだなあ
語句・だら だなあ。「名詞、形容詞の語幹について、感嘆の意を表す。~だなあ。」【石辞】。・たき 石垣方言「だぎ」(「だけ。程度を表す。」【石辞】)に対応すると思われる。 


八重山民謡では祝儀歌、舞踊曲として最初に演奏される。
石垣市宮良に伝わる節歌。

作者は大城師番。
歌が作られたのは1703年といわれているから300年程前の歌だ。

作られた背景は「八重山民謡誌」(にまとめられたものをさらに要約するとこうなる。

石垣村字石垣の師時は赤毛の名馬を持っていた。主人が乗ろうとすると体を伏せ、主人が乗れば立ち、走れば遠方まで休みなく走る駿馬だった。
その馬の噂を聞いた琉球国王は師時に献上を申し付けた。師時も村人も泣き悲しんだ。この別れの時に「無量の感心に打たれ自然と湧き出た歌で、曲譜も自分で作った」(「八重山民謡誌」)。

ところで上掲の歌詞は現在よく歌われている「赤馬節」の歌詞であるが、
実は師時が作った歌詞ではなく「鷲の鳥」の歌詞からの転用である。

しかも「鷲の鳥」の原作者である仲間サカイの歌詞に後から付け加わった歌詞からの転用である。

転用されたものが「赤馬節」として継承され現在にいたった経緯や
師時の作った赤馬節の歌詞は次回に載せる。

尚、歌碑は石垣島の宮良にある。

(撮影 2014年 2月9日 筆者撮影)






YouTubeも貼っておく。



  

Posted by たる一 at 11:31Comments(3)あ行

2009年11月24日

行きゅんにゃ加那  (奄美民謡)

行きゅんにゃ加那
いきゅんにゃかな
ikyuNnya kana
行くのかい愛する人
語句・いきゅんにゃ 行くのかい? 「にゃ」は沖縄語の「なー」(軽い疑問)。

歌 西和美

(たとえば「きぃ」「ï」は中舌母音を表す)

一、行きゅんにゃ加那 わきゃくとぅ忘れて行きゅんにゃ加那 汝きゃくとぅ思ばや 行き苦しゃ スラ行き苦しゃ(スラ行き苦しゃ)
いきゅんにゃかな わきゃくとぅわすれて いきゅんにゃかな なきゃくとぅうめばや いきぐりしゃ すら いきぐりしゃ (すら いきぐりしゃ)
ikyuNnya kana wakyakutu wasurete ikyuNnya kana nakyakutu umiba ya iki gurisya sura ikigurisha (sura ikigrisha)
行くのかい?愛する人 私のこと忘れて行くのかい?愛する人 貴方のこと思えば行き難い スラ行き難い 
(以下 囃子は省略)


二、走りぃよ船 きぃぶしやまきゃまきゃ 走りぃよ船 わきゃ島かくりてぃ 雲ばかり すら雲ばかり
はりぃよふに きぃぶしや まきゃまきゃ はりぃよふに わきゃしまかくりてぃ くもばかり すらくもばかり
harU+EF yo huni kïbusha makya makya harï yo huni wakya shima kakuriti kumo bakari sura kumo bakari
走れよ船 煙巻き巻き走れよ船 私の故郷は隠れて雲ばかり 


三、目ぬさみぃてぃ ゆるやゆながとぅ みぃぬさみぃてぃなきゃくとぅうみぃばや にぃぶららんよ スラにぃぶららんど
みぃぬさみぃてぃ ゆるやゆながとぅ みぃぬさみぃてぃ なきゃくとぅうみぃばや にぃぶららんよ すらにぃぶららんど
mï nu samïti yuru ya yunagatu mï nu samïti nakyakutu umiba ya niburaraN yo sura niburaraN do
目が覚めて 夜は一晩中目が覚めて目が覚めて 貴方のこと思うと眠られないよ 
語句・ゆながとぅ 沖縄語の「ゆながた」(一晩中)に対応。 


四、戻てぃこよ うむかげたちゅんとき もどてぃこよ くてぃさやあたんてぃも わったい暮らそ スラ吾二人暮らそ
むどぅてぃくゆ うむかげたちゅんとぅき むどぅてぃくゆ くてぃさやあたんてぃむ わったいくらそ すら わったいくらそ
muduti ku yu umukage tachuNtuki muduti ku yu kutisa ya ataNtimu wattai kuraso sura wattai kuraso
戻って来いよ 面影浮かぶ時戻ってこいよ 苦しさがあっても二人くらそう
 
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Posted by たる一 at 07:00Comments(8)あ行

2009年11月07日

宮古根~かいされ

宮古根~かいされ

唄三線 金城実 山里ユキ


宮古根

(男)今帰仁ぬ湧川路次楽ぬなゆしヨ (楽吹ちゅせ 誰がヨ)うりゆかんまさる名残り宮古根
なきじんぬわくがわるじがくぬなゆし (がくふちゅせ たるがよ)'うりゆかん まさるなぐりなくに
nakijiN nu wakugawa rujigaku nu nayushi (gaku huchuse taruga yo) 'uri yukaN masaru naguri nakuni
今帰仁の湧川(では)路次額が鳴る (楽を吹くのは誰?)それよりもまさる名に残る宮古根
語句・るじがく「公式行列の先頭で奏する音楽」【琉辞】。中国に由来し、国王の行進に使われた。・がく 「路次楽」で演奏された哨吶(ツォナ)と呼ばれたり「がく」とも呼ばれる、いわゆるチャルメラに相当する管楽器。


(女)国頭ぬ旅にいかば聞きみそりヨ(見るかたんひゃーあいんなヨ)昔山原の本部宮古根
くんじゃんぬたびに'いかば ちちみそり (みるかたんひゃー'あいんなよ)んかしやんばるぬむとぅぶなくに
kuNjaN nu tabi ni 'ikaba chichimisori (mirukaraN hyaa 'aiNna yo) Nkashi yaNbaru nu mutubu nakuni
国頭の旅に行けばお聞きくださいね (見るかたも おまえ あるのかね?)昔山原の本部宮古根


(男)二十歳美童ぬ三十坂登てヨ (さらばんじえーんまよ)四十戻るちゃい 五十ばんじゃい
はたちみやらびぬさんじゅふぃらぬぶてぃ(さらばんじ 'えー 'んまよ)しんじゅむどぅるちゃい ぐんじゅばんじゃい
hatachi miyarabi nu saNju hwira nubuti (sarabaNji 'ee 'Nma yo)shiNju muduruchai guNju baNjai
二十歳娘が三十(才)の坂を登り(真っ盛り ねえあなた)四十(才)戻して 五十の盛りになり
語句・さらばんじ 「真っ最中」「真っ盛り」<さら 「新しい」が転じて「真っ」+ ばんじ 最中。盛り。・んま 「あなたさま」【琉辞】。・ばんじゃい 盛りになり。<ばんじ +やい 「して」「なり」の意。が融合。


(女)唄あびてぃ暮らち夢の間に五十ヨ (わかづくいぐゎ えーさヨ)後の五十年や如何しさびが
'うた'あびてぃくらち 'いみぬまにぐじゅよ(わかじゅくいぐゎ えーさよ)'あとぅぬぐじゅにんや'いちゃしさびが
'uta 'abiti kurachi 'imi nu ma ni guju yo(wakajukuigwa ee sa yo)'atu nu gujuniN ya 'ichashi sabiga
唄歌って暮らして夢の間に五十歳(若作りだねえ)後の五十年はどうやって暮らしましょうか
語句・あびてぃ 歌って。<あびゆん。歌う。


かいされ


うふぃな山原の島に生まれとてぃ 囃子小もあたい(ジントヨ)ならんばすい
'うふぃなやんばるぬしまにんまりとてぃふぇしぐゎん'あたい ならんばすい
'uhwina yaNbaru nu shima ni Nmaritoti hweshigwaN 'atai naraN basui
そんな山原の村に生まれていて囃子も合わせられないのか


