2006年09月15日

通い船

通い船
かゆいぶに
kayui buni

作詞・作曲 普久原朝喜

一、嬉しや懐かしや振別れの港 何時までも肝に染めてでもの
'うりしゃなちかしやふやかりぬんなとぅ'いちまでぃんちむにすみてぃでむぬ
urisha nachikashi yahuyakari nu Nnatu 'ichimadiN chimu ni sumitidemunu
嬉しさ悲しさは別れの港 いつまでも心に染めてるので
語句・うりしゃ 嬉しさ(名) <うっしゃん。 嬉しい(形)の文語。・なちかし 悲しさ。<なちかしゃん(形) 悲しい。ここは「懐かしい」ではない。別れの辛さ。(参考 屋嘉節)
ふやかり (親しい人々)の別離 振別れ。 「ふわかり」ではない。(参考 別れの煙)・でむぬ ・・・なので。・・・だから。



サー那覇と大和の通い船よ
さーなふぁとぅやまとぅぬかゆいぶによー
saa nahwa tu yamatu nu kayuibuni yoo
さー那覇と大和の通う船よ
(囃子以下略)


二、御万人と共にこの船に乗やい 懐かしの港 出じて行ちゅん
'うまんちゅとぅとぅむに くぬふににぬやい なちかしぬんなとぅ'んじてぃ'いちゅん
'umaNchu tu tumuni kunu huni ni nuyai nachikashi nu Nnatu 'Njiti 'ichuN
人々と一緒にこの船に乗って悲しみの港を出て行くよ


三、あまた思事も打ちとけて互に しばし淋しさも忘して行ちゅさ
'あまた'うむくとぅん'うちとぅきてぃたげに しばしなちかさんわしてぃ'いちゅさ
'amata 'umukutuN 'uchitukiti tage(e) ni shibashi nachikasaN washiti 'ichusa
たくさんの思う事も打ち解けて互いに しばし寂しさも忘れていくよ


四、さやか照る月も波風も静か かわて親兄弟の名残立ちゅさ
さやかてぃるちちん なみかじんしじか かわてぃ'うやちょーでーぬなぐりたちゅさ
sayaka tiru chichiN namikajiN shijika kawati 'uyachoodee nu naguri tachusa
さやか照る月も波風も静か とりわけ親兄弟の名残り浮かぶよ
語句・かわてぃ (副)とりわけ。 格別。 特に。 ことに。 宮古根の歌詞に「かわてぃ思無蔵が名残立ちゅさ」があり「かわてぃ」に「変わてぃ」が当ててある場合があるが、意味は「変わって」ではなく、この「格別」の意味。ここも注意が必要だ。


作詞・作曲の普久原朝喜は20歳で大阪に渡りマルフクレコードを創設、自身も作詞作曲をし、またレコードに多くの音源をのこしつつ「チコンキー普久原」という異名を残す。また「ハンタ原」などの奏法は有名である。

この歌も沖縄から本土に渡る出稼ぎの人々の思いを歌ったものであるが曲調は明るい。テンポもよいし歌詞も歯切れよい。
多くの同じ思いをしている人々の気持ちを乗せるには、リアリティーがこれ以上でも以下でもいけないのかもしれない。
通い船

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Posted by たる一 at 00:34│Comments(4)か行
この記事へのコメント
ご無沙汰いたしておりました。
この曲は、喜納昌永氏のシングル盤として最初期に大ヒットした作品ですよね。マルフクから普久原恒勇氏が発売された作品です。1951年沖縄ー神戸に就航した関西汽船「黒潮丸」のことですね。沖縄出身者が多く住む関西を繋いでくれる定期便に大きな喜びを感じた朝喜氏が実際に神戸まで黒潮丸を観に出かけて造りあげた作品ですね。
Posted by ウチナー ムーク at 2006年09月15日 20:38
たるー先生
いつも深い歌詞の意味を味わいながら読ませていただいております。
今年の夏に三線を宮古島で買ってからはまっています初心者です。
このたびはお願いがあり、コメントさせていただきました。ぜひ、国頭ジントヨー(むちはじき節)の訳を教えていただけませんでしょうか。手元に訳があるのですが、どうも意訳に過ぎる気がして仕方がありません。勝手なお願いで恐縮ですが、よろしくお願いいたします。絶対自分のものにしますので!
Posted by 微笑もて at 2006年09月16日 04:01
ウチナー ムークさん
お久しぶりです。
詳しいフォローありがとうございます。
どうしても歌詞の理解に時間がかかるので、歌の背景を調べる余裕もないうちにここに載せてしまうのでありがたいです。本土と沖縄を結ぶ船が、悲しさ、嬉しさという人間の感情の両端に関わるということが、複雑な思いであり、歌になることなのでしょうね。
Posted by せきひろし(たるー) at 2006年09月18日 22:55
微笑もてさん
コメントありがとうございます。
むちはじき節、当面のスケジュール(なんていっても思いつきがほとんど)に入れてます。
お待ちくださいね。
宮古島で買われたということは宮古民謡もやられていますか?今後もよろしくです。
Posted by せきひろし(たるー) at 2006年09月18日 22:57
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