2006年01月26日

ちんぬくじゅーしー

ちんぬくじゅうしい
ちんぬくじゅーしー
chiNnuku juushii
里芋炊き込みご飯
語句・ちんぬくじゅーしー <ちんぬく。「[鶴の子]里芋の一種。」【沖縄語辞典】(以下【沖辞】)。+ じゅーしー。内地で言う「雑炊」タイプ(やふぁらじゅーしー)と「炊き込みご飯」タイプ(くふぁじゅーしー)がある。

作詞 朝比呂志 作曲 三田信一



一、アンマーたむのー煙とんど煙しぬ煙さぬ涙そうそう ヨイシーヨイシー泣くなよ 今日の夕飯何やがて ちんちんちんぬくじゅーしーめー
あんまーたむのーきぶとーんどー きぶしぬきぶさぬなだそーそー よいしーよいしーなくなよー ちゅーぬゆーばんぬーやがてー ちんちんちんぬくじゅーしーめー
'aNmaa tamunoo kibutooN doo kibushinu kibusanu nadasoosoo yoishii yoishii nakuna yoo chuunu juubaN nuuyagatee chiN chiN chiNnukujuushiimee
お母さん薪が煙たいよ 煙が煙たくて涙ぼろぼろ よしよし泣くなよ 今日の夕飯は何かなと言うと 里芋の炊き込みご飯
語句・たむのー 薪は。 薪は「たむん」それに「や」(は)が融合して「たむのー」と変化する。(例)さんしのー < さんしん saNshiN +やja = さんしのーsaNshinoo 三線は。・きぶとーん 煙っている。<きぶゆん。きぶいん。《動詞》「けぶる。くすぶる。燃えずに煙ばかり出る」【沖辞】。・きぶしぬ 煙が。<きぶし。《名詞》煙。+ぬ。 が。・きぶさぬ 煙いので。<きぶさん。《形容詞》煙い。ーさぬ、ーなので。・なだそーそー 「そーそー」は辞書に「水の流れるさま ざーざー じゃーじゃー」とある。ポロポロよりはもっとダラダラ流れるさま。・よいしー よいしー よし、よし。



二、主が畑から戻みそち シブイにチンクヮーチデークニ 粉ふち芋の煮とんど 豆腐臼の廻とんど クンクンクンスー七まかい
すーがはるからむどぅみそーち しぶい に ちんくゎー ちでーくに くーふちんむぬにーとーんどー とーふうーしぬみぐとーんどー くんくんくんすーななまかい
suu ga harukara mudumisoochi shibui chiNgwaa chideekuni kuuhuchi'Nmu nu niitooN doo toohu'uushinu migutooN doo kuN kuN kuNsu nanamakai
お父様が畑からお戻りになられ冬瓜 かぼちゃ 島人参 粉ふき芋を煮ているよ 豆腐の臼が回ってるぞ 豆腐汁七回(たくさん)おかわり
語句・すー お父さん。平民の父に言う。首里では「しゅー」。・しぶい 冬瓜(とうがん)。・ちんくゎー かぼちゃ。「なんくゎー」ともいう。・ちでーくに 「人参。黄大根の意」【沖辞】。・とーふうーし 豆腐をつくるのに、茹でた豆を曳く時に使う石臼。・くんすー 「豆腐を作る時、煮て、豆腐を絞る前の汁。にがりを入れて固まる前のものをいう。固まってまだしぼらぬものはjusidoohuという。」【沖辞】。「くんくん」は調子を取るために。・ななまかい たくさんおかわり。「まかい」はお椀。それに数字がつくと何回おかわりしたかとなる。七回と書いてあるが、沖縄では七は特別で実際の回数を意味しない。たくさんの意味。(例)「名護ぬ七曲がい」。 何度もくねくねしている名護の道。



三、タンメーバーキや荒バーキ スルガー ニクブク サギゾーキ やふぁら米からうさぎりよ タンメー白髪ぬ美らむぬや トートー米寿 まぎ祝事
たんめーばーきや'あらばーき するがーにくぶくさぎぞーき やふぁらかぐみから'うさぎりよーたんめーしらぎぬちゅらむぬや とーとーとーかち まぎすーじ
taNmee baaki ya 'arabaaki surugaanikubuku sagizooki yahwarakagumi kara 'usagiriyoo taNmee shiragi nu churamunuya too too tookachi magi suuji
おじいさんのザルは荒い目のザル シュロ皮 ワラ筵 天井に下がる竹籠 やわらかい米(お粥)を差し上げなさいよ おじいさんの白髪は美しいよ 米寿は大きな祝い事
語句・たんめー 「士族の祖父。また、士族の老翁。おじいさん。」【沖辞】。平民の「おじいさん」は「うすめー」「うしゅめー」。・ばーき 「ざる。かご。底が四角で底を中心に丸く竹で編み上げたざるをいう。」【沖辞】。・するがー 「棕梠の皮。その繊維で箒・縄・簑などを作る」【沖辞】。シュロの皮。首里語では「しゅるがー」。・にくぶく 「藁縄で編んだむしろ。農家で用いる。」【沖辞】。・さぎぞーき 「天井から下げる、竹で編んだかご。食べ物を入れる」【沖辞】。・やふぁらぐみ 柔らかいお米、つまりお粥。・うさぎりよー 差し上げなさいね。<うさぎゆん。うしゃぎゆん(首里)。差し上げる。・