上句出じゃしわる囃子付けられる 歌小うやぎゆる我肝里や知らに
かみく'んじゃしわる ふぇしちきらりる 'うたぐゎ'うやぎゆるわちむさとぅやしらに
kamiku 'Njashiwaru heshi chikirariru 'utagwa 'uyagiyuru wachimu satu ya shirani
上句(の唄を)出してこそ囃子は付けられる 歌を盛り上げようという私の心あなたは知らないの?
語句・うやぎゆる 盛り上げる。<うやぎゆん 盛り上げる。援助する。


かいされ小され小溝されやらぬ あば小肝されるされい歌小
かいされぐゎされーぐゎ んんじゅされーやらん 'あばぐゎちむされーる されい'うたぐゎ
kaisare gwa sareegwa nnju saree yaraN 'abagwa chimu saree ru sarei 'utagwa
「かいされ」唄はさらう人溝さらいではない 姉さんの心をさらってこそ さらい唄


山原の二才達情けあてからや むいんちるさびる(アイエナー)泣ちどさびる
やんばるぬにせた なさき'あてぃからや むいんちるさびる なちどぅさびる
yaNbaru nu niseta nasaki 'atikara ya muiNchi ru sabiru nachi du sabiru
山原の青年たちは情けがあるからぐったりされたり泣いたりされる
語句・むいんち <むいんちゅん 「(眠気や疲れで)ぐったりする」【琉辞】。


本部カツオ刺身くんち命薬 なひんけばあば小夜中後の為に
むとぅぶかちゅさしみ くんちぬちぐすい なふぃんけば 'あばぐゎゆなか'あとぅぬたみに
mutubu kachu sashimi kuNchi nushigusui nahwiN keba 'abagwa yunaka 'atu nu tamini
本部のカツオ刺身は元気つける薬もっと食べれば姉さん夜中後の為に





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Posted by たる一 at 10:28Comments(2)

2009年10月10日

ひじ小節

ひじ小節
ふぃじぐゎぶし
hwiji gwa bushi
髭の唄
語句・ふぃじ 髭。 「ひじ」とも発音する。以降「ふぃじ」に発音を統一した。「小」(ぐゎ)がつくと、髭を生やした人という意味にもなるが、題名には、歌いだしの最初の歌詞を使うことがよくあるので、ここでは「髭の歌」くらいであろう。 

伊良波尹吉 作詞


(女)ひじ小剃てぃ後や鏡のー見しらんどーやーふー
ふぃじぐゎすてぃ'あとぅや かがのーみしらんどーやーふー
hwiji gwa suti 'atu ya kaganoo mishiraN doo ya huu
髭を剃った後は鏡は見せないからねえ
語句・かがのー 鏡は。 <かがん 鏡。+や →融合して。 「銭(じん)+や」が「じのー」となるのと同じ。 ・ふー ねえ。 「目上の相手に同意を求めたり問いかけたりする文末に添えるやわらげ表現」【琉辞】。 


(男)ぬーんち見しらんが
ぬーんちみしらんが
nuu Nchi mishiraN ga
何んで見せないのか?
語句・ぬーんち <ぬー 何。 + んち ・・と云って。・・と。 直訳すると「何と云って」。これは「何んで」と等しい。


(女)若くなゆくとぅてー 美らくなゆくとぅてー
わかくなゆくとぅてー ちゅらくなゆくとぅてー
wakaku nayukututee churakunayukututee
若くなるからよ かっこよくなるからよ
語句・わかくなゆくとぅてー わかくなるからよ。 <わかく+なゆ なゆん。の活用語幹。 なる + くとぅ ので。から。 +てー よ。「〔文末助詞〕・・よ〔deeとほぼ同義〕」【琉辞】。


(男)あきせ面ふらーや 我が美らくなゆし ぬーんち好かんすが
'あきせちらふらーや わーがちゅらくなゆし ぬーんちしかんすが
'akise chirahuraa ya waa ga churaku nayushi nuuNchi sikaN suga
あら 馬鹿な奴だよ 私がかっこよくになるのが どうして嫌いだというのか
語句・あきせ あら!<あき 「女性が驚きや悲しみを表す」【琉辞】。ここでは男性だが。+せ <せー<し+や。 ・ちらふらー 「馬鹿づらをしたやつ;厚顔無恥の者」【琉辞】。「ばかな奴」くらいてもよい。・しかんすが 嫌いだと云うのか。<しかん 好かん。嫌い。 + す 「しゅん」云う。+が 疑問。 


(女)あん言ちん 好かんさひゃー
'あん'いちん しかんさ ひゃー
'aN 'ichi shikaN sa hyaa
そう云っても嫌いなのよ このやろう
語句・ひゃー 「人を軽蔑していう〕野郎、やつ」【琉辞】。


(男)あね!くぬひゃー 我んにんかい ひゃーんでぃる言いくゎいるい
'あね くぬひゃー わんにんかい ひゃーんでぃる'いいくゎいるい
'ane kunu hyaa waNniNkai hyaa Ndi ru 'iikwai rui
あら このやろう 私にむかって 「このやろう」っていいやがるのか?
語句・いいくゎいるい いいやがって!<いい いゆん + くゎい<くゎゆん 「・・しやがる」 + る 「どぅ」 強調。 +い ・・か? (参)あんるやるい=そうなのか?。


(女)言いばっぺる やいびさ ひゃー
'いいばっぺる やいびさ ひゃー
'iibappee ru yaibisa hyaa
云い間違えただけだよ このやろう

(男)あね!くぬひゃー又ひゃーなー ぬーやらわんしむさ 我が美らくなゆし嫌とーせーぬーがひゃー
'あね くぬひゃー また ひゃーなー ぬーやらわん しむさ わーがちゅらくなゆし ちらとーせー ぬーが ひゃー
'ane kunu hyaa mata hyaa naa nuu yarawaN shimusa waa ga churaku nayushi chira toosee nuu ga hyaa
あら このやろう また 「やろう」か? なんでもいいさ 私が綺麗になるのが嫌というのはさあなぜだ このやろう
語句・しむさ よいよ。 ・とーせー さあ。


(女)うぬちむえー聞ちぶさみ とーあんせー聞かすんてー ひじ小剃てぃ後ぬ うぬ面小どぅん鏡見しるうぬ時ね どぅさーにどぅくる美らくなやい うぬ面ゆ妻に見しぶさる心 うくりらばちゃすが 又首里かい首里かいてー ちゃー用事ぬあんあんてー すんてーひゃー罪かんじゃー
'うぬちむえー ちちぶさみ とー'あんせーちかすんてー ふぃじぐゎすてぃ'あとぅぬ 'うぬちらぐゎどぅん かがんみしる'うぬとぅちねー どぅさーに どぅくる ちゅらくなやい 'うぬちらゆ とぅじに みしぶさるくくる 'うくりらばちゃすが またすいかい すいかいてー ゆーじゅぬ'あん'あんてー すんてー ひゃー ばちかんじゃー
'unu chimuee chichibusami too 'aNsee chikasuN tee hwijigwa suti 'atu nu 'unu chigwa duN kagaN mishiru 'unu tuchi nee dusaani dukuru churaku nayai 'unu chira yu tuji ni misibusaru kukuru 'ukuriraba chaasuga mata sui kai sui kai tee chaa yuuju nu 'aN 'aN tee suNtee hyaa bachikaNjaa
その心積もりを聞きたいでしょ? それでは聞かせてあげるよ ヒゲを剃って後のその顔でも鏡でみたとたんに 自分で自分を綺麗になった(と思って) その顔を妻に見せたい気持ちがおこったらどうするの? また首里へ 首里へって いつも用事がある、あるって言う この野郎 バチあたりめ!
語句・ちむえー つもりを。 <ちむい 積もり。+や 融合して えー。 ・とーあんせー それでは。  ・どぅーさーに 自分で。<どぅー 自分。 +さーに で。 ・どぅくる  自分自身で。 ・ちゃー いつも。 ・すんてー 云うよ。 <すん 云う。 +てー よ。・ ばちかんじゃー ばちあたり。


