久高万寿主
kudakamaNzuushu
くだかまんじゅーしゅ
一、久高万寿主や美ら妾とめーててんど(ヨー玉黄金)
kudakamaNzuushu ya churayuubee tumeeti tiN doo
(yoo tamakugani)
くだかまんじゅーしゅや ちゅらゆーべー とぅめーてぃ てぃん どー
(よーたまくがに)
○
久高万寿主は美しい妾をさがしているぞ
(くゆいぬはなしぬ うーむっさ すりさーさ さーうりへいすりさーさ)
kuyui nu hanashi nu 'umussa surisaasaa
saa'uri hei surisaasaa)
くゆいぬ はなしぬ 'うーむっさー すりさーさー
さー'うり へいすりさーさー
○
今宵の話は面白い (囃し)
ニ、くぬ殿内の南蛮瓶や 酒てらむん ゆったいくわったい
(ヨー玉黄金以下省略)
kunu duNchi nu naNbangaami ya saki tiramuN yuttaikwattai
くぬどぅんちぬなんばんがーみ や さきつぃらむん ゆったいくわったい
○
この屋敷の南蛮瓶は 酒というもの(が)たっぷんたっぷん
三、首里の行き戻り 那覇の七戻り
shui nu 'ichimudui nahwa nu nanamudui
しゅいぬ 'いちむどぅい なふぁぬ ななむどぅい
○
首里の行き戻り(往復) 那覇の七(何回も)戻り
四、一合がうたびみせーら 二合がうたびみせーら
'ichigoo ga 'utabimiseera niNgoo ga 'utabimiseera
'いちごーが'うたびみせーら にんごーが'うたびみせーら
○
一合(のお酒)をいただきましょう 二合をいただきましょう
語句
・yuubeeゆーべー 妾 ・tumeeyuNとぅめーゆん 求める。捜す。
cf.tuzi tumeeyuNとぅじ とぅめーゆん 妻(になる人を)探している
・duNchiどぅんち 〈tuNchi 屋敷
・~tiramuNてぃらむん ~というもの
・yuttaikwattaiゆったいくわったい 液体が揺れて音を発するさま
・'utabimiseeN'うたびみせーん 頂く
〈kwiyuNくぃゆん やる。貰う。の敬語
-seeraせーら 誘う呼びかけ ~しょう
解説
エイサー専用の曲といってもよい。単独で民謡として歌われることはほとんどない。それは歌詞がエイサー独特のムードと強い結び付きがあるからだろう。
歌詞は様々。
1番は、妾探しの久高の万寿主を冷やかして、囃しで「今宵の話は面白い」とさらにつっこむ。ヨー玉黄金とは、自分の大事な人に呼びかけるような囃し言葉「ねー玉黄金ちゃん」くらい。
二番以下、昔エイサーが家々を廻りながら酒の施しを集めたという話と重なる。勝連にはいまでもエイサーにはサキカタミヤー(sakikatamiyaa酒担人)がいる。
酒を入れる甕小(kaamigwaaかーみぐわ)を担ぐ二人組が青年会エイサーで活躍している。道じゅねー(michizuneeみちじゅねー)といって太鼓を叩き踊りながら道を練り歩く。その様子が「行き戻り」ではないか。
エイサーの起源については、諸説あるが念仏踊りから来たというのが有力。しかしもはやこのエイサーにはつきものの久高万寿主でさえ歌詞の意味に先祖供養を尊ぶものはみあたらない。
しかし、面白いのは言葉のリズム。歌詞の意味よりもこのリズムがエイサーを盛り上げる。
語句の割り振りが複雑だ。二番四番も同様。
だが、三線を弾く地謡(zikataじかた)の声がひとつになると、まるでラップのように言葉の響き、リズムが伝わってくるから不思議。
これに太鼓のリズムと男女の囃し(hweeshiふぇーし)、指笛('iibiいーび)が重なることで、まさに盆の夜のワクワクするムードがかもしだされる。
エイサーにこそふさわしい歌なのだ。
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