四、三良マブヤー落とちゃくと前田ぬハーメーがアートートゥ 花米一粒に酒一ちぶ三本ウコーとマース小トートゥ トートゥ アートートゥ
さんらーまぶやー'うとぅちゃくとぅ めんたーぬはーめーが'あーとーとぅ はなぐみちゅしじにさきちゅちぶ さんぶん'うこーとぅまーすぐわー とーとぅ とーとぅ あーとーとぅ
saNraa mabuyaa 'utucakutu mentaa nu haamee ga 'aatootu hanagumi chushiji ni saki chuchibu saNbuN'ukootu maasugwaa tootu tootu 'aatootu
三良の魂が落ちたので前田のおばあさんがアートートゥ(お祈りの言葉) 清め米一粒に酒一杯三本お線香とお塩トートゥトートゥアートートゥ
語句・さんらー 子どもの名前。・まぶやー 「まぶいと同じ」 「魂。霊魂。生きている人の魂をいう。」沖縄ではちょっとしたことでこのマブイ、マブヤーが落ちると信じられている。それをおまじないで戻す。おまじないは「まぶいぐみ」と言い、「ごちそうと本人の着物を、魂が落ちた現場へ持って行き、その着物の中に魂を招き入れて持って帰り、本人にごちそうを食べさせると同時に、その着物を着せる。ごちそうの膳には小石三個を置き、茶碗に一杯水を用意して、ごちそうを食べる前に、mabujaa mabujaa uuti kuu yoo, uhumee jatimee kwira jaa(魂、魂、ついて来い。大きな大きなめしをやるぞ)と言って、その水(ubiiという)をひたいに指で三度つける。」【沖辞】(発音記号一部省略)。・はーめー「おばあさん。平民の祖母または、平民の老女を言う。」【沖辞】。・あーとーとぅ 「神仏を拝む時に発する声。あなとうと。女はuutootuという。」【沖辞】(発音記号一部省略)。・はなぐみ「神前に供えるための洗い清めた米」【沖辞】。・ちゅしじ 「一粒」と当て字があるが、「しじ」ならば「しじびん」(「酒を入れ、儀式などで用いるための、錫のびん。」【沖辞】)ではないだろうか。「一粒」なら「ちゅちじ」になる。・ちゅちぶ 一杯。「ちぶ」(酒杯)。・さんぶんうこー 三本御香。三本御香とは、沖縄のお香(ヒラウコー)を縦に半分にしたもの。三本とは「天神・地神・竜宮神(海の神)」を現し、「自分の願い」を祈る時に使う。・まーすぐゎー 塩。




作詞 朝比呂志 作曲 三田信一
ウーマクカマデーを世に出したコンビが作り、石川出身のフォーシスターズがヒットさせた。
70年代に10万枚のレコードを売ったという。

沖縄の少し昔の懐かしい家庭の風景がテーマ。

里芋の炊き込みご飯がご馳走であり、薪でご飯を炊いている。


(スーパーに売られているチンヌク、里芋。筆者撮影。)

お父さんは畑から野菜を持って帰る。おじいさんは竹などで細工をしかごなどをつくっておられる。そのおじいさんへの配慮。そして子どもがマブイを落とせば近所の人が他人の子もわが子のように大事にする。