(男)リンチからタンチ まんがたみーする 生気な者 うぬリンチェー焼ちうち喰やい まるけーてーやらしぇーとー
りんちからたんち まんがたみーする なまちなむん 'うぬりんちぇーやちうちくゎやい まるけーてー やらしぇーとー
riNchi kara taNchi maNgatamii suru namachi na muN 'unu riNchee yachi 'uchikwayai marukeetee yarashee too
ヤキモチから短気 背負い込む無鉄砲もの そのヤキモチを焼きやがって 時にはいかせろよ ほら 
語句・りんち やきもち。・かんがたみー 「背負い込むこと」【琉辞】。・なまち 「無てっぽう」【琉辞】。 ・まるけーてー 時々は。 


(女)うりうりうり始またせー テーファなじきやいん ちゃ我ね言らんでぃ思とーたん やらするさくい やらさんむん
'うり'うりはじまたせー てーふぁー なじきやいん ちゃー わんねー'いらんでぃ'うむとーたん やらするさくい やらさんむん
'uri ’uri hajimatasee teehwaa najiki yaiN chaa waNnee 'iaraNchi 'umutootaN yarasurusakui yarasaNmuN
ほらほら 始まったよ おどけもの それらしい言い訳をいつも私には云うと思っていた 行くなら引っかいても行かさないもの
語句・てーふぁー おどけもの。 ・なじき 言い訳。・さくい 引っかき傷。


(男)やらさんてぃん 行ちゅるむん
やらさんてぃん 'いちゅるむん
yasasaNtiN 'ichurumuN
行かさないと云っても 行くよ


(女)行ぢゃんてん やらさんむん
'んじゃんてん やらさんむん
NjaN teN yarasaNmuN
行くといっても いかさんよ


(男)だーあんしん行ちゅるむん
だー'あんしん 'いちゅるむん
daa 'aNshiN 'ichuru muN
おい そういっても いくからな
語句・だー おい。 ・あんしん <あん そう。+し <しー しゅん 云う。の連用語幹。 +ん も。


(女)あんしーねー我んねーなー くぬカンスイたてぃゆんどー
'あんしーねー わんねーなー くぬ かんすい たてぃゆんどー
'aNshii nee waNnee naa kunu kaNsui tatiyuN doo
それではね わたしはね このカミソリで切るわよ!
語句・かんすい カミソリ。 ・たてぃゆん 切る。 「たちゅん」は多義性のある言葉で(大和口でも同様)、「発つ」「立つ」「経つ」「生じる」などの意味のほか「よく切れる」の意味もある。


(男)ありありあり危なさぬ
'あり'あり'あり 'あぶなさぬ
'ari 'ari 'ari 'abunasanu
あら あら あら あぶないからね!
語句・あぶなさぬ 直訳では「あぶないので」。
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Posted by たる一 at 19:16Comments(4)は行

2009年09月26日

島唄 南の四季

島唄 南の四季
[しまうた みなみのしき]
([ ]は大和口の発音)


作詞 我如古盛栄
作曲 宮沢和史

唄 我如古より子 (CD「恋の花」より)


一、初春の節来りば花ん咲ちふくてぃよ 恋し思里が思影ぬたちまさてぃ
はちはるぬしちくりば はなんさちふくてぃよ くいし'うみさとぅが'うむかじぬたちまさてぃ
machiharu nu shichi kuriba hanaN sachi hukuti yo kuishi 'umisatu ga 'umukaji nu tachimasati
初春の季節が来たので花も咲き誇って 恋しいあの方の面影が強く浮かんで
語句・くりば 来たので。 <くーりば<ちゅーん 来る。已然形くーり。+ば 「已然形について既定[順接]条件を表す」【琉辞】。つまり、「初春がくると」という仮定法的訳より、「来たので」「来たらいつも」という原因結果の関係が強いニュアンスになる。「くーば」ならば「未然形+ば」で「来たら」と仮定法的訳になる。 「已然形」は本土ではほとんど消滅したが。古語の用法がウチナーグチには残っている。 ・ の。「の」よりも、親近感のあるものに「が」がよく使われるところも古語的だといわれる。

思影立てぃば白浜出じてぃさざ波ぬ音に我ん唄乗してぃ
'うむかじたてぃばしらはま'んじてぃさざなみぬ'うとぅにわん'うたぬしてぃ
'umukaji tatiba shirahama 'Njiti sazanami nu 'utu ni waN 'uta nushiti
面影がたつので白浜に出てさざ波の音に私の唄を乗せて
語句・たてぃば たつので。 これも、已然形+ば。

夏なりばディグぬ花 ゆうなぬ花ん我ん島ぬ花
なちなりばでぃぐぬはな ゆーなぬはなんわんしまぬはな
nachi nariba digu nu hana yuuna nu hanaN waN shima nu hana
夏といえばデイゴの花、ゆうなの花も私の故郷の花
語句 ・なりば 上述の理由に従えば「なったので」「なるといつも」だが、訳としては、すこしくどくなるので、因果関係をすこし強調するように「といえば」と訳しておく。 ・でぃぐ デイゴ。マメ科の落葉高木。インド原産。沖縄県花。真っ赤な花をつける。 ・ゆうな アオイ科の常緑高木「オオハマボウ」の沖縄名。黄色のハイビスカス似の花をつける。・しま ウチナーグチでは「アイランド」(島)の意味は少なく「村里、故郷」「村落」「島〔‘沖縄の原産[地元]の’の意味で接頭辞としても用いられる〕【琉辞】とあるように、「生まれ故郷」を意味することが多い。

夏なりばディグぬ花 ゆうなぬ花ん我ん恋心
なちなりばでぃぐぬはな ゆーなぬはなんわんくいぐくる
nachi nariba digu nu hana yuuna nu hanaN waN kuigukuru
夏といえばデイゴの花 ゆうなの花も私の恋心


二、野ん山ん紅葉花咲ちゅる秋なりばよ 思里とぅ手ゆとぅやいながみやい遊びぶさ
ぬんやまんむみじばなさちゅる'あちなりばよ 'うみさとぅとぅてぃゆとぅやい ながみやい'あしびぶさ
nuN yamaN mumijibana sachuru 'achi nariba yo 'umisatu tu ti yu tuyai 'ashibibusa
野も山も紅葉花咲いている秋といえば 愛しい貴方と手をとりあい眺めたりして遊びたい
語句・むみじばな 紅葉(こうよう)。 「むみじ」「むみじば」は櫨(ハゼ)の葉が秋になり真っ赤になるようす。または、落葉樹の葉が赤や黄色になることも意味している。沖縄には「カエデ」の葉が赤くなる「もみじ」はなかったので、本土の私たちが連想する「紅葉(もみじ)」ではないことに注意。また「はな」がついているが、このような表現は「琉歌大成」の5千首にもなく、辞書にもない。おそらく「紅葉(こうよう)した葉が花のように真っ赤になっている比喩」だろう。

眺みてぃ互に我身ぬ思い打ち明きらなや 思里によ
ながみてぃたげにわみぬ'うむい'うちあきらなや 'うみさとぅによ
nagamiti tage ni wami nu 'umui 'uchiakirana ya 'umisatu ni yo
互いに見つめて 私の思いを打ち明けたいよ 貴方に

冬なりば梅ぬ花百合ぬ花ん 我ん島ぬ花
ふゆなりば'んみぬはな ゆいぬはなんわんしまぬはな
huyu nariba 'Nmi nu hana yui nu hanaN waN shima nu hana
冬といえば梅の花 百合の花も私の故郷の花

冬なりば梅ぬ花百合ぬ花ん 我ん恋心
ふゆなりば'んみぬはな ゆいぬはなんわんくいぐくる
huyu nariba 'Nmi nu hana yui nu hanaN waN kuigukuru
冬といえば梅の花 百合の花も私の恋心


里が色に染まいぶしゃや いちぐいちまでぃん
さとぅが'いるにすまいぶしゃや 'いちぐ'いちまでぃん
satu ga 'iru ni sumaibusha ya 'ichigu 'ichi madiN
貴方の色に染まりたいものだよ 一生いつまでも
語句・いちぐ 一生。

夏なりばディグぬ花 ゆうなぬ花ん我ん島ぬ花
なちなりばでぃぐぬはな ゆーなぬはなんわんしまぬはな
nachi nariba digu nu hana yuuna nu hanaN waN shima nu hana
夏といえばデイゴの花、ゆうなの花も私の故郷の花

冬なりば梅ぬ花百合ぬ花ん 我ん島ね花
ふゆなりば'んみぬはな ゆいぬはなんわんしまぬはな
huyu nariba 'Nmi nu hana yui nu hanaN waN shima nu hana
冬といえば梅の花 百合の花も私の故郷の花

夏なりばディグぬ花 ゆうなぬ花ん我ん恋心
なちなりばでぃぐぬはな ゆーなぬはなんわんくいぐくる
nachi nariba digu nu hana yuuna nu hanaN waN kuigukuru
夏といえばデイゴの花 ゆうなの花も私の恋心

冬なりば梅ぬ花百合ぬ花ん 我ん恋心
ふゆなりば'んみぬはな ゆいぬはなんわんくいぐくる
huyu nariba 'Nmi nu hana yui nu hanaN waN kuigukuru
冬といえば梅の花 百合の花も私の恋心
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2009年09月20日

無情の月

無情の月
[むじょうのつき]


一、千里陸道や思れ自由なゆい 一里船道や自由ぬならん
しんりりくみちや'うむれじゆなゆい 'いちりふなみちやじゆんならん
shiNri rikumichi ya 'umure jiyu nayui 'ichiri hunamichi ya jiyuN naraN
千里の陸の道は思い自由になる(通える)が一里の船道は思い自由にならない


二、我肝ひしひしと干瀬打ちゅる波や 情思無蔵が思みど増しゅる
わちむふぃしふぃしとぅふぃし'うちゅるなみや なさき'うみんぞが'うみどぅましゅる
wachimu hwishihwishi tu hwishi 'uchuru nami ya nasaki 'umiNzo ga 'umi du mashuru
私の心をひしひしと干瀬を打つ波は 愛した貴女への思いが強くなる
語句・ふぃしふぃし 「ひしひし(胸にこたえるさま)、ずきずき(痛むさま)」【琉辞】。 波が打つ音と胸に響く思いを掛けている。 ・ふぃし 「干潮時に現れる洲、礁原[しょうげん]」【琉辞】。沖縄の海は珊瑚礁で囲まれているが、それが盛り上がった所に波があたる。


三、貫ちたみて置ちょて知らさなや里に 玉切りて居てど袖ぬ涙
ぬちたみてぃ'うちょてぃしらさなやさとぅに たまちりてぃうてぃどぅすでぃぬなみだ
nuchi tamiti 'uchoti shirasanaya satu ni tama chiriti uti du sudi nu namida
貫きためて置いておいて知らせたいよ貴方に 玉を切っておき袖の涙
語句・しらさな 知らせたい。


四、我身に幸しぬ光ねんあしが 無情に照る月や光まさて
わみにしあわしぬふぃかりねん'あしが むじょにてぃるちちやふぃかりまさてぃ
wami ni shiawashi nu hwikari neN 'ashiga mujo ni tiru chichi ya hwikari masati
私自身に幸せの光はないのであるが 無情に照る月は光強くなって
  

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2009年09月19日

吉屋物語

吉屋物語
ゆしや むぬがたり
yushiya munugatari
吉屋(ちるー)の物語
語句・ゆしや 吉屋チルー。 吉屋鶴とも書く。 「【吉屋鶴〔思鶴['Umi-Chiru]とも;古くは単に‘よしや’〕】(恩名ナベと並び称される)女流歌人(1650?-68?);読谷山[ユンタンザ]〔今の読谷村[よみたんそん]〕に生まれ8歳のとき那覇仲島へ遊女として身売りされ18歳で没したといわれる。」【琉辞】。

作詞 小浜 守栄
作曲 喜屋武 繁雄


一、誰がし名付きたが吉屋言る人や 琉歌ぬ数々や代々に残て
たがしなじきたが ゆしやてぃるふぃとぅや 'うたぬかじかじやゆゆにぬくてぃ
tagashi najikita ga yushiya tiru hwitu ya 'uta nu kajikaji ya yuyu ni nukuti
一体誰が名付けたのか 吉屋という人は 歌の数々を代々残して
語句・たがし <たー 誰。 +が 疑問の助詞。 +し 強調の助詞(たとえば、文語「いちゃし」「ぬがし」のように、‘一体’くらいの意味) ・てぃる という。

(連ね)
友小達や揃て手まいうち遊ぶ 我身や病む母ぬ御腰むむさ
どぅしぐゎやするてぃ てぃまい'うち'あしぶ わんややむふぁふぁぬ'うくしむむさ
dushigwa ya suruti timai 'uchi 'ashibu waN ya yamu hwahwa nu 'ukushi mumu sa
友達は揃って手まりで遊ぶ 私は病気の母のお腰をもむよ


二、あてなしが童家庭の困難に 女郎花に落てて行ぢゃるいたさ
'あてぃなしがわらび ちねぬくんなんに じゅりばなに'うてぃてぃ 'んじゃる'いたさ 
'atinashi ga warabi chine nu kuNnaN ni juribana ni 'utiti 'Njaru 'itasa
無邪気な子ども 家庭の困難のために 女郎に落ちて去って行ったよ
語句・あてぃなし 「(思慮分別もない)無邪気な者」【琉辞】。「あてぃ」には「思慮」という意味がある。 ・ の。・じゅり 「娼妓[しょうぎ]、女郎」、「料理茶屋の女」【琉辞】。 「尾類」は当て字。琉球語辞典では「女郎系」ではなく九州諸方言の「ジョーリ」(料理)の影響があると見ている。「じゅりばな」ともいう。 ・んじゃる 去る。

(連ね)
恨む比謝橋や情きねん人ぬ 我ん渡さと思て掛きてうちぇさ
'うらむふぃじゃばしやなさきねんふぃとぅぬ わんわたさとぅむてぃかきてぃうちぇさ
'uramu hwijyabashi ya nasaki neN hwitu nu waN watasa tumuti kakitiuche sa
恨めしい比謝橋は情けのない人が私を渡そうと思って掛けておいたものよ
語句・ が。 ・わたさ わたそう。


三、女郎花に落てて行ちゅる道しがら 渡る比謝橋に恨みくみて
じゅりばなに'うてぃてぃ'いちゅるみちしがら わたるふぃじゃばしに'うらみくみてぃ
juribana ni 'utiti 'ichuru michi shigara wataru hwijabashi ni 'urami kumiti
女郎に落ちて行く道すがら渡る比謝橋に恨みを込めて

(連ね)
頼む夜や更きて音沙汰んねらん 一人山ぬ端ぬ月に向かて
たぬむゆやふきてぃ'うとぅさたんねらん ふぃちゅいやまぬふぁぬちちにんかてぃ
tanumu yu ya hukiti 'utusataN neraN hwichui yama nu hwa nu chichi ni Nkati
(あなたが来ると)頼む夜は更けて音沙汰もない 一人山の端の月に向かって


四、仲島ぬ花と美らさ咲ちなぎな 詠だる琉歌数に心くみて
なかしまぬはなとぅちゅらささちなぎな ゆだる'うたかじにくくるくみてぃ
nakashi nu hana tu churasa sachinagina yudaru 'uta kaji ni kukuru kumiti
仲島の花と美しく咲きながら詠んだ歌の数々に心を込めて
語句・なかしま 「那覇市泉崎のもと海上にあった小島(に明治41年まであった遊里)」【琉辞】。 吉屋鶴はここに居たとされる。 ・なぎな <なぎーな ・・ながら、・・なのに。 ・うた かつては「琉歌」は「うた」と呼ばれた。