そんな光景は、沖縄だけでなく、自分の子どものころとかさなるような気がする。

現代。コンビ二弁当を煙のでない電子レンジでチン。
お父さんは残業で遅くなりテレビを見ながら会話もなく、おじいさん、おばあさんは一緒に住めない核家族。

このような時代でも、歌に教えられる人の情けを大事にし、それを見つけることも大事なことかもしれない。

すばらしい歌は時代を超えて残っていく。
今でも人に感動を与える曲と歌詞である。


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ちんぬくじゅーしー

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Posted by たる一 at 14:10│Comments(12)た行沖縄本島
この記事へのコメント
教師試験、合格おめでとうございます。
大和人の沖縄民謡の教師が誕生したことは とても喜ばしいことで、あなたの努力に敬意を・・・・自分も優秀賞まで取って、現在は休んでおります。また4月から復帰しようかと思っております。自分もがんばらなくては・・・・沖縄民謡は沖縄だけのものではなく、日本の財産です、沖縄人 大和人関係なく沖縄民謡を愛する人達が引き継いでいかなければ・・・・
話は変わりますが、今、住んでいる所は、20年程前から、知っているのですが、当初、公民館から夕方の6時を知らせる曲が「ちんぬくじゅーしー」でしたいつの頃からか「カラスなぜ鳴くの」に代わっています、自分としては、もとの曲に戻してほしいのですが、またひとつ、沖縄らしさが無くなりました、寂しいものです。 
Posted by ウチナー ムーク at 2006年01月26日 20:37
ウチナームークさんコメントありがとうございます。
これだけアメリカ・西欧文化にまみれてしまい自国の文化すら崩壊寸前の国にありながら、ローカルな言葉と人の情けを大事にしてきた沖縄民謡は本当に貴重な宝ですね。
自然で気負いのない歌は、いつも人に優しいです。昔の歌に現代の私たちが学ぶこと、受け継いでいくことはたくさんあるなあ、と歌の訳に取り組んでそう実感します。
ウタナームークさん また歌三線ぜひはじめてくださいね!
Posted by たるー at 2006年01月27日 08:17
画面を汚したお詫びに別のコメントを。
子供の時分にはまだ「まぶい篭め」をしている光景が見受けられたものでした。その頃、「まぶい」と同じ意味で「たましい」という方言も使っていたような気がするのですが、「たましい」の方、いつの間にか方言の文脈の中で聞かれなくなってしまいましたね。
「たましい」と言えば、わたしの言葉の体験の中で忘れられない出来事があります。それは柳田国男の本を読んでいた時のこと。そこには「たましい」という言葉が古代語の「たます」という「分ける・分配する」という動詞に由来している旨の記述がありました。つまり、「魂=一人一人に分け与えられたもの」というわけです。
ハッとなりました。沖縄方言では「分け前・取り分」という意味で「たまし」を使うのです。「我んたまし(僕の分)」「やーたまし(お前の分)」といった具合に。
あの時、そうか、俺たちの言葉は日本の古い言葉と深い所で繋がっているのだと誇らしい気持ちになったのを覚えています。18歳の夏のことでした。
Posted by Hi Shy at 2006年01月28日 01:05
たるーですが、ここでは、本名のせきひろしを使います。
Hi Shyさん、コメントありがとうございます。
「たまし」琉球語辞典では、
tamasi①精神 しっかりした心(tamasiiとは別)②各自の持ち(取り)分。
とありました。
そして「たましー」tamasiiは別項で「死者の霊魂。生きている人の魂はmabui」とあります。
なるほど。分け前、取り分という意味での「たまし」が古代語から来ているのですね。
もう現代では本土では使われなくなった言葉、どれだけあるのでしょうかね。モノを使い捨てするように言葉も使い捨てしてきたのでしょうか、私達は。
貴重なお話をいつもありがとうございますね。
Posted by せきひろし(たるー) at 2006年01月28日 06:20
たるーさん教師試験合格されたのですね。おめでとうございます!(o^-')b
Posted by ふーちゃん at 2006年01月29日 10:38
ふーちゃんさんありがとうございます。
これからも精進していきますのでどうぞよろしくおねがいします。
Posted by せきひろし at 2006年01月29日 11:23
└|∵|┐♪┌|∵|┘└|∵|┐♪┌|∵|┘└|∵|┐♪┌|∵|┘└|∵|┐♪┌|∵|┘
~ヽ('ー`)ノ~お祝いに踊ります~ヽ('ー`)ノ~
Posted by ふーちゃん at 2006年01月30日 22:13
ふーちゃんさん、ありがとうございます~
Posted by せきひろし at 2006年01月31日 06:25
はじめまして、、、

ある沖縄の本を読んで、
ちんぬくじゅーしーの歌をしれば
沖縄のルーツがわかるっと書いてあったので、
三線もって練習しながら、たるーさんのブログに辿りつきました。

歌詞をあまり理解出来なかったですが(あまり方言がわからないので・・・)
分かりやすく解説されていたので助かりました~

感想は、深いというか素朴と言うか
歌詞を読むだけで、風景が浮かあがりました~

いい曲だ、練習しておば~に聞かせますね~!
Posted by しまっち!しまっち! at 2011年12月03日 15:42
しまっちさん

コメントありがとうございます。

意味を知って唄うのと、知らずに唄うのは決定的な違いがありますが

どうしてもわからない歌詞もあります。

ですから、「ルーツがわかる」というのも確かですが

こつこつやっていきましょうね。

今後ともよろしくお願いします。
Posted by たる一たる一 at 2011年12月21日 23:56
ちんぬくじゅーしーは
わたしのこもりうたです。

そうるるーつにたどりつきました。

かあさんありがと
Posted by さかい at 2014年03月25日 19:15
このウェブページをアップロードされてから10年たつのですね。唄の意味がとてもよく理解できて、だいじに読ませていただいてます。ありがとうございます!
Posted by tonton at 2016年06月30日 13:12
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