(連ね)
流りゆる水に桜花浮きて 色美らさあてどすくて見ちゃる
ながりゆるみじにさくらばな'うきてぃ 'いるじゅらさ'あてぃどぅ すくてぃんちゃる
nagariyuru miji ni sakurabana 'ukiti 'irujurasa 'atidu sukuti ncharu
流れている水に桜花を浮かべて 色美しいのですくってみる
語句・んちゃる <んーじゅん ぬーん。 見る。・・してみる。 沖縄語で「見る」は「んーじゅん」。「テレビを見る」は「テレビんーじゅん」。「みーゆん」は「見える」。 ここでは「・・してみる」。


五、琉歌にちながりて 見染みたる里と 想い自由ならん此ぬ世しでて
'うたにちながりてぃみすみたるさとぅとぅ 'うむいじゆならんくぬゆしでぃてぃ
'uta ni chinagariti misumitaru satu tu 'umui jiyu naraN kunu yu shiditi
歌に繋がれて見初めた貴方と愛は自由にならない この世に生まれて(いるのに
語句・しでぃてぃ 生まれて。 <しでぃゆん 孵化する。生まれる。

(連ね)
拝で拝みぶしゃ首里天加那志 遊でうちゃがゆる御茶屋御殿
'うがでぃ'うがみぶしゃ しゅいてぃんがなし 'あしでぃ'うちゃがゆる 'うちゃや'うどぅん
'ugadi 'ugamibusha shuitiNganashi 'ashidi 'uchagayuru 'uchaya'uduN
お会いしてお会いしたいことよ!首里の王様 遊んで浮かび上がる御茶屋御殿
語句・うがでぃ <うがぬん 拝む。お会いする。「会う」「見る」の謙譲語。・うちゃがゆる <うちゃがゆん 「浮き上がる、鮮明[鮮やか]になる」【琉辞】。 


六、思い世に残す死出ぬ旅ゆいか 白骨に語る御茶屋御殿
'うむいゆにぬくす しでぃぬたびゆ'いか しらくちにかたる 'うちゃや'うどぅん
'umui yu ni nukusu shidi nu tabi yu 'ika shirakuchi ni kataru 'uchaya'uduN
思いを世に残す死出の旅にいきます 白骨に語る御茶屋御殿
語句・ を。・しらくち 白骨。



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2009年08月13日

川平節

川平節
かびらぶし
kabira bushi
語句・かびら 元歌である八重山民謡「川平節」(かびら ぶし kabïra bushï)の「川平」。「石垣市の中心部から西へ四里くらいの所にある集落」【石辞】。

(歌詞参考 「民謡端節 舞踊曲集工工四」登川誠仁 )


(男)思蔵が面影に ひかさりてぃ我身や 笠に顔かくち 偲でぃ行ちゅん(スーリ)
(括弧の囃子言葉は以下略)
んぞが'うむかじにふぃかさりてぃわんや かさにかうかくち しぬでぃ'いちゅん 
Nzo ga 'umukaji ni hwikasariti waN ya kasa ni kau kakuchi shinudi 'ichuN
貴女の面影に誘われて私は笠に顔を隠し忍んで行く
語句・ふぃかさりてぃ <ふぃかさりゆん 「情けに引かされる、誘惑される」【琉辞】。誘われて。


(男)笠に顔かくち 偲でぃ来るびけい お門に出ぢみそり 思い語ら
かさにかうかくち しぬでぃちゃるびけい 'うじょに'んじみそり'うむいかたら
kasa ni kau kakuchi shinudi charu bikei 'ujoni 'Njimisori 'umui katara
笠に顔を隠して忍んでくるばかり 御門の出てきてください 思いを語りあいたい
語句・かたら <かたらゆん 未然形。「語り合いたい」。普通の「かたゆん」(語る)よりも「かたらゆん」のほうが「仲間〔味方〕に引き入れる」「話し合う」ニュアンスが濃い。


(女)いちぐ里ちりてぃ 遊ばていやしが はなぬ身ぬなれや 自由やならん
'いちぐさとぅちりてぃ 'あしばていやしが はなぬみぬなれや じゆならん
'ichigu satu chiriti 'ashiba tei yashiga hana nu mi nu nare ya jiyu naraN
生涯貴方を連れて遊びたいのですが 遊女の身の習わしで自由になりません
語句・いちぐ 一生。生涯。 ・てい ・・と。「てぃやい」(<ト言ヒアリ)の縮約形。・なれ <なれー naree。 習わし。習慣。


(男)花ぬ身ぬなれや 自由ならねうちゆみ 繰り返しがえし 肝に染みり
はなぬみぬなれや じゆならね'うちゅみ くりかいしがいし ちむにすみり
hana nu mi nu nare ya jiyu narane 'uchumi kurikishigaishi chimu ni sumiri
遊女の身の習わしは自由にならないことはあるまい? 繰り返し繰り返し心に染めよ
語句・ならね <なゆん 否定形→ならん。+や =ならねー。 ・うちゅみ <うちゅん  おく。+み= おくか?→あるか?


(女)繰り返しがいし 思むりわん里前 我がやなやびらん 他所にいもり
くいかいしがいし 'うむりわんさとぅめ わがや なやびらん ゆすに'いもり
kuikaishigaishi 'umuriwaN satume waga ya nayabiraN yusu ni 'imori
繰り返し、繰り返し貴方を思ってみても 私にはどうにもなりません 他所にお行きください
語句・わん ・・しようとしても。 


(男)ゆすとぅ語らりる 思いやてぃからや 何んでぃくがりとぅてぃ 我身や泣ちゅが
ゆすとぅかたらりる'うむいやてぃからや ぬんでぃくがりとぅてぃ わんやなちゅが
yusu tu katarariru 'umui yati kara ya nu Ndi kugarituti waN ya nachu ga
他所の女と語れるような思いであったら、何のために心焦がして私は泣いているのか?
語句・やてぃから ・・であるならば。 ・ぬんでぃ  何のために。 <ぬー 何。 + んでぃ と。ために。


(女)何んでぃくがりとぅてぃ 泣ちみせが里前 節ゆ待ちみそり あとぅぬ浮世
ぬんでぃくがりとぅてぃ なちみせがさとぅめ しちゆまちみそり 'あとぅぬ'うちゆ
nu Ndi kugarituti nachimise ga satume shichi yu machimisori 'atu nu 'uchiyu
何のために心焦がしてお泣きになられているのですか?貴方。時期をお待ちください、浮世の未来(もあるでしょうから)
語句・なちみせが <なちゅん 語幹なち。 +みせーん なさる。 +が 疑問。 ・しち 「節」「四季」などが辞書にあるが、ここは「時期」。「いつかチャンスがあるから」ぐらいの意味。


(男)無蔵が云るぐとぃに 節待たなやしが むしか先ならば 我身や如何すが
んぞが'いるぐとぅに しちまたなやしが むしかさちならばわんやちゃすが
Nzo ga 'iru gutu ni shichi matana yashiga mushika sachi naraba waN ya chasu ga
貴女が云うように時期を待ちたいのだが もしか先のことならば私はどうするか
語句・むしか もしか。もし。


(女)むしか先なてぃん 里一人やなさん ちりてぃいかりゆる てぃだんあむぬ
むしかさちなてぃん さとぅちゅいやなさん ちりてぃ'いかりゆる てぃだん'あむぬ
mushika sachi natiN satu chui ya nasaN chiriti 'ikariyuru tidaN 'amunu
もしか先になっても貴方一人にはしない 連れて行くことができる手立てがあるので
語句・てぃだん 手立て。<「手段」 ・あむぬ 「あるものを、あるのに、あるので」【琉辞】。


(男)ちりてぃ行かゆいか とぅてぃんくま居とぅてぃ共にはからやい いすじぶしゃぬ
ちりてぃ'いかゆいか とぅてぃん くまうとてぃ とぅむにはからやい 'いすじぶしゃん
chiriti 'ika yuika tutiN kuma utoti tumu ni hakarayai 'Isuji bushaN
連れて行くよりも いっそのことここで一緒に(死を)計らい急ぎたいばかりだ
語句・ゆいか よりも。・とぅてぃん いっそのこと。


(女)まじまてぃ
まじまてぃ
mjimati
ちょっと、待って!
語句・まじ まず。しばらく。「まじまてぃ」(ちょっと待って!)


(女)命捨てみせるたきゆ又やりば おはじかさあてぃん うすばなりら
'いぬちしてぃみせるたきゆまたやりば 'うはじかさ'あてぃん 'うすばなりら
'inuchi shiti miseru taki yu mata yariba 'uhajikasa 'atiN 'usuba narira
命をお捨てになるほど思い私も同じであるので お恥ずかしい気持ちですが貴方と一緒になりたい
語句・たき ほど。「焦がれ死ぬたきに思いつくちをすがかさび貫金ぬ自由ならん」〔焦がれて死ぬほどに思い尽くしているのだが重ねた貫金に縛られたように自由にならない〕(参考 琉歌大成)。「だき」とも。 ・また 同じ。同様に。「私も同様に」と訳した。 ・うすば 妾(めかけ)。ここでは「一緒に」と。


(男女)天ぬうたしきか 神ぬ引合わしか 無蔵連れてぃ宿に 戻る嬉しゃ
てぃんぬ'うたしきか かみぬふぃちゃわしか んぞちりてぃやどぅにむどぅる'うりしゃ
tiN nu 'utashiki ka kami nu hwichawashi ka Nzo chiriti yadu ni muduru 'urisha
天のお助けか神の引き合わせか あなたを連れて家に戻ることはなんと嬉しいことよ!
語句・やどぅ 「宿」も「家」もある。ここでは「家」とした。

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2009年07月19日

あやかり節

あやかり節
'あやかりぶし
'ayakari bushi
あやかれ唄
語句・あやかり あやかれ。<あやかゆん あやかる。命令形。

作詞作曲 照屋林助


一、くまぬ殿内ぬ たぬむしや 徳ぬ神ぬ やどみしょち 子孫繁盛 いや栄い (さりさり 我っ達ん 今日ぬゆかる日に あやからち呉みそーれ)
くまぬとぅんちぬ たぬむしや とぅくぬかみぬ やどぅみしょち しすんはんじょー いやさかい (さりさり わったん きゅぬゆかるひに 'あやからちくぃみそーれー)
kuma nu tuNchi nu tanumushi ya tuku nu kami nu yadumishochi shisuN hanjoo 'iya sakai (sari sari wattaN kiyu nu yukaru hi ni 'ayakarachikwimisooree)
こちらのお屋敷のなんと頼もしいことよ!徳の神がお宿りなさって 子孫繁盛やあ栄え (もし!申し上げます! 私たちも今日の佳き日にあやからせてくださいね)
語句・くま ここ。あなたさま、この方。大和口でいう「こちらの」ぐらいの丁寧な表現が相当。 ・とぅんち 「【殿内】脇地頭以上の家柄;その邸宅〔'udun[‘御殿’]よりは下位〕;〔一般に〕お邸。」【琉辞】。「お屋敷」と訳しておく。 ・たぬむしや 「頼もしいことは」と訳すより「や」を感嘆の表現ととらえて、なんと「頼もしいことよ!」と訳すほうが適当だろう。 ・やどぅみしょち お宿りなさって。<やどぅゆん +みせーん ・・なさる。連用形。みそーち、みしょーち。・いや 「〔文語〕やあ〔呼びかけ〕」【琉辞】。 ・さり 「〔敬語;目上に対する男性の呼びかけ・発語、または文(節)末語〕もし!〔saiよりも改まった感じ;女性はtariと言う〕」【琉辞】。さらに語源については「【‘申し上げる’の古義で使われた謙譲語‘知ラレル’の連用形シラレの縮約;呼びかけの(和語)モシ(モシ)が‘申[マウ]し(上げます)の縮約であることと軌を一にする’(以下省略)】」【琉辞】。つまり「さりさり」で「もし!申し上げます」ぐらいの意味。 ・ゆかるひ 佳き日。
(以下、括弧の繰り返しは省略)


二、くまぬ殿内ぬ 福らしゃや 長寿ぬ神ぬやどみしょち 白髪かみてん 若々と
くまぬとぅんちぬ ふくらしゃや ちょーじゅぬかみぬやどぅみしょち しらぎかみてぃんわかわかとぅ
kuma nu tuNchi nu hukurasha ya chooju nu kami nu yadumishochi shiragi kamitiN wakawaka tu
こちらのお屋敷の嬉しいことよ!長寿の神がお宿りなさって白髪になっても若々と
語句・ふくらしゃ <ふくらしゃん 「【誇ラシサ+アリ】〔文語〕嬉しい」【琉辞】。 もともとは本土の「誇らしい」と同じだが、「嬉しい」のニュアンスが強い。が、当て字で「誇らしい」「福らしい」とされることも多い。 ・かみてぃん <かみゆん 頭の上に乗せる 頂く。ここでは白髪を頭に生やして=白髪になって。


三、くまぬ殿内ぬ面白や 福ぬ神ぬやどみしょち うち笑い笑い かながなと
くまぬとぅんちぬ'うむしるや ふくぬかみぬやどぅみしょち 'うちわらいわらい かながなとぅ
kuma nu tuNchi nu 'umushiru ya huku nu kami nu yadumishochi 'uchiwarai warai kanagana tu
こちらのお屋敷のなんと面白いことよ!福の神がお宿りなさって 笑い笑い 仲睦まじく
語句・うちわらい 「うち」には「うちふりゆん」(すっかり惚れこむ)のように後の動詞を強調する役割はあるが必ずしも意味があるわけではないので、ここでは「笑い笑い」くらいに。・かながなとぅ 仲睦まじく。
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2009年07月19日

御馳走数え歌

御馳走数え歌
くゎっちー[かぞえうた]
kwachii [かぞえうた]
御馳走の数え歌
語句・くゎっちー 御馳走。「くゎっちーさびら」(いただきます。御馳走になります)。「くゎっちーさびたん」(ご馳走様でした)。

([ ]は大和口。あるいは大和口から移入された呼び方)


作詞作曲 久米仁
唄 當間清子


一、(ハイ)一ち ティビチによ 耳皮 山羊 ソーキ汁 真肉に中味も (アネアネ 御馳走 御馳走)
(はい)てぃーち てぃびちによ みみがー ひーじゃー そーきじる まししになかみん('あね 'あね くゎちー くゎちー)
(hai) tiichi tibichi ni yoo mimigaa hwiijaa sookijiru mashishi ni nakamiN ('ane 'ane kwchii kwachii)
一つ 豚足にね 豚の耳 山羊料理 豚のあばら骨汁 赤肉に豚の内臓のお汁(ほらほら 御馳走御馳走)
(括弧の囃子言葉は以下省略)
語句・てぃびち 「豚肉・大根・昆布などをおでん風に煮たもの」【琉辞】。「あしてぃびち」や「うてぃびち」、また「おでん」と大和風に表現する時もある。・みみがー 「豚の耳(を茹でてほそ切りにし酢で和えた料理」【琉辞】。最近ではピーナッツバターを入れた洋風の味も多い。<みみ 耳。+かー 皮。・ひーじゃー 山羊料理。首里語は「ふぃーじゃー」。ひーじゃー汁は、山羊肉とよもぎで煮込む。刺身も好まれる。・ましし 赤肉。・なかみ 「中味汁」(なかみじる)のこと。「中味吸い物 なかみ しーむん」とも言う。豚の胃腸をよく洗浄し、かつお出しと煮る。宮廷料理でもあった。



二、二ち田芋に山芋クラガー百号芋紅芋じゃが芋
たーち たー'んむに やま'んむ くらがーひゃくごー'んむ [べにいも じゃがいも]
taachi taa'Nmu ni yama 'Nmu kuragaa hyakugoo 'Nmu [べにいも じゃがいも]
二つ 田芋に山芋 クラガー百号芋 紅芋 じゃが芋
語句・たーんむ 「(里芋科の)水芋〔水田で栽培される;小芋が増える縁起から祝い料理のきんどん[~nii ~diNgaku]に使われ、ずいき[(taa)muziもduruwakasiiなどにする]〕」【琉辞】。・くらがーひゃくごーんむ 「【産地の(読谷村楚辺)‘暗川’から】良質の甘藷」【琉辞】。「クラガー芋」と「百号」芋は別の品種のようである。前者は「読谷村楚辺の「クラガー」と呼ばれる井戸からついた地名の産地の芋。後者は「1934 年沖縄農業試験場で、松永高元という人が作り出した品種」らしい。


三、三ち みかんやよ 温州 タンカン シークヮーサー オートー カーブチ
みーち [みかん]やよ [うんしゅー]たんかんしーくゎーさー おーとーかーぶち
miichi [みかん] ya yoo [うんしゅー] taNkaN shiikwaasaa 'ootoo kaabuchi
三つ みかんはね 温州みかん タンカン シークヮーサー オートー カーブチ
語句・たんかん 原産は中国で「短桶」(タンカン)からきている。見かけや食べにくさがややあるが味はすぐれて甘く香りたかくジューシー。 ・しーくゎーさー 「【‘酢食わせ(もの)’の意】小果の柑橘[かんきつ]類、‘ひらみレモン’、橘[たちばな]〔黄金色の実なのでkuganiiとも〕」 ・おーとー 「【‘青唐九年母’の略;cf.Too-kunibu】kunibu〔みかん〕の一種」【琉辞】。 ・かーぶち 「【カブス、カボス;『和名抄』にカフチ「加布智」〔枳殻〕[からたち]】蜜柑[みかん]の一種〔皮が厚い〕」【琉辞】。


四、四ち ゆし豆腐 豆腐や欠かすなチャンプルー 豆腐ぬカーシー
ゆーち ゆしどーふ とーふやかかすなちゃんぷるー とーふぬかし
yuuchi yushidoohu toohu ya kakasuna chanpuruu toohu nu kashi
四つ ゆし豆腐 豆腐は欠かすなチャンプルーに 豆腐のおから
語句・ゆしどーふ 「寄せ(おぼろ)豆腐〔型に入れて固める前の柔らかい豆腐〕」【琉辞】。・ちゃんぷるー 「【中国語系らしい;長崎チャンポン〔<攙烹[chanpeng]? または攅烹[chanpeng]?〕+児[er]〔接尾辞〕?:‘攙’は“混ぜる”、‘攅’は“集める”、‘烹’は“煮る・炒める”の意;インドネシアでもcanpuru】〔料理〕野菜・豆腐などの油いため〔調理法は'irichii[油炒め]と同様;素材によってgooyaa~、maamina~、soomin~など〕」【琉辞】。ということで外来語であるらしい。豆腐を入れると「チャンプルー」、豆腐のないものが「イリチー」「イリチャー」という区別をする人もいる。・かし 「おから、うのはな」【琉辞】。


五、五ち イリチャーや 昆布に素麺 血イリチャー バパヤーイリチャー
いちち いりちゃーや くーぶにそーみん ちーいりちゃー ぱぱやーいりちゃー
'ichichi 'irichaa ya kuubu ni soomiN chii’irichaa papayaa 'irichaa
五つ 炒めものは 昆布炒めに素麺炒め 血炒め パパイヤ炒め
語句・いりちゃー 首里語では「いりちー」と言う。<いりちゅん。・くーぶ 昆布。沖縄では昆布は取れない。「県民の消費量は全国最高」「17世紀〔江戸期〕以降北海道〔松前〕から北前船で西日本に入り西日本に入り北九州・大阪・鹿児島経由で砂糖の見返りの形で琉球に輸入された」【琉辞】。・そーみん 素麺。・ちーいりちゃー 豚の血の炒め物。・ぱぱやー パパイヤ。青いパパイヤの千切りの炒め物。


六、六ち 餅や フチャギに白餅 カーサ餅 団子に餡餅
むーち むーちーや ふちゃぎにしるむち かーさむーちー だーぐにあんむち
muuchi muuchii ya huchagi ni shirumuchi kaasamuuchii daagu ni 'aNmuchi
六つ 餅はフチャギに白餅 カーサ餅 団子に餡餅
語句・むーち 餅。沖縄では「餅」を「むち」と読むか、「むーちー」と読むかで意味を区別している。「むち」ならば「餅 〔糯米[もちごめ]を蒸して搗く内地式と異なり、糯米の粉を水で練り蒸して作る」;muuchiiは特殊〕」【琉辞】。 そして「むーちー」は「【“餅[muci]”の特殊形】旧暦12月8日[臘八]に餅を作って子供たちの厄除けとする“鬼餅”行事['uni-~];その餅〔こねたもち米粉をsannin[月桃](またはkubu)の葉[kaas(j)a]で包んで蒸したもの〕」【琉辞】。 ここでは一般的な餅の意味で「むち」のほうであろう。 ・ふちゃぎ 「【吹キ上ゲ】吹上餅〔ゆで小豆をあしらった蒸し餅;一種の‘おはぎ’;旧暦8月十五夜の供え物〕」【琉辞】。・しるむち 先祖供養として彼岸の行事で、三枚肉、天ぷら、揚げ豆腐、かまぼこなどとともに仏壇にお供えする。


七、七ち ナーベーラー ゴーヤー タマナー ほうれん草 大根南瓜
ななち なーべーらー ごーやー たまなー [ほうれんそう] でーくに ちんくゎー
nanachi naabeeraa gooyaa tamanaa [ほうれんそう] deekuni chiNkwaa
七つ へちま ゴーヤー キャベツ ほうれん草 大根 かぼちゃ
語句・なーべーらー 「【ながふゑ[ナガウヰ]〔‘長瓜’であろう〕、なべら『混効験集』;成熟した実の網状繊維を‘鍋洗い’用に使ったことからか】〔植物〕へちま〔未熟のものを食用にする;味噌煮・揚げ物など〕」【琉辞】。・でーくに 「【だいこね『混効験集』】〔野菜〕大根。〔'ufuni[大根]とも〕」【琉辞】。・ちんくゎー かぼちゃ。「なんくゎー」ともいう。


八、八ち 焼きそばにソーキにモズクにティビチそば野菜そばまで
やーち やきすばに そーきに[もずく]にてぃびちすば やーさーすばまでぃ
yaachi yakisuba ni sooki ni [もずく]ni tibichisuba yaasasuba madi
八っつ 焼きそば ソーキにもずくにティビチそば 野菜そばまで
語句・そーき 「【ソホキ〔牛馬などが野原を行くとき草に触れる前胸部分〕;『和名抄』に‘歴草:曽保岐・曽布岐’】あばら」 豚の骨付きあばら肉。・もずく これは大和口で、沖縄口では「すぬい sunui」(「【潮+海苔】【琉辞】から) 


九、 九ちクブシミに グルクン アジケー 烏賊 鮪刺身に天ぷら
くくぬち くぶしみに ぐるくん あじけー いちゃ [まぐろ] さしみにてぃんぷら
kukunuchi kubushimi ni gurukuN 'ajikee 'icha [まぐろ] sashimi ni tiNpura
〇九つ こぶしめに
語句・くぶしみ 「【こぼしめ『混効験集』】〔魚類〕こぶしめ〔熱帯産の大型の甲烏賊[こういか];肉の厚さ2,5cmもあり、刺身にする〕」【琉辞】。・ぐるくん 「グルクン〔たかさご〕〔フエフキダイ科タカサゴ属の熱帯魚;沖縄県の県魚〕」【琉辞】。味はきわめて淡白で、から揚げがうまい。 ・あじけー しゃこ貝。刺身で食べ、歯ごたえがよい。・まぐろ これは大和口、沖縄口では「しび shibi」。私の出身地宮崎でも「しび」と呼ぶ。


十、十や 鶏 家鴨 御汁に冬瓜か フーチバー 卵のおかずも
とぅーや とぅい あふぃらー うしるにしぶいか ふーちばー くーがぬ[おかず]ん
tuu ya tui 'ahwiraa 'ushiru ni shibui ka huuchibaa kuuga nu [おかず]N
十は ニワトリ アヒル 御汁に冬瓜かよもぎ 卵のおかずも
語句・あふぃらー 「【あひら[あへら]『混効験集』】〔鳥〕あひる」【琉辞】。・しぶい 「【しぶい、しぶり『混効験集』】冬瓜[とうがん]」【琉辞】。 ・ふーちばー よもぎ。お灸のもぐさのことを「ふーち huuchi」という。その原料となる葉なので「ふーちばー」 <huuchi もぐさ +baa 葉。 
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2009年07月18日

踊いナークニー

踊いナークニー
うどいなーくにー
udui naakunii


唄 前川朝昭


でぃちゃようし連りてぃ 眺みやいあしば すらし匂い袖に移ちあしば
でぃちゃよ 'うしちりてぃ ながみやい'あしば すらしにうぃすでぃに'うちゅち 'あしば
dicha yo 'ushichiriti nagamiyai 'ashiba surashi niwi sudi ni 'uchushi 'ashiba
さあ、一緒に連れて眺めたりして遊ぼう すてきな匂い袖に移して遊ぼう
語句・でぃちゃよ さあ。文語で「でぃか」ともいう。口語では「でぃっかー」。・すらし いとしい。すばらしい。かわいい。すてきな。やさしい。 など多義。 <すら<しゅーらーしゃん 「<シホラシイ」かわいい。


ゆらてぃ眺みりば 暮りる日ん忘てぃ あしでぃぬかりらん 二人が仲や
ゆらてぃながみりば くりるふぃんわしてぃ 'あしでぃ ぬかりらん たいがなかや
yurati nagamiriba kuriru hwiN washiti 'ashidi nukariraN tai ga naka ya
近寄って眺めると暮れる日も忘れて 遊んで離れられない 二人の仲は
語句・ゆらてぃ 近寄って。・ぬかりらん 離れられない。<ぬちゅん 「立ち退く。離別する」【琉辞】。


照り美らさあてぃん 咲ち美らさあてぃん 誰とぅ眺みゆが 月ん花ん
てぃりじゅらさ'あてぃん さちじゅらさ'あてぃん たるとぅながみゆが ちちんはなん
tirijurasa 'atiN sachijurasa 'atiN taru tu nagamiyuga chichiN hanaN
(月の)照りがいかに美しくても(花が)咲いてどんなに美しくても誰と眺めることができるか 月も花も


共に眺みゆる人ぬ居てぃからや ぬゆでぃ照る月に(我んね)向かてぃ泣ちゅが
とぅむにながみゆるふぃとぅぬ うてぃからや ぬゆでぃ てぃるちちに(わんねー)んかてぃなちゅが
tumu ni nagamiyuru hwitu nu utikara ya nuyudi thiru chichi ni (waNnee)Nkati nachu ga
一緒に眺められる人がいるのなら どうして照る月に向かって私は泣くのだろうか


眺みゆるうちに 面影ん残ち 山ぬ端に入ゆる月ぬ惜しさ
ながみゆる'うちに 'うむかじんぬくち やまぬふぁに'いゆるちちぬ うしさ
nagamiyuru 'uchi ni 'umukajiN nukuchi yama nu hwa ni 'iyuru chichi nu ushisa
眺めているうちに(あなたの)面影を残して山の端に入る月がなんと惜しいことよ!
語句・うしさ <うしさん 惜しい。体言止めで「なんと惜しいことよ!」。('うしさん 'ushisaN 薄い。遅い。これとは声門破裂音の有無で意味をわけているので注意)


夜中天川や島ゆくになとい でぃちゃよ立ち戻ら ゆびぬ時分 
ゆなかてぃんじゃらやしまゆくになとい でぃやよたちむどぅら ゆびぬじぶん
yunaka tiNjara ya shima yuku ni natoi dicha yo tachimudura yubi nu jibuN
夜中に天の川は村の(上に)横になっていて さあ戻ろう 昨夜と同じ時間だ
語句・てぃんじゃら 天の川。銀河。<てぃんがーら →てぃんじゃーらと読むこともある。・ゆく 横。天の川が丁度村の上で横になっていることの表現。もう寝る時間という含みもあるだろう。  続きを読む

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2009年06月28日

胡蝶の唄

胡蝶の唄
こちょうぬうた
kochoo nu 'uta
蝶の唄

作詞 大濱安伴


1、初春になりば押す風ん涼しゃ 露受きてぃ咲ちゅる花ぬ(花ぬ)美らさ (すりささ しゅらさ はいや)(括弧は繰り返し、囃子。以下省略)
はちはるになりば 'うすかじんしだしゃ ちゆ'うきてぃさちゅるはなぬ はなぬちゅらさ
hachiharu ni nariba 'usu kajiN shidasha chiyu 'ukiti sachuru hana nu (hana nu )churasa
初春(正月)になったのでそよ風も涼しいことよ!露を受けて咲いている花が美しいことよ!
語句・なりば 已然形+ば ・・なので。・うすかじ そよ風。順風。


2、我んや花やとてぃ里前綾はびる 花ぬ寄らりゆみ里前 いもり忍ば
わんやはなやとてぃ さとぅめ'あやはびる はなぬゆらりゆみさとぅめ 'いもりしぬば
waN ya hana yatoti satume 'ayahabiru hana nu yurariyumi satume 'imori shinuba
私は花であって 貴方(は)美しい蝶 花が寄ることはできないでしょう?貴方がいらして忍ぼう
語句・やとてぃ ・・であって。 


3、花にたわむりてぃ遊ぶ綾はびる 互に肝内や 他所ぬ知ゆみ
はなにたわむりてぃ 'あしぶ'あやはびる たげにちむ'うちや ゆすぬしゆみ
hana ni tawamuriti 'ashibu 'ayahabiru tage ni chimu 'uchi ya yusu nu shiyumi
花にたわむれて遊ぶ美しい蝶 互いの心のうちを他人は知るまい


4、あん美らさ咲ちゅる花に肝引かり いちまでぃん あかん別り苦しゃ
'あんちゅらさ さちゅるはなに ちむふぃかり 'いちまでぃん'あかんわかりぐりしゃ
'aN churasa sachuru hana ni chimu hwikari 'ichimadiN 'akaN wakarigurisha
あのように美しく咲く花に心を引かれ いつまでも飽きもせず 別れがたいものだ!
語句・あかん 飽きない。文語的表現。


5、花や咲ちしりてぃ黄葉になるまでぃん 変わるなよ互に 元ぬ心
はなやさちしりてぃちばになるまでぃん かわるなよたげに むとぅぬくくる
hana ya sachi shiriti chiba ni narumadiN kawaruna yo tage ni matu nu kukuru
花は咲き揃って 黄葉(枯葉?)になるまでも変わるなよ互いに 昔の心を
語句・しりてぃ 不明。しかし伊野波節に「咲きすれて」(さきすりてぃ)とあり、意味は「咲きそろって」と訳せる。なぜ「すりてぃ」でなく「しりてぃ」なのか不明だが「suriti」→「shiriti」と「u 」と「i]が入れ替わったのではないか?・ちば 黄葉。しかし辞書にはなく「枯れた葉」のことか?


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Posted by たる一 at 12:04Comments(14)か行